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(画像の出典:BoE website https: www.bankofengland.co.uk/explainers/who-is-the-old-lady-of-threadneedle-street)
米国連邦準備制度の連邦公開市場委員会(FOMC)、欧州中央銀行のECB理事会、日本銀行の金融政策決定会合と同様に、イングランド銀行(BoE)の金融政策委員会(MPC)はスターリング・ポンド(GBP)の政策金利など金融政策を決定する会合として世界経済に大きな影響を与えています。本記事では、MPCの概要、注目ポイント及び最近の金融政策について解説します。
MPCの概要
(画像の出典:フリー画像サイトPexels https://www.pexels.com/ja-jp/photo/672532/)
金融政策委員会(MPC)はイングランド銀行(BoE)に設置されている委員会であり、イギリスの政策金利及び通貨供給量を決定する会合を年間8回開催しています。会合のスケジュールはBoEのウェブサイト(https://www.bankofengland.co.uk/monetary-policy/upcoming-mpc-dates)に掲載されています。
MPCの委員は独立した9名で構成され、BoE総裁、副総裁2名、内部委員2名、外部委員4名がそれぞれ平等に1票ずつ投票権を有しています。ただし、総裁が議長を務めるとともに票数が割れたときの決定投票を最後に総裁が行うなど、総裁の影響力は他の委員より大きいものとなっています。
会合では、BoE内外のエコノミストが作成したイギリス国内及び世界経済に関する資料を精査し、インフレターゲットに基づいた物価の安定と経済成長や及び雇用に関するイギリス政府の経済政策を支援するために必要な金融政策を投票により決議します。
会合は現地時間の水曜日・木曜日2日間の日程で開催され、2日目の木曜日12時に政策金利が公表されます。公表にあたって、MPCは即時性を担保するために、ブルームバーグ、ロイター、Need-To-Know-Newsの3ベンダーにも政策金利の情報を直接提供しています。その2週間後に、MPC議事録として、各委員の投票状況や決議に至った理由などが公表されます。
併せて、MPCでは、金融政策を決定した背景について、金融政策報告書(MPR)として四半期ごとに公表しており、現状分析と今後数年間にわたる物価と経済成長について見通しを示しています。
MPCの注目ポイント
(画像の出典:BoE website https://www.bankofengland.co.uk/museum/online-collections/blog/why-was-the-bank-of-england-founded)
MPC最大の注目ポイントは、会合最終日である木曜日12時に発表される政策金利です。
景気が加熱し、将来にわたってインフレ率がターゲットの2%より高く推移すると見込まれるときは、政策金利が上げられることになります。通常、政策金利は1%の4分の1である0.25%ずつ動かされますが、急を要するときは、その倍である0.50%や3倍の0.75%の変動幅がとられることがあります。
一方で、景気が後退し、失業率が上昇している局面では、政策金利が引き下げられ、企業や個人が資金を借りやすくなるよう誘導します。
また、経済状況が巡航速度であるときや金融政策による影響を見極める局面では、政策金利は据え置かれることとなります。
次に注目したいのは、政策金利と同時に公表される「ミニッツ」です。箇条書きで示される同文書は、GDP成長率、CPI上昇率、インフレに対する見通し、賃金上場率など、政策金利を決定した根拠となるイギリス国内及び世界の経済情勢を端的に分析しています。
さらに、四半期ごとに公表される金融政策報告書(MPR)も今後のBoEの政策スタンスを示すものとして注目されています。
これらの文書やデータは全てBoEのマネタリーポリシーのウェブサイト
(URL: https://www.bankofengland.co.uk/monetary-policy )に掲載され、誰でも無料で閲覧することができます。
最近の金融政策
(画像の出典: BoE website https://www.bankofengland.co.uk/monetary-policy )
2023年11月時点で、BoEの政策金利は5.25%、インフレ率は4..6%です。これは、インフレターゲットである2%を大きく上回っていますが、徐々にインフレ率が低下していることから、MPCでは11月の会合で政策金利を据え置きました。
(画像の出典:BoE website https://www.bankofengland.co.uk/monetary-policy-report/2023/november-2023)
こちらは、2002年から現在までの政策金利の推移です。BoEは2008年から2009年の金融危機の時に、急激に政策金利を低下させました。その後、2010年代の低成長期、2016年のイギリスのEU離脱、2020年の新型コロナウイルス感染症の影響と長きにわたって低金利時代が続きました。
しかしながら、2021年から始まったインフレ率の高騰を受け、2021年12月の政策金利0.1%から2023年にかけて急激に金利を上昇させ、2023年11月時点では5.25%と金融危機後では最も高い金利となっています。
(画像の出典:BoE website https://www.bankofengland.co.uk/monetary-policy-report/2023/november-2023)
こちらは直近4年間のイギリスの前年同月比のインフレ率です。新型コロナウイルス感染症の影響が大きかった2020年は0~2%で推移していましたが、2021年から2022年にかけて10%を超えるインフレ率にまで上昇しました。その後、金利上昇の影響が現れてきた2022年終盤からインフレ率が下落傾向に転じました。部門別ではエネルギー部門のインフレ率縮小が顕著ですが、サービス部門のインフレ率は高止まりを見せています。
(画像の出典:BoE website https://www.bankofengland.co.uk/monetary-policy-report/2023/november-2023)
こちらは、2004年からのインフレ率の推移と今後のMPCの予測です。2022年の10%を超えるインフレ率はここ20年間ではかなり特異な状況であったことが分かります。MPCでは2025年第4四半期にはインフレ率がターゲットの2%になると予測しています。MPRの中で、MPCは高い政策金利を維持することにより、インフレ率を2%に引き戻すことが可能であると指摘しています。
まとめ
(画像の出典:BoE website https://www.bankofengland.co.uk/museum/online-collections/blog/platinum-grade-portraits-exploring-elizabeth-ii-image-on-banknotes-throughout-her-reign)
本記事ではMPCの概要、注目ポイント及び最近の金融政策についてご紹介しました。かつて、世界の金融の覇権を担っていたイギリスですが、現在も相対的な規模は小さくなったとはいえ、MPCが発表する政策金利は世界経済を動かす力を依然として持ち続けています。西側世界の4大中央銀行の一角を占めるBoEの動向には今後も注意が必要です。
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