<テクニカル分析判断> ●短・中期:想定を上回る自律反発は「中期下落トレンド」の収束/反転をもたらしうるか? 9/16週は「寄付140 […]
目次
Executive Summary
- 4月10~14日週に、ドル円は約1カ月ぶりに134円の大台に乗せ一時134.05円をつけた。しかし、ドル円の変動幅は2円22銭と、その前の週の3円13銭から縮小し2月27~3月3日週以来で最小の値動きとなった。
- 植田日銀新総裁が早期の緩和修正観測に否定的な見解を寄せたほか、米3月雇用統計を受けた5月2~3日開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)での0.25%利上げ観測の強まりがドル円を押し上げ。米3月消費者物価指数(CPI)など米指標のほか、3月開催のFOMC議事要旨を受けて上げ幅を削り132円割れを押し返される場面もあったが、米4月ミシガン大学消費者信頼感指数・速報値で1年先インフレ期待が1%ポイントも急伸した結果を受け、ドル円は133円後半へ切り返した。
- テクニカル的に足元は三角持ち合いの状況で、方向感が見出しづらい。目先は5月FOMCでの0.25%利上げ観測を背景に買い戻しが優勢となるが、物価は減速傾向が鮮明となり、米経済指標は米景気の減速を示唆している。
- また、米銀の決算をみると、金利上昇を受けて純金利収入が押し上げ好結果となったものの、預金金利のさらなる引き上げは中堅・中小銀行にとって業績悪化材料となる。また、国際通貨基金(IMF)が警告するように、商業不動産ローンをめぐる不安も払しょくしきれていない。従って、ドル円は2022年秋のような一方向でのドル高は想定しづらく、徐々に上値が重くなってくるだろう。今週の上値の目途は心理的節目の135円、下値は20日移動平均線がある132.30円と見込む。
1. 先週の為替相場の振り返り=ドル円、一時約1カ月ぶりに134円台を回復
【4/10-14のドル円レンジ:131.83~134.05円】
・4月10~14日週のドル円の値幅は2円22銭と、その前の週の3円13銭から縮小した。ただし、上値を切り上げ一時約1カ月ぶりに134円台を回復した。
・週初は、米3月雇用統計が堅調な労働市場を示した流れを受け継ぎ買いが優勢に。植田新日銀総裁が緩和政策を維持する姿勢を打ち出したことも、政策修正期待をはく落させドル円でのドル買い・円売りを促した。
・4月12日には、米3月消費者物価指数(CPI)の発表を控え一時134.05円と約1カ月ぶりの水準へ上値を拡大。しかし、米3月CPIは前年同月比が約2年ぶりの水準に減速したほか、米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨で当局者の一角が米地銀の流動性危機をめぐり懸念を表明していたため(今週のトピックスをご参照)、以降は上げ渋り。ただし、5月FOMCで0.25%利上げ観測が根強いなかで、米10年債利回りが上昇したため、下値も限定的だった。
・4月14日に米4月ミシガン大学消費者信頼感指数・速報値の上昇と1年先のインフレ期待が前月の3.6%→4.6%へ急伸したほか、ウォラー米連邦準備制度理事会(FRB)理事が一段の引き締めが必要との発言を受けても、133.80円台に切り返すにとどまった。
チャート:米4月ミシガン大学消費者信頼感指数・速報値は1年先インフレ期待が急伸
チャート:ドル円の日足チャート、米10年債利回りにつれて買い戻し(白い枠が3月27日週の動き、緑線は米10年債利回り、左軸)。
2. 主な要人発言
・米国のFed高官からは、あと1回の利上げをめぐる発言が相次いだが、シカゴ連銀総裁やフィラデルフィア連銀総裁など利上げ打ち止めを示唆する内容も確認した。欧州中央銀行(ECB)当局者の発言は、利上げ方向を打ち出すも、今後については引き続き意見が分かれる状況。日銀の植田新総裁は、政府・日銀アコード(共同声明)の修正の必要なしと発言したほか、イールド・カーブ・コントロールやマイナス金利など現状の政策が適切と発言し、市場での緩和修正期待の後退を誘った。
