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  • Weekly Report(3/3):自律反発(底打ちの兆し)は見られたが、地合い悪化の収束までは確認できず
    吉岡 豪麿
    この記事の著者
    トレーダム 取締役CAO

    国内大手金融機関の外国為替取引部門で外国為替、外国証券等のディーラーとして20年、海外金融機関でアセットマネージャーとして15年以上の経験を有する為替のエキスパート。貿易企業の経営者を経て、企業年金基金の資産運用を担当。2021年1月よりCAOとして投資助言部門を担当。

    マーケット分析

    <テクニカル分析判断>   

    ●短・中期:「底打ち接近」の兆候台頭も、下値模索中心の地合いからの脱却までは未確認

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    ■2/24週は「寄付149.25:148.56~150.99:終値150.60前週比+1.32円の円安)」の推移

    ◇先週+1.32円の円安となり、2週ぶりの陽線を形成。「139.59~158.88(19.29円)の上昇サイクルの50%戻し(149.235)を終値として2週連続で上回り、先週指摘した『底打ちの兆し』が見られたものの、依然として「自律反発」の範疇を超えるものではなかった

    ◆また、以下の要因から「中短期時間軸主導でテクニカルな地合いの悪化(下落サイクルの進展)」が依然として継続していることを示唆

    ・終値が引き続き21&52週移動平均線を下回った

    ・前週比での「上値の切り下がり」が7週連続に延長

    =>>>上記の「7週中5週は4週連続を含む陰線」

    =>>>4週連続陰線は「161.94円の高値示現(@2024/7/3)の直後、7/8週~8/5週まで4週連続に亘る急落」を記録して以来29週ぶりの事象

    =>>>「上値/下値の連続切下がり」は多くても5・6週止まり。先週までの「7週連続の上値切下がり」は「2018/1/15週~3/5週までの8週連続」を記録して以来約7年ぶりの事象

    ・なお、週間変動幅は2.43円と前週(3.46円)比で縮小した

    <<=>>

    一方、(目立った)サポート/反発要因は引き続き少ない

    ・RSIはさほどでもないが、上記(一昨年12月&昨年7/8月)と同様に「ストキャスティクスはいつ反発に転じてもおかしくない水準」に達しつつある

    139.59~158.88(19.29円)の上昇サイクル」の50%戻し(149.235)を2週連続終値で上回っており、今後「139.59~161.94(22.35円)の上昇サイクル」の50%戻し(150.765)を終値で回復できるようなら、ボトムアウトの確度も高まろう

    2

    他方、最も変化が生じやすい短期時間軸では「下落に転じた21日MAを上値抵抗とした下落圧力の高まり(下落サイクルの進展)」が依然継続

    =>>>下落を続ける21日MAだけでなく、200日MA・52日MAも徐々に下落に転換

    =>>>こうした状況から「テクニカルな地合いは引き続き悪化が進展中」と考えられる

    <<=>>

    ただし、以下の諸点から「底打ち」の兆候も感じられなくはない(上図ご参照)

    ➊下落圧力は引き続き高いが、終値ベースでは「昨年9/16の安値(139.59)と本年1/10の高値(158.88)の半値(50149.235)」超の水準を何とか維持。今後「139.59~161.94(22.35円)の上昇サイクル」の50%戻し(150.765)を終値で回復できるようなら、ボトムアウトの確度が高まる

    昨年8月初並びに同12月初にかけて見られたように「ストキャスティクスはいつ反発に転じてもおかしくない水準」まで低下していた

    ➌昨年8月初にかけての明らかな「下落の過熱」状態には及ばないが、RSIは「2/25に一時的に30割れを示現し、売られ過ぎの状況」に達していた

    以上より<今週のテクニカル分析の結論>は以下の通り

    実に約7年ぶりとなる先週までの「7週連続の上値切下がり」や、29週ぶりとなる4週連続陰線が示唆していたように、短期時間軸主導で「テクニカルな地合いの悪化」は更に進展し、もとより強調を維持していた中長期にも波及した

    ◇一方、下落要因との比較では依然として「インパクトが弱い」ものの、短期的には「底打ち(近し)」を示唆する事象が徐々に増加しつつある

    =>>>依然として「ボトムアウト(底打ち)」を明示できる段階ではないものの「底打ちが接近」との状況に到りつつあるとは言えよう

    □下落圧力は引き続き高いため「下値模索の展開が継続」しやすいものの(先週も自律反発の範疇を大きく超えることはできなかったが)ボトムアウトは着実に接近中であると判断している

