<テクニカル分析判断>
●短・中期:地合い悪化による下値模索中心の展開続くも、「底打ち接近」の兆候が再び台頭

■3/3週は「寄付150.70:146.94~151.30:終値148.02前週比▲2.58円の大幅円安)」の推移
◇先週は▲2.58円の大幅な円安となり、2週ぶりの大陰線を形成。2・3週前までしぶとく維持していた「139.59~158.88(19.29円)の上昇サイクルの50%戻し(149.235)」を終値として大幅に下回った。
この過程で、先週「抜けると加速する」と指摘した148.62をもアッサリと下回り、一時146.94と上記上昇サイクルの61.8%戻し(146.958)と同水準まで急落した。
◆また、以下の要因からも「中短期時間軸主導でテクニカルな地合いの悪化(下落サイクルの進展)」が依然として継続していることが示唆されている
・終値が引き続き21&52週移動平均線を下回った
・前週比での「上値の切り下がり」は7週連続で潰えたが、今度は3週連続の「下値の切下がり」にバトンタッチしている
・既述のサポート(149.235)を下抜けしたことで、次なる大きな下値目標は「2016/6/24の98.76~昨年7/3の161.94という超長期上昇サイクルの50%戻し(144.585)」とみているが、そこまで到達できるかは不透明
・なお、週間変動幅は4.36円と前週(2.43円)比で大幅に拡大した
<<=>>
◇一方、サポート/反発要因は引き続き少ないものの着実に増加
・RSIはさほどでもないが、一昨年12月&昨年7/8月と同様に「ストキャスティクスはいつ反発に転じてもおかしくない水準」に達しつつある
=>>>下落が加速していることにより、逆に『底打ちのタイミングはそう遠くはない』ことを示唆
・過去3年の推移をみると「直近高値からボトムアウトまでの中期下落サイクル」の形成期間は、2022年秋が14週、昨年7-8月が12週を要した。うち、前者は1週で8.5円/後者は同7.3円の超大陰線を含むが、今次サイクルでは最大でも同3.33円とややインパクトに欠ける(後掲➋週足チャート参照)
=>>>10週目に入る今次下落サイクルが過去2回同様12週超となる可能性はそう高くないと見ている

■他方、最も変化が生じやすい短期時間軸でも「下落に転じた21日MAを上値抵抗とした下落圧力の高まり(下落サイクルの進展)」が依然継続
=>>>既述の「149.235、148.62を下回り下落が加速した」こと
=>>>下落を続ける21日MAだけでなく、200日MA・52日MAも徐々に下落に転換
=>>>こうした状況から「テクニカルな地合いは引き続き悪化が進展中」と考えられる
□ただし、以下の諸点から「底打ち」の兆候も見て取れる(上図ご参照)
➊既述の通り先週末3/7には、一時146.94と急落するも、上昇サイクルの61.8%戻し(146.958)と同水準で反発に転じた
➋また、3/7の足型は実体に比べて下ヒゲが圧倒的に長く下落圧力の疲弊を示唆。足型は“首吊り線”に似ているが『首吊り線は一般的に上昇サイクルの最終盤に出現しピークの接近を警告』。一方、今回の下落サイクルで出現したものは“ハンマー”と呼ばれ『底(ボトム)の接近』を示唆するとされている(下降トレンドの終盤に形成されることが多いため)
➌昨年8月初にかけての明らかな「下落の過熱」状態には及ばないが、RSIは「3/7に一時的に30割れを示現し、売られ過ぎの状況」に達していた更に、昨年8月初並びに同12月初にかけて見られたように「ストキャスティクスはいつ反発に転じてもおかしくない水準」まで低下していた上、下落進展なら再び その状態に回帰すると見られる
以上より<今週のテクニカル分析の結論>は以下の通り
◆これまでも指摘してきた通り、短期時間軸主導で「テクニカルな地合いの悪化」は更に進展し、もとより強調を維持していた中長期にも確実に波及した
◇一方、下落要因との比較では「インパクトが弱い」ものの、短期的には「底打ち(近し)」を示唆する事象が増加しつつある
=>>>依然として「ボトムアウト(底打ち)」を明示できる段階ではないものの「底打ちが接近」との状況に到りつつあるとは言えよう
□下落圧力は引き続き高いため「下値模索の展開が継続」しやすいものの『ボトムアウトは着実に接近中』だと判断している
=>>>なお、他の金融市場の変動率も高まっていることから、週間変動幅は高水準の継続が見込まれる
□引き続き「過度に予断を持つことなく」変化の兆しを見落とさぬ姿勢を維持した上で、終値が以下の水準を「維持or突破」できるかどうかに注目している
① 152.13円=21週MA▲0.69%
② 151.29円=21週MA▲1.23%
③ 150.33円=21週MA▲1.86%
⑤ 146.58円=21週MA▲4.32%☆
⑥ 145.59円=21週MA▲4.95%
⑦ 144.69円=21週MA▲5.55%
>>>上記④(上方)と⑤(下方)が「抜けると加速する」と思われる水準
~以下では『短期・中期・長期の方向性』についての分析ポイント及び各時間軸での想定レンジをご案内します。(今号の分析は2025/3/7のNY市場終値をベースに実施) ~
<以下の用語補足:「MA」=移動平均線、「RSI」=(上下への過熱を示す)相対力指数>
➊日足チャート:「21MA±4.32%のバンド、52MA & 200MA」、RSI等
短期(1週間~1か月)の方向性:地合いの悪化は更に進展も、底打ちの兆候も台頭

