1978年11月1日、カーター米第39代大統領は、ドル下落に歯止めをかけるために、ドルの防衛策を発動しました。 カーター米第39代大統領は、 […]
<テクニカル分析判断>
サマリー:
●短期:「上値メドの模索」が依然続く中でも、ピークアウトの兆しは徐々に出来
●中期:当面強調維持も「ピークアウトは早晩訪れる可能性が高い」との見通しを継続
先週は「寄付146.40:144.43~147.36:終値146.22(前週比▲0.21円の円高)」となり
週足(下掲➋ご参照)では僅かではあるが5週ぶりの陰線を形成。ただし、①5週連続で
高値を更新中であること、②下ヒゲが長く強い反発力が維持されていること、③RSIは
高水準ながらも上昇傾向にあることなどから、依然として根強い上昇圧力は継続中。
しかし一方で、徐々にではあるものの2週連続で前週安値を下回る調整も観測されて
おり下落圧力の台頭も感じられなくはない。少なくとも「上昇圧力の減退」の兆しが
徐々に垣間見られるようになってきている。また、8週前に5.77円まで爆発的に拡大
した週間レンジは、その後4.27円⇒3.75円⇒3.20円⇒3.48円⇒1.91円⇒2.10円と
概ね縮小傾向を辿っていたが、先週は2.93円と再び拡大してきた。
9月に入ったことで他の金融市場と同様に市場参加者の増加が見込まれるため、今週も
依然として「上値のメドを模索」する展開が継続しやすいと見る。しかし、徐々にでは
あるが「上昇圧力の翳り・下落圧力の高まり」も顕現化しつつあるため、ピークアウト
が接近している可能性も頭に入れておく必要があろう。
以下では『短期・中期・長期の方向性』について各時間軸チャートによるテクニカルな
視点を中心にご案内。(今号の分析は2023/09/01のNY市場終値をベースに実施)
<以下の用語補足:「MA」=移動平均線、「RSI」=(上下への過熱を示す)相対力指数>
➊日足チャート:「21MA±4.32%のバンド」、「52MA & 200MA」、RSIを付記
短期(1週間~1か月弱)の方向性:上値メドの模索が継続もピークアウトの兆しあり
●黒い〇は天井形成、エンジの〇は底打ち(上昇)の時点(共に同色のRSI水準)を表す
◎長期的ピークアウト(151.95@昨年10/21)との前提で、先週までと同様に3本の
下落トレンドラインを継続表示(各線の属性の説明は割愛:以下3本目のみ抽出)
◆(非常になだらかとなった)3本目の下落トレンド線の突破は更に約4か月後の8/11
①終値144.93、②各MA:21/52/200=141.57 /141.58/ 136.38 、③RSI=65.1
⇒3本のMAより高い水準。特に200とは8.6円もの乖離。③は70に近い警戒領域
□その後は想定通り「上値メドの模索が先行・継続」する展開となっているものの、
直近2週では前週安値を下回る調整も観測され下落圧力の台頭も認められる
□また、直近3週では、高値の更新を続ける一方で、一旦70超でピークアウトした
RSIは緩慢な低下傾向にあり(いわゆる)「ダイバージェンス(逆行現象)」が出現
◇これらを背景として、USD/円相場はピークアウト(転換点)に着実に接近と認識
>>>想定レンジ=今週:143.70~148.05 、今後1ヶ月:139.50~149.85 =
➋週足チャート:「21MA±4.32%/±7.41%/±9.87%のバンド & 52MA」、RSIを付記
中期(1か月~半年程度)の方向性:下落再開に向け、接近中のピークアウトの確認待ち
◎上記の日足と同様に、長期的ピークアウト(151.95@昨年10/21)との前提のもとで
3下落トレンドラインを継続表示(各線の属性の説明は割愛:以下3本目のみ抽出)
◆(非常になだらかとなった)3本目の下落トレンド線の突破は更に約4か月後の8/7週
