目次Executive Summary1.先週の為替相場の振り返り=ドル円、138.75円まで年初来高値を更新2.主な要人発言3.主な経済指 […]
<テクニカル分析判断>
●短・中期:中期下落トレンド内での「底打ち」を確認。上昇トレンドへの移行を着実に模索中
10/7週は「寄付148.71:147.34~149.58:終値149.13(前週比+0.48円の円安」の推移となり、前週の超大陽線をフォローする展開。小幅ながらも2週連続の陽線を形成(上図)し、今次下落トレンドの収束をより明確に示唆した。また、前週7.35円と再び大幅に拡大した週間レンジは、先週2.24円と我々の想定を遥かに下回る格好で縮小。これは先週も指摘したように<相場の水準がかなり上昇したことによって、下落/上昇の両圧力が再び拮抗し始める>との想定が顕現化し始めたものと考えられる。
なお、先週のレポートの当欄でも<「今次下落トレンドの収束(底入れ)」を強く示唆する要因>を解説したが、 (上図で提示した)「前週の超大陽線をフォローする展開」のポイントは以下の通り。
◎底打ち確認後、順調な上昇トレンドへと移行した「①」と今次「②」との相似点
◇直近の下落トレンドライン(➊・➌)を「大陽線で上抜けた翌週に、小幅ながらも陽線を続けて上昇トレンドへの転換途上」であることを示唆した点
◇①②共に一気に21週MAの回復までは到らなかったものの、上値抵抗線である「21週MA▲2.16%」を(終値で)2週連続で上回った点
◇足型だけでなく、RSIやストキャスティクスも「底打ち⇒上昇局面に転換」した本年初以来の水準へ反発し、底入れを強く示唆している点(上図下部の赤い〇表示部分)
=>>>これらをもって<「中期下落トレンド」の終束⇒「上昇トレンド」への移行プロセス入り>との判断に到った
■ただし、依然下降中であり接近してくる52週MAや21週MAは相応の上値抵抗線となって来ると見られ、150円という大きな節目の突破には相応の抵抗が予想される
=>>> この52週MAと21週MAは来月早々にもデッドクロスの予定(後掲にて詳述)
当然ながら<「中期下落トレンド」の終束⇒「上昇トレンド」への移行プロセス入り>の状況は、上図の短期時間軸での日足チャートでも鮮明に窺える。以下そのポイント。
◎9/16以降、概ね上昇トレンドライン沿って上昇し「上値抵抗線と思われた21日MA」や「非常に強い上値抵抗だった52日MA」を突破し、その後も順調に水準を切り上げている(右の赤い上昇カプセル)
◎それに伴い、ストキャスティクスやRSIは9/16の底打ち⇒明確な上昇軌道を辿っている
◎また、2週前から「21日MAが明確に・200日MAが極めて緩慢ながらも“上昇”」に転じており、このまま横バイとなったとしても「低下中である52日MAの反転/上昇」も視野に入ってきた
=>>> 短・中・超全てのMAが上昇に転じる
=>>> また、10/14に「21日MAと52日MAはゴールデンクロスすることが確実」
< ⇔ >
■一方で、2週前が想定を大幅に上回る急上昇だったため「ストキャスティクスの水準」や「21日MA+4.32%ラインとの価格差」には『上昇の過熱』の兆候が窺えたものの、この状況は、先週の強保合い推移によってやや緩和した
■150円という大きな節目の突破が視野に入る中で、過去の推移から想定される上値抵抗線(149.85:図中灰色太線)や強力な上値抵抗帯(150.80~151.95:図中薄い灰色の帯)が迫りつつある
以上から導き出された<今週のテクニカル分析の結論>は以下の通り