3. 主な経済指標結果
〇米国の経済指標⇒米3月消費者物価指数(CPI)は市場予想を下回り、前年同月比は約2年ぶりの低水準だった。米3月生産者物価指数(PPI)も前月比0.5%低下し、2020年4月以来の落ち込みを記録。インフレ減速を裏打ちする結果が優勢にみえたが、週末の米4月ミシガン大学消費者信頼感指数・速報値で1年先インフレ期待が1%ポイントも上振れし、市場での5月FOMCでの利上げ打ち止め観測に冷や水を浴びせた。ただ、米3月小売売上高や米3月鉱工業生産(製造業が弱い)などは、米景気の鈍化を示唆した。
〇欧州の経済指標⇒ユーロ圏3月小売売上高や同3月鉱工業生産が市場予想を上回り、ユーロ圏景気の底堅さを確認した。英指標の結果は、まちまちだった。
〇日本と中国の経済指標⇒本邦2月経常収支は2カ月ぶりの黒字だったが、市場予想に届かず、引き続き貿易赤字が圧迫している様子を確認した。中国3月消費者物価指数は市場予想以下にとどまり、需要が当初の期待より高まっていない状況を示唆した。一方で、中国3月貿易黒字は輸出が予想以上に堅調だったものの、輸入は市場予想ほどではなかったが減少していた。
〇オセアニアの経済指標⇒豪3月失業率は市場予想より高結果となり、米労働市場が底堅い様子を示した。
4. 今週の経済指標予定
・赤字が最重要、青字がある程度重要な経済指標 orイベントとなる。
5. 為替見通し:ドル円、目先は買い戻し優勢も不透明感燻り上値重く
【4月17日~4月21日週の為替予想レンジ:132.30~135.00円】
ドル円は前週、一時134.05円と約1カ月ぶりの大台乗せを達成した。上昇過程では、4つのテクニカル的な節目①25日移動平均線、②100日移動平均線、③50日移動平均線、④一目均衡表の基準線――を次々に抜けていった。足元は、ボリンジャー・バンドの2σの水準134.30円、一目均衡表の雲の上限がある134.50円、そこを超えると心理的節目の135円が意識されよう。
今後、ここから上昇トレンドへ突入するかというと、足元のテクニカルでは判断しづらい。2022年10月21日の151.94円から始まった下降トレンドと、2023年1月16日の127.22円からの上昇トレンドに挟まれ、三角持ち合いの状況となっているためだ。
ただ、上昇過程で値幅がどんどん狭まっている点に留意したい。前週は2円22銭と2月27日週以来で最小となり、3円以上が続いた足元を踏まえると上昇エネルギーが弱まりつつあるようだ。なお、2月27日週の翌週の3月8日に一時137.91円をつけた後で下落に転じ、3月24日に一時129.64円へ下げていた。
また、金融不安が払しょくされないのであれば、リーマン・ショック時のようにドル円は徐々に下方向へ戻すシナリオが想定されよう(ご参照:3月27日のWeekly Report:5. 為替見通し:ドル円、引き続き戻りは限定的で129.50円割れのリスクも)。
チャート:ドル円2022年10月からの日足、白い線が上昇と下降のトレンドライン
経済のファンダメンタルズの観点に加え、米利上げの終了が近い状況を踏まえれば、ドル円の上値は引き続き限定的と見込む。経済のファンダメタルズでは、物価の減速トレンドを確認し(今週のトピックスをご参照)、米3月鉱工業生産で製造業が過去5カ月間で3回低下したように、企業の設備投資なども鈍化の兆しをみせている。
J.P.モルガン・チェース(JPM)など米銀大手3行の決算が4月14日に発表され、以下の通り各行の純利益が2桁増で市場予想を上回るなど決算内容は好調だったが、不安な要素も見逃せない。
・J.P.モルガンチェース、純利益は前年同期比52%増の126億ドル、1株当たり利益4.32ドル vs 市場予想3.41ドル
・シティグループ、純利益は同7%増の46億ドル、1株当たり利益2.19ドル vs 市場予想1.67ドル
