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  • 第133回 各国中銀の利下げも、トランプ関税効果を薄めるか
    金 星
    この記事の著者
    DZHフィナンシャルリサーチ 為替情報部 アナリスト

    中国出身。横浜国立大学大学院卒業後、国内商品先物会社に入社。
    外国為替証拠金取引会社へ出向し、カバーディール業務に携わりながら市況サービスも担当。2013年にDZHフィナンシャルリサーチに入社。

    為替の仕組み
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    1月20日にトラップ第2次米政権がスタートし、早速関税関連のヘッドラインで金融相場の神経質な動きが始まりました。トランプ大統領は2月4日からカナダとメキシコに対する25%の関税を課すと大統領令に署名するも、あっけなく延期しました。らしさを存分に示したが、関税での脅かし外交は第1次政権時のようにうまくいかない可能性が高いです。

    米国は依然として世界で経済・軍事力で最強を誇るが、その影響力は確実に低下しつつあります。トランプ大統領がカナダとメキシコに対する関税を課すとしたら、両国は即座に報復関税を表明しました。覇権争いの相手となる中国は勿論だが、多くの国が米国への反発を強めています。ディール(取引)目的のトランプ米大統領の関税政策は世界経済だけではなく、米経済にも大きな打撃を与える可能性があり、同氏の関税政策は第1次政権時のように強気で進められなくなると見込んでいます。ちょっとした相手の譲歩で、成果を自画自賛しながら関税を取りやめる可能性が高いでしょう。



    人口が世界の約45%、経済規模は世界経済の約28%とされるBRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)に1月にインドネシアが正式に加盟し、タイヤマレーシアも加盟を申請しています。

    BRICS諸国は世界の中央銀行準備高の40%以上を占めており、ドル依存を減らす方法を議論してきました。これに対し、トランプ米大統領は脱ドル化を進めれば100%の関税賦課も辞さない考えを示しています。ただ、同氏がBRICS諸国に対する圧力を強めれば、ドル離れが加速する可能性もあります。



    日本を除いた主要国や、新興国では利下げを続ける可能性が高いです。米政権が関税を強化すれば、各国中銀の利下げペースを後押しする可能性も高いです。トランプ米政権の関税政策によるインフレ高懸念で米連邦準備理事会(FRB)は利下げを一時停止するか逆に利上げに踏み切る可能性もあり、政策金利を巡ってデカップリング(分離)は当面続きそうです。

    結局、関税はドル高につながり、米政権の意に反して諸外国の対米輸出がより有利になります。ドル高・自国通貨安により、制裁関税が及ぼす効果の一部が相殺されるわけです。また、関税強化は米国企業や家計の利払い費用の増加リスクを高め、トランプ米政権に痛手となる恐れがあります。

    通貨が下落すると、エネルギーを中心に輸入価格が高くなるため、インフレが起きるのが一般的です。しかし、貿易摩擦で経済成長の足が引っ張られることなどにより、物価上昇率は多くの分野で鈍化傾向にあるため、中銀の金融政策担当者はそれほど心配していないようです。


    本コラムは個人的見解であり、あくまで情報提供を目的としたものです。いかなる商品についても売買の勧誘・推奨を目的としたものではありません。また、コラム中のいかなる内容も将来の運用成果または投資収益を示唆あるいは保証するものではありません。最終的な投資決定はお客様ご自身の判断でなさるようにお願いします。

    ※本記事は2024年2月15日に「いまから投資」に掲載された記事を、許可を得て転載しています。


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