<テクニカル分析判断>
●短・中期:先週の急落は、下落サイクル復活と共に自律的速度調整の接近を示唆

■3/31週は「寄付149.79:144.55~150.47:終値146.94前週比▲2.91円の大幅な円高)」の推移
◇先週は▲2.91円の大幅な円高。3週連続陽線で下落サイクルからの脱却を確認した(図中①・➋)のも束の間、瞬間的ながら3/10週の安値をも下回る急落に見舞われた(同➌)。このため、「下落サイクルの復活」を再度、強く意識せざるを得ない状況になったといえよう。
3週前まで指摘していたように<「テクニカルな地合いの悪化」を示す要因は、依然として存続しているものもあるため、明確に「底打ち」を宣言するには時期尚早の観あり>ということだろうか。因みに、以下をその要因として挙げていたが、先週の急落により再びその度合いが強まりつつある。
◆「テクニカルな地合いの悪化」の継続を示唆していた(「底打ち」を明言できなかった)要因
・終値が引き続き21&52週移動平均線を大幅に下回っている(うえ、両MAのデッドクロスが接近)
・前週比での「上値の切り下がり」は7週連続で潰えたが、現在は4週連続の「下値の切下がり」にバトンタッチしており、下落サイクルの継続を示唆
=>>>2週前まで「下値/上値を共に切り上げ」を続け3週連続陽線を刻んだため、下落サイクルからは脱却したように見えたものの、先週の急落で下落サイクル復活の可能性が大きく台頭
・後掲の日足では21日MAを下抜けて以降、一度も終値で超えられない状態が続いており、21日MAは依然として強力な上値抵抗線として機能している
=>>>後掲の日足チャートでも判る通り、3/17からは終値ベースで連日21日MAを超えており、今次下落サイクルでは3度目のトライで漸く強力な上値抵抗線として機能していた21日MAを突破できた。その後上値模索に転じたものの、52日MAで上昇を阻まれて再び軟化。上抜けたことで下値支持線に転じたはずの21日MAを下抜けての急落に到った
◇逆に、サポート/反発要因については着実に増加/鮮明化していた以下の要因が大きく後退
・既述の通り、2週前の展開によって「今次下落サイクルからの脱却」の可能性が高まったこと
=>>>先週の急落により「下落サイクルの復活」の可能性高まる
・RSIが低位から反発の兆しを見せた上、一昨年12月&昨年7/8月と同様に「ストキャスティクスはいつ反発に転じてもおかしくない水準」からようやく反発に転じようとする兆しが窺える
=>>>再び低水準での保合いに回帰
・また、2週前/3週前は「21週MA▲4.32%」の重要ポイント付近で反発に転じており、上記RSI/ストキャスティクスの水準&形状を含め、一昨年12月の「底打ち」との類似性が高い。この動きが加速できるかどうか今週の推移は要注目
=>>>一時的ではあったが、この水準を大きく下抜け
●ただ(2週前の)週間変動幅は1.98円と縮小し前2週(4.36円⇒2.64円)の縮小傾向が継続。サイクル反転時の変動幅としては経験上「かなり小幅」であり、現時点では上昇圧力もかなり抑制的と思われる
=>>>先週の週間変動幅は5.92円と前週(1.86円)の3倍超に急拡大し、復活した下落サイクルの持つマグニチュードの潜在的な大きさを示唆(ただし「現在は終盤」の可能性もある)

