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  • Weekly Report(10/21):「ドル円は衆議院総選挙・日銀観測報道で一時的に乱高下も、概ね小動きか」
    安田 佐和子
    この記事の著者
    トレーダム為替アンバサダー/ストリート・インサイツ代表取締役

    世界各国の中銀政策およびマクロ経済担当の為替ライターの経験を経て、2005年からニューヨークに拠点を移し、金融・経済の最前線、ウォール街で取材活動に従事する傍ら、自身のブログ「My Big Apple NY」で商業活動、都市開発、カルチャーなど現地ならではの情報も配信。2015年に帰国、三井物産戦略研究所にて北米経済担当の研究員、双日総合研究所で米国政治経済や経済安全保障などの研究員を経て、現職。NHK「日曜討論」、テレビ東京「モーニング・サテライトなどのTV番組に出演し、日経CNBCやラジオNIKKEIではコメンテーターを務める。その他、メディアでコラムも執筆中。

    マーケット分析
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    ―Executive Summary―

    • ドル円の変動幅は10月14日週に1.48円と、前週の2.26円から縮小した。週足では、3週続伸。ドル円は週初からジリ高展開を向け、17日に米9月小売売上高が市場予想を上回ると、8月初め以来の150円乗せを回復、一時150.32円まで上値を広げた。ただ、その後は伸び悩み、植田日銀総裁が追加利上げに慎重な発言を行っても、反応は限定的。ブルームバーグの日銀観測報道で10月会合での追加利上げは見送りも、今後の可能性は排除せずとの報道で149円半ばへ下落し、150円割れで週を終えた。
    • 衆院総選挙を10月27日、日銀金融政策決定会合を10月30~31日に控え、観測報道の内容次第で一時的に乱高下する場面がありそうだ。衆院総選挙では足元、自公で過半数を獲得する見通し。仮にこうした見方が維持されるならば、追加利上げのタイミングとして、①実質賃金がプラスとなるタイミング、②春闘の動向――を踏まえ、展望レポートが公表される2025年1月が有力視されそうだ。逆に、自公で過半数割れとなれば、維新の会や国民民主党との連立拡大が視野に入り、両党そろって日銀の追加利上げに慎重とあって、今後の追加利上げの道筋に不透明感を与えそうだ。
    • 11月FOMCでは引き続き0.25%利下げの見方が優勢で、FF先物市場では10月18日時点で利下げ織り込み度は90.4%。足元、ウォラー米連邦準備制度理事会(FRB)理事やアトランタ連銀総裁、サンフランシスコ連銀総裁など、米連邦公開市場委員会(FOMC)で投票権を持つFed高官を中心に利下げに急がない姿勢を示す。しかし、米国南部に大型ハリケーンが直撃した影響もあり、11月1日発表の米10月雇用統計が力強い結果とならない限り、少なくとも11月FOMCでは0.25%の利下げを決定しそうだ。
    • 今週は、10月23日にカナダ銀行の政策金利が発表されるほか、米9月中古住宅販売件数、米地区連銀報告公表、24日に米新規失業保険申請件数、米10月S&Pグローバル総合PMI速報値、25日に10月東京都区部CPI、9月企業向けサービス価格指数、 米9月耐久財受注、米10月ミシガン大学消費者信頼感指数・確報値を予定する。また、10月26日からのブラックアウト期間前、Fed高官の発言ラッシュを控える。
    • ドル円のテクニカル的な地合いは、堅調さを増した。21日移動平均線が50日移動平均線を上抜け、ゴールデン・クロスも形成。米9月雇用統計以降、7月高値と9月安値を結んだ短期のフィボナッチで38.2%戻しがある148.12円が、引き続きサポートとして機能している。ただ、足元で90日移動平均線が150.22円、52週移動平均線が150.19円に控える。7月高値と9月安値の半値戻しがある150.77円には一目均衡表の雲の上限が重なり、抵抗線が集中する状況だ。
    • 投機筋の円のネット・ポジションの動向は10月15日週に3万4,110枚と、10週連続のロングとなった。円ロングの過去最高となる2016年4月19日週の7万1,870枚に接近した9月24日週の6万6,011枚から、3週続けて減少した。150円に乗せる手前で未だロングということは、ショートへ転じる場合はドル高・円安が進むリスクもあり得よう。
    • とはいえ、今週は米重要指標を予定せず、衆院総選挙を控えるとあって、大きく方向感が出るとは想定しづらい。日銀観測報道が飛び出して変動しても、一時的にとどまるのではないか。今週の上値は引き続き7月高値と9月安値の半値戻しが近い150.80円、下値は7月高値と9月安値の38.2%戻しがある148.10円と見込む。

    【10月7日~11日のドル円レンジ: 148.85~150.32円】

    ドル円の変動幅は10月14日週に1.48円と、前週の2.26円から縮小した。週足では、3週続伸。ドル円は週初から、上方向を意識する展開を迎えた。12日発表の中国政府による財政出動を伴う景気刺激策方針を受けリスク選好度が高まったほか、ウォラーFRB理事が「慎重な」ペースで利下げに対応するべき」と発言を受け、一時149.98円へ上昇。15日に米10月NY連銀製造業景況指数が弱含んだほか、16日に安達審議委員が「正常化プロセスに入る条件は既に満たしている」と発言すると、伸び悩んだ。

    しかし17日に、米9月小売売上高が市場予想を上回り、米新規失業保険申請件数も2023年6月以来の高水準(修正値ベース)から減少したため、ドル円は一時150.32円と8月初め以来の高値を更新。18日は東京時間に一時150.28円まで上昇も、前日につけた週の高値は超えられず。植田総裁が全国信用大会の講演(内田副総裁が代読)で、「海外経済の先行きは引き続き不透明であり、金融資本市場は引き続き不安定な状況にある」、「当面は、これらの動向を極めて高い緊張感を持って注視する」との見解を表明しても、上値をトライすることはなかった。ブルームバーグが日銀は追加利上げの方向と報じると、149円半ばへ急落する場面も。三村財務官や青木官房副長官の円安けん制もあり、NY時間にかけ150円台を戻したが限定的で、アトランタ連銀総裁がインフレ目標2%達成に向け利下げに急がない姿勢を打ち出したが、150円を割り込んで週を終えた。

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