〇上図は直上掲載分を再掲。コメントについては既掲のものをご参照下さい
➊既述の通り先週末3/7には、一時146.94と急落するも、上昇サイクルの61.8%戻し(146.958)と同水準で反発に転じた
➋また、3/7の足型は実体に比べて下ヒゲが圧倒的に長く下落圧力の疲弊を示唆。足型は“首吊り線”に似ているが『首吊り線は一般的に上昇サイクルの最終盤に出現しピークの接近を警告』。一方、今回の下落サイクルで出現したものは“ハンマー”と呼ばれ『底(ボトム)の接近』を示唆するとされている(下降トレンドの終盤に形成されることが多いため)
>>> 想定レンジ=今週:146.55~150.30、今後1ヶ月:144.60~153.30=
➋週足チャート:「21MA±4.32%/±7.41%/±9.87%のバンド & 52MA」、RSI等
中期(1か月~半年程度)の方向性:地合いは悪化進展も反発の可能性が増幅中

〇上図は冒頭掲載分を期間3年に延長したもの (コメントは既掲のものもご参照)
・過去3年の推移をみると「直近高値からボトムアウトまでの中期下落サイクル」の形成期間は、2022年秋が14週、昨年7-8月が12週を要した。うち、前者は1週で8.5円/後者は同7.3円の超大陰線を含むが、今次サイクルでは最大でも同3.33円とインパクトに欠ける
=>>>10週目に入る今次下落サイクルが過去2回同様12週超となる可能性はそう高くないと見ている
>>>今後6か月間の想定レンジ = 145.65~157.95⇒144.60~156.45=
➌月足チャート:「20MA±18.0%のバンド」「60MA±30.0%のバンド」、RSIを付記
長期(半年超~1年程度)の方向性:3月は20MA未満に終始し、中短期からの地合い悪化が波及

■4カ月連続で上値を切り上げ『超長期上昇トレンドの継続』を確認した1月から一転、短期時間軸からの地合い悪化が波及し、(超)長期上昇トレンドに懸念が台頭
■注目された3月は月初から20ヶ月MA未満の水準に終始している上、先月まで底打ち/上昇サインが点灯していたストキャスティクスにもデッドクロスが出来
>>> 今後1年間の想定レンジ = 145.65~164.55 ⇒144.60~161.70 =
<ファンダメンタルズ分析判断>
◆米国:景気指標悪化からリスク回避優勢も金利上昇で株式は大幅続落
◆日本:日銀のタカ派姿勢に金利上昇が続くも、株式は小幅に反発
◆USD円:米金利は長短共に上昇も、USD指数・USD円共に大幅続落

◇米債利回り:10年国債利回りは上昇。パウエルFRB議長がこの日の講演で「利下げ時期の判断に忍耐強くなる」可能性を示唆。パウエル議長は「米国経済は依然堅調を維持しており、トランプ新政権の政策が経済にどのような影響を与えるかがより明確になるまでFRBは利下げを急ぐ必要はない」との見解を示した。
指標となる10年債利回りはこの日0.023%上昇し4.305%。週間では約0.1%と僅かに上昇。
また、2年債利回りは同0.041%上昇して4.000%で、2年債と10年債の利回り差は0.305%に拡大。
一方、この日発表の2月雇用統計は「今年の利下げ幅に対する市場の期待」を押し上げ、序盤の取引ではむしろ利回りは低下していたが、先週までの勢いはかなり沈静化。
ただし、昨今軒並み続く冴えない景気指標の発表を受け、金利先物市場では「今年の利下げ幅を0.69%と見込んでいる(織り込んでいる)」模様。
> 2年債利回り:2/28 3.987% ⇒ 3/7 4.000%(前週比 +0.013%低下)
>10年債利回り:2/28 4.203% ⇒ 3/7 4.305%(前週比 +0.102%低下)
=>10年-2年の利回り差は「+0.305%と前週(+0.216%)比で拡大」(下図)

