テクニカル分析判断 先週の週間推移は「寄付135.99:130.56~137.49:引値132.81」と前週比3.90円もの大幅なUSD安/ […]
<テクニカル分析判断>
●短期:想定通り高値を更新中も、過熱感の高まりから短期的な(速度)調整リスクも台頭
●中期:上昇余地は残存も、超長期円安トレンドの本格化には一旦過熱感の緩和が必要か
4/8週は「寄付151.59:151.56~153.39:終値153.27(前週比+1.65円の大幅な円安)」となり、週足では2週連続の陽線を形成。また、終値ベースでもここ2年「壁」とされてきた152.00を想定通り大幅に上回り、「超長期的USD高円安トレンドの本格化」を強く市場に印象付けた。(上図ご参照)
ただし、この先週の急伸を受け<日足ではRSIが74.7、ストキャスティクスが96.1/92.9といずれも昨夏以来の超警戒水準に達し(後掲➊ご参照)>ており、(週足ではまだ上昇余地を残してはいるものの)更なる上昇のためには「過熱感の緩和(≒少なくとも短期的な速度調整)」が必要に見える。トレンドは明確にUSD高円安方向を示唆しているとはいえ、こうした動きには要警戒だろう。
また、先週は1.83円と、前2週の2年半ぶりの低変動率から明確に拡大に転じた週間レンジではあったが、想定していた変動率の拡大幅よりも抑制されたものに止まった。「152円の壁」を突破してもなお大幅な変動に結び付かなかったのは、市場が自己実現的に自律調整を行っている証左かもしれない。
当面は(市場介入など強制的な圧力が加わらなければ)比較的落ち着いた推移となる可能性が高まりつつある。
以下ではいつも通り『短期・中期・長期の方向性』について各時間軸チャートによるテクニカルな視点を中心にご案内。(今号の分析は2024/04/12のNY市場終値をベースに実施)
<以下の用語補足:「MA」=移動平均線、「RSI」=(上下への過熱を示す)相対力指数>
➊日足チャート:「21MA±4.32%のバンド」、「52MA & 200MA」、RSIを付記
短期(1週間~1か月弱)の方向性:過熱感の高まりから短期的な(速度)調整リスクも台頭
□想定通り「152.00の壁」を突破して急伸。上図に示した通り、今後も<上昇第3波の「中期(3ヶ月程度)目標値=157.12円超」に向けた上昇>が見込まれる
●ただし、RSIが74.7、ストキャスティクスが96.1/92.9といずれも昨夏以来の超警戒水準に達しており、更なる上昇のためには「過熱感の緩和(≒少なくとも短期的な速度調整)」が必要か
◇トレンドは明確にUSD高円安方向を示唆しているとはいえ、こうした動きには要警戒だろう
>>>想定レンジ=今週:151.80~155.10 、今後1ヶ月:150.75~156.15 =
➋週足チャート:「21MA±4.32%/±7.41%/±9.87%のバンド & 52MA」、RSIを付記
中期(1か月~半年程度)の方向性:上昇余地は残存も、一段の上昇には一旦過熱感の緩和が必要
□想定通り「152.00の壁」を突破後に急伸。今後も<「超長期的USD高円安トレンド(目標値=165円超)」の本格化に伴う上昇>が見込まれる
●ただし、(週足では依然として僅かながらも上昇余地を残してはいるものの)更なる上昇のためには「過熱感の緩和(≒少なくとも短期的な速度調整)」が必要か
>>> 今後6か月間の想定レンジ = 148.65~157.95 ⇒ 148.80~159.00 =
➌月足チャート:「20MA±18.0%のバンド」「60MA±30.0%のバンド」、RSIを付記
長期(半年超~1年程度)の方向性:中期下落トレンドは昨年末終了。既に超長期上昇トレンドが再開
◇先週ご案内したチャートからの変化は「152円の壁を突破」したことのみ
>>>「(数年単位の)超長期上昇トレンドが本格化」してゆく可能性高まる
●しかし、上図で示した通り2021年以降は「3連続陽線の後には例外なく陰線が出来」しており今回もそのパターンが見られる可能性はある
>>>ただし、仮に一旦陰線が示現するとしても「20MAとの乖離が大きくない」ことから、2021年や2023年の4例と同様にその影響は軽微に止まり、上昇再加速への軌跡を辿る可能性が高いと想定
