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  • Weekly Report(1/6):懸念材料を抱えつつも強調地合いに支えられた「上昇トレンド」を維持・継続
    吉岡 豪麿
    この記事の著者
    トレーダム 取締役CAO

    国内大手金融機関の外国為替取引部門で外国為替、外国証券等のディーラーとして20年、海外金融機関でアセットマネージャーとして15年以上の経験を有する為替のエキスパート。貿易企業の経営者を経て、企業年金基金の資産運用を担当。2021年1月よりCAOとして投資助言部門を担当。

    マーケット分析

    <テクニカル分析判断>   

    ●短・中期:地合いは非常に強く「上昇トレンド」を維持も、サイクル的な懸念要素が若干台頭

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    □12/23週は「寄付156.30:156.30~158.10:終値157.89前週比+1.74円の円安)」の推移

    ■12/30週は「寄付157.77:156.03~158.07:終値157.29前週比▲0.60円の円高)」の推移

    上記の通り、4週連続した陽線から先週は僅かながらも5週ぶりの陰線に転じた

    4週連続の陽線により、一時昨年7月中旬以来の158円台に突入する局面もあったものの、158.25~55にある強い上値抵抗帯を前に更なる上昇の加速とはならず

    それでも「21週MAという重要な下値支持ライン」の水準超を終値で維持し続けていた点は評価

    <図中:黒い点線黒丸➋の部分。本年2月にもこの水準で反転上昇へ(同➊の部分)>

    =>>>7週以上の下落トレンドを経て底打ち/反発したパターンでは「約8週の上昇で一旦ピークアウト」するものの、数週の調整を経て「再び上昇サイクル(上昇トレンド)へ復帰」するケースが多い

    =>>>特に今年1・2月(上図➊)後の調整ではRSI/ストキャスティクスの反落は軽微に収まって次の上昇サイクルに移行。また、21週MA+7.41%ラインでピークアウトした➊’も同様の推移

    上記2点との類似性をもつ今回の➋は『21週MAという重要な下値支持準超を終値ベースで維持し続けたこと』と併せ、11/25週の急落による失地を完全に挽回して余りある水準へ上昇

    因みに、12/9,16週の急上昇によって、我々の想定より1週早く「21週MAは底打ち/反発に転じ直近2週に続き今週以降の上昇も加速する見込み

    ◇RSIは60台へ上昇したものの、依然「上昇余地が残存」ストキャスティクスも2週前から「再度の上方トライに転じた」可能性が極めて高い

    また、昨年4/29には一旦160円台定着を阻まれた「21週MA+7.41%」が接近していたが、既述の通り21週MAは「2週前から急上昇に転じた」ため、この水準も同時に上昇。これに伴い(テクニカルな)上昇余地は更に拡大」していると見られる

    <<=>>ただし、4連続陽線終息後の推移には注意が必要(後掲週足チャートでも補足)

    >>>なお、11/25週の5.25円から12/16週の4.77円までかなりの高水準を維持していた週間変動幅は「ホリディシーズンの薄商い」も手伝い直近2週とも2円前後に大きく縮小した

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    <<<上図は冒頭を2倍の期間に拡大し、3連続・4連続の陽線をマークしたもの>>>

    2023年以降の陽線は「3連続で終息=ほぼ一旦“小休止”」・「4連続で終息一旦“休止”が大半」

    =>>>しかし、4連続で終息した場合は『昨年7/8週からの2か月超に及ぶ急落』の起点となった例あり

    =>>>今回の一旦“休止”が軽微なものに止まるのかどうか今週の推移(展開)は要注目

    <<=>>ただしRSIやストャスティクスの水準/形状からは昨年7月のような『上昇の過熱』は感じられない(むしろ上昇余地ありか?)

    =>>>また、ここ4週ほどの21週移動平均線(MA)の急反発傾向から、52週MAとのゴールデン・クロスも着実に接近しつつある

    上図はUSD高円安が急加速した2022年3月以降を表示。以降、2022年4Qと2024年3Qに急激な「USD高修正局面(≒中期下落トレンド)」を交えてはいるものの、52週(≒1年間)移動平均線(太い青線)は右肩上がりの形状を維持しており、現在も長期上昇トレンドは継続

    =>>>ただ、その傾き(上昇ペース)は「次第に緩慢」になってきている点には要注意

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    他方、短期時間軸でも急落に結び付くような予兆は観測されない

    =>>>(チャート下部のRSI/ストキャスティクス部分ご参照)ここ2週の自律調整的保合いによって、(10月にも見られたように)高水準を維持し続ける可能性高まる。現在の2指数の水準だけで考えても、少なくとも短期的な(上昇の)過熱感が高まっている(≒ピークアウトが近い)とは言い難い

    =>>>また、直近2週の保合いは上記の「上昇の過熱」状態を緩和する『自律的な速度調整』に該当するものと認識でき、今回の上昇サイクルは『秩序だった変化(上昇)の範疇にある』と考えられる

