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  • Weekly Report(1/8):想定超の急反発受け「中長期下落トレンド」存続の可否を見極めるステージへ
    吉岡 豪麿
    この記事の著者
    トレーダム 取締役CAO

    国内大手金融機関の外国為替取引部門で外国為替、外国証券等のディーラーとして20年、海外金融機関でアセットマネージャーとして15年以上の経験を有する為替のエキスパート。貿易企業の経営者を経て、企業年金基金の資産運用を担当。2021年1月よりCAOとして投資助言部門を担当。

    マーケット分析

    お知らせ➊:2024年1月1日に発生した能登半島地震におきまして、被災された皆様に心よりお見舞い申し上げます。また、皆様の今後の安全および被災地の一日も早い復興をお祈り申し上げます。

    お知らせ➋:お詫び:年明け早々に筆者は新型コロナ感染症に罹患いたしました。

    既往症と年齢の関係からか、回復までかなり時間がかかっております。

    そうした状態での作成だったこともあり、今号につきましては、内容をかなり簡素化致しておりますと共にアップロードのタイミングが遅延致しましたことを深くお詫び申し上げます。

    2024年1月8日

    ジーフィット株式会社 CAO

    吉岡 豪麿

    <テクニカル分析判断>   

    ●短期:先週の想定を超える急反発により、短期的には上下どちらにも振れ易い展開

    ●中期:「中長期下落トレンド」の根幹は維持されているも、短期での変調を警戒視

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    2週前は想定通り「寄付142.38:140.25~142.85:終値141.00(前週比▲1.47円の円高)」で陰線の年末を迎えた。しかし、休載とした年初の先週は「寄付140.88:140.82~145.98:終値144.66(前週比+3.66円の円安)」となり週足では、実に2022/5/30週以来となる3.78円もの長大陽線を形成した

    因みに先週のレンジ(5.16円反発)は、12月ひと月分のレンジ(7.23円下落)の実に71.4%を僅か4営業日で記録したことになる。これは<来年にかけても比較的高めの市場変動率の継続を想定>した前号とある意味整合的ではあるが、⑴方向性が逆であること、⑵僅か4営業日での推移であることにおいて我々の想定を大幅に逸脱するものであった。少なくとも前号まで指摘していたような「(下落)速度調整的かつ一時的な反発は折に触れて見られる」ものとは異質だと考えざるを得ない。

    中長期時間軸の週足月足などでは、まだ「微かな兆候」程度の変化に過ぎないが、短期時間軸である日足においては「11月下旬には強い上値抵抗線に転化していた21日移動平均線を終値で2日連続上回る」など、短期的には上下どちらに振れてもおかしくない(どちらにも振れ易い)状況が出来していることには留意すべきだと考える。

    しかしながら、後述する通り中・長期の時間軸において『下降トレンドへの転換』は明確に維持されている上に、トレンドが転換してからの経過時間(の短さ)を考慮すれば、今回の「中長期下落トレンド」は継続する可能性が高いとのシナリオを変更する段階にはまだ到っていない。あくまでも、「短期的にボラティリティが急上昇する中、シナリオ変更の可能性に留意すべき」との認識である。

    なお、12月以降は絶対的にかなり高水準の振幅を維持していた週間レンジは、既述の通り年始もわずか4日間で5円超を記録するなど「今後も依然高水準の市場変動率の継続」が想定される。

    以下では『短期・中期・長期の方向性』について各時間軸チャートによるテクニカルな視点を中心にご案内。(今号の分析は2024/01/05のNY市場終値をベースに実施)

    <以下の用語補足:「MA」=移動平均線、「RSI」=(上下への過熱を示す)相対力指数>

    ➊日足チャート:「21MA±4.32%のバンド」、「52MA & 200MA」、RSIを付記  

    短期(1週間~1か月弱)の方向性:先週の急激な反発を受け短期的に方向感を喪失

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    □前号まで「下落トレンド本格化」への支援材料としていた以下の要因に大きな変調

    明確に下抜けたことで「強い上値抵抗線に転化したはずの21MA」

    →先週「連日終値で上回る展開」が示現し、上記効力が一旦剥落

    これに伴い、上下の明確な方向感も一旦消失

    ただし、今週は昨年12/1の21MAと52MAのデッドクロス完成に続き、21MAと200MAがデッドクロスする予定。また、先週末の足は上ヒゲがかなり長く上昇圧力の減退とも受け止められなくはない。このように下落トレンドを引き続き支援する要因もいくつか存続している

    冒頭で触れた通り、現状は上下どちらにも大きく振幅しやすい状況

    >>仮に上値トライが加速すれば、「52MA突破の可否が焦点」となる一方、逆に下落圧力の高まりから21MAを再度下回ってくれば「中長期下落トレンドの再加速」が見込まれよう