・ウェルズ・ファーゴ、純利益は同32%増の49.9億ドル、1株当たり利益1.23ドル vs 市場予想1.13ドル
増益の背景として、金利上昇が追い風となった。増益のドライバーとなった純金利収入をみると、JPMは前年同期比49%増、シティグループは同23%増、ウェルズ・ファーゴは同45%増と大幅増だった。しかし、前期比でみるとそれぞれ3%増、1%増、0.7%減と2022年3月からの利上げという前年比マジックが奏功していることは明白で、逆に今後のシナリオには不透明が残る。
JPMのジェレミー・バーナム最高財務責任者(CFO)は、決算後の説明会で2023年の純金利収入につき810億ドルと、前回予想の740億ドルから上方修正した。ただし、JPMの見通し引き上げは今年の利下げを織り込んだ数字で、預金者への金利支払いが低下すると想定がある。また、JPMのような大手行であれば預金者への金利引き上げに対応できても、中堅・中小銀行が大手との競争に追随できるか疑問が残る。預金者への金利負担の上昇は銀行の利益率の低下につながり、貸出金利のさらなる引き上げを招き、米景気にはマイナス材料だ。
JPMのジェイミー・ダイモン最高経営責任者(CEO)はというと、米経済が健全で家計は引き続き支出しつつ力強いバランスシートを有していると発言したほか、その他「私だったら、信用収縮という言葉は使わない」と言及し、楽観姿勢をみせた。とはいえ「(信用状況は)少しは引き締まるだろうが、そのほとんどはある種の不動産にまつわるものだろう」と述べたほか、上記のヘッドラインにある通り「過去1年間、我々が注視してきた嵐の雲は依然として地平線上にあり、銀行業界の混乱はこれらのリスクに拍車を掛ける」と懸念も寄せていた。ダイモン氏がいう「嵐の雲」とは、商業不動産ローンの焦げ付きで、米景気の先行きを占ううで重要と捉えられよう。
商業不動産ローンと言えば、米商業銀行が抱えるうち約7割を中堅・中小銀行が占める。ただし金利上昇や米景気の鈍化を受けて、大手行でも不良債権処理費用の積み増しが続いている点は気掛かりだ。JPMこそ22年Q4を小幅に下回ったが前年同期比56%増だったが、シティとウェルズ・ファーゴはそろって2022年以降で最大だった。
チャート:不良債権処理費用、FRBの利上げ開始後は積み増し傾向(バンク・オブ・アメリカの決算予定は4月18日で、レポート作成時点でQ1の数字は未発表)
国際通貨基金(IMF)が4月11日に公表した“国際金融安定性報告書(GFSR)”では、シリコンバレー銀行(SVB)など米銀の破綻やクレディ・スイスによるUBSの買収などについての分析を実施した。報告によれば、総資産規模100億~3,000億ドルの米中堅・中小銀行のうち、保有する債券の含み損を入れた中核的自己資本(CET1)比率は、当局が規定する7%以下の割合が約9%だったという。IMFは「金利が高水準に長く続けば、中小銀行に債券売却の圧力が高まる」と警告する。さらに、景気減速と資金調達コストの厳格化により圧迫されている商業不動産市場の状況について、「米国では総資産2,500億ドル未満の銀行が商業不動産融資の約4分の3を占めているため、同部門の融資の資産の質の悪化は、企業の収益性と銀行の融資意欲の両方に大きな影響を与える」と指摘していた。
以上を踏まえると、ドル円は2022年後半のように上方向一辺倒でのドル高が進むとは想定しづらい。4月12日公表の米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨では、金融不安への配慮がにじんでいたほか、FRBスタッフが年後半の景気後退入りを予想していたことが分かった。ドル円は目先こそ買い戻しが優勢でも、米景気減速を確認する指標や決算内容などを受け、徐々に頭が重くなりそうだ。今週は米住宅指標が目立つ程度で大きなイベントを予定しないため、ドル円の上値の目途は心理的節目の135円、下値は20日移動平均線がある132.30円と見込む。
チャート:ドル円の日足、20日移動平均線は黄色線、ボリンジャー・バンドの±2σは紫の枠。
