GFIT為替アンバサダー 安田佐和子 がお届けするWeekly動画解説! 1週間のドル円相場の振り返りを踏まえて解説します。
クーポンスワップは為替変動リスクをヘッジするために有用な商品です。
ではクーポンスワップのメリットやデメリットはどのような点があるか解説します。
1.クーポンスワップのメリットとリスク
1-1.メリット
最初にクーポンスワップのメリットについて項目別に解説します。
長期間の為替リスクをヘッジすることが可能
クーポンスワップは長期間の為替レートを同じ水準で固定することができるため、長期間の為替リスクヘッジに利用することができます。
為替レートは日に日に変動しており、売上と外貨を計上するタイミングと、実際に外貨を日本円に転換するタイミングのレートは異なります。
このレートの差を「為替変動リスク」と呼びます。
為替予約やフォワード取引と呼ばれる為替変動リスクのヘッジ商品は、1年以内(数ヶ月等)の短期での為替変動リスクをヘッジすることに利用されることが多い商品です。
一方でクーポンスワップは、1年以上の長期の為替レートを固定するために利用されています。
円換算で将来のキャッシュフローを確定させることができる
クーポンスワップは長期に渡って為替レートを固定することができるため、外貨での取引の場合でも将来のキャッシュフローを円換算で確定することができます。
そのため海外との貿易事業者が、クーポンスワップを利用することで将来の日本円のキャッシュフローを固めることができるという点がメリットとして挙げられるでしょう。
1-2.リスク
途中解約は原則不可
クーポンスワップは契約当初に長期間の契約を行うことから、途中で解約したいとなった場合でも解約は原則不可となっており、契約終了まで履行することが求められます。
特約等契約時に結んでおけば解約ができる場合もありますが、途中解約が可能な場合でも、その時点でのクーポンスワップ契約の時価清算となることには注意が必要です。
有利な為替変動が発生しても為替差益を享受することができない
クーポンスワップは長期に渡って為替レートを固定するため、為替が有利な方向へ変動した場合は、そのメリットを失ったり、大きな損失が発生することがあります。
外貨の変動リスクにクーポンスワップ等でどの程度保険をかけるかは事業戦略上重要なポイントの一つになるでしょう。
2.クーポンスワップの活用事例
2-1.輸出企業
輸出企業の場合、海外で売上げた外貨を日本円に転換して支払い等に充てないといけない場合があります。
その場合、発注から納品を経て外貨を受け取り、日本円に転換して国内業者に支払う間の為替変動リスクが発生します。
万が一円高で推移した場合は為替の変動分が為替差損となりますが、そのリスクをクーポンスワップでヘッジすることが可能です。
また貿易取引を発注したタイミングでも長期的な契約上で定める為替レートが適用される場合があり、発注前の為替変動リスクがあるという点も注意が必要です。
クーポンスワップの具体的な例を以下で説明します。
1ドル150円の時に1万ドルの商品を販売し、1万ドルを受け取った場合、販売時は円換算で150万円が売上となりますが、日本円に転換する際に1ドルが130円になっていた場合は、円換算で130万円となるため、販売時から▲20万円が為替差損になります。
この20円の円高をヘッジするために、クーポンスワップで予め140円で固定する契約を長期に渡って契約すると、1ドルが130円になっている場合でも、120円になっている場合でも、140万円を受け取ることができます。このようにクーポンスワップで為替変動リスクをヘッジすることができます。
2-2.輸入企業
輸入企業の場合支払いは外貨となる場合が多いため、為替が円安方向で推移すると円換算での支払い金額が増加します。
例として1ドル150円の時に1万ドルの商品を輸入した場合、支払金額は日本円で150万円となります。しかし、1ドル170円まで円安が進行した場合、支払金額は170万円まで増加します。
円安リスクを避けるため、クーポンスワップを利用してレートを事前に固定することができます。例えば1ドル140円でクーポンスワップを契約後、レートが円安に推移し1ドル170円になった場合でも支払金額は140万円となり、為替差損をヘッジすることが可能です。
しかしクーポンスワップを契約後にレートが円高に推移した場合でも、クーポンスワップで固定したレートで換算された支払額を払う必要があります。例えば1ドル140円でクーポンスワップを契約後、レートが円高に推移し1ドル130円となった場合でも、支払金額は140万円となり円高のメリットを享受することができません。
このようにレートの推移によりメリットとリスクが発生するため、リスクに応じたクーポンスワップの利用の仕方を考える必要があります。
2-3.業者の具体例から為替ヘッジの利用方法を考察
例えば、以下のような場合の場合どのようなリスクがあり、どのような選択肢が考えられるか、そして為替リスクのヘッジでどのようなメリットが発生するか解説します。
以下が条件です。
・海外から商品を輸入(ドル払い)、国内で販売(円受取り)する輸入業者
上記の業者の場合の為替変動リスクは、海外から商品を輸入した際の為替レートと、販売価格が1年変更できない国内のメーカーに納品後受け取る日本円の受取金額の部分で為替変動リスクが発生します。
万が一円安が進行し商品の輸入コストが上昇した場合、日本円での販売価格に価格転嫁ができなければ利幅が低下します。
このように販売価格に為替レート上昇分を価格転嫁できない場合は為替レートを固定すれば、将来の相場の変動によらず収益を確定させることができます。
例えば、仕入れコストが1万ドル、現在のドル円レートが150円/ドル、販売価格が200万円だとします。満期5年間のクーポンスワップでドル円の取引レートを140円/ドルに固定すれば、今後5年の間にドル円相場が円安に推移し180円/ドルになった場合でも、円高に推移し120円になった場合でも、粗利は為替レート変動の影響を受けず、60万円(200万円-1万ドルx140円/ドル)で一定です。
輸入企業がクーポンスワップを利用するメリットの一つに、金利差によるディスカウントで現在の為替レートよりも低い水準でのドル買いが可能になることが挙げられます。このディスカウント幅は期間が長くなるほど大きくなりますが、期間の設定には慎重な判断が必要です。クーポンスワップの満期までに、大幅な円高となった場合でも、販売数量が見込みを大幅に下回った場合でも、契約で決められた数量のドルを固定されたレートで買い続けなければいけません。
3.クーポンスワップを利用する時の注意事項
最後にクーポンスワップを利用する時の注意事項について説明します。
クーポンスワップは、為替変動リスクがあるエクスポージャー全てをヘッジするために利用するのではなく、その一部のリスク軽減のために利用する場合が多いです。
為替変動リスクが発生するエクスポージャーを全てヘッジした場合、為替差益が発生する場面でもメリットを享受できず、また不利な条件で長期間取引を行うことになります。
外貨のエクスポージャーの内割合を決め、その一部をヘッジするという方法でクーポンスワップを利用しつつ、短期的なヘッジは為替予約で行い、ヘッジ手法も分散化することでリスクを抑制することを推奨します。
クーポンスワップには長期的な為替変動リスクがありますが、利用の方法により為替リスクを軽減することができることから、貿易関連の企業はクーポンスワップをよく利用しています。
自社の状況や為替リスクを考慮し、どのような使い方が望ましいのかを検討し、様々な可能性を考慮したうえで、一つのヘッジ手法として利用することが望ましいと考えます。
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