―Executive Summary― 目次1.前週の為替相場の振り返り=ドル円、140円割れを回避した後は146円手前まで買い戻し【202 […]
テクニカル分析判断
サマリー:
●短期:高値圏でピークアウトを観測。『一時的なものかどうか』を試すステージへ
●中期:接近中だった「上昇の過熱」状態から一旦脱却。ピークアウトの兆候が出来
先週は「寄付144.39:142.07~144.91:終値142.08(前週比▲2.25円の円高)」の
推移を辿り、週足は4週ぶりに(比較的大きめの)陰線の形成となった。ここ数か月
「強力な上昇圧力が根強く残存している証」としていた「前週比でみた下値の切り
上がり」は15週目にして遂に終息を確認。ここ数週間指摘していた『当初想定より
遥かに強靭だった上昇局面も終盤』を迎え、少なくとも短期的には「高値圏での
ピークアウト」を観測したことが明らかとなった。
なお、4週前から2.90円⇒2.65円と一定の変動率を維持していた週間レンジは、
2週前に2.13円とやや縮小し(長めの上ヒゲと共に)上昇圧力の疲弊を示唆していた
ものの、先週は比較的大きな陰線を伴って2.84円と再び拡大に転じている。
以下では『短期・中期・長期の方向性』について各時間軸チャートによるテクニカルな
視点を中心にご案内。(今号の分析は2023/07/07のNY市場終値をベースに実施)
<以下の用語補足:「MA」=移動平均線、「RSI」=(上下への過熱を示す)相対力指数>
➊日足チャート:「21MA±4.32%のバンド」、「52MA & 200MA」、RSIを付記
短期(1週間~1か月程度)の方向性:「ピークアウトは一時的?」を試す局面へ
●黒い〇は天井形成、エンジの〇は底打ちの時点(共に短期的サイン含む)。また、
「ある(短期の)MAがより長期のMAを下回るデッドクロス(以下DC)とその真逆に
あたるゴールデンクロス(同GC)にも一部付与(意味合いは2週前分をご参照)。
◆天井形成の場合:①RSIが「70以上」か、その水準に接近している
②その時点のレートが[21MA+4.32%]以上にあるか、その水準に接近している
◇底打ちの場合:①RSIが「30以下」か、その水準に接近している
②その時点のレートが[21MA-4.32%]以上にあるか、その水準に接近している
>>>少なくともチャートに表示した(非常に変動率が高かった)過去1年間は、
ほぼ上記2点の条件において「ピークアウト/ボトムアウト」を形成している
●昨年10/21の『ピーク(151.95)』と今年1/16の『ボトム(127.23)』の下落局面
(チャートの青い↓)戻り(反発)の目標値は一般的に図中の太い紫の水平線(3本)
>>『50%:139.59』は5/25に到達(「3本の太い水平線」のうち一番下の線)
>>『61.8%:142.51』は6/22に到達(「同上」の真ん中:2番目の線)
>>『76.4%:146.12』は依然未達(「同上」のうち一番上の線)
⇒先週のピークアウトにより当面この水準への上値トライは遠のいたと判断
●なお、一時75.9と「上昇の過熱度合い」が明らかに警戒レベルに達していた
RSIは先週末49.8と「正に中立」の水準へ低下。4月以降にRSIが形成してきた
レンジで考えれば、むしろここからは反発してもおかしくないレベルとなった
●少なくとも短期的ピークアウトを迎えた今、これが『一時的なものかどうか』
(下値のメド)が試される局面に到ったと判断している
>>>想定レンジ=今週:139.95~144.00 、今後1ヶ月:137.70~146.70 =
➋週足チャート:「21MA±4.32%/±7.41%/±9.87%のバンド」&「52MA」、RSIを付記
中期(1か月超~半年程度)の方向性:短期に続いてピークアウトの兆候が出来
●黒い〇は天井形成(速度調整的サイン含む)、エンジの〇は底打ちの時点を表示。
●昨年10/21の『ピーク(151.95)』と今年1/16の『ボトム(127.23)』の下落局面
