ダウ理論 「ダウ理論」は米国のアナリストであったチャールズ・ダウ氏が発表した分析理論です。株式相場で利用された理論ではありますが、外国為替市 […]
テクニカル分析判断
サマリー:
●短期:方向感は喪失気味。動意希薄化の中で次の方向性を模索するステージへ
●中期:直近の中期的変化はピークアウト。中期的下落トレンドは存続の可能性残る
先週は「寄付141.54:138.05~141.80:終値141.15(前週比▲0.66円の円高)」の
推移を辿り、週足は2週ぶりに再び陰線を形成。ただし、その形状は所謂下ヒゲが
実体に比較して圧倒的に長く『下落圧力の減退』を示唆する格構となっており、
改めて『根強い上昇圧力』を再認識させられる結果となった。
一方、3週前に5.77円まで爆発的に拡大した週間レンジは、2週前の4.27円に続き
先週は3.75円と依然高水準を維持しながらも徐々にその幅を縮小しており、一旦は
「変動率を低下させ次なる方向性を模索するステージ」へ入った可能性がある。
この現象は、「激しい上下動が繰り返されたことで、一旦短期的な方向感が喪失」し
「動きづらい展開がしばらく続く」典型的なパターンともいえる。
確かに「強力な底堅さ」を見つけられた直後だけに、上値トライが先行する可能性が
高いと考えられるものの、直近観測された中期的な変化はピークアウトであるため、
『中期的下落トレンドは存続』の可能性は依然として残存すると考えている。
以下では『短期・中期・長期の方向性』について各時間軸チャートによるテクニカルな
視点を中心にご案内。(今号の分析は2023/07/28のNY市場終値をベースに実施)
<以下の用語補足:「MA」=移動平均線、「RSI」=(上下への過熱を示す)相対力指数>
➊1時間足チャート:「21MA、52MA & 200MA」、RSIを付記
超短期的な方向性:直近の超短期的変動激化の反動から変動が沈静化して行く可能性
>>チャートは概ね先週1週間分の1時間足。週末にかけての40時間程度で変動幅が
極端に拡大していることが判る(大きな〇部分:ここだけで週間レンジの87%を占有)。
また、この間に2円超の振幅を5回繰り返しているうえ、うち2回は僅か1時間以内に
それを記録している。 1時間という短い時間軸でこれだけ激しい変動を経験すると、
通常であれば反動から変動は沈静化してゆくもの。また、この間のRSIは「30~70」の
適正レンジを維持しており、行き過ぎた上下動は抑制されている。更に、週末を65.7で
終えていることから、上値トライが先行したとしても上昇余地は大きくは期待できまい。
少なくとも、142円台半ば~後半の水準到達には相応の上値抵抗が予想される。
ただし、まずは上昇中の[21MA]を下回ってこない限り、下値トライの可能性もほぼ無い。
➋日足チャート:「21MA±4.32%のバンド」、「52MA & 200MA」、RSIを付記
短期(1週間~1か月程度)の方向性:動意の希薄化を経て次のトレンドを模索へ
●黒い〇は天井形成、エンジの〇は底打ちの時点(共に短期的サイン含む)を表す
◆既述の通り、直近3週間の変動率の急上昇は『反動的沈静化』を招く可能性が高い
と判断。概ね先週のレンジ(チャートの濃い青の小さい□)内で週間値幅を縮小して
ゆくものと想定している。その後次なる方向性を探ることになろう。
◇ただし、直近の短期的なサインは7月中旬の「底打ち」が優位性を持っているうえ
3週間上抜け出来なかった[21MA]を今週上抜けしてくると考えられ、展開としては
『上値トライが先行』する可能性が高いと思われる。
●なお、6/29に75.9と明らかに「昇の過熱警戒領域に達していたRSIは、7/13には
一転して瞬間的に30割れを記録後、7/21に55.5を経て先週末も52.1と中立領域
を維持。水準としては、今後上下どちらに振れてもおかしくはない。
>>>想定レンジ=今週:139.50~142.95 、今後1ヶ月:135.30~142.95 =
➌週足チャート:「21MA±4.32%/±7.41%/±9.87%のバンド」&「52MA」、RSIを付記