>>> 今後1年間の想定レンジ = 148.65~165.00 ⇒ 148.80~168.00 =
<ファンダメンタルズ分析判断>
□先週の日米金融市場は「日米共に金利上昇も株価マチマチ・USD円34年ぶり高値」(下表右端)
◆米国:「債券利回り上昇」を受けて「株式市場は続落」・「USD円34年ぶり高値」
◇日本:「長短共に市場金利は上昇」にも拘らず「株価は3週ぶりに反発」
◇日米金利差は更に拡大し「152円の壁」を突破。「USD円は34年ぶり高値」水準に急伸
【米国】週間の変化
□経済指標:経済指標は強弱マチマチも、注目のCPIは予想比やや強め
◇米3月消費者物価指数(CPI):以下の通り事前の市場予想を上回る
〇前月比:CPI総合は+0.4% ( 市場予想 +0.3%)、コアは+0.4% (市場予想 +0.3%)
〇前年比:CPI総合は+3.5% ( 市場予想 +3.4%)、コアは+3.8% (市場予想 +3.7%)
>>>前週に続き「FRBが“利下げを急ぐ必要なし”」との認識をより強く市場に浸透させる効果はてきめん
>>>実際、政策金利先物市場では「FRBが6月に利下げに着手する確率は27.1%に急低下(前週は53.3%)」
>>>また、市場が見込む年内の利下げ回数はほぼ2回に低下。3週前は3~4回だった
◇先週の米要人発言~引き続き予想よりはタカ派的
〇ボストン連銀コリンズ総裁:「インフレ率が目標水準に回帰するにはまだ時間がかかる」、「年内は2回程度の利下げを想定」、「FRBは今年中に政策金利を引き下げる可能性が高いものの、インフレを巡る不確実性とリスクを考えると、そうする前に時間をかける必要がある」
◇債券利回り:上記のインフレを巡る状況から、長短金利は上昇
> 2年債利回り:4/5 4.751% ⇒ 4/12 4.897%(前週比+0.146%上昇)
>10年債利回り:4/5 4.402% ⇒ 4/12 4.522%(前週比+0.120%上昇)
=>10年-2年の逆イールドは「▲0.375%へ前週比で僅かに拡大」(下図)
◎株式市場:債券利回りの上昇を受けて「株式市場は週間ベースで続落」
【日本】週間の変化
□主な経済指標:概ね市場予想比弱めのものが大半
◇本邦金融当局者の発言:以下ごく一部抜粋
・神田財務官:「行き過ぎた動きにはあらゆる手段排除せず対応」
・鈴木財務相:「円安の行き過ぎた動きにあらゆる手段を排除せず断固たる措置をとる」
・植田日銀総裁:「為替レートの動きが経済・物価情勢に無視できない影響を与えることもあり得る。そういう事態に至れば金融政策の対応(≒追加利上げ)を考える可能性が出てくる」
⇒ 介入警戒感高まるも、圧倒的なUSD買いの動きに反応薄
◇債券利回り:週間では「2年債利回りが0.3%に接近」など長短共に上昇
> 2年債利回り:4/5 0.206% ⇒ 4/12 0.274%(前週比+0.068%上昇)
>10年債利回り:4/5 0.770% ⇒ 4/12 0.850%(前週比+0.080%上昇)
◇主要株価指数:市場金利上昇/米株安にも拘らず「3週ぶりの自律反発」
>TOPIX:前週末比+2.1%高
>日経平均株価:前週末比+1.4%高
テクニカル分析でもご案内した通り、<USD円は、終値ベースでもここ2年「壁」とされてきた152.00を想定通り大幅に上回り、「超長期的USD高円安トレンドの本格化」>を強く市場に印象付けました。こうした事象をもたらした要因は様々ありますが、ここ数か月当レポートでも掘り下げてきましたので、今回は割愛させて頂きます。
先週分の最後で<「USD円のリスクが上方に大きく傾いているとの認識が最も肝要だ」と考えていますが、一方で「逆方向(=USD安円高)のリスク」も忘れてはならない>と指摘しました。これについて、この週末に古い友人と議論し「“逆方向のリスク”をもう一度考察し直す」機会に恵まれましたので、今回はこの点をご案内したいと思います。
<想定通りここ2年「壁」となっていた152円を突破したことで、今後「超長期的USD高円安トレンドの本格化」が予想される>ところですが、テクニカル分析で挙げた(自律調整)要因と共に、ファンダメンタルズにおける「上昇の過熱を緩和/抑制しうる要因」を以下幾つか提示します。
