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  • Weekly Report (5/22):『 根強い上昇モメンタム 』を再確認も強固な上値抵抗帯と再び対峙
    吉岡 豪麿
    この記事の著者
    トレーダム 取締役CAO

    国内大手金融機関の外国為替取引部門で外国為替、外国証券等のディーラーとして20年、海外金融機関でアセットマネージャーとして15年以上の経験を有する為替のエキスパート。貿易企業の経営者を経て、企業年金基金の資産運用を担当。2021年1月よりCAOとして投資助言部門を担当。

    マーケット分析

    テクニカル分析判断

    サマリー:

    想定を大きく上回る根強い上昇圧力を改めて確認。「強力な上値抵抗帯の

    上限を終値で明確に上回れる」かどうかが注目される  ( 日足/ 週足/ 月足 )

    先週は「寄付135.63:135.60~138.75:終値137.94(前週比+2.22円の円安)」の推移

    となり、週足は連続陽線を形成。この過程で『ダブルトップ的ピークアウト』と認識

    していた137.70~90の水準をあっさりと突破して『中期的に強力な上値抵抗帯』へ

    突入し一時138.75まで上昇も、139円台前半まである上値抵抗帯の上限を目前に調整

    が入り、軟化する格好で週末を迎えた。ただ「上昇圧力がしぶとく残存している証」

    としてきた「前週比での下値の切り上がり」は先週も継続しており、本年初来、特に

    3月下旬からの「緩やかな上昇(トレンド)の継続」を強く市場参加者に印象付けた。

    なお、2週前に4.26円と再拡大の加速を示した週間レンジは前週2.01円と一転して

    急縮小に転じたものの、先週は再び拡大し3.15円まで回復している。

    結果として、根強い上昇圧力は我々の想定より遥かに強靭でありそのモメンタムも

    また俄かには衰えそうもないことを再確認させられる展開となった。しかしながら、

    繰り返し指摘している『中期的に強力な上値抵抗帯』もまた依然としてその機能を

    維持し続けており、その上限突破に向けた動きが予想される今週以降の市場展開は

    今後の市場動向を予測する上で極めて重要な意味合いを持つことになろう。

    以下では『短期・中期・長期の方向性』について各時間軸チャートによるテクニカルな

    視点を中心にご案内。(今号の分析は2023/05/19のNY市場終値をベースに実施)

    <以下の用語補足:「MA」=移動平均線、「RSI」=(上下への過熱を示す)相対力指数>

    ➊日足チャート:「21MA±4.32%のバンド」、「52MA & 200MA」、RSIを付記  

    短期(1週間~1か月程度)の方向性『強力な上値抵抗帯』を終値で突破できるか?

    USDJPY D 20230519

    チャートの黒い〇は下落、エンジの〇は上昇のサイン過去13ヶ月は9~11月を

    除いて『2つの価格帯(下値支持/上値抵抗:□の青い帯)』に収まっているものの、

    年初来では緩やかな上昇(紫のトレンドライン)が続く。また、3月初と4月下旬に

    形成されたダブルトップを先週あっさりと上抜けたものの、過去1年

    で観測された『中期的に強力な上値抵抗帯』(137.70~139.20)の上限突破は未達。

    ●上昇モメンタムの強さから今週も「上値トライ」の展開が想定されるが、既述の

    通り上値抵抗もまた強固なことから、終値で上限(139.20)を突破できるかに注目。

    ●先週も続伸したRSI(53.4⇒57.3⇒63.9)は上昇の過熱を示す70(ピンクの細い線)

    で再びはね返されたが、(上値は僅少も)上下ともに変動余地は残存。

    >>>想定レンジ=今週:135.00~139.20 、今後1ヶ月:133.20~139.20 =

    ➋週足チャート:「21MA±4.32%/±7.41%/±9.87%のバンド」&「52MA」、RSIを付記

    中期(1か月超~半年程度)の方向性『強力な上値抵抗帯』を終値で突破できるか?