    なお、週足と同様、日足でも「急上昇に転じていた21日MAが昨年末に52日MAとのゴールデン・クロスを示現」。これにより『21MA>52MA>200MA』の上昇トレンドパターンが形成された

    以上から導き出された<今週のテクニカル分析の結論>は以下の通り

    ◆直近2週の保合いによって、4週連続陽線後の調整が若干の懸念点に

    しかし、テクニカルな地合いは大きく強調へ反転しており「上昇トレンド」の継続を改めて確認

    =>>>折に触れて見られるように、秩序だった上昇サイクルの中で自律的な速度調整を交える可能性はあろうが、今年のUSD円相場の方向感は基本的に上方だと考えられる

    =>>>他方、ホリディシーズン終了に伴い、週間変動幅は再び拡大して行くことが見込まれる

    引き続き過度に予断を持つことなく」変化の兆しを見落とさぬ姿勢を継続した上で、終値が以下の水準を「突破or維持」できるかどうかに注目

    ① 159.60=21週MA +6.24%

    ② 158.60=21週MA +5.55%

    ③ 157.80=21週MA +4.95

    156.75円=21週MA +4.32%

    155.85円=21週MA +3.69%

    154.95円=21週MA +3.09%

    ⑦ 153.90円=21週MA +2.46%

    >>>上記②(上方)⑤(下方)抜けると加速すると思われる水準

    ~以下では『短期・中期・長期の方向性』についての分析ポイント及び各時間軸での想定レンジをご案内します。(今号の分析は2025/1/3のNY市場終値をベースに実施) ~

    以下の用語補足:「MA」=移動平均線、「RSI」=(上下への過熱を示す)相対力指数

    日足チャート:「21MA±4.32%のバンド、52MA & 200MA」、RSI等  

    短期(1週間~1か月)の方向性:若干の懸念はあるもテクニカル地合いは強調

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    上図は直上の期間を1年に拡大。コメントについては既掲のものをご参照下さい

    秩序だった上昇サイクルの中で自律的な速度調整を交える可能性はあろうが今年も方向感は基本的に上方だと考えられる

    >>> 想定レンジ=今週:154.95~159.60今後1ヶ月:152.10~161.40

    週足チャート:「21MA±4.32%/±7.41%/±9.87%のバンド & 52MA」、RSI等 

    中期(1か月~半年程度)の方向性:若干の懸念残るも強い地合いの上昇トレンド継続

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    上図は冒頭のものを再掲。コメントについても既掲のものをご参照下さい

    ◆直近2週の保合いによって、4週連続陽線後の調整が若干の懸念点に

    しかし、テクニカルな地合いは大きく強調へ反転しており「上昇トレンド」の継続を改めて確認

    >>>今後6か月間の想定レンジ = 149.25~165.75⇒149.25~165.15

    月足チャート:「20MA±18.0%のバンド」「60MA±30.0%のバンド」、RSIを付記  

    長期(半年超~1年程度)の方向性:中短期の地合い好転、長期上昇トレンドは更に堅固に

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    想定通り、大幅な陽線を形成して12月を終了し『超長期上昇トレンドの継続』を確認(ストキャスティクスにも底打ち/上昇サイン点灯中)

    ◇既述の中短期時間軸の地合い好転も手伝い、長期上昇トレンドは今のところ極めて堅固

    >>> 今後1年間の想定レンジ = 149.25~169.80 ⇒149.25~168.90 =

    <ファンダメンタルズ分析判断>

    先週の日米金融市場の変化(下表右端)

    米国:良好な経済指標と利下げ期待の綱引きで金利は概ね保合い、反落に転じていた株式には持ち直しの気配

    日本:「株式続落」からリスク回避姿勢強まり金利は若干低下

    ◆USD円:米長短金利が保合う中、USD指数・USD円共にやや軟化

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    米債利回り米10年国債利回りは週間では0.028%低下(⇔2週前比では上昇)。12/30に12月シカゴ購買部協会景気指数(PMI:36.9)が米景気減速を示したことが主因。ただ、1/3には市場予想を上回った12月米ISM製造業景況指数を受け米景気の底堅さが意識され上昇。次週の国債入札による需給悪化懸念等も影響

    > 2年債利回り:12/20  4.319% ⇒ 1/3  4.283%(2週前比 ▲0.036%低下)

    >10年債利回り:12/20  4.530% ⇒ 1/3  4.602%(2週前比 + 0.072%上昇)

    =>10年-2年の利回り差は「+0.319%と前週(+0.211%)比で4週連続拡大」(下図)

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    前半のテクニカル分析の結論は<懸念材料を抱えつつも強調地合いに支えられた「上昇トレンド」を維持・継続>となり、我々は今年も「USD高円安」をメインシナリオとして考えています。