    =>>>なお、他の金融市場の変動率も高まっていることから、週間変動幅は比較的高水準の継続が見込まれる

    引き続き過度に予断を持つことなく」変化の兆しを見落とさぬ姿勢維持した上で、終値が以下の水準を「維持or突破」できるかどうかに注目している

    ① 154.44=21週MA+0.69%

    ② 153.36=21週MA

    ③ 151.47=21週MA▲1.23%

    149.58円=21週MA▲2.46%

    148.62円=21週MA▲3.09%

    147.72円=21週MA▲3.69%

    ⑦ 146.73円=21週MA▲4.32%

    >>>上記③(上方)⑤(下方)が「抜けると加速する」と思われる水準

    ~以下では『短期・中期・長期の方向性』についての分析ポイント及び各時間軸での想定レンジをご案内します。(今号の分析は2025/2/28のNY市場終値をベースに実施) ~

    以下の用語補足:「MA」=移動平均線、「RSI」=(上下への過熱を示す)相対力指数

    日足チャート:「21MA±4.32%のバンド、52MA & 200MA」、RSI等  

    短期(1週間~1か月)の方向性:地合い悪化からの脱却は未確認も底打ちの兆候台頭

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    上図は直上掲載分を倍の13ヶ月に拡大したもの。コメントについては既掲のものもご参照下さい

    下落圧力は引き続き高いが、終値ベースでは「昨年9/16の安値(139.59)と本年1/10の高値(158.88)の半値(50149.235)」超の水準を何とか維持。今後「139.59~161.94(22.35円)の上昇サイクル」の50%戻し(150.765)を終値で回復できるようなら、ボトムアウトの確度が高まる

    昨年8月初並びに同12月初にかけて見られたように「ストキャスティクスはいつ反発に転じてもおかしくない水準」まで低下していた

    >>> 想定レンジ=今週:148.65~153.30、今後1ヶ月145.65~155.25

    週足チャート:「21MA±4.32%/±7.41%/±9.87%のバンド & 52MA」、RSI等 

    中期(1か月~半年程度)の方向性:地合いは悪化継続も反発の可能性が漸増

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    上図は冒頭掲載分を期間3年に延長したもの (コメントは既掲のものもご参照)

    RSIはさほどでもないが、一昨年12月&昨年7/8月と同様に「ストキャスティクスはいつ反発に転じてもおかしくない水準」に達しつつある

    下落圧力は引き続き高いが、下値メドを考える上で図中「“(A)⇒(B)上昇波”における半値(50%:144.585)水準の維持の可否」は極めて重要

    >>>今後6か月間の想定レンジ = 145.65~157.95⇒145.65~157.95

    月足チャート:「20MA±18.0%のバンド」「60MA±30.0%のバンド」、RSIを付記  

    長期(半年超~1年程度)の方向性:短期からの地合い悪化が波及も、20ヶ月MAの水準は維持

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    ■4カ月連続で上値を切り上げ『超長期上昇トレンドの継続』を確認した1月から一転、短期時間軸からの地合い悪化が波及し、(超)長期上昇トレンドにやや懸念が台頭

    □しかし、2月終値では20ヶ月MA超の水準を何とか維持。3月の推移にも引き続き注目(ストキャスティクスには底打ち/上昇サインが点灯していたが…)

    >>> 今後1年間の想定レンジ = 148.65~165.90 ⇒145.65~164.55 =

    <ファンダメンタルズ分析判断>

    先週の日米金融市場の変化(下表右端)

    米国:景気指標悪化からリスク回避継続。金利低下、株式は大幅続落

    日本:日銀のタカ派姿勢に金利強含み、+米国株安に株式は大幅続落

    USD円:米金利は長短共に低下も、USD指数・USD円共に小幅に反発

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    米債利回り:米債利回りは数カ月ぶりの水準まで低下。注目の個人消費支出(PCE)価格指数はほぼ市場の事前予想通りとなったものの、「ホワイトハウスで開かれたトランプ米大統領とウクライナのゼレンスキー大統領の会談が決裂したこと」を受けリスク回避の動きが強まり、10年債利回りは昨年12/11以来、2年債は同10/21以来の低水準に低下。