    USDJPY W 20230519

    チャートの黒い〇は下落、エンジの〇は上昇のサイン過去57週は昨秋の12週

    を除き2つの価格帯(下値支持/上値抵抗:□の青い帯)』に収まっているものの、

    年初来では緩やかな上昇(紫のトレンドライン)が続く。また、3月初と4月下旬に

    形成されたダブルトップを先週あっさりと上抜けたものの、過去1年

    で観測された『中期的に強力な上値抵抗帯』(137.70~139.20)の上限突破は未達。

    ●上昇モメンタムの強さから今週も「上値トライ」の展開が想定されるが、既述の

    通り上値抵抗もまた強固なことから、終値で上限(139.20)を突破できるかに注目。

    ●RSIは、前回ピークアウトした4月第4週や2月第3週、さらに昨年急落した

    11月第2週の水準 (ピンクの細い線) を僅かに超過も依然として中立的領域。

    >>> 今後6か月間の想定レンジ = 127.800~138.00 ⇒ 127.80~139.20 =

    ➌月足チャート:「20MA±18.0%のバンド」「60MA±30.0%のバンド」、RSIを付記  

    長期(半年超~年単位)の方向性:2015~16年の推移想定も、強い上値抵抗帯に急接近

    USDJPY M 20230519

    ●昨年10月は20MA+18%と60MA+30%を同時に上回るという未曽有の異常な過熱状態

    ●一時85超まで過熱のRSIは中立領域に位置(61.7)を維持も低下余地は大きく残存

    異常状態からの反落だけに「少なくとも20MA⇒60MA」に向け次第に下落する展開へ

     <現在129.65円の水準にある[20MA]は来月には130.80円超に上昇する見込み

    >>>> 今後1年間の想定レンジ = 122.10~138.00 ⇒ 125.10~141.60 =

    先週も『根強い上昇モメンタム』を改めて確認する展開となったが『中期的に強力な

    上値抵抗帯』の上限を終値で上抜けすることは出来なかった。ただ、そうした状況は

    「強力な上値抵抗帯の上限を終値で明確に上回ってくれば、今後の予測シナリオを

    根本的に見直さざるを得ず、対応は必須」ということを意味している。

    ファンダメンタルズ分析判断:簡略版

    先週発表された欧米の経済指標は市場予想を下回ったものが殆ど無く良好な印象

    ◎欧米の金融当局者の発言は相変わらず「タカ派」的色彩の濃い発言が圧倒的

     (「比較的良好な経済活動・想定より高止まりするインフレ」が背景)

    ◎要注目としていた「米債務上限問題の帰趨」は週初から「問題解決に向けた進展」

    への期待が高まり続けた

    >>>これらを材料に金融市場ではリスク選好的な動きが目立ち株価・金利が上昇

    ■週末には上記と対照的な動きも出来

    ●欧米銀行セクター不安から顕在化し始めた“信用逼迫”に対するパウエルFRB議長

    の以下の発言が「ハト派的。少なくともタカ派的ではない。」との受け止め方

    「信用状況の逼迫は我々の目標を達成するために、政策金利をこれ以上引き上げる

    必要性を減退させている」

    「FRBは会合の都度意思決定を行う」と改めて表明

    「過去1年超の積極的な利上げを経て、FRB当局者には『データと変化する見通し』

    を確認しそれらを慎重に判断する余裕がある」

    >6月のFOMCでの追加利上げ確率: 発言前 約40% ⇒ 発言後 約16%へ低下

    ●「米ホワイトハウスと共和党の連邦債務上限を巡る協議が一時中断」との報道

    ●「議会が来週中に(債務上限に関する)合意を可決できなければ、政府の資金繰り策が

    行き詰まる『Xデー』の6月1日より前に解決する可能性は低く、交渉担当者には

    ほとんど余裕がない」との見方が市場では圧倒的

    ●「一連の銀行破綻を受けもう一段の銀行合併が必要になる」イエレン財務長官

    >>>これらを材料に金融市場では株価が小幅に下落の一方、金利は引き続き上昇

    >>>金融市場の反応だけでいえば『スタグフレーション』を織込む動き

    ◆昨年後半には急速な利上げに併せ銀行の貸し出し態度の厳格化が進んでいたが、先般の

    金融システム不安の拡がりを背景にその厳格化は一段と加速する見通し

    ◆また、実態経済が景気後退に陥りつつある兆候はそこかしこに現れ始めていることから、

    年後半に「FRBの金融政策が引締めから緩和(利下げ)へ転換」する可能性も高まる

    ◎これまでも繰り返しご案内してきた通り、基本的なファンダメンタルズ判断は主に上記

    2点をベースに構築してきた。しかしながら、その景気鈍化(マイルドな後退)の主因が

    引き続きインフレ高進にあり、仮に『スタグフレーション』が顕現化するとなれば、

    根本的にシナリオを見直す必要も出てくる。我々を含めて、今週も『債務上限問題』

    の帰趨と共に今後の経済指標への注目度合いは嫌が応にも高まることとなろう。

    お詫び:今週のファンダメンタルズ分析判断も、筆者都合により簡略版のみと致しました。

    なお、米国を中心とする「世界のインフレ・景気・金融政策」の現状分析、並びに短期を

    中心とした見通しについては、GFIT為替アンバサダーでもある安田佐和子氏のレポート

    (Weekly Report等)に詳細かつ非常に解りやすく解説されています。 

    TRADOMサイト内で、是非ご参照下さい

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