テクニカル分析判断 サマリー: ●『根強い上昇圧力』は依然強靭ではあるものの、6月に入り高値警戒感の高まり もまた当初想定より強力。上昇 […]
ドル円、1カ月半ぶりの安値155円台に下落
今週、ドル円は一時155.38円と6月7日以来約1カ月半ぶりの安値を更新しました。今月3日には161.95円と約37年半ぶりの高値を付けていましたが、そこからは大きく値を下げています。先週、政府・日銀による為替介入と見られる円買い・ドル売りをきっかけに下落基調が強まりましたが、今週は米大統領選の共和党候補に指名されたトランプ前大統領が通信社とのインタビューで「米国はドル高により大きな問題を抱えている」と述べ、足もとのドル高をけん制。さらには、河野太郎デジタル相が円安是正のため、日銀に政策金利を引き上げるよう求めたと伝わり、円買いとドル売りの両方が強まりました。
もっとも、河野デジタル相は「日銀の利上げの必要性に言及した」との報道について、19日開かれた会見では「金利が上がれば円高になるという理論を申し上げただけだ」と述べ、「自身の発言は日銀に直接、利上げを求めたものではない」と釈明しています。
*Trading Viewより
さらに、今週はウィリアムズ米ニューヨーク連銀総裁が「今後数カ月以内に金利引き下げが正当化される可能性がある」と述べたほか、ウォラー米連邦準備理事会(FRB)理事が「最近のデータで2%の物価目標達成にさらに自信が持つことができた」「利下げが正当化される時期に近づいている」と発言したこともドル売りを促しています。
政府・日銀による5.5兆円規模の為替介入
先週11日の米CPI発表後に急速にドル円は4円以上も急落しましたが、翌12日にも為替介入を見られる動きがありました。政府関係者の話として「政府・日銀が為替介入を実施した」と伝わっていますが、民間の金融仲介会社は日銀が発表した統計から政府・日銀が推計で11日に3.5兆円、12日に2兆円規模の介入を行った可能性があると分析されています。
なお、今週17日にも「政府・日銀が新たな為替介入を実施した」との観測が浮上していましたが、日銀が18日に発表した19日の当座預金予想によると、為替介入が反映される「財政等要因」は民間予測の3000-4000億円の不足に対し、5900億円の余剰となり、市場では「為替介入があった可能性は相当低いだろう」との声が聞かれました。現在は「為替介入との観測が出ていたが、円売りポジションの処分による動きではないか」との見方が優勢になっています。
財務省は今月31日19時に6月27日-7月29日の為替介入の実施状況を公表します。
投機筋の円売りポジションが急減
ヘッジファンドによる円売りポジションは今月、過去17年間で最大規模に膨らみました。米商品先物取引委員会(CFTC)が先週日発表した2日時点の建玉報告によると、シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)の通貨先物市場で非商業部門(投機筋)の円の売り越し=ドル円のロングは18万4223枚と2007年6月(18万8077枚)以来の高水準を記録。円先物が導入された1986年以来でも屈指の規模となりました。
ただ、本日19日(日本時間20日早朝)に発表された16日時点の建玉報告によると、投機筋の円売りポジションは15万1072枚と2日時点の18万4223枚から3万3151枚減少しています。
*CFTCのデータを基にDZHフィナンシャルリサーチ作成
4月29日と5月1日に為替介入の直後、イエレン米財務長官が「介入を強くけん制」していただけに、「日本は介入が困難になった」との認識が広がっていました。そのため、先週の介入とみられる動きについては「意外」と受け止める市場参加者が多かったようです。特に、円安が進んだ局面で円買い介入を実施するのではなく、(米CPI発表後に)円高が進んだ局面でドル円を押し下げる目的の「押し下げ介入」が実施されたと見られる点が「サプライズだった」との指摘もありました。
政府・日銀による介入への警戒感が再燃したことで、投機筋の円売りポジションは「慎重度が増す」可能性があります。すでに円売りに大きく偏ったポジションを「解消」する動きが拡大する可能性にも留意したいところです。
ドル円、いわゆるスケベショート
先週の記事では「神田真人財務官は今月末に3年の任期を終えるため、その前にこの歴史的な円安進行を阻止し、決着をつけておきたいはず。これに便乗してドル円をショート(いわゆるスケベショート)した」と紹介しました。ポジションは1ロット、159.082円で建てています。現在は「1万5000円ほど」の利益となっています。
*IG証券より
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※本記事は2024年7月20日に「いまから投資」に掲載された記事を、許可を得て転載しています。
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