    >>現状は「そのいずれかを見極めるための重要なステージ」にあると考えられる

    >>その帰趨によって、今後の中長期推移にも大きく影響が及ぶこととなろう

    =>我々は「今後はやや速度を緩めつつも中長期下落トレンドの進展」を想定

    >>>想定レンジ=今週:141.75~147.15 、今後1ヶ月:136.65~147.15 =

    ➋週足チャート:「21MA±4.32%/±7.41%/±9.87%のバンド & 52MA」、RSIを付記 

    中期(1か月~半年程度)の方向性:先週の急反発にやや動揺も下落トレンドの根幹は堅固

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    かねて指摘の通り、12月から21MAより低位での推移となり『21MAは強力な上値抵抗線に転化』した

    >>>現在49.1程度の中立的水準を維持する『RSIには依然低下余地が残存』

    ただし、本格的下落トレンドの象徴ともいえる「上値の切下がり」は7週連続で途切れ、ストキャスティクスの水準もやや反発継続の可能性を示唆している

    ◆➊と同様に、現状は上下どちらにも振幅しやすい状況

    >>仮に上値トライが加速すれば、「21MA突破の可否が焦点」となる一方、逆に下落圧力の高まりから52MA下抜けを再度トライしてくれば「中長期下落トレンドの再加速」が見込まれよう

    >>現状は「そのいずれかを見極めるための重要なステージ」にあると考えられる

    スタートが同水準であることから、仮に、2022/10/21(151.95)>>>2023/1/16(127.22)の中期下落局面に近いインパクトを持つと仮定すれば「RSIやストキャスティクスには更なる低下余地が残存」していると考えられる

    =>トレンド転換後の経過時間を考慮すれば、今後は速度を緩めながらも中長期下落トレンドの本格化が進展する基調に著変はないと判断

    >>> 今後6か月間の想定レンジ 134.55~147.00 ⇒ 134.55~147.15 =

    ➌月足チャート:「20MA±18.0%のバンド」「60MA±30.0%のバンド」、RSIを付記  

    長期(半年超~1年程度)の方向性:超長期上昇トレンドは現下落トレンドの終了後に再開か

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    想定通り12月は昨年12月以来の大幅な陰線を形成し、1年をかけたWトップ形成を確認すると共に『2022年11月~2023年1月』を除き、2021年1月以降で初めての2カ月連続陰線(下落)を形成することとなった。

    ◆1月の始値(140.88円@1/2)と20ヶ月MA(140.40円@1/2)との乖離幅は僅か0.48円にまで縮小&接近を見た。これは『2022年11月~2023年1月』には達成できなかった約3年ぶりの[20MA]割れの現実味が俄かに増幅してきたことを示唆。かねて指摘の通り「重要な分岐点となってきた[20MA]」割れが示現すれば「中長期下落トレンド(加速)本格化の確認」となる

    <現在も上昇中の[20MA]は仮にUSD円がこのまま横ばいでも来月も約0.45円上昇の予定>

    =>今後2カ月の程度の間に[20MA]を一気に突破する可能性も急速に高まりつつある

    =>RSI・ストキャスティクスは共に充分な低下余地を残存している(チャート下段)

    ただ、その動きも2024年中のどこかで底打ちし(超長期トレンドである)「USD高円安」方向へと反転上昇してゆく可能性が高いのではないかと想定している

    >>>これまでも主張してきた通り、我々は「(数年単位の)超長期上昇トレンドが本格化する前に

    『中長期的下落トレンドに入る』可能性が高い」をメインシナリオとして維持

    繰り返しとなるが、その根拠は主に以下の3点(チャートは2016年2月からの推移)

    <=2022年10月は「20MA+18%と60MA+30%を同時に上回る」という過去35年以上経験したことのない「異常な(上昇の)過熱状態」にあった

    <=一時85超まで過熱したRSIは、一旦70.1まで再上昇も直近59.1近辺まで軟化中

    =>超異常状態からの反落だけに20MA突破から60MAに向けた軟化/下落を見込む

    >>> 今後1年間の想定レンジ = 132.60~150.00 ⇒ 132.60~150.00 =

    <ファンダメンタルズ分析判断>

    ◇2024年開幕週の金融市場は波乱含みの幕開け。中でも、際立っていたのが米国債利回りの上昇だった。米10年債利回りは週間で0.13%上昇し、1週間の上昇幅としては昨年10月中旬以来最大となった。

    12月のFOMC後に急速に高まったFRBによる早期利下げ期待の修正が背景にあるがその主因は以下。

    1.12月FOMC後のパウエル議長のメッセージが大きくハト派寄りに受け止められたことの反動

    >>前号でも触れたが、パウエル議長の市場とのコミュニケーションに齟齬があったことが判明

    >>前号では議長の「前言撤回的発言」を懸念していたが、今回は12月FOMCの議事要旨から以下が明らかとなった

    ●「当局者はさらなる利上げが適切になる可能性がある」と指摘していたこと

    ●「データに依存したアプローチを維持する重要性」が強調される      

    など、同会合後の「(かなり)ハト派なパウエル議長会見の内容」に修正が入る形となった

    >>その後も、FOMCで投票権を有するリッチモンド連銀バーキン総裁が「追加利上げの可能性は依然として選択肢にある」とかなりタカ派的な発言をし、議事要旨のトーンがFOMCメンバーの総意に近いことを強調

