目次―Executive Summary―1.前週の為替相場の振り返り=ドル円は一時147.36円へ上昇も、米経済指標に一喜一憂し乱高下2. […]
※来週は筆者都合により休載予定。今週は以降2週分の見通しをご報告します
テクニカル分析判断
サマリー:
●短期:高値圏でのピークアウトは『本格的な下落トレンド』の開始を示唆したもの
●中期:短期に続き中期でもピークアウト確認。『中期的下落トレンドも本格化』へ
先週は「寄付142.14:137.23~143.00:終値138.81(前週比▲3.27円の円高)」の
推移を辿り、週足は2週連続での長大陰線の形成となった。根強い上昇圧力により
この2か月ほど移動平均線からの上方乖離が拡大していたが、『少なくとも短期的
にはピークアウト』・『中期的にも上昇局面は終息に接近』との予測が顕現化する
格構で、52・21MAに向けて急速に下落(回帰)する展開が本格化した。
これを受けて、前週2.84円まで徐々に拡大していた『週間レンジは先週5.77円と
爆発的に増幅』し、市場変動率も急速に上昇する格構となっている。
先週本稿でも指摘した通り、「少なくとも短期的ピークアウトを迎えた今、これが
『一時的なものかどうか』(下値のメド)が試される局面」は、先週の推移を経て
今後『中期的な下落トレンドが本格化』する可能性の高まりを示唆したと言えよう。
以下では『短期・中期・長期の方向性』について各時間軸チャートによるテクニカルな
視点を中心にご案内。(今号の分析は2023/07/14のNY市場終値をベースに実施)
<以下の用語補足:「MA」=移動平均線、「RSI」=(上下への過熱を示す)相対力指数>
➊日足チャート:「21MA±4.32%のバンド」、「52MA & 200MA」、RSIを付記
短期(1週間~1か月程度)の方向性:時間調整を交えつつ、下落トレンドは本格化へ
>>チャートは直近半年間(前週までの半分)の推移を示したもの。前週までと同様に
●黒い〇は天井形成、エンジの〇は底打ちの時点(共に短期的サイン含む)を表す
◆天井形成の場合:①RSIが「70以上」か、その水準に接近している
②その時点のレートが[21MA+4.32%]以上にあるか、その水準に接近している
◇底打ちの場合:①RSIが「30以下」か、その水準に接近している
②その時点のレートが[21MA-4.32%]以上にあるか、その水準に接近している
この1年間は、ほぼ上記2点の条件において「ピークアウト/ボトムアウト」を形成
●本年1/16の『ボトム(127.23)』と同6/30の『ピーク(145.06)』による上昇局面
(エンジの大きな矢印)における反落の目標値はグレーの水平線(以下:降順)で表記
>>『76.4%:140.85』は7/11に到達(「4本の太い水平線」のうち一番上の線)
>>『61.8%:138.25』は翌7/12にアッサリ到達(「同上」の上から2番目の線)
>>『50.0%:136.14』は未達(「同上」の上から3番目の線)、下は表記水準に誤り
>>『38.2%:134.04』は未達(「同上」の一番下の線より1.15円程度高い水準)
⇒下落トレンドはまだ始まったばかり。134.04円は今月中にも到達の可能性あり
●なお、一時75.9と「上昇の過熱度合い」が明らかに警戒レベルに達していた
RSIは先週末36.6と急低下。7/14には瞬間的に30割れの場面も観測しており、
今後速度調整的な反発や保合いの局面が訪れる可能性はある
●しかし、ピークアウトは明確に確認されている上、『下落トレンドは局面として
まだ始まったばかり』。200MAや既述の目標値を終値で下回れば下落は加速しよう
>>>想定レンジ=~7/28:132.90~140.55 、今後1ヶ月:130.60~140.55 =
➋週足チャート:「21MA±4.32%/±7.41%/±9.87%のバンド」&「52MA」、RSIを付記
中期(1か月超~半年程度)の方向性:ピークアウト確認からの『下落トレンド本格化』へ
>>チャートは前週までのものに上記❶を追加したもの(調整メドは矢印と同色)
●黒い〇は天井形成(速度調整的サイン含む)、エンジの〇は底打ちの時点を表示。