6. 今週のトピック:米インフレは鈍化鮮明、FOMC議事要旨は金融不安を意識
ドル円の方向性を占う上で重要なポイントのひとつは、FRBの金融政策です。
FRBは2022年3月から利上げを開始し、物価を最優先して金融政策を運営してきました。しかし、足元でFRBの過去1年間で4.75%と急激な利上げを行った代償として、金融不安、米銀破綻、信用収縮などの懸念が高まる状況。加えて、米3月消費者物価指数(CPI)を含めインフレ鈍化が鮮明となり、いよいよFRBの利上げは終了に向かいつつあるようにみえます。
そこへ水を差したのが、石油輸出国機構(OPEC)加盟国と非加盟国による追加減産です。この辺りを整理して、今後の行方を展望していきます。
1)FOMC議事要旨のポイント:米銀破綻を受けた貸出基準の厳格化を懸念
・FOMC参加者は、FRBが米財務省や海外などと協調して行った、金融不安の沈静化へ向けた対応を支持。しかし、FOMC参加者は不確実性が大いに高まったと認識。流動性懸念や調達コストの上昇を受け銀行が貸出基準を厳格化するなか、信用状況の減速につながると可能性があると評価した。
・銀行セクターでの動向を受け、FOMC参加者はFF金利見通しを据え置いた(筆者注:2023年は据え置き、2024年のみ上方修正)。
・FOMC参加者は、足元の銀行セクターの動向を受け、経済活動を始め労働市場、インフレに関する見通しが、既に高い水準にある不確実性をさらに高めたとみなした。FOMC参加者は、経済活動に対するリスクは下方向に偏いていると見込む。経済活動の下振れリスクとして、参加者は銀行が予想以上に信用供給を低下させる可能性を指摘し、経済活動を大幅に抑制する場合があるとした。
・FOMC参加者は、物価に対しリスクは上方向に傾いていると考える半面、インフレに対する下方向のリスクも認識した。インフレの上振れリスクとして、参加者は、労働需要が意外に底堅いことなどから、予想以上に持続的な物価上昇圧力が生じる可能性を挙げた。インフレの下振れリスクとして、参加者は、銀行が予想以上に信用供給を減らした場合、経済活動や雇用が抑制され、インフレにさらなる下押し圧力がかかる可能性があると指摘した。
・一部の参加者(several participants)は、3月FOMCで据え置きが適切との見方を示した。
足元の銀行セクターの動向と金融政策の累積的な引き締めの金融・経済的影響を評価するための時間をより多く確保できることが、その背景。しかし、これらの参加者は、FRBなど当局の対応が銀行セクターの状況を落ち着かせ、経済活動やインフレに対する短期的なリスクを軽減するのに役立ったことも確認した。その結果、これらの参加者は、インフレ率の上昇、最近の経済データの強さ、及びインフレ率を委員会の2%の長期目標まで低下させるというコミットメントを理由に、0.25%の利上げが適切と判断した。
・複数の参加者(some participants)は、高止まりするインフレ率と最近の経済データの強さを考慮すると、足元の銀行セクターでの動向がなければ、今回の会合で0.5%利上げすることが適切であったと考えていたと指摘した。しかし、銀行セクターの動向が金融環境を引き締め、経済活動やインフレを圧迫する可能性があるため、今回の会合で目標レンジをより小幅に引き上げることが賢明であると判断した。
・政策見通しについて議論する過程で、参加者はインフレ率が依然として高過ぎる水準にあり、労働市場が引き続きひっ迫していることを確認した。その結果、インフレ率を長期的に2%に戻すために十分に制約的な政策姿勢を達成すべく、いく分の引き締めが適切であるかもしれないと予想した。多くの参加者は、最近の銀行セクターの動向が経済活動やインフレに与える影響を踏まえ、足元の経済指標に基づく評価と比較して、十分に制約的となるFF金利目標レンジの評価を引き下げたと指摘。今後の利上げを決定する際、FOMC参加者は、金融政策の引き締めの累積効果、金融政策が経済活動やインフレに影響を与えるラグ、経済・金融情勢を考慮することが適切であると判断した。