(チャートの青い↓)戻り(反発)の目標値は一般的に図中の太い紫の水平線(3本)
>>『50%:139.59』は5/25に到達(「3本の太い水平線」のうち一番下の線
>>『61.8%:142.51』は6/22に到達(「同上」の真ん中:2番目の線)
>>『76.4%:146.12』は依然未達(「同上」のうち一番上の線)
⇒先週のピークアウトにより当面この水準への上値トライは遠のいたと判断
●ただし、3月最終週からの上昇トレンドが崩れたとの証跡は依然見当たらず、
当欄以外での分析手法では引き続き上昇継続を示唆するものも少なくない。
したがって、先週末の反動(買戻し)が先行する展開も充分考えられる
●しかし、[21MA]からの上方乖離は修正(≒速度調整)され始めたばかりであり、
先週の下落で低下したとはいえRSIの水準(61.2)は昨秋急落時の水準および
“上昇の過熱”を警戒すべき70に依然接近中で上昇余地は次第に減少している
●また、先週末の急落は再び『上昇への障壁』を重厚にした可能性が高いため、
少なくとも短期的ピークアウトを迎えた今、これが『一時的なものかどうか』
短期と同様に『下値のメド』が試される局面に到ったのではないかと判断
>>> 今後6か月間の想定レンジ = 128.70~148.80 ⇒ 128.70~146.70 =
➌月足チャート:「20MA±18.0%のバンド」「60MA±30.0%のバンド」、RSIを付記
長期(半年超~1年程度)の方向性:本格修正に着手も、現状では大幅な変更までに到らず
●月を通して戻り高値更新が続き、6月は幾つかの重要な上値抵抗線を終値ベースで突破
●ただし、既述➊➋と同様に長期にも“反発局面のピークアウト”の兆候が窺える
●また、更なる上昇に対してはいくつもの強力な上値抵抗線が控える(チャート右上部)
●過去3ヶ月の展開を加味し本格修正に着手したが、現状は傾きをマイルドにした形での
「“緩やかな下落トレンド”の可能性は依然残存」を長期のメインシナリオとして維持
●昨年10月は20MA+18%と60MA+30%を同時に上回るという未曽有の異常な過熱状態
●一時85超まで過熱したRSIは中立領域に位置(64.5)も上昇よりも低下余地が大きい
●異常状態からの反落だけに「少なくとも20MA突破」に向けた下落先行の展開へ
<現在132.87円の水準にある[20MA]は来月以降も約1.3円/月に上昇する見込み>
>>> 今後1年間の想定レンジ = 128.70~148.80 ⇒ 128.70~146.70 =
ファンダメンタルズ分析判断:簡略版
◎先週も米国経済指標は概ね良好だった上、週央に公表されたFOMC議事録の内容・
FRB高官の発言からは『明確なタカ派色』が窺えた
◎これら「インフレの高止まり⇒利上げ長期化観測」を示唆する材料には事欠かず
米国の債券市場利回りは上昇を加速。ただし、債券利回りは10年以上の長期債を
中心に上昇し、政策金利見通しを反映しやすい2年以下の短期債利回りの上昇は
相対的に抑制される恰好。 6月までとは金利上昇の内容が様変わりの展開に
●加えて『タカ派な米欧中銀⇔ハト派な日銀』の鮮明な対比等、蒸し返しの材料も
繰り返し喧伝されたが、週末のUSD円相場は「USD安/円高」が進んだ
●「USD安/円高」が進んだ主因として挙げられたのは、主に以下の2点
➊市場予想を下回る雇用者数の伸び⇒FRBによる積極的な利上げ懸念が緩和(?)
>>6月の米雇用統計:前月比+20.9万人(市場予想の同+23万人を下回る)
⇒ 2020年12月以来の低水準。なお、過去2ヶ月分も▲11万人の大幅下方修正
⇔ 平均賃金は前月比・前年比共に市場予想を上回り、インフレ警戒感は継続
>>週末に2年債だけ利回りは低下(?)⇔ 5年以上の債券利回りは上昇
>>週間では全ての年限で債券利回りが上昇し日米金利差拡大も円高進む(?)
➋「米10年債利回りの4.0%超え」>日米金利差拡大>介入警戒感高まる(?)
