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  • 円と加ドル、IMMポジションの変化
    金 星
    この記事の著者
    DZHフィナンシャルリサーチ 為替情報部 アナリスト

    中国出身。横浜国立大学大学院卒業後、国内商品先物会社に入社。
    外国為替証拠金取引会社へ出向し、カバーディール業務に携わりながら市況サービスも担当。2013年にDZHフィナンシャルリサーチに入社。

    為替の仕組み
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    CFTC(全米先物取引委員会)は、各取引所にそれぞれの商品先物の建て玉の公表を義務付けています。各取引所は毎週火曜日の取引終了後の建て玉枚数をCFTCに報告し、CFTCはそれを集計して当該週の金曜日午後3時30分(米国東部時間)にホームページ上で公表しております。

    ここで取り上げる円と加ドルは、シカゴのIMM(CMEの1部門)に上場されているものです。IMM通貨先物ポジションでは、ドルに対する各通貨のポジションが分かります。基本的に、持高が積み上がっている方向と為替レートには相関関係があります。為替の大きな方向性、特に投機筋の動向をチェックするのに向いています。

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    2024年7月、161円まで米ドル高・円安が進んだ局面において、CFTC統計の投機筋のポジションで一際目立ったのは円売りの拡大でした。この頃、投機筋の円売り越しは過去最高規模の18万枚以上に拡大しています。2007年も円売り越しが18万枚以上に拡大した時がありましたが、ともに日米金利差拡大がメインテーマとなっています。

    そして2024年7月末に日銀が追加利上げを決定した一方で、米連邦準備制度理事会(FRB)は9月から利下げに踏み切りました。よって、9月に投機筋のポジションは円買い持ちに変化しました。ただ、11月の米大統領選挙でトランプ氏が勝利し、米長期金利の上昇とドル高が進み、円は再び売り越しとなりました。その後は日銀の追加利上げと米利下げペースに絡んでポジションは変化するも、2月1日に発表された1月28日時点の円のネット・ポジションは959枚のショートと売買が交錯しているのが分かります。

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    CFTC統計の投機筋のポジションで円の次に大きな変化が見られたが加ドルです。加ドルのポジションは2024年2月ごろに売りと買いがほぼ拮抗していたが、徐々に売り越しが増えて、カナダ中銀(BOC)が利下げに踏み切った6月には14万枚超えとなり、追加利下げを実施した7月末には売り越しが20万枚弱まで増えました。9月にはFRBの利下げもあり、いったん売り越しが縮小するが、米大統領選で勝利したトランプ氏がカナダに対する関税を示唆し、再び拡大しました。

    主要7カ国(G7)で一番積極的に利下げを実施しているBOCの姿勢とトランプ関税懸念で売り越しは再び18万枚超えまで拡大し、2月1日に発表された1月28日時点の加ドルのネット・ポジションは14万7601枚と依然として高い水準となっています。為替相場でドル/加ドルは今年に一時2003年以来の加ドル安水準となる1.47加ドル後半まで上昇しました。

    トランプ米政権は1日、カナダとメキシコからの輸入品に25%の関税、中国からの輸入品に10%の追加関税を4日から課す大統領令に署名しまし、これに対しカナダは早速報復関税を示唆しました。ただ、その後はカナダとメキシコへの関税を1カ月延期すると発表し、加ドルに買い戻しが入っています。今後の交渉が注目されるが、米国の強硬策が米へのマイナス影響が懸念されることになれば、加ドルの買い戻しが一段と強まる可能性があります。また、BOCの利下げもいったん終盤戦に向かっている可能性もあることも、加ドル売りに一服感を強めそうです。

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    本コラムは個人的見解であり、あくまで情報提供を目的としたものです。いかなる商品についても売買の勧誘・推奨を目的としたものではありません。また、コラム中のいかなる内容も将来の運用成果または投資収益を示唆あるいは保証するものではありません。最終的な投資決定はお客様ご自身の判断でなさるようにお願いします。

    ※本記事は2024年2月8日に「いまから投資」に掲載された記事を、許可を得て転載しています。


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