―Executive Summary― 目次1.前週の為替相場の振り返り=ドル円、一時146円割れも米1月雇用統計後に148円半ばへ戻す【1 […]
Executive Summary
- ドル円の変動幅は6月19日週に2円66銭となり、前週の2円90銭を下回ったものの、週ベースで続伸した。パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長が6月21、22日に行った半期に一度の議会証言で年2回の利上げの可能性を示唆したほか、イングランド銀行(BOE)が0.5%利上げを行った結果、日本と米欧との金利差拡大観測を招き、ドル円を2022年11月以来の高値へ押し上げた。
- 今週のドル円は、上方向継続と見込む。26~28日に予定する欧州中央銀行(ECB)の年次フォーラムで、最終日の28日には日銀の植田総裁とパウエルFRB議長、ラガルド欧州中央銀行(ECB)総裁、ベイリーBOE総裁などが一堂に会し、パネル・ディスカッションを行う。発言内容によっては、日本と米欧との金利拡大を意識したドル円の買いが入ってもおかしくない。
- ただし、前回2022年9~10月のドル売り・円買い介入のエントリー・ポイントである145円が迫るだけに、政府・日銀が実弾を投入してもおかしくない。6月26日朝、神田財務官は「あらゆる選択肢を排除しない」と発言、為替介入の警戒レベルが高まる状況だ。
- 今後1週間のドル円は、上方向継続も、介入警戒が強まるなかで乱高下のリスクに注意したい。2022年9~10月に行った3回の介入の平均変動幅は約5.6円だった。上値の目途は、介入開始の水準が意識されるだけに、心理的節目の145.50円と見込む。下値は、RSIが割高感を示す70を上回るなかではゆるむ場合も想定され、一目均衡表・基準線が控える141.60円と予想する。
1.先週の為替相場の振り返り=ドル円、米タカ派FRBと英の0.5%利上げで上値拡大
【6/19-6/23のドル円レンジ:141.21~143.87円】
・(先週の総括)ドル円の変動幅は6月19日週に2円66銭となり、前週の2円90銭を下回ったものの、週ベースで続伸した。パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長が6月21、22日の半期に一度行う議会証言で年2回の利上げの可能性について「かなり正確な予測」と発言したほか、イングランド銀行(BOE)の0.5%利上げが日本と米欧との金利差拡大観測を招き、ドル円を押し上げた。日経平均の上昇にブレーキが掛かるなかでも、ドル円は2週連続で2022年11月以来の高値を更新した。
・6月19日は、米国が奴隷解放記念日で休場のなか、一時142.00 円まで上昇した。
・6月20日は、東京時間に一時142.25円をつけたが、閣議後に鈴木財務相が各国と緊密な意思疎通を図りつつ「必要であれば適切に対応していく」と発言。また、西村経産相も「過度な変動・投機的な動きは注視」と述べたため、141円前半へ戻した。
・6月21日は、日銀の植田総裁が全国信用金庫大会で挨拶するなかで「粘り強く金融緩和を継続し、インフレ目標値2%の実現を目指す」と発言したため、ドル円の上昇を促した。さらに、英5月消費者物価指数(CPI)コアが1992年以来の水準へ加速し、翌22日に予定するイングランド銀行による0.5%利上げが一部で取り沙汰され、ポンド円の上昇もドル円の押し上げに寄与。NY時間ではパウエル氏が米下院金融サービス委員会で年内2回の利上げについて「かなり正確な予測」と述べたため、ドル円は一時142.37円へ切り上げた。
・6月22日、イングランド銀行が市場予想の0.25%利上げに反し、0.5%利上げを行い欧米の金利上昇を招いた。また、パウエル氏が米上院銀行委員会で引き続き利上げの必要性を唱えたほか、ボウマンFRB理事もインフレ抑制のために追加利上げが必要と発言し、ドル円は2022年10月高値と1月安値の61.8%戻しにあたる142.50円を超え、一時143.23円へ切り上げた。
チャート:各国の政策金利の推移、日本と米欧豪などの金利差は拡大続く
・6月23日、鈴木財務相が「為替の急激な動きは望ましくない」、「しっかり市場を注視する」と発言したものの、文言から介入が近いと想定されなかったためか、反応は限定的だった。むしろ、NY時間は仏6月総合PMI・速報値が2021年2月以来の急低下を記録した結果、対ユーロなどでドルが買い戻される動きもあって、ドル円は上昇。2022年10月高値と1月安値の3分の2戻しにあたる143.70円を超え、一時143.87円と2022年11月以来の高値を更新した。
チャート:ドル円、2022年10月以降の日足チャート(白い枠が今週のレンジ、緑線は2022年10月高値と1月安値の61.8%戻しを指す)
(出所:TradingView)
2.主な要人発言
・6月19~23日は、パウエルFRB議長が半期に一度の議会証言で利上げ継続の意思を表明したほか、ボウマンFRB理事、サンフランシスコ連銀総裁などもインフレ抑制に利上げが必要との認識を示した。一方で、シカゴ連銀総裁やアトランタ連銀総裁など、ハト派は年内の追加利上げの必要性が低いとの見方に言及した。欧州中央銀行(ECB)からは、リトアニア中銀総裁のように7月だけでなく9月の利上げを支持する発言が飛び出すなど、タカ派的な見解が目立った。ただし、ギリシャ中銀総裁など少数派のハト派は利上げに慎重な姿勢を寄せた。日本では鈴木財務相などの口先介入を確認した半面、安達、野口日銀審議委員は拙速な緩和策の修正に反対する姿勢や、賃上げ定着に向け金融緩和が必要との立場を打ち出し、円安につながった。
3.主な経済指標結果
〇米国の経済指標⇒米5月住宅着工件数を始め、一連の住宅指標は同市場の回復を印象付けた。一方で、米6月製造業及び総合PMI・速報値のほか、米新規失業保険申請件数は米景気の鈍化を示唆した。
〇欧州の経済指標⇒ユーロ圏、独仏の総合PMI・速報値は軒並み低下。ユーロ圏は5カ月ぶりの低水準だったほか、仏に至っては前月比4.9ポイントも急落、2021年2月以来の水準へ沈んだ。英国は、英5月消費者物価指数(CPI)コアが前年同月比7.1%と、1992年以来の水準へ加速。その結果を受け、イングランド銀行は市場予想の0.25%の利上げに反し、0.5%の利上げに踏み切った。
〇日本と中国の経済指標⇒日本の5月全国消費者物価指数は、生鮮食料品を除いた場合で前年同月比3.2%と、市場予想を上回った。なお、日銀金融政策決定会合の議事要旨では、不確実性を一因に緩和策を維持すべきとの明記されていた。
〇オセアニアの経済指標⇒豪準備銀行は6月6日に予想外の利上げを行ったが、議事要旨では、「6月の利上げの決定は微妙なバランスではあったが、高いインフレが賃金や物価の期待に根付かないようにするために必要と判断」と説明されていた。市場では、7月も追加利上げを行う可能性が意識されている。
4.今週の経済指標予定
・赤字が最重要、青字がある程度重要な経済指標 orイベントとなる。
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