目次Executive Summary今週の為替相場の振り返り=ドル円はパウエル発言で138円に迫るも、SVB破綻などで急落主な要人発言主な […]
先週の乱高下を振り返る…4/29の介入
4月29日の昭和の日、東京市場は休場でしたが、当日は休日出勤で相場に張り付いていました。
ドル円は前日高値158.44円を上抜けて158円半ばまで強含んだところまでは正常な動き。
しかし、158円後半を超えると、159円台はほぼ素通りし160円台にいつの間にか乗せました。
その時間は1分程度という驚くほどのスピードでした。
その後159円台前半から半ばでもみ合いが続きましたが、午後に入ると本邦当局者による
ドル売り・円買い介入が執拗に入り、154円台まで急落となりました。
介入の押し下げが入る前に、元ディーラーの仲間とチャットで
「明日介入が入らないなければ、円安容認となるから、2週間くらいで180円まで上がるかもね」
と話していたばかりでした。
これまでも、東京が休場の日や、NY時間や早朝など、様々な時間で為替介入は行われてきましたが
前回の介入から間隔が開いているときは通常は東京市場で介入をまずはやるのが通例で
あくまでも介入が入るのは東京が休場ではない30日と予想し、
東京市場が休場の29日に介入が入ったことは非常に珍しく、サプライズ介入となりました。
…5/1の介入
4月29日の介入に続き5月1日にも介入が行われました。
(日本時間では5月2日早朝5時過ぎですが、まだ約定応当日が変更されていない時間帯だったので
ここでは5月1日とします)
米連邦公開市場委員会(FOMC)が終了し、パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長の会見も終わり
マーケットが落ち着いたのにもかかわらず、157円前半から153.04円まであっという間にドル円を落としました。
本邦当局者が「過度な変動は望ましくない」と繰り返し述べてきていたのに
マーケットが落ち着いている中での介入は
逆に本邦当局者が過度の変動を自ら作るという、本末転倒な動きとなりました。
なぜ通例を無視した時間帯で介入が行われたか?
今回介入を行う前の相場は、4月26日にドル円は154.99円から158.44円まで急騰。
29日に160.17円まで更に上がったことで、僅かな間で5円を超える円安が進行したので介入をしたのは理解できます。
しかも、ユーロ円はユーロが導入された1999年以来の過去最高値(円の最安値)を大幅に更新。
他にもスイスフラン円、人民元円なども過去最高値を付けたことで
円の独歩安となったことにより、ボラタイルな動きと行き過ぎた動きによる円安阻止
という大義名分が成り立つでしょう。
しかし、なぜ通例では行われない時間帯を狙った介入だったのでしょうか?
1つ目の理由としては、介入の効果が一番大きい時間帯を狙ったと言えます。
東京市場が不在で、本邦の実需などの参加が見込まれない日だった・・・4月29日。
取引参加者が極端に少ない時間帯だった・・・5月1日。
どれも流動性の悪い時間だったことで、敢えて効果を高めたとの声があります。
しかしながら、それだけではなくドル売りが出来るアマウント(介入玉)に限界があるから
との声も実もかなりあります。
円売り(ドル買い)介入と違い、円買い介入はドルを売らなくてはなりません。
本邦の外貨準備高は約200兆円ありますが、ドル売りに利用できるものがこれだけあるわけではありません。
ドル売りが出来るものとされているのが、ドルの外貨預金や満期日が短い短期証券のみとされています。
多く保有する満期の長い米債を売ることは、米国サイドからは強い拒否反応を示してくると予想されます。
この介入玉(外貨預金と短期証券)を使い切らずに、いかに効率よく円安を止めるかを重視したため
敢えて流動性の悪い時間帯を狙った介入との声が多くあります。
そして、市場参加者の予想では、今回と同程度の介入玉を利用した場合は、介入ができるのは
あと7-8回程度ではないかとも予想されています。
巨大化した為替市場
今回の為替市場での介入は4月29日が約5.5兆円、5月1日が約3.5兆円と想定されています。
これは日銀が日々に更新する当座預金の残高見通しなどから算出し、予想が建てられます。
上述したように、流動性の悪い中で介入したのにもかかわらず、これほどの大規模となる金額を要した
ことに市場関係者は驚いています。
それだけ、為替市場が巨大化したとも言えるわけです。
これまでの介入玉では効果が出たものが、巨大化した市場では効果が薄くなっています。
中銀の介入が負けることもある
これまで中銀が為替介入を行ったのにもかかわらず、市場の流れに逆らえず負けた(介入を諦めた)
例は実は数多くあります。
直近ではトルコ中銀が自国通貨安を止めることが出来ませんでした。
また、スイス銀行(SNB=中銀)はユーロ買い・スイスフラン売りを繰り返していたのが
2015年1月15日にスイスフラン売り介入を諦め、約20分でスイスフランが40%超暴騰しました。
またかなり前ですが1992年にはイングランド銀行(BOE・英中銀)は
東京時間を含め執拗にポンド買い介入を行ったのにもかかわらず、
ジョージ・ソロス氏をはじめとしたファンド勢の売り圧力にはかなわず
英国が欧州為替相場メカニズム(ERM)を離脱し「暗黒の水曜日(Black Wednesday)」と呼ばれる
ことも起きています。
いずれも、市場がファンダメンタルズに適した動きだったのですが、介入によりそれを阻止しようとして
失敗したという例です。
実際今回も金利差だけではなく、国民の可処分所得が増えず、景気見通しも明るい兆しが見えない国の通貨が売られやすいのはファンダメンタルズに沿った円安とも言えます。
のこり7-8回程度で介入玉が出尽くすリスクがあります(もっと少ないとの予想もあります)。
すぐに円安地合いが復活するかは分かりませんが、もし再び円安になった場合は介入では止められない円ショックが起きることも念頭に置く必要があります。
介入が常の勝つとは限らず、介入も負けることがあることを知らないといけないでしょう。
※本記事は2024年5月6日に「いまから投資」に掲載された記事を、許可を得て転載しています。
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