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  • Weekly Report(12/16):「大幅な調整の終息」と「上昇トレンドの本格化再開」を確認
    吉岡 豪麿
    この記事の著者
    トレーダム 取締役CAO

    国内大手金融機関の外国為替取引部門で外国為替、外国証券等のディーラーとして20年、海外金融機関でアセットマネージャーとして15年以上の経験を有する為替のエキスパート。貿易企業の経営者を経て、企業年金基金の資産運用を担当。2021年1月よりCAOとして投資助言部門を担当。

    マーケット分析

    <テクニカル分析判断>  

     ●短・中期:「大幅な調整の終息」を確認。テクニカルは再び強気地合いへと大きく反転

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    □12/9週は「寄付150.06:149.69~153.79:終値153.66前週比+3.66円の大幅な円安)」の推移

    ◇前週比+3.66円と10/21週以来の大幅な陽線となり、2週連続の陽線を形成

    先週の大陽線により、一旦下回った「9月中旬からの上昇トレンドライン超」の水準・52週MA・152円手前の抵抗帯など、強い上値抵抗と目された水準を僅か1週間で回復

    =>>>これにより、先週まで懸念点とした以下2点(ハイライト箇所)はほぼ解消( ⇒ むしろ大きく反転)

    =>>>この状況変化に伴い、中期的な(テクニカル)メインシナリオの再検証結果も「変更なし」となった

    ただし、(まだ3週ながら)「上値/下値の切下がり」が観測され、テクニカルな地合いの悪化は継続

    ◆また、先週も指摘した「150.75-151.95の上値抵抗帯、52週MA(150.54)」は回復できておらず、「(4週前の156.75でピークアウトし)「トレンドは上昇⇒下落へ転換」との可能性が依然存続

    =>>>一方、先週「反転上昇の可能性の高まり」を指摘した以下の諸点(ハイライト箇所)については、想定を上回るペースでの上昇へと直結した恰好

    (下降中とは言え)「21週MAという重要な下値支持ライン」の水準超を終値ベースで依然維持F8F4AD

    <図中:黒い点線黒丸➋の部分。本年2月にもこの水準で反転上昇へ(同➊の部分)>

    (かつての)下値支持水準を終値で回復できれば、後述の短期時間軸に台頭した「反発の兆候」と相まって再度上昇サイクル復帰の可能性あり

    なお、上掲チャートでの「追加ポイント」は以下

    7週以上の下落トレンドを経て底打ち/反発したパターンでは「約8週の上昇で一旦ピークアウト」するものの、数週の調整を経て「再び上昇サイクル(上昇トレンド)へ復帰」するケースが多い

    特に今年1・2月(上図➊)後の調整ではRSI/ストキャスティクスの反落は軽微に収まって次の上昇サイクルに移行。また、21週MA+7.41%ラインでピークアウトした➊’も同様の推移

    ⇒上記2点との類似性をもつ今回の➋は『21週MAという重要な下値支持準超を終値ベースで依然維持』と併せ、2週前の急落による失地を挽回してゆく可能性がある

    因みに、横ばいが続くとすれば「21週MAは2週後には底打ち/反発に転じテクニカルな上昇余地拡大に伴う上昇へと向かう可能性も高まる

    =>>>上図に対する追加コメント:

    ◇RSIは50台で依然上昇余地が残存ストキャスティクスも今後再度の上方トライに転じる可能性が極めて高い

    (21週MAが低下中のため)11月に2度上昇を阻まれた「21週MA+4.32%(155.10@12/16)」が接近中。ただし、21週MAは今週横這った後「来週から急上昇に転じる」ため、この水準も同時に上昇。これに伴い「更なる上昇余地」は拡大すると見られる

    仮に、この水準を終値ベースで突破出来た場合は、11/15の直近高値(156.75)を超える上昇も充分考えられよう

    >>>なお、2週前の5.25円から前週2.58円と半減していた週間変動幅は「上下何れかの注目レベルを抜ければ振幅は急速に拡大」との想定通り、先週4.10円まで急拡大した

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    他方、短期時間軸でも先週は5連続陽線(上図右点線囲い)となるなど「上昇サイクルの再開」が鮮明となり、先週指摘した以下の点(ハイライト箇所)は更に良化・進展している

    「変化は短期から」という我々の基本コンセプトに則れば「短期時間軸では、地合いの悪化は否定できないものの、反発(押し目買い圧力の台頭)の兆候」は見逃せない

    先週指摘の通り、11/15のピークアウト後の大幅下落を経て「ストキャスティクスは『(例外なく)反発必至』の水準にまで低下」

    ⇒「少なくとも、短期的自律反発はほぼ確実な状況に到った」(=12/2週のコメント)

