目次原油相場の動向要因OPEC、OPECプラス世界原油取引の代表的指標原油価格とドルの相関原油と産油国通貨 原油相場の動向要因 原油価格もあ […]
<テクニカル分析判断>
●短期:2週前の急反落で上昇の過熱は完全に解消も、再開した上昇トレンドのペースは減速へ
●中期:2週前の急反落により過熱状態が大きく緩和。短期と同様にペースを落とした上昇再開へ
5/6週は「寄付152.88:152.79~155.94:終値155.76(前週比+2.88円の大幅な円安)」となり、週足では2週ぶりに(大)陽線を形成。日足では、大幅に急反落した前週(4/29週)に21日移動平均線を下回り軟弱な地合いで越週していたが、先週の反発によって終値であっさりとこの水準を回復し「長期上昇トレンド」の堅固さを改めて市場に印象付けた(後掲➊ご参照)。この点は、上掲の週足チャートでも<大幅な急反落を誘発した“上昇の過熱”と、かつての上値抵抗帯が“下値支持帯に転化しここで反発に転じた”こと>からも見て取れよう。
結果として、ほぼ想定していたUSD反発の展開とはなったものの、2週前の「大幅な急反落」の影響は色濃く残存していた模様。上掲の通り、先週は“21週MA+4.32%(156.12)”への接近に伴って上昇の勢いが急速に減退していた。なお、こうした自律的速度調整も見られたため、直近数週間で急激に高まった市場変動率は想定通り落ち着きを取り戻しつつあり「週間レンジは3.15円へ大幅に縮小」した。
以上より今週のテクニカル分析の結論も、先週の<短期を中心に“上昇の過熱”は大幅に緩和/解消。上昇トレンド再開に向けた環境は整いつつある>とほぼ同じだが、先週指摘した以下の要因に<上昇のペースは減速する>点を加えて、その蓋然性の高まりを見込んでいる。
- 重要なサポートライン(151円台後半:かつての上値抵抗帯が下値支持帯に転化)を全時間軸の終値で下回っておらず「中長期上昇トレンド」は崩れていないこと
- 中期(21週MA: 0.5円超/週)・長期(20ヶ月MA:7月以降約1.0円/月)を中心に今後上昇の加速が想定されること
>>> これらMAと市場レートの乖離が縮小し「過熱⇒中立」の状態に収束してゆくことになろう
以下ではいつも通り『短期・中期・長期の方向性』について各時間軸チャートによるテクニカルな視点を中心にご案内。(今号の分析は2024/05/10のNY市場終値をベースに実施)
<以下の用語補足:「MA」=移動平均線、「RSI」=(上下への過熱を示す)相対力指数>
➊日足チャート:「21MA±4.32%のバンド」、「52MA & 200MA」、RSIを付記
短期(1週間~1か月弱)の方向性:調整は終了⇒上昇トレンド再開もそのペースは減速へ
□「調整不可避の過熱」は解消 ⇒ 想定通り明確な底打ち/反発が示現(上図参照)
◇上昇トレンド再開は確実も、ここ数週間で急激に高まった変動率は沈静化に向かうと思われ、折に触れて図中の保合いを交えつつ、今後上昇ペースが鈍る21MAの傾きに沿った上昇へ移行か
>>> 想定レンジ=今週:153.00~157.50 、今後1ヶ月:151.35~159.60 =
➋週足チャート:「21MA±4.32%/±7.41%/±9.87%のバンド & 52MA」、RSIを付記
中期(1か月~半年程度)の方向性:過熱状態は緩和/解消へ。徐々に上昇トレンド本格化が進展か
1)大幅な下落調整から再び上昇トレンドに転じるも、2週前の急反落影響は大きく今後上昇ペースの鈍化は避けられまい
2)一方、21MAは例え横ばい推移が続いたとしても今後ひと月以上は「毎週0.5円を優に超えるペースで上昇」
3)上記2点から、実際のUSD円レートと21MAの乖離は縮小に向かい「上昇の過熱」状態は一段と緩和/解消が進展。これに伴い上昇余地も徐々に拡大へ
>>> 今後6か月間の想定レンジ = 151.05~163.50 ⇒ 151.35~163.20 =
➌月足チャート:「20MA±18.0%のバンド」「60MA±30.0%のバンド」、RSIを付記
長期(半年超~1年程度)の方向性:20MAの上昇に支えられ長期上昇トレンドが今後一段と本格化
◇<2021年以降は「3連続陽線の後には例外なく陰線が出来」しており今回もそのパターンが見られる可能性>があったが、想定通り「4月も陽線」が示現