①終値144.93、②21MA/52MA=138.49 (+4.32%=144.45)/ 138.00、③RSI=63.3
⇒21/52MAより大幅に高い水準で21MA+4.32%より上。③はかなり高めの中立領域
>>上方突破したことで「上値抵抗線⇒下値支持線」に転化したものと認識
□3週前の終値をもって上方突破を確認。これによって、上値抵抗線は上記3本目の
下落トレンド線から(3/19週から始まる)「上昇トレンド帯の上限(紫の太線)」に
移行したと認識。この線は今週149.55円に位置する一方、上記の「下値支持線」
は143.25円近辺にあり、水準としては現在ほぼ真ん中(若干下目)といえる
□先週までは、ピークアウトの確認まで「下落トレンドの再開は難しい」としてきた
が変動率が再び高まりつつある現状では上下どちらに振れても不思議はない
>>> 今後6か月間の想定レンジ = 136.50~150.90 ⇒ 135.00~149.85 =
➌月足チャート:「20MA±18.0%のバンド」「60MA±30.0%のバンド」、RSIを付記
長期(半年超~1年程度)の方向性:超長期上昇トレンド入りの前に中期的下落を想定
●8月は、4カ月ぶりの陰線となった7月から大きく反発して再び陽転。昨年の11月
以来となる147円台を一時回復した。しかし、上ヒゲが比較的長目となっており
「上昇圧力の翳り」も感じられるため『中期的なピークアウト(≒反発局面は終息)』
も可能性として再浮上してきている
●8月の終値を確認した現在でも、「緩やかな下落トレンドの可能性は依然残存」を
中期のメインシナリオとして維持。その後、超長期上昇トレンドへの移行を見込む
●繰り返しとなるが、その根拠は主に以下の3点(チャートは2001年9月からの推移)
<=2022年10月は「20MA+18%と60MA+30%を同時に上回る」という過去35年以上
経験したことのない「異常な(上昇の)過熱状態」にあった(緑の太い〇部分)
<=一時85超まで過熱したRSIは中立領域に位置(66.6)も圧倒的に低下余地が大きい
=>超異常状態からの反落だけに「少なくとも20MA突破」に向けた軟化漸進を見込む
<現在135.90円の[20MA]はこのまま横ばいでも10月も約1.5円上昇する見込み>
◎ただ、その動きも1年以内には底打ちし(超長期トレンドである)「USD高円安」方向
へと徐々に変換してゆく可能性が高いと想定している
>>> 今後1年間の想定レンジ = 136.50~153.60 ⇒ 133.50~153.60 =
<ファンダメンタルズ分析判断:簡略版>
●先週は、週後半まで軟弱だった米経済指標を受けて「米景気悪化懸念やFRB高官ら
のハト派的発言」などを受け、追加利上げ観測が幾分後退。これに伴い米金利が低下
したことで金利差に敏感なUSD円は若干軟化する展開となった。
〇ただし、欧州の景気指標はより悪化していたため、対ユーロを中心に上昇するなど
USDインデックスは僅かながらも上昇する展開となり「7週連続高」と連騰を延伸。
◎前日までに発表されたJOLTSやADPなどの雇用関連統計が軟調だったため懸念と
注目を集めていた8月の米雇用統計は「一部で労働市場軟化の兆しが見られたものの
依然として堅調」との受け止め方が主流だった模様。
>>〇非農業部門雇用者数は+18.7万人増と、市場予想以上に増加
>>●失業率は3.8%(7月3.5%)と急上昇し、2022年2月以来の高水準へ悪化
◎9/4のレイバーデー(祝日)を控え多少のポジション調整はみられたものの株式市場は
極めて堅調推移。市場では「本日の雇用統計は投資家にとって非常に良いニュース。
労働市場はFRBに利上げを停止させるためには十分なほど軟化していると同時に、景気
後退を防ぐには十分なほど堅調」との意見が圧倒的になりつつある。
