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  • Weekly Report(3/24)「ドル円、日銀とFOMCを消化し方向感を探る展開」
    安田 佐和子
    この記事の著者
    トレーダム為替アンバサダー/ストリート・インサイツ代表取締役

    世界各国の中銀政策およびマクロ経済担当の為替ライターの経験を経て、2005年からニューヨークに拠点を移し、金融・経済の最前線、ウォール街で取材活動に従事する傍ら、自身のブログ「My Big Apple NY」で商業活動、都市開発、カルチャーなど現地ならではの情報も配信。2015年に帰国、三井物産戦略研究所にて北米経済担当の研究員、双日総合研究所で米国政治経済や経済安全保障などの研究員を経て、現職。NHK「日曜討論」、テレビ東京「モーニング・サテライトなどのTV番組に出演し、日経CNBCやラジオNIKKEIではコメンテーターを務める。その他、メディアでコラムも執筆中。

    マーケット分析
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    ―Executive Summary―

    • ドル円の変動幅は3月17日週に1.97円、その前の2.66円から縮小した。週足では、小幅続伸。前週比では0.66円の上昇となった。年初来リターンは5.1%安と、前週の5.5%安から2週連続で下げ幅を縮小した。日銀金融政策決定会合後に一時150.15円の週高値をつけたが、米連邦公開市場委員会(FOMC)がハト派寄りと判断され、上げ幅を縮小した150円割れで週を終えた。
    • 日銀金融政策決定会合では、市場予想通り政策金利を据え置いた。声明文と植田総裁の会見は、共にタカ派へのシフトが鮮明となった。声明文では展望レポート後半に物価目標2%と概ね整合的になるとの見通しを明記。物価の観点でいえば、今回新たに「米価格」を挙げ、「米価格が高水準で推移すると見込まれることや政府による施策の反動が生じることが(コアCPIを)押し上げ方向で作用すると考えられる」との文言を追加し、物価への警戒を高めた。植田総裁は、春闘の一次集計は「オントラックでもやや強め」、トランプ関税についても「4月の初めにはある程度表れる公算、次回の展望レポートの中で消化できる」などと発言。追加利上げが比較的近いシグナルを与えたと言えよう。
    • 米連邦公開市場委員会(FOMC)でも、市場予想通り政策金利を据え置いた。声明文で、新たに「経済への不確実性が高まった」との文言が盛り込まれたように、四半期に一度公表される経済・金利見通しでは、FOMC参加者の苦悩が読み取れる。トランプ関税をめぐる不確実性を受け、2025-27年の成長率見通し・中央値を引き下げ、25年の失業率見通し・中央値は弱い方向へ修正した一方、物価見通しはPCEにつき25年と26年を上方修正した。いわば、スタグフレーションへの懸念を示唆したと言えよう。年内の利下げ予想・中央値は2回で据え置いたが、FOMC参加者の予想を示すドットチャートは、上方へシフトし、年内3回以上の利下げ予想は前回の5人→2人に減少。金融政策の舵取りが困難になった状況を示唆した。
    • FOMCは他に、量的引き締め(QT)のペース縮小を決定。米債務上限が到達するなか、米財務省はFedの口座にある資金を支払いに活用し、これにより金融システムに流動性を加えている。逆に、米債務上限が引き上げられれば、米財務省はFedに資金を戻す見通しで、これは金融システムからの流動性が低下する。Fedとしては、こうした動きに絡む混乱を未然に防ぐ意図があるのだろう。金利上昇圧力の軽減が見込まれるだけに、トランプ政権にとっても悪い話ではないはずだ
    • 3月24日週は、24日にユーロ圏と独の3月総合(製造業・非製造業も含む)PMI・速報値、米3月総合(製造業・非製造業含む)PMI・速報値、25日は独3月Ifo景況感指数、米1月S&P/ケースシラー住宅価格指数、米1月FHFA住宅価格指数、米2月新築住宅販売件数、米3月消費者信頼感指数を予定する。26日は、日本2月企業向けサービス価格指数、豪2月消費者物価指数(CPI)、英2月CPI、米2月耐久財受注、27日は米24年Q4実質GDP成長率・確報値、米新規失業保険申請件数、米2月中古住宅販売成約件数指数、28日は日本3月東京都区部CPI、英2月小売売上高、独3月失業率、米2月個人消費支出と個人所得、米2月PCE価格指数、米3月ミシガン大学消費者信頼感指数・確報値を予定する。
    • その他、中銀関連では24日にベイリー英中銀総裁の発言、25日に1月日銀金融政策決定会合議事要旨、26日にセントルイス連銀総裁の発言、27日にリッチモンド連銀総裁の発言を予定する。
    • ドル円のテクニカルは、弱い地合いがやや後退。21日移動平均線が底打ちを示し始め、RSIも14日移動平均線を超えゴールデンクロスを維持したままだ。ローソク足が2024年12月の安値をしっかり上抜け、下値余地の狭さを感じさせる。3月17日週の終値も、2024年9月安値と1月高値の半値押し、149.23円をわずかながら上回った
    • 一方で、RSIが3月21日に46.88へ上昇し、割高・割安の中間にある50に接近している点は気掛かり。1月半ば以降の下落トレンドで、50の接近で調整が一段落を迎えてきただけに、ここを超えてくるかが試されそうだ。
    • 以上を踏まえ、今週の上値は3月5日の高値を小幅に上回る心理的節目の150.50円、下値は24年9月安値と1月高値の61.8%押しが近い147円ちょうどと見込む。


