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  • Weekly Report(5/7):「ドル円、今週は米重要指標を予定せず値幅は限定的か」
    安田 佐和子
    この記事の著者
    トレーダム為替アンバサダー/ストリート・インサイツ代表取締役

    世界各国の中銀政策およびマクロ経済担当の為替ライターの経験を経て、2005年からニューヨークに拠点を移し、金融・経済の最前線、ウォール街で取材活動に従事する傍ら、自身のブログ「My Big Apple NY」で商業活動、都市開発、カルチャーなど現地ならではの情報も配信。2015年に帰国、三井物産戦略研究所にて北米経済担当の研究員、双日総合研究所で米国政治経済や経済安全保障などの研究員を経て、現職。NHK「日曜討論」、テレビ東京「モーニング・サテライトなどのTV番組に出演し、日経CNBCやラジオNIKKEIではコメンテーターを務める。その他、メディアでコラムも執筆中。

    マーケット分析
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    ―Executive Summary―

    • ドル円の変動幅は、4月22日週からの2週間で12.37円と、稀に見る大きさを記録した。4月29日週には、5週ぶりに反落。ドル円は4月25~26日開催の日銀金融政策決定会合後の流れを受け継ぎ、4月29日に一時160.23円と1990年4月以来の高値をつけたものの、介入らしき動きを受け急落を開始した。5月1日には、想定よりハト派寄りだった米連邦公開市場委員会(FOMC)を受けドル円が下落するなか、再び介入と目される値動きを経て、153円ちょうどまで下落。5月3日に発表された市場予想より弱い米4月雇用統計後は、一時151.86円まで下げ幅を広げた。ただ、2022年10月高値、2023年11月高値、2024年3月後半~4月半ばの抵抗線だった152円割れでは押し目を拾われ、153円後半で週を終えた。
    • イベント尽くしで嵐のようだった過去2週間に反し、今週は、米重要指標を予定しない。介入警戒が燻るだけに、来週5月15日発表の米4月消費者物価指数(CPI)まで、値の荒い展開は限られそうだ。
    • 日銀の当座預金残高見通しと短資会社の乖離を踏まえれば、4月29日の介入規模は約5.5兆円、5月1日は約3.5兆円と目される。今後の介入規模を見据える上で、前回2022年9~10月の3回にわたる介入規模を振り返ると、9兆1,880億円。当時の介入規模はGDP比1.6%で、これを足元で適用するなら、残りは約3兆円程度と見込まれる。ただ、金融機関は外貨準備における1年未満の短期証券や預金を踏まえ、30兆円前後と予想が優勢。介入弾切れまで、ある程度の余地を見込む。
    • 今後のドル円を占う上では、やはり日米の金融政策が意識されよう。Fedはインフレ警戒を残しつつ、労働市場が予想外に弱まった場合においての利下げ開始のカードを維持した。一方で、日銀は国債買い入れ規模を6兆円程度で維持するなど一見するとハト派姿勢を維持したようだが、展望レポートの物価見通しと植田総裁の発言を踏まえれば、追加利上げの可能性が意識され、タカ派の爪を研ぎ始めたように解釈できる。ただ、追加利上げは経済情勢だけでなく、政治日程も念頭に入れておきたい。
    • テクニカル的に、ドル円は三役好転とパーフェクト・オーダーを維持し、地合いは非常に強い。ただし、MACDでは売りサインが継続するほか、投機筋の円のネット・ショート・ポジションも高水準を維持しており、ドル円が5月15日の米4月CPI前に、過去2週間のような勢いで上方向を目指すとは想定しづらい。
    • 以上を踏まえ、今週のドル円の上値は一目均衡表の基準線が控える155.50円、下値は50日移動平均線付近の151.90円と見込む。

    1.為替相場の振り返り=日銀金融政策決定会合後に160円突破も、介入観測やハト派寄りの5月FOMCを背景に一時152円割れへ急落

    【4月22日~26日のドル円レンジ:154.45~158.44円】

    (4月22日週の総括)―日銀金融政策決定会合でとどめを刺され、ドル円158円台へ上げ幅拡大

    ドル円の変動幅は4月22日週に3.99円と、その前の週の1.81円から拡大した。週間ベースでは、大幅に4週続伸。4月22、23日は155円手前で小動きだったが、24日のNY時間入りで、米3月耐久財受注が市場予想を上回った後に約34年ぶりの155円を突破した。24日は、米1-3月(Q1)期実質国内総生産(GDP)成長率・速報値が市場予想の2.5%増を下回る同1.6%増だった一方、米Q1コアPCE価格指数が同3.7%と加速した上、サービスPCE(エネルギーと住宅除く)も同5.1%と1年ぶりの強い伸びとなった。これを受け、米利下げ観測後退と共に米債利回りが急伸し、ドル円は155.75円まで上値を切り上げた。

    26日は、4月東京都区部消費者物価指数が高等教育無償化を背景に2%割れとなり、東京時間入りからドル円を押し上げた。さらに、日銀金融政策決定会合を受けてドル高・円安が加速。日銀金融政策決定会合では、市場予想通り政策金利である無担保コールレート(翌日物)の誘導目標を0~0.1%で据え置いた。一方で、市場が注目していた長期国債などの買入規模について、声明で「2024年3月の金融政策決定会合において決定された方針に沿って実施する」と明記したため、156円を突破した。植田日銀総裁会見が開始すると、さらに上昇幅を広げる展開。植田総裁は展望レポートの2025年度、2026年度の物価見通しについて2%が近いとした上で、いつでも利上げが可能と示唆した。しかし、同時に植田総裁は円安が基調的な物価上昇につながるとの観点で現水準について「無視できる範囲と判断するのか」との問いに、「はい」と明言すると、ドル買い・円売りが加速し157円台に迫った。植田総裁会見後に一旦155円割れを迎えたが一時的で、NY時間では米3月PCE価格指数がコアと合わせ前年比で市場予想を上回ったため、157円乗せを達成。NY引け間際には158円も抜け、一時158.44円をつけた。

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