■また、短期時間軸でも「底打ち」の兆候が減退(上図ご参照)
●既述の通り、3/17からは終値ベースで連日21日MAを超えており、今次下落サイクルでは3度目のトライで漸く強力な上値抵抗線として機能していた21日MAを突破。その後上値模索に転じたものの、52日MAで上昇を阻まれて再び軟化。上抜けたことで下値支持線に転じたはずの21日MAを下抜けての急落に到った
=>>>想定通り4週前からの3週間で「底打ち」的な展開が示現。<ただ、ストキャスティクスがピークアウトの兆候を見せ始めた点はやや気掛かり:2週前のWR>としていた
■停滞気味の21日MAだけでなく、52日MA・200日MA Aも完全に下向きに転換
=>>>さらに、既述の通り「強力な上値抵抗となっていた21日MA」を突破したものの、52日MAにその後の上昇を阻止され反落に転換
<<=>>
◇一方で、速度調整的な意味合いから急落後の週末の足型はかなり下ヒゲの長い陽線となり、押し目買い圧力の根強さも窺えた
◇更には「[127.23]⇒[161.64]の50%戻し」となる『144.585』の水準で反発に転じていた
以上より<今週のテクニカル分析の結論>は以下の通り
◆短期時間軸を中心に「底打ち」を示唆する要因が着実に増加していたが、先週の急落によって「下落サイクル復活」の可能性が大きく台頭
■下落圧力は中長期 (特に長期) 時間軸で存続しているため「下値模索が主流の展開」が想定される
□ただし『ボトムアウト』ではないにせよ、既述の通り目先では自律的速度調整による反発の可能性は否定できない
=>>>なお、他の金融市場の急激な変動率の高まりと共に、週間変動幅は高水準の継続が見込まれる
□引き続き「過度に予断を持つことなく」変化の兆しを見落とさぬ姿勢を維持した上で、終値が以下の水準を「維持or突破」できるかどうかに注目している
① 149.40円=21週MA▲1.86%
⑤ 145.65円=21日MA▲4.32%
⑥ 144.69円=21週MA▲4.95%☆
⑦ 143.79円=21週MA▲5.55%
>>>上記③(上方)と⑥(下方)が「抜けると加速する」と思われる水準
~以下では『短期・中期・長期の方向性』についての分析ポイント及び各時間軸での想定レンジをご案内します。(今号の分析は2025/4/4のNY市場終値をベースに実施) ~
<以下の用語補足:「MA」=移動平均線、「RSI」=(上下への過熱を示す)相対力指数>
➊日足チャート:「21MA±4.32%のバンド、52MA & 200MA」、RSI等
短期(1週間~1か月)の方向性:下落サイクル復活も一時的な速度調整はありうる

■上図は直上掲載分を倍の期間に拡大。コメントについては既掲のものをご参照下さい
◆52日MAに完全に上昇を阻まれた上、下値支持線に転じたはずの21日MAを下抜けて急落。下落サイクル復活が意識される中、再び下値模索中心の展開が予想される。上図でも確認できる通り先週「144.585」の下値メド#1まで達しており、次なるメドは「21日MA▲4.32%:142.50」の水準か
□ただし、先週末に下ヒゲの長い陽線を記録していること・下値メドとなる「144.585」の水準に達した後に急反発していることなどから、一旦は自律的速度調整による反発の可能性も否定できない
>>> 想定レンジ=今週:144.69~148.95、今後1ヶ月:142.50~152.70=
➋週足チャート:「21MA±4.32%/±7.41%/±9.87%のバンド & 52MA」、RSI等
中期(1か月~半年程度)の方向性:地合いは再び悪化し下落サイクル復活の可能性が大きく台頭

■上図は冒頭掲載分を期間3年に延長したもの (コメントは既掲のものをご参照)
◆終値が引き続き21&52週移動平均線を大幅に下回っているうえ、両MAのデッドクロスが急接近
◆上図でも確認できる通り先週「144.585」の下値メド#1まで達しており、次なるメドは「21週MA▲7.41%:141.42」の水準か
□ただし、上図コメントにもある通り(現在のRSIやストキャスティクスの水準を考慮すると)上記の水準に到達する過程で「(かなりの)下落の過熱」状態に陥ることになる
◇また、先週に下ヒゲの長い陰線を記録していること・下値メドとなる「144.585」の水準に達した後に急反発していることなどから、一旦は自律的速度調整による反発の可能性も否定できない
>>>今後6か月間の想定レンジ = 144.45~156.15⇒142.50~153.75=
➌月足チャート:「20MA±18.0%のバンド」「60MA±30.0%のバンド」、RSIを付記
長期(半年超~1年程度)の方向性:地合い悪化により3月は3連続陰線。4月陽転なるか?

■注目された3月は20ヶ月MA未満の水準で3ヶ月連続陰線を形成し、先月まで底打ち/上昇サインが点灯していたストキャスティクスにもデッドクロスが出来。こうした地合いの悪化から、(超)長期上昇トレンドにも暗雲が増幅中
◇こうした状況ではあるものの『3連続陰線の後は大きめの陽線』が過去3年の月足のパターン。4月末に向けての推移が注目される
>>> 今後1年間の想定レンジ = 144.45~161.40 ⇒142.50~159.30 =
<ファンダメンタルズ分析判断>
◆米国:予想以上の関税政策が顕現化。金利は急低下、株式は暴落
◆日本:リスク回避機運が急速に高揚、金利は急低下、株式は暴落
◆USD円:景気後退懸念から米金利の急低下の影響からUSD指数も軟調