➊本邦通貨当局による「USD売り/円買いの“市場介入”」>>>毎週のようにご案内していますが、当局者の円安けん制発言が相次いでいます。USD円が続伸するにつれて、実際に介入が行われる可能性も高まっていくでしょう。仮に介入が実施されるとすれば、ほぼ1年半ぶりのことでもあり、当然ながら一旦はUSD円の騰勢も和らぎ、上値が重くなると考えられます。
しかしながら、ここひと月ほどのレポートでも詳述した通りその効果については懐疑的に見ざるを得ないと考えます。なぜなら、4/1の当レポートでも詳述している通り<2022年秋に行われた「USD売り円買い介入が奏功した」ように見えたのは、米FRBによる未曽有の政策金利引上げペースによって急上昇していた(対主要通貨での)USD指数がピークアウト(反落)し始めたからであり、決して交易や資本取引など実需の(USD円の)需給構造に根本的な変化が生じたからではない>と考えられるからです。また、昨年11月にUSD円が152円手前で反落に転じた時も「FRBのスタンスがハト派転換したとの観測が高まった」ことが主因であり、この時は介入を行っていませんでした。このように、いずれのケースもUSD円が152円台を目前に失速したのは、米国の金融政策に対する見方がハト派方向へとシフトしてUSD指数が下落した結果だったと結論付けられます。
加えて、介入規模が増加するほど外国為替資金特別会計で保有する外国債券の売却が必要となってくるはずです。これは、債券発行国の金利上昇と内外金利差の拡大をもたらし、自己実現的に介入効果を抑えることになるでしょう。そもそも、日本の通貨当局も(主要国の理解を得づらい)円高誘導を企図しているわけではないとみられ、介入によって円相場のトレンドが反転するわけではないと思われます。
➋欧州を中心に他の主要国でも利下げの現実味が増幅していること
FRBへの認識は「後ズレ」が激増中ですが、ECBに加え、イングランド銀行(BOE)も3月の金融政策委員会でハト派姿勢を打ち出し、市場では6月の利下げ予想が相当増えてきています。また、スイス国立銀行(SNB:中央銀行)も既に利下げの先陣を切っており、SFR/円相場に頭打ちの兆候もみられます。
かねてより指摘していますが「日本の実質政策金利が依然として大幅なマイナス圏にとどまる」ことは円安の主因克服が遠いことを示しますが、(両国通貨の交換レートである)為替相場に関しては相対比較も重要です。その観点から、他国通貨の金利低下は円との実質金利差の程度を和らげ「円の下げ渋り(≠円高)」をもたらす可能性があります。
➌更なるUSD/円の上昇が日銀に(追加)利上げを促すこと
3月の日銀政策決定会合で植田総裁は「基調的物価上昇率がもう少し上昇すれば、短期金利の水準の引き上げにつながる」と発言しました。インフレのうち、「第1の力」に関係する輸入物価指数は、USD建ての資源価格(原油先物相場など)とUSD円を単純に掛け合わせた数値の動きに数カ月遅れで連動することがしられています。これと年初来のUSD円の上昇を考慮すれば、夏場にかけて輸入インフレが再び顕現化することになるでしょう。
政府による電気・ガス代抑制策の開始から約1年が経過し、前年比の物価押し下げ効果が剥落することも相まって、かなりの期間にわたって日本のインフレが目標を上回る可能性は非常に高いと思われます。
もちろん、昨今期待を込めて喧伝されているように、昨年度を上回る賃金上昇が見込まれる中にあっても、実質賃金の前年割れが続く場合には、日銀は輸入インフレの高進を抑制せざるを得ないはずです。また、その処方せんとして「実質金利の引き上げによる円安抑制」が有効だと考えるでしょう。
その意味で、4/19発表予定の3月消費者物価指数(CPI)のみならず、その2営業日後に日銀が公表する「基調的なインフレ率を捕捉するための指標(刈込平均値・加重中央値・最頻値)」への注目も今後高まってゆくのではないでしょうか。(ただ、2月分についてはこれら3指標ともに前年比の伸びが縮小していました)
●中東を中心に広がりつつある様々な地政学的リスク
この要因は、先週「リスク回避要因」として我が世の春を謳歌していた観のある米国株式市場の反落要因(≒USD安要因)として前2週に挙げたものです。しかしながら、先週末から今朝方の市場動向を見る限り「USD安要因」ではなく、(現在先進国で最も高金利である米ドル債への資金流入を通じた)「USD高要因」として評価されているようです。