□2週前に続き、今次下落トレンド内での「底打ち」をより明確に確認
=>>>再び140円割れに向けた「下値模索」の動きが本格化するリスクは大きく後退
□それに伴い「上昇トレンド」への移行(転換)プロセス入りも顕現化の度合いが向上
■一方、150円という大きな節目の突破が視野に入る中で、過去の推移から想定される「強力な上値抵抗線や上値抵抗帯」も着実に迫りつつある
□引き続き「過度に予断を持つことなく」変化の兆しを見落とさぬ姿勢を継続した上で、終値が以下の水準を「突破or維持」できるかどうかに注目
① 150.90円=21週MA
② 150.15円=52週MA
③ 149.85円=21週MA▲0.69%
④ 148.05円=21週MA▲1.86%
⑤ 147.75円=21週MA▲2.04%
⑥ 147.15円=21週MA▲2.46%
⑦ 146.25円=21週MA▲3.09%
>>> 相場の水準がかなり上昇したことによって、下落/上昇の両圧力が再び拮抗していることから「市場変動率は過去数週の平均よりは縮小するものの、比較的高水準は維持する」と予想
~以下では『短期・中期・長期の方向性』についての分析ポイント及び各時間軸での想定レンジをご案内します。(今号の分析は2024/10/11のNY市場終値をベースに実施) ~
<以下の用語補足:「MA」=移動平均線、「RSI」=(上下への過熱を示す)相対力指数>
➊日足チャート:「21MA±4.32%のバンド、52MA & 200MA」、RSI等
短期(1週間~1か月)の方向性:ペースを落としつつも、上昇プロセスへの移行が徐々に進展
〇上図は直上を半年間に短縮し当該期間の推移を拡大したもの。コメントは既掲のものをご参照下さい
◎「今次下落トレンドの底入れ」⇒ 上昇プロセスへの移行が徐々に鮮明に
◎一方で、150円という大きな節目の突破が視野に入る中で、過去の推移から想定される「強力な上値抵抗線や上値抵抗帯」も着実に迫りつつある
=>>>下方リスクは大幅に後退も、このペースでの上昇には相応の抵抗が想定される
>>> 想定レンジ=今週:147.15~150.90、今後1ヶ月:144.45~153.60=
➋週足チャート:「21MA±4.32%/±7.41%/±9.87%のバンド & 52MA」、RSI等
中期(1か月~半年程度)の方向性:「上昇トレンド」への移行が巡航速度で進展中
◇上図は冒頭掲載の15ヶ月分を2.5年分に延長したもの。コメントも既掲をご参照下さい
◆◎◆既掲への追加ポイント
1)2022年秋との相対比較において下落サイクルの持続期間/値幅には未充足感が若干あったが、ここ2週の反発によって今次下落サイクルは「12週/22.35円の下落」をもって完全に収束
2)RSIやストキャスティクスは底打ちの兆候が明確化し22年秋のトレンド反転に類似してきた
□以上より<「上昇トレンド」への移行プロセス入り>との判断に到った
■ただし、依然下降中であり接近してくる52週MAや21週MAは相応の上値抵抗線となって来る可能性が高い
=>>> また、この52週MAと21週MAは来月早々にもデッドクロスの予定
◇但し、図中にもある通り週足(中期時間軸)でのデッドクロスは「底打ち⇒上昇への転換」の契機となる場合が多く「下落圧力の加速」を意味するとは言えない
>>>今後6か月間の想定レンジ = 141.75~154.50⇒144.45~156.45=
➌月足チャート:「20MA±18.0%のバンド」「60MA±30.0%のバンド」、RSIを付記
長期(半年超~1年程度)の方向性:「20ヶ月MAの下抜け」は示現も、トレンド反転は回避?