    =>>実際、「反発の兆候」とした動きが上図右下でも確認できる

    =>>>図中にコメントの通りRSIには更なる上昇余地が残存ストキャスティクスはかなりの高水準にあるものの、今後の上昇が緩やかなものに止まれば(10月にも見られたように)高水準を維持し続ける可能性もある。RSIの水準と併せて考えれば、少なくとも短期的な(上昇の)過熱感はあまり感じられない

    以上から導き出された<今週のテクニカル分析の結論>は以下の通り

    ◎先週の急上昇によって「下落トレンドへの転換」に関する懸念点はほぼ解消( ⇒ むしろ大きく反転)

    =>>>この状況変化に伴い、中期的な(テクニカル)メインシナリオの再検証結果も「変更なし」となった

    また、既述の通り「大幅な調整の終息」を確認したことによって、テクニカルは再び強気地合いへと大きく反転し「上昇トレンドの本格化再開」をも確認することとなった

    =>>>若干の自律的な速度調整を交える可能性はあろうが、今週の方向感は基本的に上方だと考えられ、『上値トライ(上値模索)』が中心となる展開を想定。先週と同様に「注目レベルを抜ければ、振幅は急速に拡大」することとなろう

    引き続き過度に予断を持つことなく」変化の兆しを見落とさぬ姿勢を継続した上で、終値が以下の水準を「突破or維持」できるかどうかに注目

    ① 156.75=11/15の直近高値

    ② 156.00=21週MA +4.95%

    ③ 155.10=21週MA +4.32%

    154.20円=21週MA +3.69%

    153.15円=21週MA +3.09%

    152.25円=21週MA +2.46%

    ⑦ 151.80円=21週MA +2.16%

    >>>上記③(上方)⑥(下方)抜けると加速すると思われる水準

    ~以下では『短期・中期・長期の方向性』についての分析ポイント及び各時間軸での想定レンジをご案内します。(今号の分析は2024/12/13のNY市場終値をベースに実施) ~

    以下の用語補足:「MA」=移動平均線、「RSI」=(上下への過熱を示す)相対力指数

    ➊日足チャート:「21MA±4.32%のバンド、52MA & 200MA」、RSI等  

    短期(1週間~1か月)の方向性:調整終了を確認。上昇サイクル再度本格化へ

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    上図は直上のものを再掲。コメントについても既掲のものをご参照下さい

    □RSIには更なる上昇余地が残存。ストキャスティクスはかなりの高水準にあるものの、RSIの水準と併せて考えれば、少なくとも短期的な(上昇の)過熱感はあまり感じられない

    >>> 想定レンジ=今週:151.80~156.90今後1ヶ月:150.45~159.60

    ➋週足チャート:「21MA±4.32%/±7.41%/±9.87%のバンド & 52MA」、RSI等 

    中期(1か月~半年程度)の方向性:調整終了を確認。上昇サイクルは再度本格化へ

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    上図は冒頭のものを再掲。コメントについても既掲のものをご参照下さい

    ◇RSIは50台で依然上昇余地が残存ストキャスティクスも今後再度の上方トライに転じる可能性が極めて高い

    ただし、21週MAは今週横ばった後「来週から急上昇に転じる」ため、この水準も同時に上昇。これに伴い「更なる上昇余地」は拡大すると見られる

    仮に、「21週MA+4.32%(155.10@12/16)」の水準を終値ベースで突破出来た場合は、11/15の直近高値(156.75)を超える上昇もありうる

    >>>今後6か月間の想定レンジ = 145.80~159.45⇒149.75~163.20

    ➌月足チャート:「20MA±18.0%のバンド」「60MA±30.0%のバンド」、RSIを付記  

    長期(半年超~1年程度)の方向性:11月も20ヶ月MA超を維持し、上昇トレンド継続中

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    □20ヶ月MA(148.17)超の水準を維持して11月を終了し『超長期上昇トレンドの継続』を確認(ストキャスティクスにも底打ち/上昇サイン点灯中)

    ◇「150円割れの終値・上ヒゲの長い陰線」が懸念されるが、2022年8月(➊)との相似性を考慮すれば「12月は上昇」との想定を維持

    >>> 今後1年間の想定レンジ = 145.80~162.30 ⇒149.75~165.30 =

    <ファンダメンタルズ分析判断>

    先週の日米金融市場の変化(下表右端)