>>>4カ月連続の陽線は2014年7-12月の6ヶ月連続以来(上図➊を含む部分)
◇上図【A】および【B】との位置を考慮すれば、現在は図中の➊・➋に類似。双方共に上昇の過熱状態にあったが「➋は直後に反落転換」も「➊ではペースを落としつつも更に9カ月にわたり過熱状態が継続」
>>>現在は「20ヶ月MAは7月以降に毎月約1.0円上昇する」など「過熱状態が緩和/解消に向かいつつある」上、➊以来の4カ月連続陽線が示現していることからも➊に準ずる可能性がある
>>> 今後1年間の想定レンジ = 151.05~165.60 ⇒ 151.35~165.90 =
<ファンダメンタルズ分析判断>
□先週の日米金融市場の変化(下表右端)
◇米国:「主要経済指標の発表なく金利はほぼ横ばい」⇒「企業業績好調から株式市場は3週続伸」
◇日本:「市場金利は短期を中心に上昇」も米国株の堅調を助けに「本邦株価は前週比ほぼ横ばい」
◇USD円:前週の乱高下を経た前週比急落を受けても、底打ちから再反騰して155円台後半を回復
【米国】週間の変化
■経済指標:主要な経済指標発表が希薄も、市場予想より「軟弱」な評価多し
◆新規失業保険申請件数: 結果 23万1千件(市場予想 21万2千件)
>>>昨年8月以来の水準へ増加
◆米5月ミシガン大学消費者信頼感指数: 結果 67.4(市場予想 76.2)
>>>昨年11月以来の水準へ急低下
◇ただし、同「期待インフレ率」は「1年先と5年先が共に上昇」していた
>>>指標の重要度の問題か、米債利回りに目立った変化は無し
>>>前週末の雇用統計に繋がる一連の軟調な経済指標を受けて、「FRBが利下げを急ぐ必要はない」とのそれまで拡大していた認識が大きく巻き戻されることになっていた
>>>実際、雇用統計発表後のFF金利先物市場では「0.25%の利下げが年内に1~2回行われる」、「9月か11月の利下げ開始の可能性が高い(9月は62.2%)」との状況にほとんど変化無し
<<⇔>>3週前までは、インフレ率の高止まりから「利下げは1回だけ」との見方が優勢だった
◇債券利回り:主要経済指標の発表がなく、米国債利回りは前週比で概ね横ばい
> 2年債利回り:5/3 4.827% ⇒ 5/10 4.868%(前週比 +0.041%上昇)
>10年債利回り:5/3 4.512% ⇒ 5/10 4.504%(前週比▲0.008%低下)
=>10年-2年の逆イールドは「▲0.364%へ前週比でやや拡大」(下図)
◎株式市場:「好調な企業業績発表」や「労働市場の過熱感緩和・労働需給逼迫緩和を示し、FRBが年後半に利下げに踏み切るとの期待」から上昇。週間では主要3株価指数全てが3週連続の上昇
◎USD指数:既述の変化に乏しい金利状況を受け前週比で+0.27%と小動き。ただし、上昇分のほとんどはUSD円の上昇によるもの
◇USD円は「介入による急落を経て“上昇の過熱”が大幅に緩和/解消」したことから再度反発軌道を辿るも、156.00を目前に伸び悩むなど「上昇ペースの低下」は避けられない模様
【日本】週間の変化
◇債券利回り:冴えない経済指標の中でも、短期は上昇/長期も強含み横ばい
> 2年債利回り:5/2 0.289% ⇒ 5/10 0.315%(前週比+0.026%上昇)>10年債利回り:5/2 0.900% ⇒ 5/10 0.905%(前週比+0.005%上昇)
◇主要株価指数:米株の3週続伸などを好感も金利上昇を嫌気して「横ばい」
>TOPIX:前週末 2,728.53 ⇒ 2,728.21
>日経平均株価:前週末 38,236.07 ⇒ 38,229.11
先週は米国の重要な経済指標発表がほぼなかったこともあり、既述の通り日米金融市場に大きな変化はありませんでした。いや、「週間レンジが3.15円/前週末比+2.88円の円安」だったのですから、通常であれば「USD円(為替市場)は“動いた”」と言えるでしょう。そう感じないのは、やはり2週前の本邦通貨当局による介入が与えた「変動率の急上昇」というインパクトがかなり大きかったからだと考えられます。
