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  • ドル円、再び157円台に 介入は困難!?
    中村 知博
    この記事の著者
    DZHフィナンシャルリサーチ 為替情報部 アナリスト

    鹿児島出身。2007年国際金融情報サービス会社に入社。
    外国為替取引会社・金融機関への24時間リアルタイム金融情報サービスの為替記者として従事。市場動向や見通しなどを解説する動画サービスの業務も経験。2017年にDZHフィナンシャルリサーチに入社。

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    投機筋の円売りポジション、じわり増加

    ヘッジファンドによる円売りポジションは政府・日銀による為替介入があったとみられる4月29日以降、大幅に減少しましたが、その動きも一服。再び増加しています米商品先物取引委員会(CFTC)が4月26日に発表した4月23日時点の建玉報告によると、シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)の通貨先物市場で非商業部門(投機筋)の円の売り越し=ドル円のロングは17万9919枚と2007年6月(18万8077枚)以来の高水準を記録。円先物が導入された1986年以来でも屈指の規模となりました。

    その後、5月17日に発表された14日時点の建玉報告によると、投機筋の円売りポジションは12万6182枚と4月23日時点の17万9919枚から5万3737枚減少していましたが、24日発表の21日時点の建玉報告では14万4367枚と1万8185枚増加していることが分かりました。

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    *CFTCのデータを基にDZHフィナンシャルリサーチ作成 

    ドル円、再び157円台に

    ドル円は4月29日に160.17円と1990年4月以来34年ぶりの高値まで急伸しましたが、そのあとは政府・日銀による為替介入とみられる動きで5月3日には151.86円まで一転下落しています。政府・日銀による介入とみられる円買いの動きは4月29日の午後と1日のFOMC後である日本時間2日の早朝の2回。ただ、そのあとは再びじり高の展開となり、ほぼ介入時の水準に戻った形となっています。市場では「じりじり進む円安の裏で、慌ててドル調達に走る国内輸入企業の姿が見え隠れする」との声が聞かれています。

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    *Trading Viewより

    米利下げ観測の後退

    今週も米連邦準備理事会(FRB)高官らは早期利下げに慎重な見方を示しており、米利下げ観測は後退しています。米連邦公開市場委員会(FOMC)で投票権を有するボスティック米アトランタ連銀総裁は20日、「インフレ目標の2%に到達すると確信できるまでまだ時間がかかる」と述べたほか、デイリー米サンフランシスコ連銀総裁は「インフレ率が2%に向けて低下していることをまだ確信せず」などと発言。また、ジェファーソンFRB副議長は「4月のインフレ指標は鈍化したものの、インフレが目標の2%に持続的に回帰しつつあるとは断言できない」と述べています。

    また、ウォラーFRB理事は21日、「利下げを支持するにはあと数カ月分の良好な物価指標を確認する必要がある」と述べたほか、バーFRB副議長は「以前に考えられていたよりも長期間、引き締めを維持する必要がある」と語っています。

    さらには、FRBが22日に公表した4月30日-5月1日分のFOMC議事要旨では「最近の指標はディスインフレの過程に想定していたより時間がかかりそうなことを示唆」「数人の当局者は必要ならさらなる引き締めに意欲」との見解が示されました。当局者は金融政策が「良い位置にある」と分析する一方、正当化されるなら追加引き締めにも前向きだとさまざまな言及があったといいます。

    イエレン発言で介入が困難に

    加えて、イエレン米財務長官による為替介入へのけん制を受けて、市場では「政府・日銀は介入が困難になった」との見方が強まっています。イエレン米財務長官は4日に「介入はまれであるべき」と発言していますが、13日にも通信社のインタビューで「為替介入はまれな行為であるべき」「他国への伝達必要」と発言しています。今週23日にも「為替介入はめったに使用されない手段であるべき」「介入に踏み切る際には事前の伝達が必要」と繰り返しています。市場では「G7財務相・中央銀行総裁会議を前に、日本をけん制した可能性がある」との声が聞かれています。

    神田財務官は24日、G7財務相・中央銀行総裁会議に出席後、記者団に対して「為替市場の変動には引き続き注意が必要」「無秩序な為替の動きは経済に悪影響を与える」「(為替)過度な変動があれば適切な行動をとる」「介入がまれであることが望ましいのはいうまでもない」と話していますが、イエレン米財務長官が「介入はまれであるべき」と繰り返す中にあっては、「介入は困難」との見方は強まるばかりです。

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    ※本記事は2024年5月25日に「いまから投資」に掲載された記事を、許可を得て転載しています。

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