目次
はじめに
直近の一時円高傾向が注目される中、輸出企業にとっては利益圧迫のリスクが高まっています。
円高は海外市場での競争力低下を招くだけでなく、売上や利益にも直接的な影響を及ぼします。
今回は、企業の経理担当者や経営者向けに円高時の財務戦略を解説し、具体的な対策を提案します。
円高の影響とは?
円高とは、日本円の価値が相対的に上昇し、1ドルあたりの円の価値が高くなる状況を指します。
例えば、1ドル=150円から1ドル=130円に変動した場合、同じ100万ドルの売上でも、日本円換算の売上は1億5000万円から1億3000万円に減少します。
このように、円高は海外からの収益を圧縮する要因となります。
また、大手自動車メーカーのような輸出企業は、円高になると海外での販売価格が相対的に高くなることで売上減少のリスクがあり、1円の変動で数億から数百億の影響が出ると言われています。
為替リスクを軽減するための財務戦略
▪️為替ヘッジの活用
為替リスクを抑える最も基本的な手法は、為替ヘッジの活用です。具体的には、以下のような方法があります。
為替予約
事前に特定の為替レートで外貨を売買する契約を結ぶことで、将来の円高リスクを回避できます。
例:A社は半年後に100万ドルの売上を予定しており、現在の1ドル=140円で為替予約を行う。円高が進み1ドル=130円になっても、A社は140円で換金できるため、為替差損を防ぐことができます。
オプション取引
オプション料を支払うことで、円高時でも一定のレートで外貨を売る権利を持つことができます。
例:B社が1ドル=140円のプットオプションを購入すると、円高が進んだ場合でも140円で換金できるため、利益の下振れリスクを抑えられます。
スワップ取引
異なる通貨間の金利を交換することで、為替変動リスクを調整する手法です。
例:C社は取引先と契約し、売上の一部をユーロで受け取るスワップ契約を締結することで、円高によるドル建て売上の減少を補うことができます。

▪️取引通貨の分散
輸出取引において、米ドルだけでなく、ユーロや人民元など複数の通貨での取引を検討することで、特定の通貨に依存するリスクを軽減できます。
例えば、大手製作所は、アジア市場向けの取引で人民元建て契約を増やし、ドル以外の通貨での取引比率を上げることで為替リスクを低減しています。
外貨建て決済の導入
海外取引先との契約を外貨建てにすることで、円高の影響を受けにくくすることができます。例えば、外貨での売上を外貨のまま保持し、必要なタイミングで円転することで、為替の影響を抑えられます。
▪️コスト構造の最適化
生産拠点の見直し
円高の影響を最小限に抑えるために、海外に生産拠点を移転することも選択肢の一つです。例えば、大手自動車メーカーは北米市場向けの車両をアメリカで生産することで、為替の影響を回避しています。
海外企業との提携
海外市場での競争力を維持するため、現地企業とのパートナーシップを強化し、現地生産や共同開発を行うことも有効です。

▪️経営戦略の再構築
価格戦略の見直し
円高時には、価格戦略を見直し、値下げに依存しない販売戦略を構築することが重要です。例えば、大手電気製品企業はプレミアムブランド戦略を採用し、品質の高さを前面に出すことで価格競争を避けています。
新市場の開拓
円高時には、新興国市場の開拓を進めることで、売上の多様化を図ることが可能です。例えば、大手電気製品企業はアフリカ市場向けに低価格帯の家電製品を展開し、新たな顧客層を獲得しています。
国内市場の強化
円高によって国内市場の購買力が向上するため、国内販売を強化することも一つの戦略です。例えば、大手衣類メーカーは輸入品の価格を引き下げ、円高メリットを消費者に還元する戦略を採用しています。
まとめ
円高基調の現在、輸出企業は為替リスクへの対応を強化することが不可欠です。
為替ヘッジや外貨建て決済、取引通貨の分散などの財務戦略を適用しつつ、生産拠点の見直しや新市場の開拓を進めることが、円高の影響を軽減するカギとなります。
また、価格戦略や国内市場の強化にも注力することで、持続的な成長を実現することが可能です。
企業の経理担当者や経営者の皆様は、早めに対応策を検討し、長期的な競争力を維持するための戦略を構築することが求められます。
円高局面を乗り越え、より強固な経営基盤を築いていきましょう。
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