◇米債利回り:週末にかけ利回りは低下した。中国が米国の相互関税への対抗措置として追加関税を課すと発表し、2日にトランプ米大統領が発表した中国への追加関税と同率を適用した。
これを受け、貿易戦争の激化を巡る懸念から安全資産の国債に質への逃避買いが入り、利回りは一時、大幅に低下。しかし、その後発表された、好調な雇用統計の内容を受け、利回りは低下幅を若干縮小。
3月の米雇用統計では、非農業部門雇用者数は22.8万人増加し、市場予想の13.5万増を大幅に上回った。ただし、失業率は4.2%と前月の4.1%から上昇、市場予想も4.1%だった。
FRBのパウエル議長はこの日の講演で「トランプ大統領の新たな関税措置は『予想以上に大きく』インフレや成長などへの影響も同様に予想以上となる公算が大きい」という見解を示した。
市場では、関税措置がインフレ高進と景気後退(≒スタグフレーション)を招くとの懸念が広がる。
ただ、これまでのところ、新たな政策の影響は経済データにまだほとんど反映されていないことから、市場参加者もFRBも金融政策(金利水準)を巡って概ね様子見の姿勢を取らざるを得ないのが現状。
この状況下、パウエルFRB議長は上記の通り不確実性が高まる中で「俄かな政策変更は難しい」ことを強調。一方で、FF金利先物市場では「FRBが5月にも利下げを再開し、年内あと4回(0.25%×4)の利下げをほぼ織り込む」。
債券市場は、インフレ懸念よりも景気後退懸念をより強く感じ取っているということか。
指標となる米10年債指標利回りは前週比0.042%上昇し4.320%。2年債は前日比0.069%上昇し4.023%。 この結果2年債と10年債の利回り格差は約0.008%縮小し、0.297%となった。
> 2年債利回り:3/31 3.870% ⇒ 4/4 3.644%(前週比 ▲0.226%低下)
>10年債利回り:3/31 4.205% ⇒ 4/4 4.000%(前週比 ▲0.205%低下)
=>10年-2年の利回り差は「+0.356%と前週(+0.335%)比でやや拡大」(下図)