●本年1/16の『ボトム(127.23)』と同6/30の『ピーク(145.06)』による上昇局面
(エンジの大きな矢印)における反落の目標値はエンジの水平線(以下:降順)で表記
>>『76.4%:140.85』は先週到達(「4本のエンジ水平線」のうち一番上の線)
>>『61.8%:138.25』も先週到達も終値では未達(「同上」の上から2番目の線)
>>『50.0%:136.14』は未達(「同上」の上から3番目の線)、下は表記水準に誤り
>>『38.2%:134.04』は未達(「同上」の一番下の線より約1.15円高い水準)
⇒下落トレンドはまだ始まったばかり。134.04円は今月中にも到達の可能性あり
●なお、3週前には70へ急接近していたRSIは先週末52.6へと低下し中立領域へ
「更なる低下余地は依然として残存」していると考えられる
●なお、ピークアウトは明確に確認されている上、『下落トレンドは局面として
まだ始まったばかり』。21MAや既述の目標値を終値で下回れば下落は加速しよう
>>> 今後6か月間の想定レンジ = 128.70~146.70 ⇒ 128.70~145.65 =
➌月足チャート:「20MA±18.0%のバンド」「60MA±30.0%のバンド」、RSIを付記
長期(半年超~1年程度)の方向性:本格修正に着手も、現状では大幅な変更までに到らず
●月を通して戻り高値更新が続き、6月は幾つかの重要な上値抵抗線を終値ベースで突破
●ただし、既述➊➋と同様に長期にも“反発局面は終息=ピークアウト”の兆候が窺える
●また、更なる上昇に対してはいくつもの強力な上値抵抗線が控える(チャート右上部)
●過去3ヶ月の展開を加味し本格修正に着手したが、現状は傾きをマイルドにした形での
「“緩やかな下落トレンド”の可能性は依然残存」を長期のメインシナリオとして維持
●昨年10月は20MA+18%と60MA+30%を同時に上回るという未曽有の異常な過熱状態
●一時85超まで過熱したRSIは中立領域に位置(64.5)も上昇よりも低下余地が大きい
●異常状態からの反落だけに「少なくとも20MA突破」に向けた下落先行の展開へ
<現在132.87円の水準にある[20MA]は来月以降も約1.3円/月に上昇する見込み>
>>> 今後1年間の想定レンジ = 128.70~146.70 ⇒ 128.70~145.65 =
ファンダメンタルズ分析判断:簡略版
◎先週は円安が先行。主に以下の円売り要因がフォーカスされた
◇本邦5月貿易赤字の予想比での大幅な拡大(▲1兆1867億円:予想▲9503億円)
◇本邦5月経常収支の予想比での大幅な拡大(+1兆8624億円:予想+1兆9108億円)
●しかし、その後以下の要因を背景に週後半にかけては前週来のUSD安/円高が加速
■米国の労働市場の実態に対する懐疑的思惑 (発表数値より実態は芳しくない) の台頭
■『YCCの修正』など「日銀による金融緩和の修正」観測の台頭(週末にも再加速)
■下記諸要因を背景とした米市場金利の急低下
◆米6月消費者物価指数(CPI) : 結果+3.0%、予想+3.1% および
◆米6月消費者物価(CPI)コア指数: 結果+4.8%、予想+5.0% の不芳な結果
◆米6月生産者物価指数(PPI) : 結果+0.1%、予想+0.4% および
◆米6月生産者物価(PPI)コア指数: 結果+2.4%、予想+2.6% の不芳な結果
⇒米国のインフレ沈静化期待→FRBによる金融引き締め休止観測→米市場金利の急低下
◎ただし、週末には急ピッチな下落に対する速度調整的な展開・要因も出来
◇5日間で6円弱も急速に下落したUSD/円への反動買い
◇世界的に堅調を維持する株式市場(リスク選好の円売り圧力)
◇米7月ミシガン大消費者信頼感関連の予想比良好なデータ(以下、要旨)
◇消費者信頼感指数速報値 : 結果72.6、予想65.5
◇同1年先の期待インフレ率: 結果3.4%、予想3.1% および
◇同5年先の期待インフレ率: 結果3.1%、予想3.0% の良好な結果
◇上記データを受けての米市場金利の反転上昇(週間では大幅に低下)
