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  • Weekly Report(10/7) :想定を大幅に上回る急反発により「中期下落トレンド」の終束はほぼ確実に
    吉岡 豪麿
    この記事の著者
    トレーダム 取締役CAO

    国内大手金融機関の外国為替取引部門で外国為替、外国証券等のディーラーとして20年、海外金融機関でアセットマネージャーとして15年以上の経験を有する為替のエキスパート。貿易企業の経営者を経て、企業年金基金の資産運用を担当。2021年1月よりCAOとして投資助言部門を担当。

    マーケット分析

    <テクニカル分析判断>   

    ●短・中期:想定を大幅に上回る急反発が示現。中期下落トレンド内での「底打ち」を確認

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    9/30週は「寄付142.23:141.65~149.00:終値148.65(前週比+6.45円の円安」の推移となり、2週ぶりの長大陽線を形成(上図)。これに伴い、週間レンジは先週7.35円と再び大幅に拡大し、我々の想定を遥かに上回った。なお、この6.42円もの実体を持つ超長大陽線は以下の要因から「今次下落トレンドの収束」を示唆するものとなっている。

    <前提> 前週の「上ヒゲの長い陰線は“ダマシ”だった」可能性が高い

    =>>> 3週前の赤いカプセル2)は、急落トレンド➊を終値で大きく上抜けした時点で「2024年初にA)を上抜けた赤いカプセル1)に相当」しており、(2週前に指摘した通り)「今次中期下落サイクルは“12週/22.35円の下落”で一旦底打ち」していたと思われる=>>>下落トレンド➋を抜けきれなかった前週の「上ヒゲの長い陰線」は、今次中期下落サイクルの残滓であり「ダマシ(トレンド判断を惑わせるノイズ)」だった可能性が高い

    <「今次下落トレンドの収束(底入れ)」を強く示唆する要因>

    先週の超長大陽線は、終値ベースで「下落トレンド➋」始め(強力な上値抵抗線となっていた)「21週MA▲4.32% ⇒ 21週MA▲2.16%」を一気に上方突破し、回復には相当の時間を要する(我々は“来年か”と想定)とされた「“52週MA”や(ひいては今後も下降してくる)“21週MA”」すら展望できる水準に到達

    先週の6.42円もの超長大陽線は、2001年以降ただの1度も記録していない

    =>>>上昇率ベース(今回4.54%)でも「今回に匹敵する上昇は2008~2009年に2回観測されただけの極めて稀な事象」

    超大幅な足型だけでなく、RSIやストキャスティクスも「底打ち⇒上昇局面に転換」した本年初以来の水準へ反発し、底入れを強く示唆(上図下部の赤い〇表示部分)

    =>>>先週の超長大陽線の持つ意味は非常に大きく、これをもって<今次「中期下落トレンド」の終束はほぼ確実となった>との判断に到った

    ■ただし、依然下降中であり接近してくる52週MAや21週MAは相応の上値抵抗線となって来よう

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    「今次下落トレンドの収束(底入れ)」を強く示唆する状況は、上掲の短期時間軸での日足チャートでも鮮明に窺える。以下そのポイント。

    ・➊:下落サイクルが明確化した7/11からの下降(下落)トレンドライン

    ・➋:8/5の一旦底打ち(141.69)後の戻り高値(8/15:149.39)からの下降トレンドライン

    ・➌:9/16の底打ち(139.58)からの上昇トレンドライン

    9/16以降、➌に沿って上昇し上値抵抗線と思われた21日MAや➋を上方へ突破

    しかし、9/27の大陰線が上記の「底打ち」の可能性を否定(≒下落トレンド再開を示唆)し、トレンド判断の攪乱要因となった

    ただし、その直後の9/30-10/2の3日間で9/27の大陰線分を全て挽回。その過程で「21日MA >➌のトレンドライン >(強い上値抵抗だった)52日MA」超の水準を回復した

    それに伴い、ストキャスティクスやRSIは9/16の底打ち⇒明確な上昇軌道を辿っている

    また、先週から「21日MAが明確に・200日MAが極めて緩慢ながらも“上昇”」に転じており、このまま横バイとなったとしても「低下中である52日MAの反転/上昇」も視野に入ってきた

    < ⇔ >一方で、先週が想定を大幅に上回る急上昇だったため、(RSIには依然上昇余地があるものの)「ストキャスティクスの水準」や「21日MA+4.32%ラインとの価格差」には『上昇の過熱』の兆候が窺える

    以上から導き出された<今週のテクニカル分析の結論>は以下の通り

    □想定を大幅に上回る急反発が示現したことで、中期下落トレンド内での「底打ち」をほぼ確認

    =>>>「上昇トレンドへの転換」までには相応の時間を要しようが、再び140円割れに向けた「下値模索」の動きが本格化するリスクは大きく後退したと考えられる

    引き続き「過度に予断を持つことなく」変化の兆しを見落とさぬ姿勢を継続した上で、終値が以下の水準を「突破or維持」できるかどうかに注目

    ① 151.23=21週MA

    ② 150.1552週MA

    ③ 149.37円=21週MA▲1.23%

    ④ 147.93円=21週MA▲2.16%

    ⑤ 147.54円=21週MA▲2.46%

    ⑥ 146.58円=21週MA▲3.09%

    ⑦ 145.65円=21週MA▲3.69%

    >>> 相場の水準がかなり上昇したことによって、下落/上昇の両圧力が再び拮抗し始めると想定されることから「市場変動率は高水準を維持しつつも先週比では縮小」と予想

    ~以下では『短期・中期・長期の方向性』についての分析ポイント及び各時間軸での想定レンジをご案内します。(今号の分析は2024/10/4のNY市場終値をベースに実施) ~