中期(1か月超~半年程度)の方向性:ピークアウト再確認から『下落トレンド』活発化へ
>>チャートは前週までのものに上記❶を追加したもの(調整メドは矢印と同色)
●黒い〇は天井形成(速度調整的サイン含む)、エンジの〇は底打ちの時点を表示
●本年1/16の『ボトム(127.23)』と同6/30の『ピーク(145.06)』によって形成
された上昇局面はRSIのピークアウトが示唆する通り、一旦終了の格構となり
再度下落トレンドへ入ったと思われた
●しかし、その後3週は高い変動率の中にあっても緩やかに上昇中の[21MA]や[52MA]が
サポートとなって下方へ突破できない状態が続き、逆に「根強い上昇圧力」が再び
評価されやすいかたちとなっている
●なお、5週前の70近辺でピークアウトしたRSIは先週末56.7へと低下、やや高め
ながらも依然として中立領域にあり、上下どちらにも振れる可能性はある
●ただし、直近の『中期的サインはピークアウト』との認識のもと『局面として下落
トレンドは依然存続』との見方は維持。既述の[21MA]や[52MA]を終値で下回れば、
下落(下値模索の動き)は加速しよう
>>> 今後6か月間の想定レンジ = 128.70~145.65 ⇒ 128.70~144.90 =
〇月足チャート:今週7月末を迎える上、状況に著変は無いため今週は『割愛』
長期(半年超~1年程度)の方向性:前回までの認識に大きな変更はなし
●過去3ヶ月の展開を加味し本格修正に着手したが、現状は傾きをマイルドにした形での
「“緩やかな下落トレンド”の可能性は依然残存」を長期のメインシナリオとして維持
●昨年10月は20MA+18%と60MA+30%を同時に上回るという未曽有の異常な過熱状態
●一時85超まで過熱したRSIは中立領域に位置(64.5)も上昇よりも低下余地が大きい
●異常状態からの反落だけに「少なくとも20MA突破」に向けた下落優位の展開へ
<現在132.80円の水準にある[20MA]は来月以降も約1.3円/月に上昇する見込み>
>>> 今後1年間の想定レンジ = 128.70~146.70 ⇒ 128.70~145.50 =
ファンダメンタルズ分析判断:簡略版
◎6月に続き米欧日の中央銀行の政策決定会合が集中した先週は、高変動率が続く中、
“行って来い”の展開。欧米は概ね予想通りの政策決定であったが、「日銀による
“YCCの(微?)修正”」は当初サプライズ(円高要因)として受け止められた。
□主な円売り要因
①総じて堅調さを印象付けた米国の主要経済指標
②予想通りだった欧米の0.25%利上げ
③上記を受けた米国市場金利の上昇(週央まで)
④週末にかけ急ピッチに進んだ円高の反動
■主な円買い要因
➊前週の「急ピッチなUSD/円上昇(反発)」の反動
➋利上げ後の会見における、これまでの「タカ派色」の減退(欧米ともに)
⇒「今後も利上げ継続」>>>「先行きの方針は未定(経済データ次第)」へ
➌これら発言を受けた米市場金利の緩慢な低下
➍日銀に対するIMFからの提言「日本の物価には上振れリスクがあるため、日銀は
現在のYCC政策から脱却すべき」⇒YCCなど日銀金融緩和策の修正観測の台頭
★➎日銀金融政策決定会合後に発表された『YCC修正』⇒「これまで0.5%程度として
きた長期金利の変動幅上限を市場の動向に応じて超えることを容認」
⇒「YCCの事実上の撤廃」⇒「金融緩和脱却に向けた第一歩」との見方
>>> 円、瞬間的に2円ほど急騰 >>> ただし、その後は短い周期で乱高下
◇以下の植田日銀総裁発言によって円売りの勢いが再び活発化
・「基調的な物価2%達成に向けてはまだ距離があるとの判断は変えていない。」
・「物価上振れが顕現化してからでは後手に回り混乱する恐れがある。」
・「今回の決定は、予防的かつ金融緩和の持続性を高めるための措置。」
>>>「日銀は当面、追加的な“金融緩和政策の変更”を行わない」との見方浮上
➏「円キャリートレード復活/活発化」に対する期待が再度台頭?
