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  • Weekly Report(8/13):「日銀の追加利上げ期待後退、米7月CPIと小売売上高でドル円の戻りを試す」
    安田 佐和子
    この記事の著者
    トレーダム為替アンバサダー/ストリート・インサイツ代表取締役

    世界各国の中銀政策およびマクロ経済担当の為替ライターの経験を経て、2005年からニューヨークに拠点を移し、金融・経済の最前線、ウォール街で取材活動に従事する傍ら、自身のブログ「My Big Apple NY」で商業活動、都市開発、カルチャーなど現地ならではの情報も配信。2015年に帰国、三井物産戦略研究所にて北米経済担当の研究員、双日総合研究所で米国政治経済や経済安全保障などの研究員を経て、現職。NHK「日曜討論」、テレビ東京「モーニング・サテライトなどのTV番組に出演し、日経CNBCやラジオNIKKEIではコメンテーターを務める。その他、メディアでコラムも執筆中。

    マーケット分析
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    ―Executive Summary―

    • ドル円の変動幅は8月5日週に6.62円と、その前の週につけた年初来で最大となる8.80円を下回った。週足では、わずかに6週ぶりに反発。週初こそ、米7月雇用統計を受け米景気後退懸念から一時141.69円と2023年1月以来の安値をつけた。ただし、米7月ISM非製造業景況指数が景気拡大・縮小の分岐点50を回復したほか米新規失業保険申請件数の減少を受け過度な米景気後退懸念と0.5%利下げ期待が低下。また、内田日銀副総裁による「金融資本市場が不安定な状況で、利上げしない」との発言で、日銀の追加利上げ観測が後退し、ドル円は一時147.91円まで上昇した。
    • 内田副総裁の発言を受け、日銀は10月の展望レポート公表時の追加利上げの可能性は後退。元日銀審議委員の桜井氏も、7月追加利上げで金融市場が急変し、その後も金融市場が不安定化する恐れがあるとして、日銀の追加利上げは早くとも2025年3月と予想。日銀の追加利上げ期待は大きく後退している。
    • 一方で、今週は米7月消費者物価指数(CPI)と米7月小売売上高を予定する。足元、引き続き年内0.5%利下げ期待が根強いだけに、これらが強含めば0.5%利下げ期待の巻き戻しだけでなく、年内3回利下げ期待にも修正が入りそうだ。特に米7月小売売上高は、シカゴ連銀の予測によれば市場予想と前月を上回る見通し。アトランタ連銀のGDPナウは8月8日時点で、米Q3実質GDP成長率につき前期比年率2.9%増と、前期の2.8%増超えを予想するだけに、米景気後退懸念の低下によるドル円の買い戻しに留意すべきだ。
    • 今週は、8月13日に日本7月企業物価指数や米7月生産者物価指数、14日にニュージーランド準備銀行の金融政策決定会合と米7月CPI、15日に日本Q2実質GDP成長率・速報値と米7月小売売上高と米7月輸入物価指数、米7月鉱工業生産、16日に米8月ミシガン大学消費者信頼感指数・速報値を予定する。
    • ドル円のテクニカル的な地合いは、弱気一辺倒から変化した。21日線、50日線、90日線、200日線は下向きを保ち、「三役逆転」も維持。21日線と50日線がデッドクロスを形成しつつある。ただ、ボリンジャー・バンドのー2σに沿って推移する弱気のバンドウォークは解消された。また、2023年1月の安値と2024年7月の高値の半値押しにあたる144.40円がサポートされ、買い戻しの動きを確認している。
    • 投機筋の円のネット・ショート・ポジションの動向は8月6日週に1万1,354枚と、前週の7万3,640枚を下回り、2021年3月12日週以来のロング転換に迫った。J.P.モルガン・チェースによれば、円キャリー・トレードの75%の巻き戻しが完了したといい、日銀の追加利上げ観測が後退するなかで 米利下げの方向性をにらみながら円ショートが増加に転じてもおかしくない。
    • 以上を踏まえ、今週の上値は2023年1月、3月、12月の安値のトレンドラインを結んだ抵抗線が控える149.50円、下値は2023年1月安値と2024年7月の高値の半値押しにあたる144.50円と見込む。

    1.為替相場の振り返り=ドル円、日経平均急落で141円台へ下落も内田副総裁発言で切り返し

    【8月5日~9日のドル円レンジ:141.69~147.91円】

    ドル円の変動幅は8月5日週に6.62円と、前週の8.80円を下回りつつも大きな値動きを確認した。週足では、わずかに6週ぶりに反発。8月5日、弱い米7月雇用統計とサーム・ルール発動(サーム・ルールとは、直近3ヵ月間の失業率の移動平均と過去12カ月間の最低値の差が0.5pt以上なら、景気後退入りするとの説、前週のレポートをご参照)を通じた米景気後退懸念が渦巻き、アジアの株式相場が急落した。特に日経平均は、1987年10月20日のブラックマンデーの下げ幅を超え、終値ベースで4,451.28円と過去最大を更新。ドル円もリスク選好度の急低下を受けて、一時141.69円と1月2日以来の141円割れを視野に入れた。 ただ、米7月ISM非製造業景況指数が2020年5月以来の水準へ落ち込んだ前月から改善し、50の分岐点を回復したため、米景気後退懸念が低下し翌6日には買い戻され、147円台へ戻した。7日には、内田日銀副総裁が日経平均やドル円の急落など、金融資本市場が不安定な時は利上げをしないと明言したため、一時147.91円まで週の高値をつけた。以降は、特に米重要指標を予定しないなかで145円~147円台でのもみ合いに終始。米新規失業保険申請件数の減少が米景気後退懸念の低下を支えた。なお8日に宮崎県日向灘を震源とするマグニチュード7.1の地震が発生し、南海トラフ地震への注意を呼びかける「南海トラフ地震臨時情報」が発表された。この地震を受け、一部で日銀の追加利上げがさらに遠のいたとの観測も招いた。

    チャート:ドル円の5月以降の日足、米10年債利回りは緑線(左軸)

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    (出所:TradingView)

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