    以下の用語補足:「MA」=移動平均線、「RSI」=(上下への過熱を示す)相対力指数

    日足チャート:「21MA±4.32%のバンド、52MA & 200MA」、RSI等  

    短期(1週間~1か月)の方向性:想定を大幅に上回る急反発が示現もこのペースの維持は困難

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    上図は直上を再掲したもの。コメントも既掲のものをご参照下さい

    「今次下落トレンドの収束(底入れ)」が強く示唆された

    一方で、先週が想定を大幅に上回る急上昇だったため、(RSIには依然上昇余地があるものの)「ストキャスティクスの水準」や「21日MA+4.32%ラインとの価格差」には『上昇の過熱』の兆候が窺える

    =>>>下方リスクは大幅に後退も、このペースでの上昇には相応の抵抗が想定される

    >>> 想定レンジ=今週:145.65~150.30今後1ヶ月:144.30~152.25

    ➋週足チャート:「21MA±4.32%/±7.41%/±9.87%のバンド & 52MA」、RSI等 

    中期(1か月~半年程度)の方向性:先週の急反発により「中期下落トレンド」の終束をほぼ確認

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    上図は冒頭掲載の15ヶ月分を2.5年分に延長したもの。コメントも既掲をご参照下さい

    ◆◎◆上掲のポイント

    1➊との相対比較において下落サイクルの持続期間/値幅には未充足感が若干あったが、先週の急反発によって(今次下落サイクルの)➋は「12週/22.35円の下落」をもって収束

    2)RSIやストキャスティクスは底打ちの兆候が明確化し➊でのトレンド反転に類似してきた

    □既述の通り先週の超長大陽線の持つ意味は非常に大きく、これをもって<今次「中期下落トレンド」の終束はほぼ確実>との判断に到った

    ■ただし、依然下降中であり接近してくる52週MAや21週MAは相応の上値抵抗線となって来る可能性が高い

    >>>今後6か月間の想定レンジ = 138.90~153.90⇒141.75~154.50=

    月足チャート:「20MA±18.0%のバンド」「60MA±30.0%のバンド」、RSIを付記  

    長期(半年超~1年程度)の方向性:「20ヶ月MAの下抜け」は示現も、トレンド反転は回避?

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    7・8月に続き9月も陰線となり、想定通り「3ヶ月連続陰線、20ヶ月MAを下抜け」が示現

    しかし、先週の急反発で瞬時に20ヶ月MA(現在147.12円)超の水準を回復

    ⇒2022年の「3カ月連続陰線後の長大陽線」と同様に「今月、長大陽線を形成して20ヶ月MA超の水準回復」なるかが注目される

    >>> 今後1年間の想定レンジ = 138.90~155.10 ⇒141.75~158.80 =

    <ファンダメンタルズ分析判断>

    先週の日米金融市場の変化(下表右端)

    米国:主要経済指標は予想比かなり良好⇒金利は大幅に上昇、株式は堅調を維持で続伸

    ◇日本:石破新首相の発言に長短金利はマチマチ。株式は乱高下の後大幅反落

    ◇USD円:「米高速利下げ期待」が大きく後退⇒これまでの反動からUSD円は大幅に反発

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    米債利回り:週末の雇用統計をはじめ、概ね予想比良好な主要経済指標・タカ派寄りのFRB高官発言・中東情勢緊迫化を受け「米高速利下げ期待」が大きく後退。金利は短期主導で急上昇

    > 2年債利回り:9/27  3.557% ⇒ 10/4  3.924%(前週比 +0.367%上昇)

    >10年債利回り:9/27  3.751% ⇒ 10/4  3.969%(前週比 +0.218%上昇)

    =>10年-2年の利回り差は「+0.045%と前週(+0.206%)比で大幅に縮小しフラット化進展(下図)

    :5週ぶりに順イールドが大幅に縮小し、長短金利は節目となる4.0%に共に肉薄

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    先週も日米(特に本邦)の金融資本市場は波乱含みの展開となりました。米国では何といっても事前予想を大幅に上回る堅調な内容となった週末の『9月雇用統計』が名実ともにメインイベントになった一方で、本邦においては、石破新首相の発言に正に乱高下の継続を余儀なくされました。

    石破首相の発言については、先週の当欄でも以下のように指摘しました。

    政策についていえば、選挙期間中も世論や周囲の意見におもねる格好で微妙に修正が行われているようでしたし、10月にも予定されている解散総選挙に向けて、或いは、その後の新政権が誕生するまでは打ち出されるマニフェストを正しく評価することは出来ない