    ドル円の変動幅は3月17日週に1.97円、その前の2.66円から縮小した。週足では、小幅続伸。前週比では0.66円の上昇となった。年初来リターンは5.1%安と、前週の5.5%安から2週連続で下げ幅を縮小した。日銀金融政策決定会合後に一時150.15円の週高値をつけたが、米連邦公開市場委員会(FOMC)がハト派寄りと判断され、上げ幅を縮小した150円割れで週を終えた。

    17日は、東京時間からドル円は買い優勢で、ロンドン時間入りに一時149.02円まで本日高値を更新。NY時間では一転して、米2月小売売上高や米3月NY連銀製造業景気指数が市場予想を下回ったため、148.23円の週の安値をつけた。もっとも、米2月小売売上高はGDPの個人消費に反映されるリテールコントロールが堅調で、下値も限定的。経済協力開発機構(OECD)がトランプ政権の関税措置への不確実性を受け世界経済成長率の2025年と2026年の見通しを引き下げたが、影響は限定的だった。

    18日は、東京時間から前日の米2月小売売上高のリテールコントロールを受け米景気後退懸念が剥落しドル円の買いが優勢。トランプ大統領とプーチン露大統領の電話会談を控え、停戦合意につながる期待とリスク選好度の改善も買いをサポートした。NY時間には、米2月住宅着工件数が市場予想を上回り一時149.94円まで本日高値を更新した。米ロの首脳会談では、特に進展はみられず、その後は上値が重くなった。独連邦議会(下院に相当)が国防費増強などの財政出動に必要な法案を可決しユーロが買われたことも、対円でのドルの伸び悩みにつながった。

    19日は、日銀金融政策決定会合で据え置きが決定されると、ドル円が一旦下落で反応しつつも、すぐに買い戻しが入った。植田日銀総裁の会見で、基調的インフレ率は2%を下回るとの見解を示すと一時150.03円まで上昇。もっとも、その後は「春闘の一次集計はオントラックでもやや強め」など、ややタカ派寄りの発言が続き、ドル円の売りにつながった。同時に、トルコでエルドアン大統領の政敵であるイスタンブール市長が拘束されたとの報道を受け、トルコリラが下落し、対ドルでのユーロなどストレート通貨の下落とクロス円が売りにつながり、ドル円も引っ張られた。会見終了後は買い戻され一時150.14円と週の高値を更新。FOMCではむしろ、量的引き締めのペース縮小を決定するなどハト派寄りと判断され、ドル円は一時148.61円まで本日安値を更新した。

    20日は、前日のFOMCの流れを受け売りが先行、東京時間には一時148.17円まで週の安値を付けた。もっとも、ロンドン時間には買い戻され、米新規失業保険申請件数が堅調だったこともあり、一時148.96円まで本日高値を付けた。

    21日、日本2月全国消費者物価指数(CPI)が市場予想を上回り、ドル円は日銀の追加利上げ期待の高まりから売られたが一時的で、日経平均が堅調に推移し、すぐに買い戻しが入った。ロンドン時間には一時149.67円まで本日高値を更新。NY時間では、トランプ大統領が相互関税につき、柔軟に対応すると発言し、グリア米通商代表部(USTR)代表が来週、中国のカウンターパートと協議する見通しと述べたことでリスク選好度が改善し、米10年債利回りが上昇したものの、ドルへの影響は限定的。もっとも、ドイツ連邦参議院(上院)が、財政規律を緩和する憲法改正案を承認したものの、対ユーロで利益確定の動きが出たことでドルをサポートしたため、149円後半で週を終えた。

    チャート:ドル円の2024年12月以降の日足、米10年債利回りは緑線(左軸)

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