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  • Yearly Report(12/23):「トランプ2.0と日米金融政策に揺れるドル円、年初は上値トライを経て下落か」
    安田 佐和子
    この記事の著者
    トレーダム為替アンバサダー/ストリート・インサイツ代表取締役

    世界各国の中銀政策およびマクロ経済担当の為替ライターの経験を経て、2005年からニューヨークに拠点を移し、金融・経済の最前線、ウォール街で取材活動に従事する傍ら、自身のブログ「My Big Apple NY」で商業活動、都市開発、カルチャーなど現地ならではの情報も配信。2015年に帰国、三井物産戦略研究所にて北米経済担当の研究員、双日総合研究所で米国政治経済や経済安全保障などの研究員を経て、現職。NHK「日曜討論」、テレビ東京「モーニング・サテライトなどのTV番組に出演し、日経CNBCやラジオNIKKEIではコメンテーターを務める。その他、メディアでコラムも執筆中。

    マーケット分析
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    ―Executive Summary―

    • ドル円の2024年の変動幅(1月2日から12月20日まで)は22.37円と、前年の24.69円から縮小した。このままいけば終値ベースで、4年続伸となる。日銀のマイナス金利解除後も、慎重な利上げ姿勢を受けてドル円は上値を追う展開となり、7月3日には一時161.95円と1986年以来の高値をつけた。ただ、介入に加え7月に発表された弱い米経済指標、7月の日銀によるサプライズの追加利上げを受け、ドル円は下落に転じた。9月16日には140円を割り込み、一時 139.58円まで下落。以降は、米大統領選でのトランプ氏勝利、米経済指標の好転、ハト派的な日銀に対しタカ派的な米連邦準備制度理事会(FRB)に反応し、158円に迫るまで切り返した。
    • 12月17-18日の米連邦公開市場委員会(FOMC)では0.25%の据え置きを決定も、2025年の利下げ回数は従来の4回→2回、中立金利とされる長期のFF金利予想・中央値も従来の2.9%→3.0%へ上方修正されるなど、タカ派的となった。パウエルFRB議長も、利下げペースの減速に加え、金融政策につき「新たな段階に入った」と言及。とはいえ、12月時点の翌年のFF金利予想・中央値は必ずしも的中せず、むしろ実績値は予想を下回る傾向にある。
    • トランプ次期大統領の経済政策をめぐる不確実性にも、留意したい。追加関税措置はインフレ圧力を高めうるが、成長や雇用を押し下げる側面も。また、政府効率化省(DOGE)は歳出削減と米連邦政府職員のリストラを進める見通しなだけに、両者は成長と雇用にネガティブとなりうる。減税政策が成立しない限り、成長が加速するとは想定しづらく、Fedが予想外にハト派に転じる余地があるのではないか。
    • 日銀は、12月の金融政策決定会合でハト派寄りの姿勢を打ち出した。1月の追加利上げをめぐっては、①トランプ次期大統領の経済政策、②春闘のモメンタム、③国内の予算審議――などが焦点に。半年に一度の利上げペースと考えるなら、1月に行った場合に次は参議院選直後と目される7月が視野に入るが、国内の予算成立と米国の予算教書を待つなど3月に持ち越しならば、10月が意識されよう。
    • ドル円のテクニカルは、非常に強気地合いを迎えている。一目均衡表の三役好転が成立したほか、21日移動平均線から200日移動平均線まで、上向きに転じた。ただ、RSIは引き続き割高の節目となる70超えでは、上値が重くなっていることを確認。クリスマス休暇もあり、ドル円が一段高を目指すなら、年明けとなりそうだ。
    • CFTCが発表した12月17日週時点での投機筋による円のネット・ポジションは5,961枚のロング。前週の2万5,752枚からロングが縮小しつつ、3週連続でロングとなった。ドル円が158円に接近しただけに、来週はショートに転じそうだが、中長期的にショート余地が大きいとも言える。とはいえ、トランプ氏という不確実性を控え、2022-24年のような大規模な円キャリーが進むとは想定しづらい。
    • 以上を踏まえ、2025年のドル円は年明け数カ月の間に7月3日の高値161.95円を超えてくるリスクに注意したい。もっとも、トランプ次期大統領就任後に米景気減速が確認されれば、再び140円割れを試す場面もありそうだ。


     2025年は、乙巳(きのとみ)の年に当たる。「乙」は十干で2番目となり、陰の木を表すとされ、植物のようにしなやかに広がり伸びていく意味を持つ。十二支で6番目の「巳」は、白蛇に代表されるように神様の使いとされてきたほか、脱皮を繰り返すため、生命と再生すなわち不老不死のシンボルと位置付けられる。この2つが重なる年は、目まぐるしい変化と成長を体感する年となりそうだ。

     乙巳の年を振り返ると、645年には「大化の改新」が起こり、政治改革が進んだ。1905年は日ロ戦争が終結を迎え、日本が列強入りした年にあたる。1965年には、中国で「文化大革命」が始まった。2025年も、新たな改革が進むのか、注目されよう。



    ドル円の2024年の変動幅(1月2日から12月20日まで)は22.37円と、前年の24.69円から縮小した。このままいけば、終値ベースで4年続伸となる。2024年は、日銀のマイナス金利解除期待から141.04円でスタートしたが、以降は買いが優勢となった。日銀が3月18-19日に開いた金融政策決定会合でマイナス金利解除を決定したものの、植田総裁が会見で「緩和環境を維持することが大事」と述べ、追加利上げに慎重姿勢を示したため、150円を突破した。4月25-26日の日銀金融政策決定会合では、ドル円が155円台へ切り上げる過程で、円安に対し今のところ基調的な物価上昇率に大きな影響を受けていないかとの質問に植田総裁が「はい」と回答したため、一気に3円50銭近くも急伸し158円を超えていく展開。日本がゴールデン・ウィーク中の4月29日には1990年4月以来の160円を突破した。同日と5月2日に政府・日銀による介入で151.80円台へ下げるも、ドル円の上昇基調は変わらず。7月3日には一時161.95円と、1986年以来の高値をつけた。

    ただ、その後は米6月雇用統計の弱含みを受け、米9月利下げ期待が高まり上げ幅を縮小。加えて、市場予想以下となった米6月消費者物価指数(CPI)と米7月ミシガン大学消費者信頼感指数・速報値の発表とに合わせ、本邦の介入が入りドル円の下落を誘った。7月30-31日の日銀金融政策決定会合では市場予想が割れるなかで追加利上げに踏み切り、ドル円は141円台まで急落。一旦切り返しつつも、9月17-18日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で予想外の0.5%利下げを決定する直前の16日には、一時139.58円と2023年7月以来の安値をつけた。もっとも、以降は米指標の好転もあって切り返し。米大統領選でトランプ氏が勝利したことで、トランプ・トレードが巻き起こり、米株高・米債安(金利上昇)・ドル高の展開を迎えた。11月と12月のFOMCで0.25%ずつの利下げを決定したが、Fedが利下げペースの減速を表明したほか、12月の日銀金融政策決定会合では植田総裁が追加利上げに慎重な姿勢を打ち出したため、12月下旬にかけ158円に接近した。

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