前半のテクニカル分析では以下の結論としました。
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◆短期時間軸を中心に「底打ち」を示唆する要因が着実に増加していたが、先週の急落によって「下落サイクル復活」の可能性が大きく台頭
■下落圧力は中長期 (特に長期) 時間軸で存続しているため「下値模索が主流の展開」が想定される
□ただし『ボトムアウト』ではないにせよ、既述の通り目先では自律的速度調整による反発の可能性は否定できない
=>>>なお、他の金融市場の急激な変動率の高まりと共に、週間変動幅は高水準の継続が見込まれる
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一方で、先週明らかにされた「トランプ関税」が「予想されたよりも大幅」であり、かつ『路線変更の余地は全くないほど強硬』だったことで、米国のみならず「世界経済全体の成長に対する悪影響」を懸念する声が金融資本市場を席捲しています。
世界全体の景気急減速(⇒景気後退)懸念は、大幅な世界同時株安(急落・暴落)やリスク回避(質への逃避)からの債券買い(=金利急低下)を招来し、投資家/市場の不安心理を表すとされるVIX(恐怖指数)は
45超となり、2020年3~4月のコロナショック時以来の水準まで上昇しています。
こうした状況下、週末から今朝方にかけてのご質問は日米だけでなくグローバルな株式市場に関するものばかりでした。「こうした混沌とした状況がいつまで続くのか?」、「株価の底値はどの程度でいつ頃までか?」etc.。。。 大変申し訳なく思いますが、(あくまでも『私見』をご案内することはあっても)こうしたご質問に対する明瞭な回答を我々は持ち合わせていません。
<良きにつけ悪しきにつけ、今後数か月間(少なくとも『大統領の100日』の間)は、米国だけでなく「グローバルな金融資本市場の主導権をトランプ氏が握る」ことは想像に難くありません。:1/27付weekly report>
<トランプ大統領の就任からようやく6週間が経過しました。このweekly reportでも再三指摘しているように「トランンプ2.0相場は先行きが非常に見通しにくい」というのが正直な感想です。このような状況にあっては、我々機関投資家は『小まめにリバランスを行ってリスクをコントロールし、目標を超過した収益を実現化してゆく戦略が有効』ではないかと考えています。:3/3付weekly report>
このようにある程度の予想を前提にしつつも、過度な予断は持たず、時々の市場の動きから自らの投資/リスクコントロール戦略を策定して行くのが我々の資産運用における基本スタンスと言えるでしょう。
さて、話を先程のVIX指数に戻しますと、我々(機関投資家)はリスクをコントロールする指標としてこのVIX指数を参考にすることが結構多いといえます。このため、仮にVIX指数が一段と上昇すれば、売りが売りを呼ぶ展開(パニック売り)に発展する可能性も高く、こうしたステージへ移行することが懸念されるのです(ひょっとしたら、既に移行中かもしれませんが…)。
ただ、幸いなことに既述の<トランンプ2.0相場は先行きが非常に見通しにくい>・<今後数か月間(少なくとも『大統領の100日』の間)は、米国だけでなく「グローバルな金融資本市場の主導権をトランプ氏が握る」ことは想像に難くありません>といった状況に対し、我々は相当のリスクを感じていたため、年明け以降、リスクコントロール戦略の一環として「管理している年金運用資産を3月までに一旦全て売却し『今年度を全てキャッシュ』の状態で迎えました。したがって、先週来の金融市場の混乱/株式市場の暴落の悪影響は受けていません。(もちろん国内債券やヘッジ付外債等での収益も得られていませんが…、当基金の加入者の方々にはかなりの安心材料にはなっているようです)
昨年から始まった新NISAを始め、日本でも投資信託などを通して株式などリスク性資産に投資される方々がかなり増加した模様です。それでも、本邦家計部門の金融資産における株式等資産の保有比率は依然として2割にも遠く及ばないとされています。一方、米国では家計部門の株式保有比率は相対的に非常に高く、株式とミューチュアルファンドの合計で約5割にも上るとされています。
この状況を考えれば、現在足許で顕現化している株安(株式の急落)は日本よりも米国の方がはるかに「逆資産効果を通じて個人消費の大きな下押し要因」となることは明らかであり、トランプ関税が明らかになってからの「景気後退懸念の高まり⇒株価急落」は“むべなるかな”というところでしょう。
しかしながら、トランプ氏やベッセント財務長官などからは「関税は一度きりの価格調整であり、株の下落は一時的なもの。何かを正す(治す)ためには“薬”も必要だ」などと株式の暴落に近い下げもほとんど意に介さずとの(関税政策に対する強硬な)姿勢が見て取れます。
もちろん、トランプ政権は「今回の関税政策によって米国内外の景気がある程度減速し、株価が調整することは想定していた」のかもしれませんが「仮に(米国株の代表的指数である)S&P500が2割、3割と下落を重ね、調整が長期化した場合には、米国経済は相当深刻な景気後退に陥りかねない」と考えられます。そうなった場合に「トランプ政権が現在の(強硬な)姿勢を貫けるかどうか」には、大きな疑問が残ります。
なぜなら、「来年前半までには米国景気を力強く再浮上させ、よりよい経済状態で11月の中間選挙を迎える」という、トランプ政権が描いているであろう青写真にも狂いが生じるからです。おりしも、先週末には全米で60万人にも上る「トランプ政権・政策に対する抗議デモ」が行われた模様。株価は、市場参加者が全員で作りあげる“評価価値”ですから、お得意の「フェイクだ❢」は通用しません。
元々ビジネスマンでもあるトランプ氏も、いかに肝いりとはいえ実体経済に大きくマイナスをもたらしうる(批判/抗議の的となった)関税政策を強行に押し通すことは困難だと思われます。
そうした事態を避けるためにも、「実は今回打ち出した“相互関税”は、交渉次第で税率は引き下げられる余地がある」ことを示すことが最も効果的ではないかと考えられるのですが、はたして…。
「グローバルな金融資本市場の主導権をトランプ氏が握る」とした通り、それを決めることが出来るのは、おそらくトランプ大統領ただ一人ということでしょう。その意味でも「トランンプ2.0政策/相場は先行きが非常に見通しにくい」がゆえに、我々は過度に予断を持つことなく、その一挙手一投足を注視しつつ自らが管理する運用資産のリスクをコントロールしてゆくことが極めて肝要だと言えます。
繰り返しで大変恐縮ではありますが、今後とも「過度に予断を持つことなく」変化の兆しを見落とさぬ姿勢を継続して金融資本市場を引き続き注視してゆく所存です。
お知らせ:米国を中心とする「世界のインフレ・景気・金融政策」の現状分析、並びに短期を中心としたUSD円相場見通しについては、トレーダム(※)為替アンバサダーでもある安田佐和子氏のレポート(Weekly Report等)に詳細かつ非常に解りやすく解説されています。TRADOM会員の方々はサイト内で是非ご参照下さい。
<(※):ジーフィット株式会社は2024/10/1より「トレーダム株式会社/TRADOM Inc.」に社名を変更しました>
ようこそ、トレーダムコミュニティへ!