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  • Weekly Report(8/19):「パウエル議長講演や植田総裁の発言で、ドル円は再び145円割れを試すか」
    安田 佐和子
    この記事の著者
    トレーダム為替アンバサダー/ストリート・インサイツ代表取締役

    世界各国の中銀政策およびマクロ経済担当の為替ライターの経験を経て、2005年からニューヨークに拠点を移し、金融・経済の最前線、ウォール街で取材活動に従事する傍ら、自身のブログ「My Big Apple NY」で商業活動、都市開発、カルチャーなど現地ならではの情報も配信。2015年に帰国、三井物産戦略研究所にて北米経済担当の研究員、双日総合研究所で米国政治経済や経済安全保障などの研究員を経て、現職。NHK「日曜討論」、テレビ東京「モーニング・サテライトなどのTV番組に出演し、日経CNBCやラジオNIKKEIではコメンテーターを務める。その他、メディアでコラムも執筆中。

    マーケット分析
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    ―Executive Summary―

    • ドル円の変動幅は8月5日週に3.33円と、前週の6.62円から縮小した。週足では、続伸。岸田首相が14日、自民党総裁選不出馬の意向を表明すると、一時146.07円まで週の安値をつけた。NY時間に発表された米7月消費者物価指数(CPI)では、Fedが注目するスーパーコア(住宅を除くコアサービス)の前月比が3ヵ月ぶりに上昇に転じたため、ドル円は買い戻しに反転。8月16日発表の米7月小売売上高が市場予想を大幅に上回る結果になると、米新規失業保険申請件数や米7月輸入物価指数も強含みとなったため、一時149.40円と約2週間ぶりの高値をつけた。ただし、翌日には下落し、147.60円台で週を終えた。
    • 米7月CPIと米7月小売売上高、米新規失業保険申請件数はデフレ懸念と景気後退への不安を低下させた。もっとも、米7月小売売上高は、前月にサイバー攻撃により売上が急減した自動車の反動で大幅増となり、自働車を除けば伸びは緩慢にとどまる。米新規失業保険申請件数も、5週ぶりの低水準だったが、足元で半導体大手インテルが1.5万人のリストラ計画を発表するなど、大規模な人員削減が相次ぐため、今後一段の減速を迎えるリスクも。FF先物市場では、12月の0.5%利下げと0.25%利下げの予想が拮抗する状況だ。
    • パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長は、8月23日にジャクソンホール会合で基調講演を行うが、9月利下げへの地均しを行うだろう。基調講演の前に、米雇用統計・非農業部門就労者数(NFP)が年次基準の改定を受け、2024年3月までの1年間分が大幅に下方修正されれば、0.5%利下げ観測が再燃しうる。
    • 日銀の植田総裁も8月23日、閉会中審査で7月30-31日の金融政策決定会合での追加利上げや株価急落について、発言する見通しだ。日経新聞オンライン版が8月15日に報じたように、内田副総裁の8月7日の講演で追加利上げをしないと明言したわけではない。足元、日経平均が7月末以降の下げを概ね打ち消し、ドル円も一時150円回復が迫るなかで、金融資本市場が落ち着いて推移し、経済・物価の見通しに沿って進むならば、追加利上げを行う姿勢を示すのではないか。
    • 今週は、8月19日に日本6月機械受注、21日に日本7月貿易統計、7月FOMC議事要旨公表、22日に米8月S&Pグローバル総合、製造業、非製造業PMI速報値と米7月中古住宅販売件数、23日に日本7月全国CPIを予定する。加えて、23日には植田総裁が出席する閉会中審査、ジャクソンホール会合でのパウエルFRB議長による基調講演を控える。
    • ドル円のテクニカル的な地合いは、小幅ながら好転の兆しをみせる。相場の過熱感を示すオシレーター指標のMACDは、MACD線がシグナルを上抜け、ゴールデン・クロスが成立した。また、2023年1月と2024年7月の高値の38.2%押しにあたる148.52円を、一時的ながら上回った。ただし、週の終値ではこの148.52円を下回り、147.60円台で取引を終え、軟調な地合いに変わりはない。
    • 投機筋の円のネット・ポジションの動向は8月13日週に1万1,354枚のロングと、前週の1万1,354枚のショートから反転し、2021年3月12日週以来のロング転換を果たした。8月15日に149.40円まで上昇に転じただけに、来週はショートに転じそうだが、9月の米利下げが意識され、米大統領選の不確実性を抱え、円ショートが以前のように急拡大するリスクは低いのではないか。
    • 以上を踏まえ、今週の上値は21日移動平均線と2023年1月、3月、12月の安値を結んだトレンド線が近い149.60円、下値は2023年1月安値と2024年7月高値の半値押しにあたる 144.40円と見込む。

    1.為替相場の振り返り=ドル円、予想を上回る米7月CPIと小売売上高を受け一時149円台回復

    【8月12日~16日のドル円レンジ:146.07~149.40円】

    ドル円の変動幅は8月5日週に3.33円と、前週の6.62円から縮小した。週足では、続伸。週初は146~147円台で推移に終始し、アトランタ連銀総裁による「利下げは近づいている」とのハト派発言も、ドル円の上昇を抑えた。ニュージーランド準備銀行(RBNZ)の利下げも、クロス円を通じドル円の上昇を抑えた。

    岸田首相が14日、自民党総裁選不出馬の意向を表明すると、一時146.07円まで週の安値をつけた。NY時間に発表された米7月消費者物価指数(CPI)が前年比でインフレ減速を確認したため、一旦は下振れしたが、Fedが注目するスーパーコア(住宅を除くコアサービス)の前月比が3ヵ月ぶりに上昇に転じたため、ドル円は買い戻しに反転。8月16日発表の米7月小売売上高が市場予想を大幅に上回る結果になると、米新規失業保険申請件数や米7月輸入物価指数も強含みとなったため、一時149.40円と約2週間ぶりの高値をつけた。 もっとも、16日には米7月住宅着工件数が市場予想を下回ったほか、米8月ミシガン大学消費者信頼感指数・速報値の1年先インフレ期待が前月に続き2.9%だったため、上げ幅を縮小。147円台で週を終えた。

    ャート:ドル円の6月以降の日足、米10年債利回りは緑線(左軸)

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    (出所:TradingView)

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