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アメリカではFRB(連邦準備制度理事会)が政策金利の利上げを実施しており、株安や住宅ローンの金利引き上げなどの影響が出ています。なぜ利上げを行うのでしょうか?
金利の上昇・下降と経済はどのような関係があるのでしょうか?今回は短期金利・長期金利とは何か、金利とインフレの関係、アメリカの利上げが及ぼす日本への影響4つを解説していきます。
短期金利・長期金利とは
金利には「短期利」と「長期金利」があります。短期金利とは取引期間1年以内の金利、長期金利は貸し借りの期間が1年超の金利を指します。長期金利の代表的なものとして「10年物の国債利回り(国債金利)」があります。
2022年3月からアメリカの中央銀行(連邦準備銀行)の最高意思決定機関FRBが政策金利(短期金利)の利上げを実施しました。
アメリカの民間銀行は連邦準備銀行に準備金を預けていますが、他の民間銀行に貸し付ける際の短期金利を市場操作で政策金利(現在より高い金利)に誘導します。短期金利を上げることで金融の引き締めを図ります。
長期金利は、短期金利とは異なり債券市場の参加者が将来の経済成長や物価上昇など長期の見通しを加味して需要と供給に応じて市場で決まります。2022年のアメリカの金利の推移は以下の通りです。
アメリカの短期金利・長期金利の上昇は、日本にもさまざまな影響を及ぼしています。なぜFRBは利上げを行っているのでしょうか?
利上げはインフレ抑制を目的として行われている
FRBが利上げを行っている理由は、インフレ対策です。なぜ金利が上がるとインフレが抑制できるのでしょうか?
アメリカでは2020年3月のコロナショックに伴い大規模な金融緩和政策を実施しました。金融緩和が行われると中央銀行から商業銀行(一般的な銀行)の借り入れ、銀行間の借り入れが増え通貨供給量が増大します。
商業銀行は企業や個人に融資を拡大し、企業・個人が使えるお金が増えます。通貨の供給量が拡大することで、投資や買い物にお金を回せるようになり株価が上がり消費が活発になります。
モノやサービスの売れ行きが良くなると価格が上がり、その状態が続くと貨幣価値は下がります。結果貨幣価値が下がり物価が上がる「インフレ」の状態に陥るのです。
2020年4月以降から2022年2月(利回りの上昇が始まる前の月)までのアメリカはこの「金余り」の状態でした。投資市場に資金が流入し株高となり、個人の消費が活発になりインフレが起こりました。
2022年3月からFRBは政策金利(短期金利)の利上げを実行しました。金利が上昇すると、企業・個人の借り入れの意欲が下がる傾向があります。通貨の供給量は減少し、個人の消費が冷え込むと自然とモノやサービスの価格は下がりインフレは抑制されます。
FRBは金融緩和で「金余り」となった経済市場を利上げで引き締め、通貨の供給量を安定させるために段階的に利上げを実施しています。
過去にアメリカでは、利上げが実施される前に市場での物価上昇の懸念により長期金利が上昇しました。しかし、利上げがスタートすると長期金利は一定のレンジ内で安定して推移しました。FRBの利上げがスムーズに進むことで長期金利は安定すると推測されています。
しかし、アメリカの利上げは日本にも影響を及ぼしています。
アメリカの利上げが及ぼす日本への影響4つ
1.円安
アメリカが利上げを実施する前の2021年、為替は1ドル約103~115円台で推移していました。しかし、2022年3月以降は円安が進み10月20日には1ドル149円90銭まで下がり32年ぶりの円安水準を更新しました。
円安が進んだ理由は日本とアメリカの金利差です。アメリカが政策金利を上げているのに対して日本はゼロ金利政策を続けているため利回りの高いドルを買い、円を売る動きが加速しました。
2022年12月10日現在1ドル130円台後半で推移しています。ただしFRBの利上げは今後も行われる予定ですので、予断を許さない状況と言えるでしょう。
2.株価
FEBの利上げにより2022年の米国市場は前年より株安となりました。日本の株式市場もアメリカの影響を一因として株価が昨年より低めのレンジで推移しています。
以下は過去5年間の日経平均株価の推移です。
2021年は27,000円台から30,000円台の値動きでしたが、2022年は24,000円台から29,000円台で推移しています。ロシア・ウクライナ情勢やインフレ・新型コロナ感染症、国内の政治・経済の情勢の影響もあるでしょう。
しかし2022年9月末時点で世界の株式時価総額のうちアメリカは43.8%を占めています。日本や世界の株価にも影響を及ぼしていると推測されます。
3.住宅ローンの固定金利が上昇
3つ目の影響は住宅ローンです。住宅ローンの金利は将来の金利の動向によって左右すると言われています。アメリカの金利が上昇し円安となったことで、円安を解消するために日本でも利上げが行われるとの予測から新発10年国債を売却する投資家が増え金利が上昇しました。
2022年12月現在は住宅ローンの固定金利が上昇傾向にあります。
住宅支援金融支援機構の固定金利住宅ローン商品「フラット35」の金利が上昇しています。日銀はゼロ金利政策を続けているため、変動金利は上昇していません。
4.仮想通貨
仮想通貨は利上げによる金融引き締めの影響が大きく「ビットコイン」が最高値の1/3程度となり他の通貨も下落しています。2022年11月には大手交換業者FTXが経営破綻というニュースもありました。
まとめ
アメリカの利上げは日本にも影響を及ぼしています。FX・株・仮想通貨の取引をするかたには気になるニュースと言えるでしょう。今後の利上げのペースは毎月アメリカで開催されるFOMC(連邦公開市場委員会)で決定します。動向を注視していきましょう。
本記事は2022年12月23日に「いまから投資」に掲載された記事を、許可を得て転載しています。
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