今回は、為替相場が企業に与える影響をテーマとし、相場変動の原因や輸出・輸入への影響など今さら聞けない疑問を、GFIT為替アナリスト 安田佐和 […]
為替予約で目にする様々な種類のレート
貿易取引の決済業務を銀行に依頼すると、銀行はその契約内容や顧客の信用状況に応じた決済手法や為替レートを提案し、顧客が選択した手法に応じた為替レートで決済することが出来ます。
銀行のレート表にはTTS(注1)、TTB(注2)、アクセプタンス(注3)、アットサイトバイイング(注4)、DP(注5)、DA(注6)、現金など色々なレートが並んでいます。
これらは顧客と銀行の外貨の売買と実際の貿易の決済との時間差に応じて、TTSまたはTTBをベースに決済日までの金利などを調整したものです。
これでおわかりのように相場を決定しているのはTTS、TTBです。TTとはtelegraphic transferの略で電信付替のことです。一般的には2営業日後の決済を意味しています。この2営業日後の通貨の交換を直物(じきもの)取引といい、これが一般で言われる為替市場です。
銀行だけが参加できる為替市場が銀行間市場と呼ばれるものです。なお銀行間市場では直物の他に先物も取引されます。ただ先物は直物との差額(スプレッド)で表示されるのが一般的で、通貨の交換価値を決定するのは直物相場です。
銀行と為替予約をするときのヒント
このように、銀行での為替の取り扱いには様々なレートがあり、一見するとどれを選択すべきなのかわからないという方もいるかもしれません。ここからは、為替予約をする際に気を付けたいポイントについて、今回は ①受渡日、②約定のタイミングの二点に絞って解説します。
受渡日
確定日渡しと期間渡しの二種類があります。期間渡しというのは、一定に期間内であれば何時でも予約が実行できるというものです。銀行によっては一年先までの各月の月中であれば何時でも予約の実行ができる限月渡しとして提供しているところもあります(例えば12月渡しであれば12月中何時でも実行可能)。決済日が事前に確定していない場合に、期間渡しは便利なので使われている方も多いと思います。
しかし、できる限り確定日渡しでの予約をお勧めします。銀行の期間渡しに対する相場設定のロジックを考慮すると、顧客にとって不利なことが多いためです。外貨の決済が確定日とずれてしまったら、外貨預金の活用や予約の繰上げ繰延べなどで対応可能です。コストも期間渡しに比べてかからない。
具体的には、12月後半にドル建ての支払いを予定している場合、12月中であれば何時でも予約を実行できる12月の限月渡しを利用することができますが、例えば12月20日の確定日渡しで契約、12月15日に予約を実行する場合は予約を繰上げし、12月28日に予約を実行する場合は予約を繰延べすることで対応出来ます。予約の繰上げ、繰延べ可能な期間は銀行により異なるので、対応の可否についてはご利用の銀行に確認が必要です。
約定のタイミング
当然のことながら、誰もが出来るだけ有利なレートで予約したい考えます。すぐに予約したほうが良いか、少し待ったほうが良いかなど、銀行に相談される方も多いと思います。しかし、銀行の専門家にとっても、今日明日の予測はある程度ついても数日後どうなるかは正直分かりません。証拠金取引(FX)による日計り取引で儲けたい場合、約定のタイミングはそれなりに大事ですが、実需の決済の予約であれば必要な時に必要な金額を予約することがポイントとなります。相場予測に振り回されないほうが賢明です。
最後の大事なポイント
さて次に問題になるのは必要な時に必要な金額の意味です。具体的にはどういうことでしょう? 最後に必要な時に必要な金額とは何か、筆者の観点からお話しします。
結局は銀行と為替予約をするときは必要な時に必要な金額を確定日渡しでとればよいということです。
必要な時に必要な金額とは、端的に言えばいつどれだけ外貨建取引の資金授受が生じるかにということです。
まず外貨建債権債務を把握しましょう。これにより会社の現在の為替リスクの状況が分かってきます。これに将来の確度の高いキャッシュフロー、例えば外貨の配当金が入る、原料輸入のため外貨支払いが生じるなどなど、将来生じる外貨建取引に対する為替リスクを加味して為替リスクを俯瞰します。
為替リスク相当金額を、リスクが顕在化したタイミング(例えば受注/発注時点)から将来生じる外貨取引の決済期日まで為替予約するのが基本的な考えとなります。これらの基礎を踏まえた上で、各社の事業特性とリスクヘッジポリシーに基づいた為替予約をする事が肝要です。
注1)TTS(Telegraphic Transfer Selling rate)とは、銀行が顧客に外貨を販売するときの売りレートのこと。
注2)TTB(Telegraphic Transfer Buying rate)とは、銀行が顧客に外貨を買い取るときの買いレートのこと。
注3)アクセプタンスレート(一覧払い輸入手形決済相場、Acceptance Rate)とは、信用状に基づいて発行された一覧払輸入手形の代金を、銀行が支払う場合の相場のこと。
注4)アットサイトバイイングレート(一覧払い輸出手形相場、A/S Rate)とは、信用状に基づいて発行された一覧払い輸出手形の代金を、銀行が支払う場合の相場のこと。
注5)DPレート(信用状なし荷為替手形決済、Document Against Payment Rate)とは、銀行が買主(輸入者)に為替手形を一覧で支払うことを求めるレート。この支払い後に銀行は船積書類を買主に引き渡す。
注6)DAレート(信用状なし荷為替手形決済、Document Against Acceptance Rate)とは、銀行が買主(輸入者)に為替手形の期日支払いを確約することを求めるレート。この確約後に銀行は船積書類を買主に引き渡す。
関連記事
ようこそ、トレーダムコミュニティへ!