>>「米10年債4%超=145円超⇒介入」の見方(?)⇔ 既に前日から4.0%超
◆いずれも俄かに首肯できない理由付け:結局テクニカルな買われ過ぎが主因か
●以上、先週の年限別米国債利回りでは鮮明な跛行色の拡大が観測された
>>将来の景気後退を示唆する長短金利の逆転現象はその幅が反転/縮小へ
◆株式・債券両市場による「景気・金融状況」の現状/先行きの判断に甚大な乖離
>>強気相場入りが鮮明な株式市場(上半期だけで米ナスダック総合は30%超上昇)
⇔ やや縮小も依然深刻な景気後退を示唆する逆イールド(後掲のグラフ)
□【短期~中期的視座】当面「USD/円相場の上昇」をサポートする要因
〇欧米の利上げ継続観測(≒米金利がより長期間高水準にとどまるという観測)
⇒『タカ派なFRB・ECB、ハト派な日銀』の明白なコントラストのむし返し
〇昨今相関度が高まる日米実質金利差ならびに日米短期金利差の更なる拡大と
それに伴う円キャリートレード復活/活発化に対する期待
■【中期~長期的視座】先行きの「USD/円相場の下落」を示唆する要因
●銀行セクター不安から顕在化した“信用逼迫”への懸念は燻り続ける可能性大
>>>過去15ヶ月の急激な利上げ累積効果による景気悪化はこれから本格化
>>>3月に始まった欧米金融機関の破綻などの金融不安的動揺
>>>その後も、足許で下落が目立ち続ける商業用不動産市況
>>>2023年通年での米企業倒産件数はリーマンショック後で最高に達するとの予想
●米債券市場での『逆イールド』が示唆する「米景気後退」の蓋然性の高まり
>>>将来の景気後退を示唆する米債券市場での『逆イールド』は足許でやや縮小
>>>『逆イールド』幅は一旦今年3月の最大値(▲1.08%)にほぼ面合わせの
水準まで拡大した後、既述の展開から徐々に縮小(改善)傾向に(下表)
>>>10年債も含め名目金利も逆イールドも各々『限界的な水準』に接近と判断
>>>将来的に「FRBは“金融緩和(利下げ)”に向け漸進せざるを得ない状況」
>>>株式市場の好調は「米利上げサイクルが終了に近いとの見方」も1つの要因
●【日本】現在の『異次元の金融緩和』に追加的(深堀りの)余地は皆無
>>>今後の日銀の金融政策の選択肢は「現状維持」or「正常化」しか残されていない
>>>いずれにせよ金利に低下余地はほぼ無く変化としては「上昇」するしかない
>>>欧米の利上げが終われば、内外金利差は縮小へ向かう(=「円の買戻し」へ)
●【日本】(更なる円安進行には)通貨当局による『円買い介入』の蓋然性が急上昇中
>>>為替相場には「“内外のファンダメンタルズを反映”した“秩序ある動き”」が
求められるものの、足許ではそれに逸脱気味の推移が展開していた
>>>高進するインフレに対し、金融政策面で抜本的な対抗措置(利上げ)を実施できな
かった日本にとっては更なる円安の進行は看過し難い事態
>>>昨秋、現在と類似した状況で行われた過去最大規模の円買い介入は145円台から
始まり、その後も徹底的に水準を押し下げる強い意志を伴って実施された
>>>先月、日本は「米国の外国為替監視対象国から除外」され、従前よりも市場介入
の自由度・意思決定速度が向上する環境となってきた
>>>円を取り巻くファンダメンタルズや円安進行の速度、さらにその絶対水準を考慮
すれば、本邦通貨当局による『円買い介入』の蓋然性は着実に上昇している
□【数年単位の超長期的視座】超長期的に「USD/円相場の上昇」をサポートする要因
①日本の貿易(経常)収支構造の激変(≒貿易赤字の常態化)
>>>TRADOM内コンテンツ「為替の歴史」&「月足チャート」もご参照ください
②2005~2007年当時の円キャリートレードが復活する可能性(環境)の高まり
>>>潤沢で安定した「内外金利差」、今後増加が見込まれる海外証券投資、
更には上記①で明らかになった「外貨不足」という需給動向
お詫び:今週のファンダメンタルズ分析判断も、簡略版のみと致しました。
なお、米国を中心とする「世界のインフレ・景気・金融政策」の現状分析、並びに短期を
中心とした見通しについては、GFIT為替アンバサダーでもある安田佐和子氏のレポート
(Weekly Report等)に詳細かつ非常に解りやすく解説されています。
TRADOMサイト内で、是非ご参照下さい。
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