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  • ユーロ円、昨年8月安値が再び焦点に
    岩間 大祐
    この記事の著者
    DZHフィナンシャルリサーチ 為替情報部 アナリスト

    大学卒業後の2004年に国内証券会社に入社。

    外国為替証拠金取引業務に携わった後、金融情報サービス会社にて個人投資家向けの為替情報配信業務を担当。市況サービスのほか、テクニカル分析を軸にした情報を配信する。

    国際テクニカルアナリスト連盟認定テクニカルアナリスト。

    為替の仕組み

    今回解説していく通貨はユーロ円です。欧州ではドイツの次期連立政権が財政拡大案を発表しました。これまで緊縮的な財政運営を続けてきた同国の方針転換によって独経済が下支えされ、欧州経済にも波及するとの思惑が浮上。足もとのユーロ相場を支える大きな要因となっています。財政拡大案は憲法改正を必要とするため、今後は独議会で改正に必要な3分の2の賛成票を確保できるのか、各党との交渉が注目されるでしょう。では、チャート上でもユーロ円の状況を確認していきましょう。



    下図のチャートはユーロ円の週足チャートになります。前回の分析(12月11日)からの推移を見ていくと、160円を挟んだ水準で神経質に上下する動きとなりました。

    ただ、足もとの状況は徐々にではあるものの上値を切り下げてきており、今後は昨年8月5日につけた直近安値154.42円(チャート上の青色実線)を巡る攻防に再び焦点が当たる可能性が高そうです。同水準を下抜けるとさらに下値余地が拡大する格好となりますが、その場合は2023年12月安値の153.23円や同年7月安値の151.42円(いずれもチャート上の丸で囲った部分)などが次のサポート水準になります。

    なお、チャート下部に追加した「DMI」によると、-DI>+DI(下落トレンド)を示唆しているものの、トレンドの強さを示すADXは低下基調にあり、現在はそこまで強い下落基調とはなっていないようです。



    今度は月足でさらに長期視点での方向性を確認していきましょう。(下図のチャート)。

    長期的な流れは2012年安値を始点する上昇トレンド(チャート上昇の青色実線)が継続中となっていますが、昨年までの上昇は「チャネルライン」付近で上値を抑えられた格好です。やはり長期視点でも目先は調整局面と捉えるべきでしょう。

    また、チャート下部の「DMI」が2021年以来の-DI>+DI(下落トレンド)に転じた点も気になるところです。トレンドの強さを示すADXは低下基調にあるため、これまでの上昇トレンドからの調整局面と受け止めることもできますが、今後ADXが上昇に転じた際には注意が必要となります。



    最後に今後1カ月間の重要イベントも確認しておきます。注目は独議会での憲法改正案の採決の行方となりそうです。連立与党(「キリスト教民主・社会同盟(CDU/CSU)」と「社会民主党(SPD)」)は議会の3分2以上の議席を保有しておらず、現在は「緑の党」などとの交渉が続いている状況です。また、日銀の金融政策決定会合にも注意が必要となります。本日12日には春闘の集中回答日を迎え、賃金上昇による日銀の早期利上げ観測が一段と高まる可能性もありそうです。

    その他のイベントは以下の通りとなります。

    今後1カ月の重要イベント

    3月12日 日本 春闘、集中回答日

    3月18日 ドイツ 独議会で財政ルールの緩和に向けた憲法改正案の審議・採決

    3月18-19日 日本 日銀金融政策決定会合

    3月21日 日本 2月全国消費者物価指数(CPI)

    4月1日 ユーロ圏 3月消費者物価指数(HICP、速報値)


    本コラムは個人的見解であり、あくまで情報提供を目的としたものです。いかなる商品についても売買の勧誘・推奨を目的としたものではありません。また、コラム中のいかなる内容も将来の運用成果または投資収益を示唆あるいは保証するものではありません。最終的な投資決定はお客様ご自身の判断でなさるようにお願いします。

    ※本記事は2024年3月12日に「いまから投資」に掲載された記事を、許可を得て転載しています。


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