●前週に続き年限別米国債利回りでは鮮明な跛行色の拡大が観測された
>>将来の景気後退を示唆する長短金利の逆転現象はその幅が反転/縮小へ
◆株式・債券両市場による「景気・金融状況」の現状/先行きの判断に甚大な乖離
>>強気相場入りが鮮明な株式市場(上半期だけで米ナスダック総合は30%超上昇)
⇔ 縮小始まるも、依然深刻な景気後退を示唆する逆イールド(後掲のグラフ)
□【短期~中期的視座】「USD/円相場の上昇」をサポートする要因は減少・希薄化
〇欧米の利上げ継続観測(≒米金利がより長期間高水準にとどまるという観測)
⇒『タカ派なFRB・ECB、ハト派な日銀』の明白なコントラストのむし返し
⇒2週後の『米欧日中銀の政策決定会合』で上記が再度材料視されるか否か
〇昨今相関度が高まる日米実質金利差ならびに日米短期金利差の更なる拡大と
それに伴う円キャリートレード復活/活発化に対する期待
■【中期~長期的視座】先行きの「USD/円相場の下落」を示唆する要因
●銀行セクター不安から顕在化した“信用逼迫”への懸念は燻り続ける可能性大
>>>過去15ヶ月の急激な利上げ累積効果による景気悪化はこれから本格化
>>>3月に始まった欧米金融機関の破綻などの金融不安的動揺
>>>その後も、足許で下落が目立ち続ける商業用不動産市況
>>>2023年通年での米企業倒産件数はリーマンショック後で最高に達するとの予想
●米債券市場での『逆イールド』が示唆する「米景気後退」の蓋然性の高まり
>>>将来の景気後退を示唆する米債券市場での『逆イールド』は依然高水準
>>>『逆イールド』幅は一旦今年3月の最大値(▲1.08%)にほぼ面合わせの
水準まで拡大した後、既述の展開から次第に縮小(改善)傾向が顕現化(下表)
>>>10年債も含め名目金利も逆イールドも各々『限界的な水準』に接近と判断
>>>将来的に「FRBは“金融緩和(利下げ)”に向け漸進せざるを得ない状況」
>>>株式市場の好調は「米利上げサイクルが終了に近いとの見方」も重要な要因
●【日本】現在の『異次元の金融緩和』に追加的(深堀りの)余地は皆無
>>>今後の日銀の金融政策の選択肢は「現状維持」or「正常化」しか残されていない
>>>いずれにせよ金利に低下余地はほぼ無く変化としては「上昇」するしかない
>>>欧米の利上げが終われば、内外金利差は縮小へ向かう(=「円の買戻し」へ)
●【日本】(更なる円安進行には)通貨当局による『円買い介入』の蓋然性が継続
>>>為替相場には「“内外のファンダメンタルズを反映”した“秩序ある動き”」が
求められるものの、足許ではそれに逸脱気味の推移が展開していた
>>>高進するインフレに対し、金融政策面で抜本的な対抗措置(利上げ)を実施できな
かった日本にとっては更なる円安の進行は看過し難い事態
>>>昨秋、現在と類似した状況で行われた過去最大規模の円買い介入は145円台から
始まり、その後も徹底的に水準を押し下げる強い意志を伴って実施された
>>>先月、日本は「米国の外国為替監視対象国から除外」され、従前よりも市場介入
の自由度・意思決定速度が向上する環境となってきた
□【数年単位の超長期的視座】超長期的に「USD/円相場の上昇」をサポートする要因
①日本の貿易(経常)収支構造の激変(≒貿易赤字の常態化)
>>>TRADOM内コンテンツ「為替の歴史」&「月足チャート」もご参照ください
②2005~2007年当時の円キャリートレードが復活する可能性(環境)の高まり
>>>潤沢で安定した「内外金利差」、今後増加が見込まれる海外証券投資、
更には上記①で明らかになった「外貨不足」という需給動向
お詫び:冒頭にてお伝えした通り、来週は休載予定です。
なお、米国を中心とする「世界のインフレ・景気・金融政策」の現状分析、並びに短期を
中心とした見通しについては、GFIT為替アンバサダーでもある安田佐和子氏のレポート
(Weekly Report等)に詳細かつ非常に解りやすく解説されています。
TRADOMサイト内で、是非ご参照下さい。
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