◎<米国経済は「ゴルディロックス(適温経済)」>つまり、米国経済は過熱も減速も
していない状態で、今後インフレも相応に抑制され、米国は景気後退を回避するという
非常に理想的なソフトランディングシナリオを辿っているとの楽観論が市場を席巻中。
>>個人的には「いいとこ取りし過ぎだし時期尚早」なためリスク大(≒危険)だと思料
□【短期~中期的視座】「USD/円相場の上昇」に対する根強いサポート要因
◎明確な鈍化を見せない米国経済指標 ⇒「適温経済」シナリオの台頭加速
〇欧米の利上げ継続観測(≒米金利がより長期間高水準にとどまるという観測)
>>『タカ派なFRB・ECB、ハト派な日銀の明白なコントラスト』のむし返し
⇔ 今後「欧米のタカ派色希薄化の一方、日銀はハト派色後退」で逆方向へ
〇昨今注目度が高まる日米実質金利差ならびに日米短期金利差の更なる拡大と
それに伴う円キャリートレード復活/活発化に対する期待
⇔「欧米の利上げ打ち止め」並びに「日銀の金融政策正常化への漸進」という
かつての「逆行する(金融政策の)方向性」に対する反転が視野に入りつつある中
(食傷気味となった)このロジックは賞味期限切れに近い
■【中期~長期的視座】先行きの「USD/円相場の下落」を示唆する要因
●米銀行セクター不安から顕現化した“信用逼迫”への懸念は燻り続ける公算大
>>>過去1年半にわたる利上げの累積効果による景気悪化は今後本格化へ
⇒米銀の貸出態度は現在加速的に厳格化しており、実際の貸出も昨年11月に
つけたピーク(前年比13.5%増)から、7月末時点で同1.6%増へ伸びが低下。
⇒おそらく今年末には前年比ゼロもしくはマイナス圏に陥るとみられている。
⇒家計の過剰貯蓄も現在のペースで取り崩していけば、年末までには底を突き、
家計の消費ペースはその後大幅にスローダウンする可能性が高い。
>>>2023年通年での米企業倒産件数はリーマンショック後で最高に達するとの予想
●中国の景気減速が米国(世界の)金融市場に波及する可能性の高まり
>>>中国不動産業界の最大手「碧桂園」の問題に言及することはなかったが、
3週前、イエレン米財務長官は「中国の不動産問題に起因する景気減速が米国に
波及する可能性」を認めた(数日後、中国恒大集団が米連邦破産法の適用申請)
●「この問題が米国の金融市場に飛び火する」可能性の高まり
>>>米国では商業用不動産市況が懸念され続ける中、企業向け融資にも警戒拡大
⇒ 背景:米企業の債務残高の対GDP比率は昨年末時点で76.0%を超えていた
(2008年の「リーマン・ショック=世界金融危機」時を上回る水準)
>>>中国不動産企業のドル建社債発行残高は約1000億ドルとされるが碧桂園の
利子の支払い遅延後は、ジャンク(投機的格付け)債を中心に投げ売り状態
>>>今後、中国不動産企業のドル建ジャンク債のデフォルトが多発するような
事態となれば、米社債市場全体のセンチメントが一気に悪化する惧れあり
>>>中国の不動産企業の債務危機を世界の金融市場は決して軽視できない
●米債券市場での『逆イールド』が示唆する「米景気後退」の蓋然性の高まり
>>>米債券市場での将来の景気後退を示唆する『逆イールド』は依然高水準
>>>『逆イールド』幅は今年3月の最大値(▲1.08%)を7月に僅かに更新
>>>その後、一旦縮小のトレンドに入ったと思われたが、拡大と縮小を交互に
繰り返す展開が続いており、一向に解消に向かう気配すらない
⇒既述の「適温経済」シナリオが本当に実現するのなら、近未来の景気後退を示唆
する逆イールドは自ずと解消に向かうはず
⇒しかし、現状ではその『解消へのパス(経路・道筋)』すら展望できない
>>>2年・10年債を含め米国の債券利回りは各々『限界的な水準』にあると判断
>>>将来的に「FRBは“金融緩和(利下げ)”に向け漸進せざるを得ない状況」
