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  • Weekly Report(7/16):「ドル円は介入警戒モードで158円の攻防、日銀観測報道にも注意」
    安田 佐和子
    この記事の著者
    ジーフィット為替アンバサダー/ストリート・インサイツ代表取締役

    世界各国の中銀政策およびマクロ経済担当の為替ライターの経験を経て、2005年からニューヨークに拠点を移し、金融・経済の最前線、ウォール街で取材活動に従事する傍ら、自身のブログ「My Big Apple NY」で商業活動、都市開発、カルチャーなど現地ならではの情報も配信。2015年に帰国、三井物産戦略研究所にて北米経済担当の研究員、双日総合研究所で米国政治経済や経済安全保障などの研究員を経て、現職。NHK「日曜討論」、テレビ東京「モーニング・サテライトなどのTV番組に出演し、日経CNBCやラジオNIKKEIではコメンテーターを務める。その他、メディアでコラムも執筆中。

    マーケット分析
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    ―Executive Summary―

    • ドル円の変動幅は7月8日週に4.44円と、その前の週の1.61円から大幅に拡大した。介入があったとされる4月29日週の8.38円ほどではなかったものの、年初来で2番目の大きさに。週間ベースでは、大幅続落した。ドル円は、米6月消費者物価指数(CPI)の結果が市場予想以下となった約10分後、ドル円は161円60銭台から突如急落を開始し、また、7月12日にも介入らしき動きを3回確認、ドル円は一時157.36円まで急落した。
    • 本邦当局の介入は、日経新聞が報じたようにユーロ円にも広がる可能性があり、今後も警戒が必要だ。足元、米失業率の上昇と米インフレ率の鈍化、米景気減速を受け、バイデン政権が対円を通じドル高是正に協力的となってもおかしくない。また、神田財務官交代の前に、本邦当局がにらみを利かせるならば、今がチャンスだ。さらにドル円がプラザ合意前の水準である240円と2011年10月安値の半値戻しの達成を許せば、投資格言「半値戻しは全値戻し」につながりかねず、座視するわけにはいかないだろう。
    • その一方で、7月30~31日開催の金融政策決定会合では、国債買い入れ減額計画の発表と共に、追加利上げを行うかというと、ハードルは高い。Q1のマイナス成長、実質個人消費支出のマイナス反転、実質賃金の26ヵ月連続でマイナスという事情から、実質賃金のプラス転換が期待される9月19~20日会合へ望みをつなぐのではないか。今後、日経新聞を始め日銀の観測報道が材料を与えてくれるだろう。
    • トランプ前大統領の暗殺未遂事件が発生し、足元でトランプ氏再選の可能性が強まっている。同氏が掲げる政策内容は物価高を示唆するが、米労働市場と米インフレ率の減速に直面するならば、1期目と同様にFedに利下げ圧力を高めかねない。共和党の政策綱領では、2016年、2020年に反し「世界の基軸通貨たるドルを堅持する」との文言が入ったが、必ずしもドル高を望むとは限らないだろう。
    • 今週は、7月16日に米6月小売売上高と米6月輸入物価指数、17日に米6月鉱工業生産と米地区連銀報告(ベージュブック)、18日に欧州中央銀行(ECB)の定例理事会、19日に全国6月消費者物価指数を予定する。
    • テクニカル的に、強いシグナルを維持する一方で、2023年12月、2024年3月、同年5月の安値を結んだトレンドラインを下回りつつある。7月11日に162円を突破できず、ダブルトップも形成した。その他、介入があったと目される7月11日から、50日移動平均線のサポートの下抜けをトライする展開も確認している。また、前週安値の157.36円は6月安値と7月高値の61.8%押しにあたる157.35円に近く、ここと6月安値付近の154円半ばを割り込めば、さらなる下値余地も意識されよう。以上を踏まえ、今週のドル円の上値は21日移動平均線が近い160円ちょうど、下値は6月安値付近の154.50円と見込む。

    1.為替相場の振り返り=ドル円、約1週間ぶりの高値を経て介入らしき動きで157円台へ急落

    【7月8~12日のドル円レンジ:157.36~161.81円】

    (前週の総括)

    ドル円の変動幅は7月8日週に4.44円と、その前の週の1.61円から大幅に拡大した。介入があったとされる4月29日週の8.38円ほどではなかったものの、年初来で2番目の大きさに。週間ベースでは、大幅続落した。ドル円は週初、失業率の上昇を確認した米6月雇用統計を受けても買いが優勢で、9日のパウエルFRB議長による議会証言がハト派寄りでも、影響は限定的。むしろ、10日には一時161.81円と約1週間ぶりの高値をつけた。

    しかし、米6月消費者物価指数(CPI)の結果が市場予想以下となった約10分後、ドル円は161円60銭台から突如急落を開始し、約30分間に一時157.43円と約4円も沈んだ。本邦当局の介入が取り沙汰されるなか、テレビ朝日と毎日新聞が、政府関係者の話として介入を実施したと報道。介入警戒感が高まりつつも、翌12日に東京時間のオープンにかけ159円前半まで買い戻された。しかし、直後に介入らしき動きを確認、日経新聞がユーロ円でレートチェックを行ったと報道もあって、159円前半から157.70円台へ急落した。まもなく下げ幅を縮小も、ユーロ円での介入警戒もあって159円半ばで戻りは鈍い。NY時間に入ると、市場予想を上回る米6月生産者物価指数(PPI)が発表されてから約30分後、再び158円後半から157.36円まで週の安値を更新。ユーロ円でレートチェックあるいは介入があったとの指摘が聞かれた。さらに、米7月ミシガン大消費者信頼感指数・速報値が弱い結果で1年先インフレ期待が市場予想を下回ると、再度下157.30円台への下落を経て、157円後半で取引を終えた。

    なお、神田財務官は7月11日夜、記者団に対し「これまで通り何もコメントする立場ではない」と述べた。7月12日夜と13日未明に、記者団に対応し「介入があったか申し上げることはない」、「今日を含めて1か月間での介入した場合の総額というのは、7月31日に出す」、「いずれにしても、このずっと一方向で投機的に変動があったということを無視して語れない状況」と述べた。

    チャート:ドル円の4月以降の日足、米10年債利回りは緑線(左軸)

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    (出所:TradingView)

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