    さて、レポートの本題に戻りましょう。既述の通り、先週の金融市場に最大のインパクトを与えたのは週末の「米9月雇用統計」でした。以下、そのポイントだけ抽出します。

    ・「9月雇用統計は予想を上回る堅調な内容」

    ・非農業部門雇用者数は25.4万人増と市場予想の15万人増を大幅に上回る

    ・既報の過去2カ月分が計7.2万人上方修正された

    ⇒3ヵ月移動平均は18.6万人増となり、コロナ直前の2019年の月平均16.3万人を上回る伸びに

    ・失業率は4.1%と、市場予想と前月値の4.2%をともに下回る

    ⇒労働人口が増える中で「雇用者が増加し失業者が減少する“良好な形での低下”」

    このサプライズともいえる「堅調な9月雇用統計」を受け、債券市場ではつい先週までの“高速利下げ期待”が大きく後退したようです。

    「FF金利先物市場が織り込む11月FOMCでの利下げ幅の確率」は『▲0.5%:先週末の54%⇒0%』に、『▲0.25%:同46%⇒97%』に、『据え置き:同0%⇒3%』に変化していました。

    また、利下げの最終着地点(ターミナルレート)は、3.1%台(2026年1月時点)と前週末の2.8%台(2026年6月)から上方に修正されています。

    これは『小幅の利下げでソフトランディングが達成できる』との見方に変化してきているということでしょうか。

    もっとも、米雇用統計はブレが大きいことで知られており、単月の数字をもって雇用情勢を判断することは適切ではありません。実際、当統計に対して先行性が高いISM製造業・非製造業の雇用DIや自発的離職率などは、依然として労働需給の軟化継続を示唆しているのですから。

    11月のFOMCの前には『11/1に10月雇用統計の発表』と『11/5に大統領選挙』が予定されています。いずれもどう転ぶか予断を許さないイベントですし『FRBの利下げペースや利下げ幅については、今後発表される雇用・物価指標次第で大きく変わる可能性がある』ことを前提に臨むべきだと考えています。

    <「過度に予断を持つことなく」変化の兆しを見落とさぬ姿勢を継続>

    繰り返しこのスタンスを忘れないように、先週の当欄では以下のような<まとめ方>をしています。

    <9/18のFOMCにかけて盛り上がっていた「米労働市場の悪化懸念 ⇒米景気後退懸念(& 2%に向けたインフレ鈍化期待) ⇒FRBによる高速利下げ期待」(我々は、これを“過度な織り込み”と判断)が徐々に沈静化しつつあると考えられます。>

    そして実際に、既述の9月雇用統計によって、この“過度な織り込み”の巻き戻しが顕現化することになったわけです。

    また、先週も同様の主旨の発言を繰り返されましたが、<パウエル議長はFOMC後の記者会見で『今回の0.5%を“新たな利下げペース”と見做すべきではない』と、市場が期待していた“大幅かつ速いペースでの利下げ”期待を牽制しました。依然として根強いこの金融市場の“高速利下げ期待”に、“データ次第”を標榜するFRBがどう対応するのかを注目しています。>

    前半のテクニカル分析の結論では「ようやく『USD円底打ち・上昇トレンドへの反転』の兆候が顕現化し始めた」としました。また、ファンダメンタルズ分析においても「雇用情勢の悪化に端を発した『米景気の大幅な鈍化(景気後退)』見通し ⇒FRBによる“高速利下げ”期待」が大幅に後退・巻き戻され「ソフトランディングの蓋然性」の高まりがより意識されるようになってきたと感じています。

    こうした「リスク選好機運の高まり」はファンダメンタルズ的に「グローバルな株式市場やUSD円の上昇に直結する要因」であり、テクニカルとファンダメンタルが同じベクトルを持ち始めていると言ってもいいのかもしれません。しかし、忘れてはならないことは『ペースは鈍化しようとも“米国の金融政策は緩和(利下げ)”方向』にあり、『同じくペースは緩慢であっても“日本の金融政策は正常化(利上げ)”方向』にあるということ。現状の圧倒的な金利差は、多少縮小することはあっても劇的な変化は期待出来ませんが、USD円相場の上昇(円安)の速度を緩和させる要因にはなり得ます

    また、『米国政策金利の低下』が前提となって、我々が重要視している『主要通貨に対するUSD指数は依然としてやや抑圧気味の推移が継続』している状態です。USD円は需給関係からUSD指数とは別の展開となる可能性はあるものの、本格的に上昇するためにはやはりUSD指数の上昇が望まれるところであり、その状況に到るにはまだ相応の時間が必要なようです。

    お知らせ:米国を中心とする「世界のインフレ・景気・金融政策」の現状分析、並びに短期を中心としたUSD円相場見通しについては、トレーダム(※)為替アンバサダーでもある安田佐和子氏のレポート(Weekly Report等)に詳細かつ非常に解りやすく解説されています。TRADOM会員の方々はサイト内で是非ご参照下さい。

    <(※):ジーフィット株式会社は10/1より「トレーダム株式会社/TRADOM Inc.」に社名が変わりました。>

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