前半のテクニカル分析では「地合いの悪化進展による下値模索中心の展開が続く」一方で、「底打ち接近の兆候も徐々に増幅している」との結論としました。
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◆これまでも指摘してきた通り、短期時間軸主導で「テクニカルな地合いの悪化」は更に進展し、強調を維持していた中長期にも確実に波及した
◇一方、下落要因との比較では「インパクトが弱い」ものの、中短期的には「底打ち(近し)」を示唆する事象が増加しつつある
□下落圧力は引き続き高いため「下値模索の展開が継続」しやすいものの『ボトムアウトは着実に接近中』だと判断している
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一方で、(このところ毎週お伝えしているように)ファンダメンタルズについては以下を中心に、USD円の下落に繋がる要因の評価が依然として高いようです。
◎米景気に対する悲観的見方の高まり:総じて事前予想と比較して軟調な米経済指標が圧倒的に多い
⇒この悲観的見方を前提としたFRBの利下げ織り込みが加速し、米債利回りは昨秋以来の低水準へ低下
<<=>>「米景気は依然堅調を維持。現状で利下げを急ぐ必要なし」(パウエルFRB議長)
◎『タカ派色を強める日銀』:時に市場の織り込みペースの加速を牽制しつつも全く後退せず
⇒「矢継ぎ早に“追加利上げ観測”を織り込む国内債券市場(10年国債利回りの急上昇)」
<<=>>昨今の過熱気味の状況を沈静化(牽制?)する発言も出始め、国債利回りの上昇ペースはやや鈍化
このように「➊米国の金利低下 & ➋日本の金利上昇」の相乗効果によってUSD円は下落サイクルを進展中ですが、既述の通り、その度合いがやや鈍化しつつある兆候も散見され始めました。
しかし、少なくとも現状の米国における金融緩和的な状況は、USD指数にとっては逆風となる一方で、(米国)株式相場にとってフレンドリーだと考えられます。にもかかわらず、先週も我々の見解をご案内したように、足許の株価パフォーマンスはかなり悪化してきています。
このためか、週末までに頂いた幾つかのご質問は全て日米の株式市場見通しに関するものでした。よって、今週もこの点を中心に私見をご案内します。
先週の東京株式市場では、TOPIXが前週末比+1.0%と反発する一方、日経平均株価は▲0.7%と3週続落となりました。他方、海外の株式市場では(米国市場の3週(大幅)続落の影響から)MSCIコクサイが前週末比▲2.6%と3週続落、一方MSCI新興国市場は+2.3%と反発しました。
先週もご案内しましたが、今般の下落の震源地である米国株式市場の主要指標を見てみますと、ナスダック総合指数は昨年12月16日に付けた最高値から(先週のボトムだった3/6)木曜日の時点で▲10.4%、S&P500指数は2月19日に付けた最高値から▲6.6%と、記憶に新しい昨年7月から8月上旬にかけての株価暴落時以来の、調整局面となっています。
複数のご質問に共通していた「今後の見通し」としては『トランプ2.0政権の政策次第』とならざるを得ないと考えます。ベースとなる米国景気については、先週発表されたISM非製造業景況指数や雇用統計が示唆した通り「依然として底堅さを維持している」と我々は考えています。
また、投資環境としても、既述の通り「緩やかな景気拡大と金利安定の組み合わせ」となっており、リスク資産である株式にとっては、必ずしも悪い状態ではありません。
しかし、トランプ2.0政権の関税政策を巡る不確実性の高まりによって、株式市場のみならず金融市場全体でリスク抑制の動きが強まっているようです。
一方、報道によればトランプ大統領は先週3/6の木曜日に“(個別の)金融市場など見てもいない”と発言していたようですが、不動産事業を中心に莫大な収益を生み出していた方の発言とは到底思えません。仮に「大統領としての職務があまりにも多忙過ぎて、株価の動向などチェックできない」ということだったとしても、(米国の)株式市場が下落を続ければ、反応も変わってくるはずです。
具体的には、米S&P500指数が直近高値から10%を超える下落となれば、株式市場では「本格的な調整局面入り」とみなされ、トランプ政権に対する批判がますます高まることが予想されます。また、(直近の推定では約40%とされるほど)国民の株式保有比率が高い米国においては、株価下落は逆資産効果を通じて、景気の下押し圧力となります。このため、いずれかの時点で、関税政策の一時停止や先送りなど、何らかの対応を取ってくることは充分あり得るでしょう。