■7・8月に続き9月も陰線となり、想定通り「3ヶ月連続陰線、20ヶ月MAを下抜け」が示現
□しかし、ここ2週の反発で即座に20ヶ月MA(現在147.20円)超の水準を回復
⇒2022年の「3カ月連続陰線後の長大陽線」と同様に「今月、長大陽線を形成して20ヶ月MA超の水準回復」なるかが注目される
>>> 今後1年間の想定レンジ = 141.75~158.80 ⇒144.45~162.00 =
<ファンダメンタルズ分析判断>
◇米国:主要経済指標は予想比良好 ⇒長期金利は上昇、株式は上昇し最高値更新
◇日本:円安進展 ⇒長短共に金利は上昇、海外高も加わり株式は大幅に反発
◇USD円:「米高速利下げ期待」が吹き続き後退 ⇒これに伴いUSD円も強含み
◇米債利回り:インフレ指標を中心に概ね予想比良好な主要経済指標・タカ派寄りのFRB高官発言・中東情勢緊迫化を受け「米高速利下げ期待」は引き続き後退。金利は長期主導で上昇
> 2年債利回り:10/4 3.924% ⇒ 10/11 3.953%(前週比 +0.029%上昇)
>10年債利回り:10/4 3.969% ⇒ 10/11 4.096%(前週比 +0.127%上昇)
=>10年-2年の利回り差は「+0.143%と前週(+0.045%)比で大きく拡大しスティープ化進展(下図)
:10年債利回りが7月最終週以来の4%台に復帰し、2週ぶりに順イールドが大きく拡大
前半の<テクニカル分析>では、先週は(想定以上に大幅な反発を見せた)2週前の動きをフォローする意味合いが強かったことを指摘した上で、以下をポイントに挙げました。
1)2週前に「今次下落トレンドの底入れを確認」したが、先週、その確実性が一段と高まった
2)上記1)を受け「地合いの強さと(底入れから)上昇プロセスへの移行/転換」がより鮮明になってきた3)一方、2週前の上昇がかなり急速だったことで、節目の150円超の模索が視野に入ってきたものの、相場の水準自体もかなり上昇しているため「今後の上値トライには相応の抵抗」が想定される
他方<ファンダメンタルズ分析>においても、先週は、上記の<テクニカル分析>と同様に「2週前の動きをフォローする意味合いが強かった」との認識を強くしています。即ち「(労働市場の悪化に端を発した)過度な『米景気減速(⇒景気後退)に対する懸念』の後退がさらに進展した」ということ。
上記と対応させるなら、以下をポイントとして挙げられるでしょう。
1)’米主要経済指標は概ね事前の市場予想を上回るものが多く「米景気の底堅さ(インフレの粘着性)」を示唆
=>>>「米9月消費者物価指数:結果 前年比+2.4%、予想+2.3%。 同コアCPI:結果+3.3.%、予想+3.2%」(共に市場予想を若干上回ったものの、2021年2月以来約3年半ぶりの小幅な伸びに止まった)
=>>>「米9月卸売物価指数(PPI):結果 前年比+1.8%、予想+1.6%」(こちらも市場予想を小幅に上回ったものの、約7カ月ぶりの小幅な伸びに止まった)
=>>>「米10月ミシガン大学消費者信頼感指数速報値の『1年先期待インフレ率』:結果2.9%、前月2.7%」(前回数値を上回る結果)
< ⇔ >
=>>>「米新規失業保険申請件数:結果25.8万件、予想23.0万件」の不芳な結果
=>>>「米ミシガン大消費者信頼感指数(速報値):結果68.9、前月70.1から低下」(アナリスト予想は70.8で前月比上昇の一方、不芳な結果:週末の短期金利低下の一因)
2)’FRB高官のタカ派的発言(時系列)
=>>>「米経済は依然として強すぎるリスクがあり、政策の再調整を妨げる可能性がある」(アトランタ連銀ボスティック総裁)
=>>>「利下げには、慎重でデータに基づくアプローチが適切」(ボストン連銀コリンズ総裁)
=>>>「11月の金利据え置きについて私は間違いなくオープン」・「今年内の利下げをスキップしても全く問題ない」(アトランタ連銀ボスティック総裁)
>>上記1)’ 2)’より「FF金利先物市場:FRBが11月のFOMCで0.25%の利下げ決定する確率は91%。一方で、金利据え置きを決定する確率は9%。0.5%の利下げ確率は0%に。」
=>>>「過度な『米景気減速(⇒景気後退)に対する懸念』の後退が一段と進展」(2週前までの“高速利下げ期待”の後退が続いている)
3)’FRB金融政策の方向性
=>>>利下げの最終着地点(ターミナルレート)は、3.1%台(2026年1月時点)と以前の2.8%台(2026年6月)から上方に修正
⇒『小幅の利下げでソフトランディングが達成できる』との見方への変化?
