<テクニカル分析判断> サマリー: ●短期:「上値メドの模索」が依然続く中でも、ピークアウトの兆しは徐々に出来 ●中期:当面強調維持も […]
―Executive Summary―
- ドル円の変動幅は2月5日週に1.96円と、その前の週の2.69円から縮小した。週間ベースでは、続伸。2月2日発表の米1月雇用統計・非農業部門就労者数(NFP)が1年ぶりの力強い伸びだった流れを受け、買いが先行した。イエレン財務長官が6日、米商業用不動産問題に「懸念」を表明すると売りが優勢になり、7日には一時147.61円まで週の安値をつけた。一転して8日、内田日銀副総裁が日銀のマイナス金利解除後「どんどん利上げしていくようなパスは考えにくい」と発言すると、上昇へ反転。米新規失業保険申請件数が前週比で減少したこともあって149円半ばへ切り上げた。9日のロンドン時間には植田日銀総裁が内田発言を踏襲するなか、一時149.57円まで切り上げ2023年11月下旬以来の高値をつけた。
- ドル円は、米1月消費者物価指数(CPI)と米1月小売売上高など、重要指標を受けて乱高下しそうだ。米1月CPIは、クリーブランド連銀のナウキャストによれば鈍化が見込まれるが、米1月小売売上高はクレジットカードのリアルタイム動向によれば、堅調となる見通しだ。
- 日銀の正副総裁から、マイナス金利解除後も緩和的な金融環境が続くとの発言が聞かれ、円キャリー・トレード継続の余地を残す。とはいえ、ウォール街のエコノミストの間では5月と6月の利下げ開始で予想が分かれる通り、上半期末までの利下げが有力視されている。加えて、新NISAの資金流入に伴うドル円の上昇が指摘されるが、1月の資金流入額をベースに試算すると、1日の為替市場における円の取引額の0.1%程度に過ぎない。結局、ドル円は日米金利差に左右されるのではないか。
- 今週は2月13日に米1月CPI、15日に日本10~12月期四半期実質国内総生産(GDP)速報値の他、米1月小売売上高と米1月鉱工業生産、16日に米1月生産者物価指数と米2月ミシガン大学消費者信頼感指数・速報値を予定する。
- ドル円は、テクニカル的に三役好転を維持するほか、21日移動平均線が100日移動平均線をブレークしゴールデン・クロスが形成するなど、地合いの強さを確認した。一方で、弱気方向を示唆する上昇ウエッジを形成。直近の高安値を結んだ抵抗線と支持線の交点である150.30円付近からの、下降シグナルを点灯させている。また、前週に149.57円まで上値を広げたもののADXは19.2と、引き続き節目の25以下であり、上昇トレンドに突入したと判断しづらい。RSIも63.04で割高を示す70へ接近しつつあり、ここでも上値余地の狭さが意識されよう。
- 以上を踏まえ、今週のドル円の上値は150.50円、下値は一目均衡表の雲の下限がある146円ちょうどを見込む。
目次
1.前週の為替相場の振り返り=ドル円、内田副総裁発言で日米金利差意識し149.57円へ上昇
【2月5日~2月9日のドル円レンジ:147.61~149.57円】
(前週の総括)
ドル円の変動幅は2月5日週に1.96円と、その前の週の2.69円から縮小した。週間ベースでは、続伸。2月2日発表の米1月雇用統計・非農業部門就労者数(NFP)が1年ぶりの力強い伸びだった流れを受け、買いが先行した。イエレン財務長官が6日、米商業用不動産問題を受け「懸念」を表明すると売りへ反転。1月31日に予想外の赤字決算を発表したニューヨーク・コミュニティ・バンコープ(NYCB)の株価が一段安も重なり、リスク選好度が低下し、7日には一時147.61円まで週の安値をつけた。
一転して8日、内田日銀副総裁が日銀のマイナス金利解除後「どんどん利上げしていくようなパスは考えにくい」と発言すると、日米金利差を意識し上昇へ反転。米新規失業保険申請件数が前週比で減少したこともあって、149円台の半ばへ切り上げた。9日のロンドン時間には、植田日銀総裁が内田発言を踏襲するなか、一時149.57円まで上値を拡大し、2023年11月下旬以来の高水準に。米消費者物価指数(CPI)の年次改定を受け、2023年12月分が下方修正されたため売りが出る場面もあったが149円ちょうどまでにとどまり、149円前半で週を終えた。
チャート:ドル円の2023年11月以降の日足、米10年債利回りは緑線(左軸)。2023年11月高値からの抵抗線を抜け、上値拡大。
(出所:TradingView)
2.為替見通し=ドル円、米CPIなど米重要指標控え乱高下か
【2月12日~2月16日の為替予想レンジ:146.00~150.50円】
―利下げ開始時期、ウォール街では5月か6月で二分
パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長の1月米連邦公開市場委員会(FOMC)後の会見や「60ミニッツ」インタビュー、さらに前週のFed高官の発言を踏まえ、3月利下げ期待は急速にしぼんだ。ただ、2月9日時点のFF先物市場では、5月までの利下げ開始の織り込み度は68.2%(3月:16.0%、5月:52.2%)、年内の利下げ回数見通しは5回を維持した。
チャート:FF先物市場、2月9日時点では5月までの利下げ開始織り込み度は68.2%、年内の利下げ回数見通しは5回
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