3月まで小康を保っていたはずの中東情勢が再び緊迫化してきました。現地時間4/13の夜、イランがイスラエルに対してミサイル・ドローン攻撃を行ったのです。これは、4/1にイスラエルが在シリアのイラン大使館を攻撃したことへの報復と見られています。
金融市場にとって最大の懸念点は原油価格(高騰)への影響でしょう。昨年10月にハマスがイスラエルを急襲した際にも、原油価格は一時的に急伸しました。その後、当事者間の戦闘が常態化したものの、周辺産油国を巻き込む大規模な紛争に繋がらなかったことから、原油価格への影響は限定的なものに止まっていたのですが…。
今回のイランとイスラエル間の武力衝突は、そのハマス・イスラエル問題の延長線上にあるともいえ、紛争が拡大しつつあるとの見方もできます。ただ一方で、イランは主に無人機を使った攻撃に止めることでイスラエル側の被害を最小限に抑える意図があったとも指摘されており、イスラエルとの本格的な衝突は望んでいない可能性もあります。
思い返せば、米国金利が上昇過程にある中での中東情勢の緊迫化という点でも、今回のケースは昨年10月と類似しているといえるでしょう。昨年10月には、ハマスがイスラエルを急襲した2週間後に、米10年国債利回りがピークを付けました。今回のイラン・イスラエル問題が昨秋と同様に米国金利がピークを付ける前の一時的な悪材料に止まるのか、或いは、原油価格の高騰を通じて米金利の大幅上昇に繋がるのか、USD指数の方向性に重大な影響を与えるこの点を慎重に見極める必要があるでしょう。
お知らせ:米国を中心とする「世界のインフレ・景気・金融政策」の現状分析、並びに短期を中心とした見通しについては、ジーフィット為替アンバサダーでもある安田佐和子氏のレポート(Weekly Report等)に詳細かつ非常に解りやすく解説されています。TRADOM会員の方々はサイト内で是非ご参照下さい。
なお、安田氏のレポートをご覧になれない方のために、氏のレポートから図表を幾つかご紹介する承諾を得ましたので、最後にご案内させて頂きます。以下は、全て今週の安田氏によるウィークリーレポートより抜粋したものです。
<今週は、既述の「逆方向(=USD安円高)のリスク」として安田氏が挙げておられた要因に関する考察です。介入効果に対する評価についてはやや異なりますが、USD高を掲げる我々にとって忘れてはならない重要なリスク要因です。:吉岡注釈>
―岸田首相が帰国、介入警戒強まるか?G20財務相・中央銀行総裁会議も注目
筆者は2024年の為替見通しで、円高へ戻りを予想していた。米利下げへの転換もさることながら、岸田政権が解散総選挙や総裁選を見据え、購買力の低下をもたらす一段のドル円の上昇(円の下落)に歯止めを掛けると予想したためだ。しかし、筆者の予想に反し、岸田政権と「政府・日銀アコード」を維持する日銀はマイナス金利を含め大規模緩和策を終了させたものの、「金融緩和の環境を維持する」と強調。ドル円が153円を突破する土台を築いたといっても過言ではない。
ドル円の153円突破は、岸田首相が国賓待遇で米国を公式訪問している間に実現した。岸田首相が帰国するならば、改めて介入警戒度が強まる場合もあり得よう。また、ドル円は4月8日週に前週末の終値との比較で一時1.2%上昇した。2022年9月の介入開始時点では、1.2%の上昇率だった事実を踏まえれば、否が応でも介入が意識される。
チャート:過去の介入実施時の前日比上昇率
もうひとつ、注目すべきは4月25~26日に開催される日銀金融政策決定会合だ。植田総裁は4月9日、参議院の財政金融委員会に出席し、「為替レートの動きが経済・物価情勢に無視できない影響を与えることもあり得る。そういう事態に至れば金融政策の対応を考える可能性が出てくる」と明言した。
翌10日、衆院財務金融委員会で、植田総裁は為替が動いたから直接的に金融政策の変更を考えようということでは「全くない」とも言及。ただ、これは為替が財務省の管轄である状況を照らし合した発言とも読み取れる。
岸田政権が引き続き、円安を深刻に受け止めていない可能性は否定しづらい。ただ、4月28日には衆院補選を控える。訪米中にドル円が153円を突破した影響が及ばないとも限らないだけに、政府・日銀が対応するシナリオに留意すべきだろう。