    昨今軒並み続いている冴えない景気指標の発表を受け、金利先物市場が織り込む「FRBによる6月の利下げ(0.25%)確率」は約80%まで上昇(3月は依然『見送り(現状維持)』予想が圧倒的)

    なお、2年債と10年債の利回り格差は0.216%と前週比で僅かに縮小。

    > 2年債利回り:2/21  4.200% ⇒ 2/28  3.987%(前週比 ▲0.213%低下)

    >10年債利回り:2/21  4.431% ⇒ 2/28  4.203%(前週比 ▲0.228%低下)

    =>10年-2年の利回り差は「+0.216%と前週(+0.231%)比で僅かに縮小」(下図)

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    前半のテクニカル分析では、先週指摘した『底打ちの兆し』が見られたものの、依然として「自律反発」の範疇を超えるほどのものではなかったとの判断から、「短期主導の地合いの悪化が依然進行しており、当面は下値模索の可能性を排除できない」との結論となりました。

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    実に約7年ぶりとなる先週までの「7週連続の上値切下がり」や、29週ぶりとなる4週連続陰線が示唆していたように、短期時間軸主導で「テクニカルな地合いの悪化」は更に進展し、もとより強調を維持していた中長期にも波及した

    ◇一方、下落要因との比較では依然として「インパクトが弱い」ものの、短期的には「底打ち(近し)」を示唆する事象が徐々に増加しつつある

    =>>>依然として「ボトムアウト(底打ち)」を明示できる段階ではないものの「底打ちが接近」との状況に到りつつあるとは言えよう

    □下落圧力は引き続き高いため「下値模索の展開が継続」しやすいものの(先週も自律反発の範疇を大きく超えることはできなかったが)ボトムアウトは着実に接近中であると判断している

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    一方で、(このところ毎週お伝えしているように)ファンダメンタルズについては以下を中心に、USD円の下落に繋がる要因の評価がますます高まりつつあるようです。

    総じて事前予想と比較して軟調な米経済指標が圧倒的に多い

    ⇒FRBの利下げ織り込みが進展し米債利回りは昨秋以来の低水準へ低下中

    ◎ベッセント財務長官「注視しているのはFRBの政策金利ではなく10年債利回り」と、インフレ再燃や財政拡大懸念による長期金利上昇を警戒する姿勢を強調長期金利上昇に楔を打ち込んだことでトランプ2.0の発足前後から始まった「米10年債利回りとこれに伴うUSD指数の低下傾向」に拍車

    ◎『タカ派色を強める日銀』と「矢継ぎ早の“追加利上げ観測”を織り込む国内債券市場(10年国債利回りの急上昇)」

    ⇒昨今の過熱気味の状況を沈静化させる発言もあり、国債利回りの上昇ペースはやや鈍化

    こうした米国の金融緩和的な状況は、USD指数にとっては逆風となる一方で、(米国)株式相場にとってフレンドリーだと考えられます。しかしながら、足許の株価パフォーマンスはかなり異なるものとなってきています。(週末に寄せられたご質問『今後の日本株は?』への回答も兼ねています

    実際、主要株価指数の本年初来2ヵ月間(~2/28)のパフォーマンスは以下の通りです。

    〇全世界株価指数(MSCI ACWI):+2.6%  以下内訳となる主要株価指数

    ◇米国のS&P500指数 : +1.2%

    ■日本の日経平均株価 :▲6.9%

    <⇔>

    ◎ドイツのDAX指数  :+13.3%

    ◎フランスのCAC指数 :+9.9%

    ◎イギリスFT100指数 :+7.8% 以上、ザックリではありますが「欧州株のアウトパフォーマンスがかなり目立つ状況」です。

    その理由としては、主として以下の二点が挙げられます。

    ➊強力な利下げ期待

    ==>米FRBが「当面利下げ見送り」の方針を示しているのに対し、欧州ではECB(欧州中央銀行)やBOE(イングランド銀行)が利下げ継続姿勢を示唆しており、株式市場のサポート要因となっている

    ➋金融市場のリスク選好度合いの低下≒安全志向の高まり

    ==>トランプ政権の関税政策などによって世界経済の見通しを巡る不確実性が非常に高まる中(景気に敏感な業種や高PER銘柄を避けて)景気動向に収益が左右されにくいディフェンシブ業種や、低PER銘柄が選好されている