>>>株式市場の好調は「米利上げサイクルが終了に近いとの見方」も重大な要因
●【日本】現在の『異次元の金融緩和』に追加的(深堀りの)余地は皆無
>>>今後の日銀の金融政策の選択肢は「現状維持」or「正常化」しか残されていない
>>>いずれにせよ低下余地はほぼ無く金利の変化としては「上昇」するしかない
(生保など機関投資家が長期投資対象として充分魅力的な水準になるまで)
>>>先月の「YCC修正」により『日本の金利は下げられない』ことが改めて明白に
>>>欧米の利上げが終了すれば、内外金利差は縮小へ向かう(=「円の買戻し」へ)
●【日本】(更なる円安進行には)通貨当局による『円買い介入』の蓋然性が継続
>>>高進するインフレに対し、金融政策面で抜本的な対抗措置(利上げ)を実施できな
かった日本の金融当局にとっては更なる円安の進行は看過し難い事態
>>>昨秋、現在と類似した状況で行われた過去最大規模の円買い介入は145円台から
始まり、その後断続的に徹底して水準を押し下げる強い意志を伴って実施された
>>>現在、日本は「米国の外国為替監視対象国から除外」され、従前よりも市場介入
の自由度・意思決定速度が向上する環境となってきている
□【数年単位の超長期的視座】超長期的に「USD/円相場の上昇」をサポートする要因
①日本の貿易(経常)収支構造の反転(≒貿易赤字の常態化)
>>>TRADOM内コンテンツ「為替の歴史」&「月足チャート」もご参照ください
②2005~2007年当時の円キャリートレードが復活する可能性(環境)の高まり
>>>潤沢で安定した内外金利差、今後増加が見込まれる個人による海外証券投資、
更には上記①で明らかになった本邦の「外貨不足」という需給動向
テクニカル分析でも指摘したが、ピークアウト接近の兆しが少しずつ顕現化してきた。
一方、本邦金融当局による市場介入観測が上値を阻む材料として警戒されているものの、
「節目の150円を超えてくるまで実弾介入に踏み切る可能性は乏しく(それまでは口先
介入に留まる)、ドル高・円安の流れを食い止めるには至らない」との見方が依然主流。
確かに、現在は介入ぐらいしか「我々が(早晩訪れると考えている)ピークアウトの兆し」
に繋がる要因は無いのかもしれない。また、実弾介入の実施まで「上値トライ」が継続
してくれた方がUSDロング・ポジションの積み上がりが顕現化しやすくなってこよう。
先週も指摘した通り「ジャクソンホール会議後はUSD高/円安」と捉えていた市場参加者
が圧倒的多数を占めていた状況を考えると、パウエル議長の講演が果たしてそんな認識を
サポートするものであったかどうかについては「はなはだ疑問」である。
FRB当局者も繰り返すように「今後、FRBの金融政策はデータ次第」となると個人的には
考えているし、先週の金融市場全般の動きは「9月FOMCでの利上げは見送り。その後の
追加利上げもデータ次第」と受け止めたが故の適温経済シナリオの織込みだったはず。
パウエル議長は講演で『曇り空のもとで星を頼りに航海している』と述べ、不確実性が
高い現在のファンダメンタルズにおいて、金融政策の舵取りの難しさを強く指摘した。
今、我々はいいとこ取りの「適温経済」という超楽観論に浸る愚を犯すべき時ではなく
『引締め過ぎ』と『引締め不足』の「両方のリスクに備えるべき時」だと考えたい。
お知らせ:米国を中心とする「世界のインフレ・景気・金融政策」の現状分析、並びに
短期を中心とした見通しについては、GFIT為替アンバサダーでもある安田佐和子氏の
レポート(Weekly Report等)に詳細かつ非常に解りやすく解説されています。
TRADOMサイト内で、是非ご参照下さい。
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