加えて、4月18日には主要20カ国(G20)財務相・中央銀行総裁会議をワシントンD.C.にて開催する予定だ。鈴木財務相は4月12日、米利下げ観測の後退を受けたドル独歩高についての懸念が議論される可能性について言及した。
前回、2月に開催されたブラジルG20では、2021年4月のG20声明の為替に関するコミットメントを再確認した。同声明の為替に関するコミットメントは、以下の通り。
「我々は、為替レートは根底にある経済のファンダメンタルズを反映することに引き続きコミットし、また、為替レートの柔軟性は経済の調整を円滑化しうることに留意する。我々は、外国為替市場の動向に関して引き続き緊密に協議する。我々は、為替レートの過度な変動や無秩序な動きが、経済及び金融の安定に対して悪影響を与え得ることを認識する。我々は、通貨の競争的切下げを回避し、競争力のために為替レートを目標としない」
このうち「為替レートは根底にある経済のファンダメンタルズを反映することに引き続きコミットし、また、為替レートの柔軟性は経済の調整を円滑化しうることに留意する」とは、経済のファンダメンタルズに沿わない場合、介入の余地が生まれるとも解釈できよう。また「我々は、為替レートの過度な変動や無秩序な動きが、経済及び金融の安定に対して悪影響を与え得ることを認識する」との部分は、過度な変動や無秩序な動きが認められた場合の為替介入ならば容認できるとも読み取れる。
G20を控え、本邦当局が介入しづらいとも捉えられる半面、介入へ向け各国に理解を求め、実弾介入に向け調整を進める機会ともなり得よう。なお、2022年9月~10月の介入時には、2022年10月12~13日にG20財務相・中央銀行総裁会議が開催され、同年10月21日、24日に介入を実施していた。
―ドル円はテクニカルで非常に強気、本邦個人投資家はドル売り比率が高水準
今週は4月15日に米3月小売売上高、16日に中国Q1実質GDP成長率のほか3月小売売上高や鉱工業生産、米3月鉱工業生産、17日にベージュブック(米地区連銀報告)、19日に日本3月全国消費者物価指数を予定する。さらに、4月18日にG20財務相・中央銀行総裁会議を控える。
ドル円は三役好転を形成した、ボリンジャー・バンドの2σに沿って進む“バンド・ウォーク”をたどり、21日移動平均線から200日移動平均線まで全て上向くなど、非常に強気な状態だ。介入警戒が意識されるなか、ジリ高が続くようにみえる。中東情勢の緊迫化が続くなか、米株相場を始め金融市場全体のリスク選好度が低下すれば、円キャリー・トレードの巻き戻しが意識される半面、足元ではむしろ「有事のドル買い」が優勢で、円買い戻しの動きが限定的というのが現状だ。
投機筋の円のネット・ショートが大幅に積み増している点も、上値が重い要因となりそうだ。4月9日週に円のネット・ショートは16万2,151枚と、前週の14万3,230枚を超え2007年6月26日週(18万8,077枚)以来の高水準だった。
一方で、日経新聞によれば、日本の個人投資家は介入期待が根強く、海外投機筋とは逆に円買いが優勢で、これが本邦当局の介入を手控えさせている可能性もある。QUICK社が算出した店頭FX5社合計の建玉状況で、「ドル・円」取引の総建玉(未決済残高)に占める「ドル売り」比率は4月5日時点で56.9%と、2023年11月以来の高水準近くで推移していた。仮に介入を行えば、個人投資家から待ってましたとばかりにドル買い・円売りを持ち込み、介入効果を削ぐリスクが意識される。本邦当局としては「負け戦」はできないだけに、海外の投機筋のポジションだけでなく、本邦の個人投資家の動向にも目を配る必要があり、難しい舵取りが試されよう。
チャート:投機筋による円のネット・ショートは2007年6月以来の高水準だが…
テクニカル的には強気優勢だが、RSIは4月12日に73.25をつけ、明確に割高の水準となる70を超えた。介入警戒もあり、ここから一気に155円を抜けるかは不透明だ。
以上を踏まえ、今週のドル円の上値は心理的節目の154.50円、下値は21日移動平均線が近い151.50円と見込む。
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