    こう考えると、主要国で唯一「利上げ(≒金融正常化?)」路線を突き進む日本株のパフォーマンスがマイナスを余儀なくされていることも頷けます。また、従前より指摘している通り、以下の認識を軸にして投資戦略を考えている我々のスタンスにも変化はありません。

    <一方、景気回復のペースが加速しない中で(輸入物価上昇を主因とした)インフレに呻吟するわが国では「追加利上げ(金融政策の正常化)」を進展せねばならない状況です。

    勿論、相対比較による「出遅れ感」からある程度の連れ高は期待出来るかもしれませんが、本邦の株式市場が主体的・自律的に上昇することは現状ではかなり難しいと思われます。

    1/20付 当Weekly Reportより)

    もっとも、トランプ大統領は先週末、EUからの全輸入品に25%の関税をかける考えを明らかにしました。今後、その影響が欧州株式市場に出てくる(波乱の)可能性はあるでしょう。

    また、ウクライナ問題についても、週末の米国・ウクライナ首脳会談を踏まえて、改めてその帰趨を織り込み直す必要が生じているといえます。

    なお、国内株価の抑制要因としてだけでなく、USD円の下落に繋がる要因として挙げた「日銀の追加利上げ観測の高まり」について少し補足を加えたいと思います。

    先週ご案内の通り「日銀の追加利上げ観測の高まり」を受け、日本10年国債利回りは2/20に一時、2009年11月以来の高水準となる1.46%台まで上昇しました。

    その後、植田総裁が21日の国会答弁で「長期金利が急激に上昇する例外的な状況では、機動的に国債買い入れの増額を実施する」と発言されていました。これは、追加利上げ観測の異常な高まりを沈静化させる狙いがあったと我々はみていますが、昨年7月の国債買い入れ減額を決定した際の声明文で謳われた内容と全く同じで、新たな対応措置が打ち出されたものではありません。

    ただし、(上述の通り)市場では「急ピッチの金利上昇に対するけん制」と受け止められ、週末にかけて本邦10年債利回りは上昇一服となっています。

    昨今、日銀からタカ派的なメッセージが相次いでいる背景には、かねて指摘の以下の狙いがあると思われます。

    将来、利下げが必要になるときに備え、出来るだけ政策金利を高い水準にまで引き上げておきたいとの意向

    利上げの打ち止め感が出て円売りが再び膨らむ事態を避けたいとの意向

    従って、現状において「日銀がハト派姿勢に転じること」は期待し難く今後も追加利上げ観測が燻り続けることになります。これは当然ながら(既述の)「日本株にとっての重石」となるでしょう。

    成長のドライバーが希薄で自律的上昇が困難な「日本株のキャッチアップラリー」は、米景気のソフトランディングを前提としたFRBの利下げ期待が再び高まり『グローバル景気に敏感な日本株』が見直される時を我慢強く待つことになりそうです。

    トランプ大統領の就任からようやく6週間が経過しました。このweekly reportでも再三指摘しているように「トランンプ2.0相場は先行きが非常に見通しにくい」というのが正直な感想です。このような状況にあっては、我々機関投資家は『小まめにリバランスを行ってリスクをコントロールし、目標を超過した収益を実現化してゆく戦略が有効』ではないかと考えています。

    既述の通り、米国景気の先行きに対する不安も高まっている昨今、主要な経済指標への注目度も高まらざるを得ない状況です。とりわけ、今週のISM製造業景況感指数・非製造業景況感指数の他、週末3/7の米雇用統計の発表には一段の刮目が必要となるでしょう。

    引き続き「過度に予断を持つことなく」変化の兆しを見落とさぬ姿勢を継続して金融資本市場を注視してまいる所存です。

    お知らせ:米国を中心とする「世界のインフレ・景気・金融政策」の現状分析、並びに短期を中心としたUSD円相場見通しについては、トレーダム(※)為替アンバサダーでもある安田佐和子氏のレポート(Weekly Report等)に詳細かつ非常に解りやすく解説されています。TRADOM会員の方々はサイト内で是非ご参照下さい。

    <(※):ジーフィット株式会社は2024/10/1より「トレーダム株式会社/TRADOM Inc.」に社名を変更しました>

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