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  • 第131回「鉄鋼関税」や「相互関税」、「米投資拡大」でドル高・円安方向へ巻き戻し
    関口 宗己
    この記事の著者
    DZHフィナンシャルリサーチ 為替情報部 アナリスト

    1987年商品取引会社に入社、市場業務を担当。1996年、シカゴにて商品投資顧問(CTA)のライセンスを取得。
    市況サービス担当を経て、1999年より外国為替証拠金取引に携わり、為替ブローキングやIMM(国際通貨先物)市場での取引を経験した。2006年2月にマネーアンドマネー(現・DZHフィナンシャルリサーチ)記者となる。日本テクニカルアナリスト協会検定会員(CTMA2)。日本ファイナンシャルプランナー協会AFP。

    為替の仕組み
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    「トランプ関税」を懸念したドル高の流れはニュース確認後の短期的な動きにとどまったものの、「鉄鋼関税」や「相互関税」、「米投資拡大」を意識させるニュースがドル買い・円売り方向への巻き戻しを強めた感があります。日米金利差の縮小を想定すれば緩やかなドル安・円高が見込めるものの、関税や米投資を材料視したフローやショートカバーが入りやすい状態とみて臨むべきかもしれません。



    月初1日に、トランプ米大統領がカナダ、メキシコからの輸入品に25%の関税をかけ、中国に対しても10%の追加関税を課すとの大統領を発令した影響によるドル高は、対円では同週明け3日の東京市場で156円手前へ上振れたところで早々に落ち着きました(図表参照)。その後はメキシコ・カナダの関税導入先送りや、さえない米経済指標の結果が重しとなり、同週末7日には151円割れまで調整が進みました。 

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    しかし今週は、トランプ米大統領がすべての国を対象にして「10日にも鉄鋼・アルミへの25%関税を発表する」との報道を受け、当初こそリスク回避の円買いからドル円が重い動きを見せる場面はあったものの、次第に前週の大幅な下落に対するショートカバーが強まり、12日の東京タイムには153円台を回復しています。

    強いアメリカの衰退を象徴するラストベルト(錆ついた工業地帯)の主要産業の1つ鉄鋼業を擁護する姿勢をアピールする政策といえますが、「鉄鋼関税」そして高関税の貿易相手国に対して同水準の関税をかける「相互関税」導入への動きもあって、これが米国民の負担へとつながり、インフレの高まりを招くとの懸念が再燃しています。



    また、日本から米国へ向けた投資の動きもドル買い・円売りの動きを後押ししやすくなっているようです。日本製鉄によるUSスチール買収の動きは、トランプ大統領が述べた「日本製鉄がUSスチールの株式の過半数を保有することはできない」との見解で釘を刺された格好ではあるものの、「買収ではなく、多額の投資を行うことで合意」とされています。

    加えて日米首脳会談に臨んだタイミングで石破首相から「トヨタは米国への投資拡大を検討中」との発言も聞かれました。従来からのNISAなど税制優遇で活発化している本邦からの米国を中心とした株式投資フローも引き続き下支えになっていると考えられます。

    日米金融政策の方向性の違いから、緩やかですが利上げに向かう日本と、停滞気味であるものの依然として利下げが想定される米国の金利差が縮小する可能性を加味すれは、緩やかにドル安・円高が進む展開も念頭に置いて臨むべきかもしれません。

    しかし先週の156円手前から151円割れまでといったような、やや急激にドル安・円高方向への調整が進んだような場面では、米関税への懸念を再燃させるようなニュースや、米国向けの投資の高まりを意識させるようなニュースがショートカバーを誘うきっかけになりやすいでしょう。

    当面はトランプ大統領による関税の悪影響を懸念させるような発言や、「米投資拡大」に関連するニュースが、ドル買い・円売り方向への資金の流れや、ドル安・円高局面でのショートカバーを誘う可能性を念頭に置いて臨む必要がありそうです。


    本コラムは個人的見解であり、あくまで情報提供を目的としたものです。いかなる商品についても売買の勧誘・推奨を目的としたものではありません。また、コラム中のいかなる内容も将来の運用成果または投資収益を示唆あるいは保証するものではありません。最終的な投資決定はお客様ご自身の判断でなさるようにお願いします。

    ※本記事は2024年2月12日に「いまから投資」に掲載された記事を、許可を得て転載しています。


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