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  • Weekly Report(12/16):「FOMCと日銀の政策発表で、ドル円の上昇トレンド入りを確認か」
    安田 佐和子
    この記事の著者
    トレーダム為替アンバサダー/ストリート・インサイツ代表取締役

    世界各国の中銀政策およびマクロ経済担当の為替ライターの経験を経て、2005年からニューヨークに拠点を移し、金融・経済の最前線、ウォール街で取材活動に従事する傍ら、自身のブログ「My Big Apple NY」で商業活動、都市開発、カルチャーなど現地ならではの情報も配信。2015年に帰国、三井物産戦略研究所にて北米経済担当の研究員、双日総合研究所で米国政治経済や経済安全保障などの研究員を経て、現職。NHK「日曜討論」、テレビ東京「モーニング・サテライトなどのTV番組に出演し、日経CNBCやラジオNIKKEIではコメンテーターを務める。その他、メディアでコラムも執筆中。

    マーケット分析
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    ―Executive Summary―

    • ドル円の変動幅は12月9日週に4.11円と、前週の2.59円から拡大した。週足では、続伸。9日は、中国が金融政策の姿勢を従来の「穏健」から「適度に緩和的」への転換を発表、リスク選好度が強まった。また、氷見野副総裁が2025年1月金融政策決定会合前に講演する予定を発表。12月の追加利上げ観測が後退し、ドル円は7月高値と9月安値の半値押しがある150.77円を超えていった。10日は米11月消費者物価指数の発表を控え米利回りが上昇した動きにつれ上昇も、発表後は伸び鈍化。ただし11日のブルームバーグ、12日のロイター、13日の共同通信や日経新聞まで、12月追加利上げ見送り観測記事が流れ、ドル円は153.80円と11月下旬以来の水準へ切り上げた。
    • 12月18-19日の日銀金融政策決定会合では、追加利上げが見送られる公算が大きいが、問題は植田総裁の会見内容で1月追加利上げへの道筋を残すか。1月の氷見野副総裁の講演予定は、2023年の流れを踏まえれば、1月追加利上げの地均しと考えられる。また、植田総裁は2023年と同じく、12月25日に講演を行うため、12月会合の記者会見と併せ、1月の追加利上げへ向けたメッセージを送るか意識されるだろう。 
    • 12月17-18日の米連邦公開市場委員会(FOMC)では、FF先物市場に基づけば、0.25%の追加利下げを決定する公算が大きい。問題は、FOMC参加者の2025年のFF金利見通しの中央値だ。前回9月は0.25%ずつなら4回、1%の利下げを示唆した。足元、米労働市場の減速トレンドをたどるが、米11月消費者物価指数(CPI)が下げ渋りを示し、生産者物価(PPI)は再加速した。トランプ2.0を踏まえ、追加関税などの経済政策や、足元で消費者センチメントが楽観に傾きつつある。FOMC参加者が足元の労働市場の減速ではなく、インフレ下げ渋りと消費者センチメントを重視するなら、2025年利下げ見通しを2回へ修正しうる。また、中立金利と位置付けられるFF金利の長期見通しが従来の2.9%から上方修正され、ターミナルレート即ち利下げの着地点が引き上げられる余地もある。
    • 今週は12月16日に日本10月機械受注、中国11月小売売上高と鉱工業生産、ユーロ圏12月総合PMI速報値(製造業・非製造業含む)、米12月NY連銀製造業景況指数、米12月総合PMI速報値(製造業・非製造業含む)、17日は米11月小売売上高と鉱工業生産、米12月NAHB住宅市場指数、18日は英11月CPI、ユーロ圏11月HICP改定値、米11月住宅着工件数、米Q3経常収支などを予定する。19日は米Q3実質GDP成長率確報値、米12月フィラデルフィア連銀製造業景況指数、米新規失業保険申請件数、米11月景気先行指数、米11月中古住宅販売件数、10月対米証券投資が控える。20日は日本11月全国CPI、米11月個人消費支出と個人所得、PCE価格指数、米12月ミシガン大学消費者信頼感指数・確報値が発表される。
    • 加えて、16日にはラガルド欧州中央銀行(ECB)総裁の発言、18日には米連邦公開市場委員会(FOMC)の政策発表とパウエルFRB議長による記者会見、19日には日銀金融政策決定会合の政策発表と植田総裁の記者会見、イングランド銀行の政策発表などを予定する。為替動向は、重要指標と特に米日の金融政策決定を受け、乱高下するリスクが大きい。
    • ドル円のテクニカルは、強気地合いに反転。50日移動平均線、200日移動平均線、21日移動平均線、さらには7月高値と9月安値の61.8%戻しがある153.41円を上回って週を終えた。一目均衡表の雲の上限も、引き続きサポートとして機能した。ただし、急激に上昇に転じた反動にも留意しておきたい。
    • CFTCが発表した投機筋による円のネット・ポジション動向は、12月10日週時点で2万5,752枚のロングと、前週の2,334枚からロングが拡大。円のネット・ロングの偏りが解消されれば、ドル円の上昇ペースが緩むシナリオも想定できる。
    • 以上を踏まえ、今週の上値は心理的節目の155.50円、下値は7月高値と9月安値の半値押しが近い150.80円と見込む。


    ドル円の変動幅は12月9日週に4.11円と、前週の2.59円から拡大した。週足では、続伸。9日は、中国共産党中央政治局常務委員会が経済成長を支えるべく、より積極的な財政政策と併せ、金融政策の姿勢を従来の「穏健」から「適度に緩和的」へ、2011年以来の転換を発表した。リスク選好度が強まり、人民元や豪ドルが上昇するなか、ドル円もつれ高となった。加えて、氷見野副総裁が2025年1月金融政策決定会合前に講演する予定を発表。年明け1月会合での利上げ観測が強まると同時に12月の追加利上げ観測が後退し、ドル円は7月高値と9月安値の半値押しがある150.77円を超えていった。10日も、前日の流れを受けドル円は上値を広げ、米11月消費者物価指数の発表を控え米利回りが上昇した動きにも、つれた。

    11日には、ブルームバーグが日銀は利上げ急がず、今月見送りでも物価加速リスク小さいとの見方と報じ、ドル円の上昇を後押しした。米11月CPIが市場予想と一致すると、200日移動平均線と21日移動平均線を突破し、152.87円へ上昇。ただ、その後は一旦上げ渋りをみせた。12日、今度はロイターから日銀が利上げに急がない方針と伝わり、再びドル円は上値をトライする格好となったが、米11月生産者物価指数が市場予想超えも、米新規失業保険申請件数が予想外に増加したため、前日高値を超えられなかった。欧州中央銀行(ECB)の利下げも、クロス円でドル円の重石となった。むしろ、13日にドル円は上げ足を加速。共同通信が、日銀は12月の追加利上げ見送りを検討と報じたため、米11月輸入物価指数が市場予想を上回り、ドル円を押し上げ一時153.80円と11月26日以来の高値をつけた。

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