それは、S&P500指数が10%下落した時点なのか、あるいは15%か、はたまた弱気相場入りとされる20%超の下落時となるのか、(そのいずれにも達していない)現時点で決め打ちすることはできません。
そのような状況にあって、我々を含めた多くの投資家は、株式の組入れ比率を落としながらもある程度は維持しつつ、ポートフォリオの中身を保守的なものに組み替えながら、金融市場の乱高下に備えているのだと思われます。
このような状況にあっては、日本株に関してあえて言及すれば <成長のドライバーが希薄で自律的上昇が困難な「日本株のキャッチアップラリー」は、米景気のソフトランディングを前提としたFRBの利下げ期待が再び高まり『グローバル景気に敏感な日本株』が見直される時を我慢強く待つことになりそうです。>(先週のweekly report当欄より)
既述の通り、米国景気の先行きに対する不安も高まっている昨今、主要な経済指標への注目度も高まらざるを得ない状況です。とりわけ、今週の米・独2月のCPI並びに・米2月のPPIなど主要な物価指数の発表には一段の刮目が必要となるでしょう。
最後に、改めてUSD円相場に対する個人的な見解を一つだけご案内します。 「CFTCが発表した投機筋による円のネット・ポジション動向は、3月4日週時点で13万3,651枚のロング(買い持ち)となり、前週の9万5,980枚に続き5週連続でのロングとなった」ようです。また、「この13万3,651枚のロング(買い持ち)は、過去最高のロングを更新」とのことでした。
このニュースをご覧になって「より円高USD安が進む」と思われる方々も多いでしょうが、我々はこの「過去最高水準更新」の文言には注意が必要だと考えています。なぜなら「相場の反転は必ず“トップ”もしくは“ボトム”から始まる」からです。すなわち、この場合で言えば「円の買い持ち(円USDレート)はピークアウト(USD円レートはボトムアウト=底打ち)に向かっている」ということです。
また、2023/10/30付のweekly reportでは以下の相場格言をご紹介しました。
<「強気相場は悲観の中で生まれ、懐疑と共に育ち、
楽観の中で天井をつけ、幸福感と共に息絶える」(筆者意訳)>
これは「市場参加者が概ねUSD円にかなり強気になっているので相場のピークアウトが近いのではないか」という趣旨のレポートの冒頭の部分を抜き出したものです。実際、この時は「投機筋による円のネット・ポジションは過去最高」に近い状態でしたし、このレポートの2週後に当たる11/13に「日足で6連騰して2022年10月の高値 (151.95)に迫る151.91を記録」した翌日(11/14)から急落が始まり、12/28の140.25までの「7週間/11.66円の下落サイクル」を形成しています。
今回は当時と逆向きではありますが、この時に近い“匂い”を感じています。
また、時々ご紹介している「TRADOM為替アンバサダー/安田佐和子さんの今週のweekly report」でも同様のニュースを取り上げておられましたので、その部分を抜き出して以下ご案内します。
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CFTCが発表した投機筋による円のネット・ポジション動向は、3月4日週時点で13万3,651枚と、前週の9万5,980枚に続き5週連続でロング。過去最高のロングを記録した。それでも、ドル円は149円台(該当週)だったことを踏まえれば、投機筋のポジションが為替動向を必ずしも表すわけではないとはいえ、ショート反転での円安マグニチュードの大きさが、将来的にドル円に反映されるリスクに留意しておくべきだろう。
チャート:投機筋の円のネット・ポジション、5週連続で拡大し過去最大に

引き続き「過度に予断を持つことなく」変化の兆しを見落とさぬ姿勢を継続して金融資本市場を注視してゆく所存です。
お知らせ:今週もご紹介しましたが、米国を中心とする「世界のインフレ・景気・金融政策」の現状分析、並びに短期を中心としたUSD円相場見通しについては、トレーダム(※)為替アンバサダーでもある安田佐和子氏のレポート(Weekly Report等)に詳細かつ非常に解りやすく解説されています。TRADOM会員の方々はサイト内で是非ご参照下さい。
<(※):ジーフィット株式会社は2024/10/1より「トレーダム株式会社/TRADOM Inc.」に社名を変更しました>
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