トレーダム為替ソリューション 【AI為替リスク管理システム】

  • 「ドル円の押し下げ介入のリスクを考えないでやってはいけない」
    松井 隆
    この記事の著者
    DZHフィナンシャルリサーチ 為替情報部 アナリスト

    大学卒業後、1989年英系銀行入行。入行とともに為替資金部(ディーリングルーム)に配属。以後2012年まで、米系、英系銀行で20年以上にわたりインターバンクのスポット・ディーラーとして為替マーケットを担当。ロンドン本店、アムステルダム、シンガポール、香港の各支店でもスポット・ディーラーとして活躍する。銀行退職後は本邦総研、FX会社のコンサルティング、ビットコインのトレーディング等多岐にわたる事業に従事する。

    為替の仕組み


    トランプ米大統領がまだ大統領選挙を戦っている間の昨年4月、SNSで34年ぶりのドル高・円安に市場が動いたことについてトランプ氏は

    「アメリカにとって大惨事だ(The yen’s recent fall against the dollar is a “total disaster for the United States,”)」と投稿しています。

    ドル高により米製造業が打撃を受けることを主張したわけです。

    FXをやっている方々は、この発言をすでに認知していたことでしょう。

    ただ、一部では「トランプ=強い米国=強いドル」ということを信じていた方々もいたようです。

    そして、先週3日にトランプ米大統領は、記者会見の場で「通貨安の国に関税を課す」と発言し、中国だけではなく、日本もその国として名指しされました。

    FXをやっている方々は、米国の製造業に異常に肩入れしているトランプ米大統領ですので、いつか出てくると思われた文言が、ついに出たといえます。



    トランプ政権になって以後も、表面的には多くの国が世界一のGDPの米国の機嫌を損なわないように発言しています。

    しかし、隣国のカナダもメキシコも、トランプ政権の無理難題を押し付けられても譲歩できないことで、報復関税を出すなどトランプ政権の方針に従えない態度を見せています。

    ところが、日本と台湾は中国やロシアなどの大国が周りにあることで、米国に対しては常に頭が上がらない状況で、ほとんど米国の要求には丸呑みする様相です。

    2月7日の日米首脳会談でも、日本の自動車メーカーが投資を拡大するとしたほか、日本がアメリカの液化天然ガス(LNG)の輸入を拡大すると表明して、ご機嫌取りをしています。

    台湾も台湾積体電路製造(TSMC)が米国に新たに1000億ドル(約15兆円)を投資すると、3日に発表しています。

    これらの国は、地政学上で米国に従わざる負えず、一部では米国の属国という非難さえ出てくることもあります。



    話をトランプ大統領の円安けん制発言に戻します。

    トランプ発言が出る前の同日には三村財務官「円安は懸念事項の一つ、実質賃金や物価高との関連で」と述べています。

    要するに日本も円安は懸念材料としてると表明しています。

    これまで、日銀からも円安が与える輸入物価の上昇についても危惧する声が出ていました。

    トランプ米大統領の発言を受けて、4日に石破首相は「日本として通貨安政策を取っていない」と発言。

    また、為替については日米の財務相で引き続き緊密に議論しているとしながらも、「為替について米大統領から電話があった事実はない」と述べています。

    様々なことで米国に対して便宜を図っている日本ですが、今回ほど日米がともに同意できることはないのではないでしょうか?

    しかも、トランプ大統領が大嫌いなオバマ元大統領が獲得したノーベル賞を狙いウクライナの和平交渉を進めようとしましたが、失敗。

    隣国のカナダとメキシコくらいは自分の言うことを聞いてくれると思ったが、これも失敗。

    ここで成果を一つ上げるために、日本が円買い・ドル売り介入をしてくれれば、トランプ大統領からすると「自分がディール」に導いたと宣伝できるでしょう。

    よって、ひょっとすると日本からのドル円を押し下げる介入のリスクがあることも考慮して取引をしないといけないのかもしれません。


    本コラムは個人的見解であり、あくまで情報提供を目的としたものです。いかなる商品についても売買の勧誘・推奨を目的としたものではありません。また、コラム中のいかなる内容も将来の運用成果または投資収益を示唆あるいは保証するものではありません。最終的な投資決定はお客様ご自身の判断でなさるようにお願いします。

    ※本記事は2024年3月10日に「いまから投資」に掲載された記事を、許可を得て転載しています。


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