=>>>一方で、「11月FOMCでの0.5%利下げ」確率はほぼ消滅も「0.25%利下げ」は確実であり、(例えペースが緩慢であったとしても)「米国の金融政策は(金融緩和とまではいえなくても)“引締めの修正(利下げ)”方向にある」
⇒更に「ソフトランディング or ノーランディング」期待が増加
以上のポイントから、ここ数週間で「金融資本市場のリスク選好機運の高まり」はかなり勢いが増してきています。欧米を中心に見られる株価指数の最高値更新や大きく反落した主要通貨に対するUSD指数が持ち直し始めているのも、こうした流れの顕現化の一つと言えるのではないでしょうか。
さて、既述の通り「先週の米物価(インフレ)統計は『インフレ鈍化ペースが一服?』を示唆する内容」との受け止め方も少なくないようです。とはいえ、利下げサイクルに大きく影響を及ぼすほどではないとの見方から、市場の注目は米国の景気動向(データ)に再び移ったのだと思われます。
その意味では、今週も米景気動向の行方が市場のテーマとなり、9月米小売売上高や失業保険調査の強弱が大きく注目されそうです。
また、先週も指摘した通り、11月のFOMCの前には『11/1に10月雇用統計の発表』と『11/5に大統領選挙』が予定されています。いずれもどう転ぶか予断を許さないイベントですし『FRBの利下げペースや利下げ幅については、今後発表される雇用・物価指標次第で大きく変わる可能性がある』ことを前提に臨むべきだと考えています。
<「過度に予断を持つことなく」変化の兆しを見落とさぬ姿勢を継続> 繰り返しこのスタンスを忘れないように、2週前の当欄での<まとめ方>を再掲します。
<9/18のFOMCにかけて盛り上がっていた「米労働市場の悪化懸念 ⇒米景気後退懸念(& 2%に向けたインフレ鈍化期待) ⇒FRBによる高速利下げ期待」(我々は、これを“過度な織り込み”と判断)が徐々に沈静化しつつあると考えられます。>
また、2週前にも同様の主旨の発言を繰り返されていましたが、<パウエル議長はFOMC後の記者会見で『今回の0.5%を“新たな利下げペース”と見做すべきではない』と、市場が期待していた“大幅かつ速いペースでの利下げ”期待を牽制しました。依然として根強いこの金融市場の“高速利下げ期待”に、“データ次第”を標榜するFRBがどう対応するのかを注目しています。>
そして実際に、2週前の9月雇用統計によって、市場の“過度な織り込み”の巻き戻しが顕現化することになったわけです。
既述のテクニカル分析の結論とファンダメンタルズ分析は同じベクトルを持ち始めていることがここ数週でかなり明らかになってきたと感じています。この結果として生まれる「リスク選好機運の高まり」は「グローバルな株式市場やUSD円の上昇に直結する要因」となってゆくでしょう。
ただし、忘れてはならないのは『ペースは鈍化しようとも“米国の金融政策は緩和(利下げ)”方向』にあり、『(同じく)ペースは緩慢であっても“日本の金融政策は正常化(利上げ)”方向』にあるということ。現状の圧倒的な金利差は、多少縮小することはあっても劇的な変化は期待出来ませんが、USD円相場の上昇(円安)の速度を緩和させる要因にはなり得ます。
また、『米国政策金利の低下』が前提となって、我々が重要視している『主要通貨に対するUSD指数は依然として持ち直しのペースが上がらずやや抑圧気味の推移が継続』している状態です。USD円は需給関係からUSD指数とは別の展開となる可能性はあるものの、今後本格的に上昇するためにはやはりUSD指数の上昇が望まれるところであり、その状況に到るにはまだ相応の時間が必要だと考えられます。
お知らせ:米国を中心とする「世界のインフレ・景気・金融政策」の現状分析、並びに短期を中心としたUSD円相場見通しについては、トレーダム(※)為替アンバサダーでもある安田佐和子氏のレポート(Weekly Report等)に詳細かつ非常に解りやすく解説されています。TRADOM会員の方々はサイト内で是非ご参照下さい。
<(※):ジーフィット株式会社は10/1より「トレーダム株式会社/TRADOM Inc.」に社名が変わりました。>
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