    米国:利下げ織り込みも金利上昇、急上昇していた株式は反落

    日本:利上げ観測後退に伴い金利は横這いとなり、株式は続伸

    ◆USD円:米長短金利急上昇に伴い、USD指数・USD円共に上昇

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    米債利回り最近発表された一連の米指標が来年の米利下げペース鈍化の可能性を示唆する中、10年債の利回りが3週間ぶりの高水準に到達。FRBは今週央のFOMCで0.25%の利下げを実施するとみられるものの、インフレ率が2%の目標を大幅に上回っている状況に対処するため、その後は利下げ一時停止の見通しを示すとの予想が急速に台頭

    「FRBは、来週利下げを実施も、1月には(利下げを)一時停止するという強い指針を示す。また、中立金利の予想に関してはドット・プロットの上方修正をほぼ確実に行う」との声が多い

    なお、以下でご案内している「2年債と10年債の利回り格差」だけでなく、先週は「3ヶ月物短期国債と10年債の利回り格差」も、2022年11月以来初めてプラスに転じている

    > 2年債利回り:12/6  4.098% ⇒ 12/13  4.245%(前週比 +0.147%上昇)

    >10年債利回り:12/6  4.149% ⇒ 12/13  4.395%(前週比 +0.246%上昇)

    =>10年-2年の利回り差は「+0.150%と前週(+0.051%)比で急拡大」(下図)

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    前半のテクニカル分析でも言及しましたが、先週は(想定よりもやや強めでしたが)「概ね想定に沿ったUSD高円安の展開」となり、急縮小していた週間変動幅も大幅に拡大に転じました。このため、中長期的な(テクニカル)メインシナリオは再検証を経て「修正は不要」との結論に到っております

    これに伴い、同時並行的に行っていた「ファンダメンタルズ分析における来年を見据えた再検証」につきましても、概ねこれまでの大局観の「修正は不要」との結論に到り、(先週指摘した)「過度な利下げの織り込み」が巻き戻される中、今週のFOMCでの決定を待つ格好となっています。

    さて、残念ながら今週は今朝までに頂いた質問はございませんでした。そこで、今週は先週当欄でご案内したデータや我々の認識・見解」をフォローさせて頂きます。

    特にこの週末は『今週の焦点は、FOMCと日銀金融政策決定会合』と報じるメディアが大半です。我々の見解は先週とほとんど変化がないため、この件を先取りする形で、ご案内しておいてよかったのかもしれません。

    あ、『今週の焦点』に入る前に、今週もグローバル株式市場を簡単におさらいしておきましょう。

    これは、2週前に頂戴していた「NYダウが最高値を更新するなど米国株が非常に堅調な一方、日本株は軟弱な地合いを脱しきれない模様。日本株はもうダメなんでしょうか?」というご質問でした。

    これに対して、「現在のような『米国独り勝ち相場』が長く続く可能性は決して高くはない」というのが、現在の我々の見通しとなっています。なお、日本を含む他国とのパフォーマンスギャップが縮小して行く場合は、米国株以外の上昇率が高まる場合だけでなく(現在とは逆に)「米国が軟調に転じる一方、他国が持ち直す」パターンも交えながらの展開になるのではないかと考えています。と回答しました。

    実際、先週のグローバル株式市場でも、米株市場とその他主要国とのこれまでのパフォーマンス乖離が縮小するパターンが見られました。以下、米国・日本・新興国の前週末比実績。

    米国市場NYダウ=▲1.8%続落、S&P500=▲0.6%反落 <S&P500は史上最高値更新を伴う3週続伸からの反落

    東京市場:日経平均=+1.0%続伸、TOPIX=+0.7%続伸 <それぞれ4週ぶりの急反発から続伸

    新興国市場:MSCIエマージング=+0.4%続伸 <現地通貨建て、2週ぶりの急反発から続伸

    このように、さほど大きく逆行したわけではありませんが「米株市場vsその他主要国とのパフォーマンス乖離は修正/縮小」といった調整的動きが見られています。

    では次に先週ご案内した「日米欧の金融政策」についてです。

    12/12(先週木曜日)欧州中央銀行(ECB)の定例理事会ハイライト箇所は先週のコメント)

    ●7-9月期の域内協約賃金が前年比+5.4%と上振れるなどインフレ高止まりの懸念が残るものの、総合PMIが再び50を割り込み「景気の停滞感が強まっている」ことは明らかです

    >>>従って『3会合連続となる0.25%の利下げが決定される』と予想しています

    ■ 3会合連続で25bp利下げを決定。 声明文は引き締めバイアス削除で「利下げ継続の可能性を示唆」

    ■ 理事会では50bpの大幅利下げの「提案」あるも、決定は見送り。市場では「大幅利下げ」を織り込み始める

    ■ ECBはインフレ上振れ懸念と景気悪化懸念の板挟みとなった格好。 「今後の利下げペースはインフレが左右する」ことに

    12/17-18:米FOMCハイライト箇所は先週のコメント)

