
今回解説していく通貨は豪ドル米ドルです。足もとの為替相場は米関税絡みの報道や当局者発言などに振らされる不安定な展開。豪ドルも豪州独自の材料に反応する場面は少なく、米ドル相場や市場全般のリスク志向の行方などに左右されやすい状況が続いています。
チャート上でも荒い値動きが目立っていますが、短期の振れに惑わされることなく、トレンドをしっかり確認したうえでの取引が重要となるでしょう。では、チャート上で豪ドル米ドルの状況を確認していきます。
豪ドル米ドルの週足分析
下図のチャートは豪ドル米ドルの週足チャートになります。前回の解説(1月29日)からの推移を確認すると、しばらくは2022年10月からのレンジ相場(チャート上の黄色実線)下限付近で耐えていましたが、今月上旬の急落によって完全にブレイク。足もとでは再び買い戻しが入っていますが、ここまで明確に下抜けた以上、2022年来のレンジ相場は完全に終了したと考えてよいでしょう。

現在の状況から想定される相場の方向性ですが、2023年2月高値を始点とする穏やかな下降トレンド(チャート上の青色実線)が有力でしょうか。
チャート下部に追加した「DMI」で確認しても、-DI>+DI(下落トレンド)を示唆しており、トレンドの強さを示すADXもやや上昇傾向。前週につけた直近安値の0.5915米ドルを今後に再び下抜けた場合、2020年3月安値の0.5510米ドル(チャート上の丸で囲った部分)まで下値目標が拡大するため注意が必要となります。
豪ドル米ドルの日足分析
ここからは短期的な視点から見ていきます。下図は豪ドル米ドルの日足チャート(4月14日執筆時点)。チャート上の青色実線は週足分析で紹介した物と同じです。今回は「一目均衡表」も追加してあります。

「一目均衡表」で確認すると現在は転換線と基準線がほぼ同値であるほか、遅行スパン<価格線、価格線>抵抗帯(雲)とやや方向感を欠いた状況です。ただ、直近の買い戻し局面では一目雲を何度も上抜けており、前回の分析で懸念していたような「雲がレンジスタンスとして機能する状況」を避けられたことは好材料を捉えてよいでしょう。
今後は2月以降に上値を抑制してきた0.6400米ドル付近(チャート上の四角で囲った部分)をしっかりと上抜けられるかがポイントになります。
今後のイベントは
最後に今後1カ月間の重要イベントも確認しておきます。期間内には豪米の金融政策公表が控えていますが、市場の目線は米関税政策の行方に向けられているため、為替相場への影響は一時的なものにとどまるかもしれません。なお、市場では「4月30日公表の1-3月期消費者物価指数(CPI)がよほど上振れない限り、RBAは5月理事会で追加利下げを実施する」というのが規定路線。金利先物市場ではすでに5月の0.25%利下げを100%織り込んだ状態です。
一方で、米関税政策に関してですが、豪州に対する米相互関税率は10%と全貿易相手国に対する一律分のみで、相対的には低関税率となっています。問題は豪州と貿易関係の深い中国経済の行方。米中貿易戦争の激化が中国経済を下押すことになれば、豪州も否応なく影響を受けることになるでしょう。
その他のイベントは以下の通りとなります。
今後1カ月の重要イベント
4月30日 豪州 1-3月期消費者物価指数(CPI)
4月30日 豪州 3月CPI
4月30日 米国 3月PCEコア・デフレーター
5月2日 米国 4月米雇用統計
5月6-7日 米国 米連邦公開市場委員会(FOMC)
5月13日 米国 4月CPI
5月19-20日 豪州 豪準備銀行(RBA)理事会
【免責事項・注意事項】
本コラムは個人的見解であり、あくまで情報提供を目的としたものです。いかなる商品についても売買の勧誘・推奨を目的としたものではありません。また、コラム中のいかなる内容も将来の運用成果または投資収益を示唆あるいは保証するものではありません。最終的な投資決定はお客様ご自身の判断でなさるようにお願いします。
※本記事は2024年4月16日に「いまから投資」に掲載された記事を、許可を得て転載しています。
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