トレーダム為替ソリューション 【AI為替リスク管理システム】

  • 為替介入とは?ドル円相場の過去事例を踏まえて解説!!(前編)
    この記事の著者
    金融市場アナリスト

    上智大学外国学部卒業、City, University of London(MBA)卒業
    複数の金融機関で為替ディーラーやファンドマネージャーを歴任。
    15年間かけてニューヨーク、ロンドン、シンガポールを転戦。市場分析や顧客対応に加え金融・投資教育等も行う。

    為替の仕組み

    本記事では、トレーダムのキャラクター「カワセ博士」とカワセミの「カワセアイ」が日常のやり取りから為替について理解を深めていきます。

    登場人物

    カワセアイIntro

    カワセアイ「カワセ博士は、長年、おっきな銀行で、為替ディーラーをやってたって聞きましたけど、実際にディーラーやってたとき、為替介入に出くわしたこととかあるのですか?」

    博士Intro

    カワセ博士「うん、経験あるよ。実際に介入を受けたこともある。

    その時はドル売り介入だったね。」

    カワセアイIntro

    カワセアイ「ちなみに、今のドル円相場はドル高傾向が続いていて、巷では日銀のドル売り介入警戒感が高まっているみたいなんですけど、今日は介入の実際について教えて欲しいです。」

    博士Intro

    カワセ博士「確かに足元、150円台を越えてドル円が上昇してから、
    またにわかに日銀介入の話が出てきているね。」

    「じゃあ、今日は為替介入について詳しく話していこう。」

    カワセ博士「まず、介入について知っておくべきことは、介入の実施者だ。介入は誰が行うと思う?」

    カワセアイ「え、日銀でしょ?」

    カワセ博士「そう、実際の介入のオペレーションは日銀がやるんだけど、介入の金額やタイミングはすべて財務省が決めるんだ。そして介入の正式名称を『外国為替平衡操作』という。ちょっといかめしい感じだよね。そして財務省の外国為替資金特別会計ということろから介入資金が出るんだよ。」

    カワセアイIntro

    カワセアイ「へえ、そうなんだ。そういえば、あまり日銀の植田総裁が介入についての話をした記憶がないような気がする。」

    博士Intro

    カワセ博士「そう。介入について語るのは財務官と財務相だよね。今なら、神田財務官と鈴木財務相。『為替相場の動向を注視しています。』とか、よく言ってるでしょ。つまり、実際の介入は財務省が決定して、日銀に指示を出し、日銀が実際のオペレーションを行うんだ。」

    カワセ博士「そして、次に重要なことは、介入の段階には大きく分けて、3つある、ということ。」

     ①口先介入

     ②実弾介入(単独)

     ③実弾協調介入、の3つだね。

    下に行くほど、その効果は大きくなる。

    カワセ博士「①の口先介入は、さっきも例に出した、『為替相場はファンダメンタルズに沿って安定的に推移するのが望ましい。』とか『急激な変動に対しては、適宜適切に対応していく。』などの発言。大体文言は決まっていて、ドル円相場が大きく動き出すとちょこちょこしゃべり出すよね。財務省としては、このドル円の動きは好ましくないと思っています、皆さん調子に乗らないでね、という市場参加者に対してまずはジャブ的な注意喚起を行うものだね。」

    「ただ、この口先介入にも強弱があって、通り一遍のものから、真剣に『こら、調子こいてると介入すっぞ!』といった凄みを含んだ感じのこともある。」

    「例えば、ついこないだ神田財務官が言った、『(ドル売り介入)スタンバイです。』と発言した時がそうだね。これは口先介入だったけど、かなり効いたね。今すぐ介入があるのでは、との警戒が市場に広がった。その結果、その後ドル円はずるずる下落したよね。」

    「その口先介入の効果というのは、発言の内容や、強度や、その時の市場参加者の売り買いの傾き(ポジション)にもよるね。強い言葉で表現しても、ポジションが傾いていないときはあまり効かないこともある。」

    博士Intro

    カワセ博士「②の実弾介入は、実際に日銀が、市場でドル売り(ドル売り介入)やドル買い(ドル買い介入)を一度に大量に行う。」

    「これは様々なツールを通して日銀が相対で取引を実施する。これについては、あとでゆっくり話をしよう。まずは、介入の3段階を全部話してしまおう。もちろん、この実弾介入の効果はタイミングも重要だけど、介入金額が大きいほどよく効くよ。」

    カワセ博士「③の協調介入は、実弾介入を、他国の中央銀行と協力して行う。」

    「たとえば、日銀と米連邦準備理事会(FRB)と欧州中央銀行(ECB)などが同時に行う、とか、それぞれの時間帯で連続して実施するとか、のパターン。当然ながらこれが一番効く。例えば、3行が協調してドル売り介入をしたとすると、世界中の主たる中央銀行がみんなドル高を望ましく思っていないんだ、と市場参加者が否応なく理解して、かつ、大量のドル売りが市場に出回るわけだから、当然それに立ち向かっていくのはまずいな、と思うわけ。」

    「やはり協調介入が一番効く。経験上、それぞれの時間帯でやっても、同時に3行がやっても、効果は同じようにかなりあるとみてよい。決して逆らってはいけない。」

    image 38

    カワセアイ「こわ、そんな時ドルロング(ドルの買い持ち)を持っていたら大変ですね…」

    カワセ博士「そうだね。僕も東京時間で、日銀のドル売り介入を受けた後、欧州時間に入ったら、いきなりまたECB(当時は独ブンデスバンク)がドル売り介入したというニュースが飛び込んできて、ドルがさらに劇下げして、こわ~っと思った記憶がある。」

    「協調介入は効く。とはいえ、ここで重要なことは、実はそれぞれの国にそれぞれの思惑があるから、協調介入はなかなか実現しない。現在だって、日本は、ドル高円安はほどほどにしておいてもらわないと、輸入物価が上がって大変だけど、米国にとって強いドルはインフレ退治に効果的だから、実際ドル高は困らないわけで、たぶん今回のフェーズでは協調介入はあり得ない。FRBとしては、日銀の介入はお手伝いはしないけど、黙認する、というスタンスだと思うよ。」

    カワセアイ「なるほど。カワセ博士、介入の3ステップ、よくわかりました。ありがとうございます。」

    博士Intro

    カワセ博士「じゃあ実際は、介入はどう行われるのか、ということについてはまた次回に詳しく話をしていこう。」

    カワセアイIntro

    カワセアイ「はい、よろしくお願いします!!」

    後編:為替介入とは?日本銀行と銀行の取引の裏側を解説!!(後編)

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