    ただ、市場参加者の多数派は「“米国の追加利下げ⇔日本の追加利上げ”を主因として“USD安円高”」予想に傾いているようです。

    いつも申し上げていることですが、シナリオを作る際の要因(材料)や論理の組み立て方は十人十色であり、様々な見方が混在していた方が『市場としては健全』だと考えています。上記の「日米金融政策の方向性の違い」だけからいえば結論が“USD安円高”となるのは自明ですが、かねて指摘してきた通り、市場に大きなインパクトをもたらすのは『その材料の織込み度合い』です。

    我々のレポートではその織込み具合が『過度になっていないか?』を検証し、ロジックを組み立ててきました。これまで当レポートでも“過度な織り込みの巻き戻し”とのフレーズを幾度となく使用してきましたが、「日米金融政策の方向性の違い」は我々の中では既に充分に織り込まれ“陳腐化”してきたとの認識を持っています。

    我々の「USD高円安」シナリオのキーポイントは以下の3つです。

    ➊限界的な(日本の)追加利上げがあっても「日本の実質金利は主要国中唯一のマイナス」が続く

    ➋貿易収支/資本収支など“実需の外貨不足”は簡単には解消しない(長期にわたって続く)

    ➌独・英・仏の事例を挙げるまでもなく、主要先進国の中では「最も良好な景気と最も安定的な政策運営が見込まれる“トランプ2.0”を有する米国の比較優位が維持されやすい状況」は今年も続き、これに伴って米金利・USD指数の堅調(上昇)も継続する

    これらの要因については、今後も折に触れて詳細と変化をご案内して行く所存です。

    さて、年賀状で複数の友人から2025年の株式市場(特に米国)の見通しを聞かれました。

    今回のレポートはその点をなるべく簡潔にご案内して締めたいと思います。

    主要な株価指数の2024年年間騰落率(概算)では、TOPIX:+18%、日経平均:+20%、MSCIコクサイ:+20%、MSCI新興国市場:+10%。日経平均とMSCIコクサイは2年連続で約20%の上昇となりました。

    夏場には米国景気の減速が懸念され世界的に株価が大きく調整する場面がありましたが、FRBによる0.5%の大幅利下げとその後の米景気指標が持ち直したことで、株価は反発。更には、11月の米大統領・議会選挙で共和党が全面勝利したことが相場の潮目を大きく変え、12月後半にかけて一段高の展開となっていきました(さすがに年末にかけては、好材料の“過度な織り込みの巻き戻し”が示現)。

    そして、いよいよ今週から2025年の金融資本市場が本格的にスタートします。

    金融市場の最大の注目点(焦点)は「米国の景気」であろうと考えられます。年明けに発表された12月ISM製造業景況指数、新規失業保険申請件数、12月全米自動車販売台数などを見ますと、昨年後半以降の米景気は底堅さを維持していると(現時点では)認識できるようです。

    ただし、重要なのはトランプ2.0の経済政策が「米景気の回復モメンタムに勢いを付けることになるか、逆に、潰してしてしまうことになるのか」が極めて不透明なことであり、これは慎重に見極める必要があると考えています。

    実際、昨年11月の米選挙直後にマーケットで広まった『楽観』はかなり後退しているようです。

    投票日の昨年11/5を起点とすると、先週末1/3までのS&P500の騰落率は+2.8%(一時+5.3%まで上昇)に止まりました。

    また、内需株の比重が高いラッセル2000中小型株指数については同+0.3%(一時+8.0%まで上昇)と、選挙後の上昇はほぼ帳消しとなっています。

    なお、S&P500の最新の予想PERは21倍台で推移しており『米国株の割高感は解消されていない』状態が続いています。このため、米国株が更に上値を追うための『必要条件』は、現在市場参加者が期待する通り『2桁の利益成長が続く』ことになるのではないでしょうか。

    トランプ2.0が発足する1/20以降、金融市場の関心は、新政権が打ち出す経済政策に向けられることになるでしょう。しかし、個人的には同時期に本格化する米企業の決算発表にも細心の注意を払う必要があると考えています。

    既述の通り、『米国株式の予想PERが21倍台、株式益回りは約4.5%と10年国債利回りと逆転して(≒株式の割高度合が相当強まって)いるため、短期的には悪材料に対する脆弱性が高まっているのではないかと考えています。

    その意味で、2025年の日本を含むグローバル株式相場は、波乱含みの本格スタートになると予想しています。

    お知らせ:米国を中心とする「世界のインフレ・景気・金融政策」の現状分析、並びに短期を中心としたUSD円相場見通しについては、トレーダム(※)為替アンバサダーでもある安田佐和子氏のレポート(Weekly Report等)に詳細かつ非常に解りやすく解説されています。TRADOM会員の方々はサイト内で是非ご参照下さい。

    <(※):ジーフィット株式会社は10/1より「トレーダム株式会社/TRADOM Inc.」に社名を変更しました。>

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