「流動性低下・枯渇」振れやすく為替は荒く上下
関口 宗己
この記事の著者
DZHフィナンシャルリサーチ 為替情報部 アナリスト

1987年商品取引会社に入社、市場業務を担当。1996年、シカゴにて商品投資顧問(CTA)のライセンスを取得。
市況サービス担当を経て、1999年より外国為替証拠金取引に携わり、為替ブローキングやIMM(国際通貨先物)市場での取引を経験した。2006年2月にマネーアンドマネー(現・DZHフィナンシャルリサーチ)記者となる。日本テクニカルアナリスト協会検定会員(CTMA2)。日本ファイナンシャルプランナー協会AFP。

為替の仕組み

米関税や関連した米中関係の行方の不透明感がマーケット参加者の売買手控えにつながっています。

商いが薄く「流動性低下・枯渇」状態のなか、為替は売りが止まりにくく下落が大きく進んだかと思えば、反動の揺り戻しも思った以上の大きさになるなど振れやすくなっています。安値を売り込んだり、高値を掴んだりするリスクに注意すべきでしょう。



米関税が当初に見込んでいたよりも緩やかな適用にとどまるとの観測からドル円は3月後半に151円台を一時回復していました。しかし結局はトランプ政権による対中国で最大245%にもなり得る厳しい関税適用に動く状況から、足もとで142円付近まで下落が進む展開となっています。

関税賦課がもたらすインフレは、米経済が対応できないような圧迫材料になるとの見方がドル離れを招いた結果ですが、ドル売りの加速だけでなく、下落局面で時折大きな揺り戻しが入って長めな下ひげをともなう足型を形成する場面が目立ちます。

背景の1つとなっているのは政権の関税適用方針や関連した米中関係などの先行きが読みにくく、マーケット参加者が売買を手控え気味であり、「流動性低下・枯渇」の状態にあることが大きな要因と考えられます。

売り手のフローにより下落が進む場面で、通常なら価格を相応に織り込んで値動きが徐々に緩和していくのですが、「流動性低下・枯渇」で取引が薄いなかでは受け手となる買いが集まりにくく、思った以上に大きな陰線を形成しやすかった面があります。

ただそれだけでなく、売り材料となっていた材料を否定するような内容が出てきた局面で、相応の戻り売りが入りつつも買い戻しの勢いを容易に抑えきれず、意外な強さで揺り戻しが進んだ結果が長い下ひげをともなう足型形成につながっているようです。



例えば4月2日、関税の基本設定が10%と、当初20%程度と報じられていたより小さかったものの、上乗せで関税が中国34%、日本24%、EU20%などといった水準が伝えられ150円近辺から下落し始め、3日も売りが進み大陰線を形成。しかし、4日にフォロースルーのような売りが中国の報復関税を嫌気して144円台まで進んだ後は、特段の反転を促すような好材料がないなかでも売り一巡後の揺り戻しが大きく進み146円台を回復しました。

週明け7日は再び売りが強まったものの、「関税適用の90日間停止」との噂で148円台を回復。この話に否定的な発言も聞かれ再び144円付近へ売り込まれたものの、「関税一時停止」が正式に伝わるとかなり長めな下ひげをつけて再度148円台へ戻す荒っぽい動きとなりました。

しかし、中国が米国の措置に対して譲歩しない姿勢を強く示したことが嫌気され、結局は大陰線を形成後、足もとの安値圏142円付近まで続落する展開となりました。

ただ、下値を探る局面でも先週末にホワイトハウス報道官が関税措置に対して「トランプ米大統領は中国との取り引きに前向きな姿勢を示している」などと発言すると長めな下ひげをともなう足型を形成して144円回復をうかがう様相を示したり、今週に入っても米中の交渉進展を期待させるような報道で下げ渋ったりと、落ち着かない動きを示しています。

こうした「流動性低下・枯渇」により荒っぽく振れる展開がしばらく続きそうです。目先の上下へ安易に追随すると、安値を売り込んでしまったり、思わぬ戻り高値を掴んでしまったりするリスクがある点に注意が必要です。


本コラムは個人的見解であり、あくまで情報提供を目的としたものです。いかなる商品についても売買の勧誘・推奨を目的としたものではありません。また、コラム中のいかなる内容も将来の運用成果または投資収益を示唆あるいは保証するものではありません。最終的な投資決定はお客様ご自身の判断でなさるようにお願いします。

※本記事は2024年4月16日に「いまから投資」に掲載された記事を、許可を得て転載しています。


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