ただし、かねてより当欄でも主張してきた通り「円買い介入だけでは円安の流れを反転させることは出来ない」ようです。冒頭のテクニカル分析でも指摘しましたが、<かつての上値抵抗帯が“下値支持帯に転化しこの水準(151円台後半)で反発に転じた”こと>で逆に<「長期上昇トレンド」の堅固さを改めて市場に印象付けた>観すらあるからです。
<日本が本気で円安を止めようとするのなら「円安の主因(=日本の弱点)」である「日米間の大幅な“実質金利差”」を縮小させる政策の総動員が必要>と繰り返し言及してきましたが、利上げを含めてその具体的政策の実施が待たれるところです。
さて、そんな状況下「金融政策決定会合における主な意見(4月25日・26日開催分)」が、先週5/9に公表されました。Weekly Report:4/30分では“円安対応にゼロ回答だった内容に個人的には失望”としていた前回の政策決定会合でしたが、これを読むと「円安に対する問題意識は高まっていた」ことが解りました。以下、個人的に重要だと判断したポイントを一部抜粋。
< 円安による物価上振れリスクに関する主要な発言>
◎“円安と原油高は、コストプッシュ要因の減衰という前提を弱めており、物価の上振れ方向のリスクにも注意が必要”
◎“足もとの円安と原油価格等の上昇が、輸入物価を通じて企業物価へ波及しつつある状況を鑑みると、賃上げに伴うサービス価格の高まりに加えて、現在伸び率が低下している財価格が底打ちして反転する可能性にも注意を払う必要がある” など
◎(内閣府参加者から)“円安による家計購買力への影響には注意が必要”と、円安のマイナス面を明確に指摘する発言もあった
>>> ただし、4/26の会合後の記者会見において植田総裁は“基調的な物価上昇に大きな影響は与えていない”旨の発言を繰り返しており「上述の意見とはかなりのギャップがある」との印象です。
しかしながら、「翌週4/29には一時160円を突破した円安」と「通貨当局による大規模な(覆面)介入」を目の当たりにして、5月に入り植田総裁の発言内容は明確に変化し始めています。
5/8の講演では“過去と比べると為替の変動が物価に影響を及ぼしやすくなっている”と、円安を注視する必要性を指摘しました。その上で、“仮に物価見通しが上振れしたり、上振れするリスクが大きくなった場合には、金利をより早めに調整していくことが適当になる”との見解を示しています。
<USD円についていえば「日米の実質金利差が最大の決定要因であり、USD指数に沿ってトレンドは決まる」との認識に全く変化はありません。従って、今後も市場介入(円買い)があったとしても、USD指数が下落トレンドに変わらない限り円安トレンドの反転は望めないでしょう。
当然のことですが、USD指数が反落に転じるとすれば、上述の米金利低下がより顕現化し始めてからということになると考えています。>(Weekly Report:5/6分より抜粋)
このような指摘は繰り返し行ってきていますが「円安の流れを変える最も重要な要素は“米国の金融政策の転換(=利下げ)期待の高まり”である」という点は全く変わりません。極論すれば「米国次第」ということになるのかもしれません。
しかしながら、それは「日本に出来ることは市場介入以外にない」ということではありません。既述の通り、日銀がこれ以上の円安進行を本気で抑制(⇒利上げを含む“金融政策”で対抗)する姿勢を打ち出し始めていることを、ゆめゆめ軽視すべきでないと考えています。
なお、このタイミングで米国の経済指標(≒景気)にやや陰りが出始めてきたことにも注意が必要になってきました。Weekly Report:5/6分の当欄でも指摘しましたが、「データ次第」とされる今後の米金融政策は要刮目。その意味でも、今週発表予定の米国のPPIやCPIなどのインフレ指標や小売り売上高などの景況関連指標にはこれまで以上の注目が集まっているといえます。
お知らせ:米国を中心とする「世界のインフレ・景気・金融政策」の現状分析、並びに短期を中心とした見通しについては、ジーフィット為替アンバサダーでもある安田佐和子氏のレポート(Weekly Report等)に詳細かつ非常に解りやすく解説されています。TRADOM会員の方々はサイト内で是非ご参照下さい。
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