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  • 「ハト派←→タカ派転身」日銀高官発言で乱高下
    関口 宗己
    この記事の著者
    DZHフィナンシャルリサーチ 為替情報部 アナリスト

    1987年商品取引会社に入社、市場業務を担当。1996年、シカゴにて商品投資顧問(CTA)のライセンスを取得。
    市況サービス担当を経て、1999年より外国為替証拠金取引に携わり、為替ブローキングやIMM(国際通貨先物)市場での取引を経験した。2006年2月にマネーアンドマネー(現・DZHフィナンシャルリサーチ)記者となる。日本テクニカルアナリスト協会検定会員(CTMA2)。日本ファイナンシャルプランナー協会AFP。

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    日銀総裁「ハト派→タカ派転身」円高進行

    これまで基本的に「ハト派」(金融緩和派)と思わせる発言をしていた植田日銀総裁の「タカ派」(金融引き締め派)的な見解、「タカ派」とされていた内田副総裁の「ハト派」的発言、「ハト派←→タカ転身」が円相場や株式市場の乱高下を誘っています。長期視点なら地道な対応継続を心掛けるべきだったり、短期狙いの投機的な仕掛けが難しいことを意識したりしつつ臨む局面といえるでしょうか。

    先月末30-31日開催の日銀金融政策決定会合では、記者会見で植田総裁が前回2006年から2007年の利上げ局面で天井となった0.50%について、「特に意識していない」と述べたことが材料視されました。それまで拙速な利上げに慎重な「ハト派」な発言が目立った植田総裁が「タカ派」に転身したとして、同水準が壁にならず追加利上げが進んでいくとの思惑から円買いが進みました。

    ドル円は、会合の結果発表前日からNHKが「日銀は明日まで開く金融政策決定会合で現在0-0.1%の政策金利を0.25%程度に引き上げる案などを議論」、日経新聞が「日銀は追加利上げを検討、国債買い入れを減額する量的引き締めの具体策も決める」などと報道していたことを受けて155円付近から円買いが進み始め、追加利上げに際しては152円割れへ下押しています。13時前に利上げ決定の事実確認後はその流れを次第に落ち着かせ、154円回復をうかがう場面もありました。

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    しかし15時30分から会見が始まり、前述の植田総裁の金利引き上げ限度に関する発言を受けると円買いが再び進行。後日の弱い米雇用統計ほか景気後退懸念を高める米経済指標を背景としたドル売りも相まって、今週5日には142円割れまでドル売り・円買いが進んでいます。


    副総裁「タカ派→ハト派転身」巻き戻しの円売りに

    ただ、足もとで潮目を変えるような発言が飛び出してきました。7日午前、日銀が主催した北海道・函館における講演で従来「タカ派」とされる内田日銀副総裁の「金融市場が不安定な状況では利上げをすることはない」との発言が、「ハト派」的と受け止められ巻き戻しの円売りが入り、ドル円は反発を強めました。

    ドル円は週初5日の円高の勢いを多少落ち着かせ、145円を挟んで上下していました。しかし内田副総裁の発言を受け、148円手前まで急速に円売りを進めています。

    内田副総裁は講演内容で、金融緩和の度合い調整について述べた際、「ここ1週間弱の株価・為替相場の大幅な変動が影響」することを指摘していました。想定以上の変動を目の当たりにして、慎重にならざるを得なかったといったところでしょうか。

    一連の急速な円高から、やはりやや急だといえる円安方向への巻き戻しには、人工知能(AI)を駆使した対応・アルゴリズムによる売買が背景となっているとの見方もあります。日銀会合後の植田総裁による「タカ派」への転身とも受け止められた発言、続いて7日講演での内田副総裁の「ハト派」的な発言を解析した自動売買が動きを加速させたとの指摘です。

    直近の地合いに引きずられず「ハト派←→タカ派転身」に対して感情なく硬直的に売買を行うAI、その流れに翻弄され追随するマーケット参加者が値動きをさらに押し進める展開がしばらく続くかもしれません。日銀の「タカ派」や「ハト派」姿勢を示唆する文言、「ハト派←→タカ派転身」が推察されるキーワードを織り込んだアルゴリズム売買に右往左往する荒っぽいマーケットを想定して臨むことになるでしょうか。

    長期スパンの取引であれば余裕資金を前提に目先の乱高下に惑わされず、時間的分散を心掛けた地道な投資を継続することが得策と考えられます。短期的に収益を狙いにいくスタイルであれば、確信が持ちにくく見定めが難しい場面では「休むも相場」で、高値を掴んだり、安値を売り込んだりを避けることが大切でしょう。

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    本コラムは個人的見解であり、あくまで情報提供を目的としたものです。いかなる商品についても売買の勧誘・推奨を目的としたものではありません。また、コラム中のいかなる内容も将来の運用成果または投資収益を示唆あるいは保証するものではありません。最終的な投資決定はお客様ご自身の判断でなさるようにお願いします。

    ※本記事は2024年8月7日に「いまから投資」に掲載された記事を、許可を得て転載しています。

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