    2.米12月雇用統計など事前予想を上回る堅調な経済指標

    ●米12月非農業部門雇用者数(結果+21.6万人、予想+17.5万人)

    ●米12月失業率(結果3.7%、予想3.8%)

    ●米2月平均時給(結果+4.1%、予想+3.9%)の伸び率加速

    >>その他週次の雇用関連指標が良好だったことも手伝い、FRBによる利下げ開始時期の後ずれ観測が高まった

    □こうした米金利上昇に伴いUSDインデックスも上昇

    ◎12月から金利感応度が高まり下落していたUSDは既述の展開を受け先週は大幅上昇に転じた

    >>USDインデックスは週間で+1.1%となり、週間の上昇率としては昨年7月半ば以来の高い伸び

    >>特に上記2.の発表直後、対円では3週間ぶりの高値となる145.98円まで上昇する場面も

    >>144.66円の終値でも、週間では2.2%上昇し、2022年6月6月以来の高い伸びを記録した

    <=この状況にはUSD上昇要因以外に「日銀によるマイナス金利の解除時期の後ずれ観測」が影響

    (悲しい出来事だったが1/1に発生した能登半島地震の影響から日銀がマイナス金利の解除時期を年後半以降に後ろ倒しにするという思惑)

    一方、主に「金利低下・ソフトランディング」を材料に高値更新に沸いていた株式市場はさすがに反落に転じ、米国の主要3株価指数はいずれも週間で10週ぶりに下落。

    >>特にナスダック(▲3.26%)とS&P500(▲1.54%)は数か月ぶりの劣悪な週間実績となった

    <=これもかねてより指摘してきたことではあるが「ロジック無視の良いとこ取り」には限界があるということだろう

    ■ところで、上記で列挙してきた先週の金融市場の反応が概ね「年末(前年)の反動」だからといって、米国のファンダメンタルズが前年の延長線上で語られることには、年金資産のアセットアロケーターとして、違和感を覚える。

    実は非常に良好だった既述2.の後、一時的に市場の雰囲気を一変させる経済指標が発表された

    >>全米供給管理協会(ISM)が発表した2023年12月の非製造業総合指数は50.6と前月の52.7から大幅に低下し、2023年5月以来の低水準となった(好不況の分岐点となる50.0が目前)。雇用指数も43.3と、前月の50.7から大幅に低下した(こちらは分岐点となる50.0を明確に下回った)。とりわけ雇用指数はコロナ禍にあった約3年半ぶりの低水準となり、米経済の約3分の2を占める非製造業部門活動の大幅な鈍化が示された。実際、この指標を受けて米債利回りは急低下し、4.1%に迫っていた10年債利回りは、一時的にせよ4.0%を割り込んだ。

    ◆今後はこうした経済指標が増えてくる可能性が高いのではないかと懸念している。

    >>これまでも指摘してきたように、米国の急激かつ大幅な利上げによる負の累積効果は今後もジワジワと米国経済を蝕んで行くことだろう。インフレの落着きではなく、ファンダメンタルズの底上げが利下げの主因となる状況が出来した時、その時を「ソフトランディング」と呼べるかどうかには甚だ疑問が残るのだが。

    (資産運用業界の一員としては、この懸念が杞憂に終わることを心より祈っております)

    さて、USD円相場に話を戻しましょう。

    既述の通り、12月に開催された米FOMCの議事要旨では「当局者はさらなる利上げが適切になる可能性がある」と指摘していたことが明らかとなったほか、「データに依存したアプローチを維持する重要性」が強調されるなど、同会合後のハト派なパウエル議長会見の内容に修正が入る形になりました。

    かたや日本でも能登半島地震で1月の日銀会合でのマイナス金利解除やYCC(イールドカーブ・コントロール)撤廃への期待が大きく後退し、年末に強まった日米の金融政策を巡る市場の思惑も各々大幅に巻き戻されており、予断を持って臨むのが非常に難しくなってきています。

    来週も米FRB要人発言や同インフレ指標、本邦の東京都区部消費者物価指数、毎月勤労統計調査などを通じ、政策調整時期を巡って形成されてゆく市場参加者の思惑がUSD円相場の流れを作りそうです。

    お知らせ➌:米国を中心とする「世界のインフレ・景気・金融政策」の現状分析、並びに短期を中心とした見通しについては、GFIT為替アンバサダーでもある安田佐和子氏のレポート(Weekly Report等)に詳細かつ非常に解りやすく解説されています。 

    TRADOMサイト内で、是非ご参照下さい

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