◆株式・債券両市場による「景気・金融状況」の現状/先行きの判断に甚大な乖離
>>強気相場入りが鮮明な株式市場(上半期だけで米ナスダック総合は30%超上昇)
⇔ 縮小見えるも、依然深刻な景気後退を示唆する逆イールド(後掲のグラフ)
□【短期~中期的視座】「USD/円相場の上昇」をサポートする要因は使い古しの観
〇欧米の利上げ継続観測(≒米金利がより長期間高水準にとどまるという観測)
>>『タカ派なFRB・ECB、ハト派な日銀』の明白なコントラストのむし返し
⇔ 今回「欧米のタカ派色希薄化の一方、日銀はハト派色後退」で逆方向へ
〇昨今相関度が高まる日米実質金利差ならびに日米短期金利差の更なる拡大と
それに伴う円キャリートレード復活/活発化に対する期待
⇔ 欧米の利上げ打ち止めが視野に入りつつある中、このロジックはいつまで
通用するのか?
■【中期~長期的視座】先行きの「USD/円相場の下落」を示唆する要因
●銀行セクター不安から顕在化した“信用逼迫”への懸念は燻り続ける可能性大
>>>過去15ヶ月の急激な利上げ累積効果による景気悪化はこれから本格化
>>>3月に始まった欧米金融機関の破綻などの金融不安的動揺
>>>その後も、足許で下落が目立ち続ける商業用不動産市況
>>>2023年通年での米企業倒産件数はリーマンショック後で最高に達するとの予想
●米債券市場での『逆イールド』が示唆する「米景気後退」の蓋然性の高まり
>>>将来の景気後退を示唆する米債券市場での『逆イールド』は依然高水準
>>>『逆イールド』幅は今年3月の最大値(▲1.08%)を7月に僅かに更新。
その後、僅かずつではあるが徐々に縮小の兆しは見え始めている
>>>10年債も含め名目金利も逆イールドも各々『限界的な水準』に接近と判断
>>>将来的に「FRBは“金融緩和(利下げ)”に向け漸進せざるを得ない状況」
>>>株式市場の好調は「米利上げサイクルが終了に近いとの見方」も重要な要因
●【日本】現在の『異次元の金融緩和』に追加的(深堀りの)余地は皆無
>>>今後の日銀の金融政策の選択肢は「現状維持」or「正常化」しか残されていない
>>>いずれにせよ金利に低下余地はほぼ無く変化としては「上昇」するしかない
>>>今回の「YCC修正」によって『日本の金利は下がらない』ことが改めて明白に
>>>欧米の利上げが終われば、内外金利差は縮小へ向かう(=「円の買戻し」へ)
●【日本】(更なる円安進行には)通貨当局による『円買い介入』の蓋然性が継続
>>>為替相場には「“内外のファンダメンタルズを反映”した“秩序ある動き”」が
求められるものの、足許ではそれに逸脱気味の推移が展開していた
>>>高進するインフレに対し、金融政策面で抜本的な対抗措置(利上げ)を実施できな
かった日本にとっては更なる円安の進行は看過し難い事態
>>>昨秋、現在と類似した状況で行われた過去最大規模の円買い介入は145円台から
始まり、その後も徹底的に水準を押し下げる強い意志を伴って実施された
>>>現在、日本は「米国の外国為替監視対象国から除外」され、従前よりも市場介入
の自由度・意思決定速度が向上する環境となってきた
□【数年単位の超長期的視座】超長期的に「USD/円相場の上昇」をサポートする要因
①日本の貿易(経常)収支構造の激変(≒貿易赤字の常態化)
>>>TRADOM内コンテンツ「為替の歴史」&「月足チャート」もご参照ください
②2005~2007年当時の円キャリートレードが復活する可能性(環境)の高まり
>>>潤沢で安定した「内外金利差」、今後増加が見込まれる海外証券投資、
更には上記①で明らかになった「外貨不足」という需給動向
お知らせ:米国を中心とする「世界のインフレ・景気・金融政策」の現状分析、並びに
短期を中心とした見通しについては、GFIT為替アンバサダーでもある安田佐和子氏の
レポート(Weekly Report等)に詳細かつ非常に解りやすく解説されています。
TRADOMサイト内で、是非ご参照下さい。
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