    ●既述の通り、金利先物市場が織り込む「12月FOMCでの0.25%利下げ確率」は約87%(前週末約54%)まで高まっており、現時点では我々もそうなる確率の方が高いとみています

    >>>先週は約97%まで上昇。ただし、同時に「来年1月には利下げが休止される」との見方も台頭

    ⇒ただし、米国では来週のFOMCを前に最後の重要判断(意思決定)材料となるのが12/11発表の11月コアCPIだと考えられます

    ⇒現在の市場予想では「前月比+0.3%、前年比+3.3%と前月から横ばい」に止まると見られており、昨今のCPIコアは「下げ渋り状態が続く」見通しとなっています

    ⇒一方、上記の通り「金利先物市場での織り込み」はかなり進んでおり、パウエル議長を始め直近のFRB高官の米景気/インフレ認識とは相当のギャップが生じ始めていると感じています

    =>>>この状況で、仮に『利下げ見送り』となった場合は大きなサプライズ(波乱)となるでしょう

    既述のように、我々も今週12/11の「コアCPIが余程大きく上振れしない限り、利下げ決定は変わらない」と考えています。しかしながら、昨今の状況を考慮すれば『利下げに反対するFOMCメンバーが出てくる可能性』は少なからずあると思われます。

    =>>>『ドットチャートでFF金利見通しの上方シフトにつながる』可能性も少なからずあると予想されるため、この点には充分注意すべきだと考えます

    既述の通り、市場の関心は『次回以降の利下げに関する示唆』に向けられています

    因みに、9月のドットチャートでは「2025年▲100bp利下げ、2026年に更に▲50bp利下げが行われ、2.875%が最終到達点(ターミナルレート)となる」ことが示唆されました。我々は「上方修正はほぼ確実」とみていますが、今回、これがどの程度上方修正されるかが焦点となるでしょう。

    仮に、大幅な上方修正(利下げ幅縮小、ターミナルレートの切り上げ)となれば『米金利の更なる上昇、それに付随したUSD高に繋がる』と見られます。

    12/19:日銀政策決定会合ハイライト箇所は先週のコメント)

    ◎『0.25%の追加利上げ』の可能性がやや高いと考えています

    ⇒日銀の金融政策決定会合前に発表される重要経済指標としては、今週12/13発表予定の「短観12月調査」が注目されます

    ⇒主要調査項目である大企業製造業況判断DIは13(前回9月も13)、非製造業は33(同34)が現在の予想コンセンサスのようです

    ⇒予想通りであれば『国内景気は日銀の見通しにオントラック(想定通り)で推移していることを裏付ける内容となるわけで、日銀の早期利上げ観測をサポートすることが想定されると見ています

    >>>先週から今週は「USD高円安」を見込んでおりましたので、トランプ2.0に伴う不確実性を避ける意味でも「追加利上げを実施するタイミングは今回しかない」と考えていましたが…。

    足許では『今回は政策金利が据え置かれる』とのメディア報道が圧倒的となってきました。

    先週は「1月14日に神奈川県金融経済懇談会に氷見野副総裁が出席」との予定が日銀から発表されました。これは1月の決定会合(1/23・24)直前のタイミングであり、このような講演予定が入ることは2013年以降なかったことであり「極めて異例」だと考えられます。

    これを受け、市場では「7月の追加利上げ時のようなマーケットの混乱を避ける為、事前にマーケットに追加利上げを織り込ませる機会を設定(≒地均し)した」との見方が広まっています。確かに、ロジックとしてさほど違和感はありません。

    したがって、今週の会合については「余程急激な円安が直前に進まない限りは、利上げ見送りの可能性が高い」と見た方が無難だと認識を変更しました。

    しかしながら、一方で日銀が早期追加利上げを摸索していることは明らかです。今週の政策決定会合後の記者会見で、植田総裁が「1月会合での追加利上げに向けて地均しとなるようなコメント」をされるかどうかが、注目されるところです。

    ただし、本邦の長期的な経済成長率を考えると「利上げの最終到達点」がそれほど高いとはどうしても思えません。やはり、かねてより指摘している通り「日本が“実質金利マイナス”の状態から脱却」出来る時期は今のところ展望しづらいと考えています。

    お知らせ:米国を中心とする「世界のインフレ・景気・金融政策」の現状分析、並びに短期を中心としたUSD円相場見通しについては、トレーダム(※)為替アンバサダーでもある安田佐和子氏のレポート(Weekly Report等)に詳細かつ非常に解りやすく解説されています。TRADOM会員の方々はサイト内で是非ご参照下さい。

    <(※):ジーフィット株式会社は10/1より「トレーダム株式会社/TRADOM Inc.」に社名を変更しました。>


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