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  • Weekly Report(4/8):「力強い米3月雇用統計でもドル円上げ渋り、米CPIが決定打となるか」
    安田 佐和子
    この記事の著者
    トレーダム為替アンバサダー/ストリート・インサイツ代表取締役

    世界各国の中銀政策およびマクロ経済担当の為替ライターの経験を経て、2005年からニューヨークに拠点を移し、金融・経済の最前線、ウォール街で取材活動に従事する傍ら、自身のブログ「My Big Apple NY」で商業活動、都市開発、カルチャーなど現地ならではの情報も配信。2015年に帰国、三井物産戦略研究所にて北米経済担当の研究員、双日総合研究所で米国政治経済や経済安全保障などの研究員を経て、現職。NHK「日曜討論」、テレビ東京「モーニング・サテライトなどのTV番組に出演し、日経CNBCやラジオNIKKEIではコメンテーターを務める。その他、メディアでコラムも執筆中。

    マーケット分析
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    ―Executive Summary―

    • ドル円の変動幅は4月1日週に1.14円と、その前の週の0.95円から拡大した。週間ベースでは、反発。週初はイースター・マンデーを受け欧州市場が休場で小動きだったが、4月3日に米中央情報局(CIA)がイスラエルに対してイランが48時間以内に攻撃すると通告したとの報道を受け、リスク選好度は低下するなか、ドル円は徐々に軟化していく展開に。朝日新聞が植田総裁のインタビューとして「物価に影響するなら為替も利上げ材料」との発言が伝わると、ドル円は151円割れを試した。4月5日の東京時間には、一時150.81円と約2週間ぶりの水準へ下落。しかし米3月雇用統計が力強い内容だったことで、一時151.75円まで切り返し、そのまま151円後半で週を終えた。
    • 米3月雇用統計・非農業部門就労者数(NFP)と失業率を受け、6月利下げ観測が後退した。ただし、詳細をみると、①NFPが大幅増加でも賃上げ圧力後退、②労働参加率は改善も年齢、性別、人種でまちまち、③失業率は黒人の間で急伸、④家計調査の就業者数はパートタイムや複数の職を持つ者が増加をけん引、――など、4つの観点から6月あるいは7月の利下げの選択肢を残したと言えそうだ。
    • 今週は10日に米3月消費者物指数(CPI)を控え、物価上昇ペースの鈍化を確認すれば、6月利下げの余地を残しうる。ただ、クリーブランド連銀のナウキャストは米3月CPIコアについて鈍化を予測しつつ、総合の前年比が前月比加速を見込むため、その通りならば、明確な方向感が出るかは不透明と言わざるを得ない。
    • 植田総裁が朝日新聞とのインタビューで為替も利上げを行う判断材料になると発言したほか、岸田首相は4月5日、「行き過ぎた動きに対してはあらゆる手段を排除せず、適切に対応していきたい」と強く円安をけん制した。岸田首相としては、国賓待遇での訪米する4月8~12日にわたり、介入が手控えられるとの思惑を受け円が一段安となるのを回避したかったのではないか。ただ、ドル円の動向は、日本政府・日銀の口先介入より、米3月CPIの結果や米金利動向、中東情勢の緊迫化など外部要因がドライバーとなりそうだ。
    • 今週は4月10日に米3月CPIや3月FOMC議事要旨、11日に中国3月CPIと生産者物価指数(PPI)、米3月PPI、欧州中央銀行(ECB)の理事会、12日に中国3月貿易統計や米4月ミシガン大学消費者信頼感指数・速報値を予定する。
      ドル円は足元、3月20日以降、152円手前を中心とした膠着状態が続く。米3月CPI次第で152円超えを試しそうだが、テクニカル的には、4月3日から基準線を割り込んで推移しており、上値トライが力尽きつつある印象も否めない。
    • 投機筋の円のネット・ショートが大幅に積み増している点も、上値が重い要因となりそうだ。4月2日週に円のネット・ショートは14万3,230枚と、前週の12万9,106枚を超え2013年12月以来の高水準だっただけに、円のネット・ショート拡大余地が一段と狭まったと言えよう。以上を踏まえ、ドル円の上値は引き続き心理的節目の152.50円、下値は21日移動平均線がある150.30円を見込む。

    1.前週の為替相場の振り返り=ドル円、中東情勢緊迫化で151円割れも米雇用統計で大台戻す

    【4月1日~5日のドル円レンジ:150.81~151.95円】

    (前週の総括)

     ドル円の変動幅は4月1日週に1.14円と、その前の週の0.95円から拡大した。週間ベースでは、反発。週初は、イースター・マンデーを受け欧州市場が休場のなか小動きが続き、鈴木財務相が連日「行き過ぎた動きにあらゆる手段排除せず」などと発言したことも、上値を抑えたようだ。米3月ISM製造業景況指数が17カ月ぶりに製造業活動の分岐点50を回復した結果にも、反応薄。その他、市場予想を上回った米3月ADP全国雇用者数を受け一時151.95円まで上昇したものの、米3月ISM非製造業景況指数が予想より弱含み、ドル円の上値を抑えた。

     4月3日に米中央情報局(CIA)がイスラエルに対してイランが48時間以内に攻撃すると通告したとの報道を受け、リスク選好度は低下するなか、ドル円は徐々に軟化していく展開に。日本時間の4月5日に日付が変わったタイミングで、朝日新聞が植田総裁のインタビューとして「物価に影響するなら為替も利上げ材料」との発言が伝わると、ドル円は151円割れを試した。4月5日の東京時間には、一時150.81円と約2週間ぶりの水準へ下落。しかし米3月雇用統計が力強い内容だったことで、一時151.75円まで切り返し、そのまま151円後半で週を終えた。

    チャート:ドル円の2月以降の日足、米10年債利回りは緑線(左軸)

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    (出所:TradingView)

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