・FOMC参加者は、経済活動や労働市場、インフレへの影響を評価することに加え、信用状況や信用フローの変化など、より広範な金融情勢の変化に関する情報を精査することが特に重要であると指摘した。一部の参加者は、不確実性の高い経済見通しを踏まえ、金融政策の適切な姿勢を決定する上で、柔軟性と選択肢を維持する必要性を強調した。
・FRBのスタッフは、年後半から「ゆるやかな景気後退」に陥るリスクを指摘、2024年の回復を予想し、2025年には潜在成長率2%超えになると予想。
2)インフレ率は鈍化が鮮明に
―米3月消費者物価指数、前年同月比は約2年ぶりの低い伸び
米3月消費者物価指数(CPI)は前月比0.1%上昇し、市場予想の0.2%を下回った。前月の0.4%上昇を含め8カ月連続で上昇となったが、最も小幅な伸びにとどまる。エネルギーが公益を軸に弱まったものの、ガソリンが2カ月連続で上昇しエネルギーの下落を抑えた。食品は肉類・魚・卵を中心に鈍化しつつ、引き続き住宅関連が押し上げたほか、航空運賃が上向きに転じた。
CPIコアは前月比0.4%上昇し、市場予想と一致した。前月の0.5%を下回りつつ、2020年6月以降続く上昇トレンドを保つ。なお、21年6月は同0.9%と1982年6月以来の伸びへ加速していた。
CPIは前年同月比5.0%と、市場予想の5.2%を下回った。前月の6.0%を下回り2021年5月以来の5%割れに迫った。CPIコアは同5.6%と市場予想通りで、前月の5.5%を上回りつつ2021年12月以来の低水準を維持した。
経済正常化により著しい上昇を遂げた費目を振り返ると、今回は鈍化が優勢となった。航空運賃(前月:26.5%上昇→17.7%上昇)のほか、自動車保険(前月:14.7%→14.5%)が前月の伸びを下回り、中古車(前月:13.6%下落→11.2%下落)は下げ幅を縮小しつつも2桁のマイナス幅を保った。ただし、新車(前月:5.6%→6.1%)のほか、経済正常化の恩恵を受けた宿泊(前月:6.7%→7.3%)は加速した。
チャート:経済活動の再開で上振れが目立った費目、新車と中古車は鈍化も他は高止まり
CPIの13.5%を占める食品の前年同月比も、鈍化が優勢。鳥インフルエンザによって急騰した卵が元の価格に戻るなかで、肉類・魚・卵(前月:6.7%→4.3%)を始め、シリアル・パン類(前月:14.6%→13.6%)や食費(前月:10.1%→8.3%)なども鈍化した。ただし、外食は賃金上昇圧力を示唆したのか、前月:8.4%→8.8%と2カ月連続で再加速した。
チャート:外食以外、鈍化が鮮明に
6.9%を占めるエネルギーは前年同月比で6.4%下落し、2021年1月以降のマイナスに反転した。ガソリンは17.4%低下し、過去4カ月間で3回目のマイナスとなっただけでなく、2020年11月以降で最も大きな落ち込みをとなった。公益(電力・ガス)は前月の13.3%から9.2%へ鈍化した。
チャート:ガソリンと光熱費、食費とそろって減速
アトランタ連銀が発表する粘着CPI(帰属家賃や外食、医療サービスなど、変動の鈍い品目に絞って算出したCPI)は、前月まで3カ月連続で前年同月比6.7%上昇を経て、今回は6.6%へ鈍化した。しかし、住宅関連が押し上げており、住宅を除けば5.3%と2022年5月以来の低い伸びに。パウエルFRB議長を始めFedは住宅を除くコアサービスに注目するなか、住宅以外はゆるやかなペースながら落ち着きつつある。
チャート:粘着CPI、住宅を除けば鈍化
―米3月生産者物価指数、前月比は2020年4月以来の落ち込み
米3月生産者物価指数は前月比0.5%低下し2020年4月以降で最大の落ち込みを迎えた。ガソリン価格の下落が押し下げにつながったほか、サービス価格も同0.3%低下し、2020年4月以来のマイナス幅となった。
問題は、財価格の押し下げが続くか否か。4月2日にOPECプラスがサプライズの追加減産に踏み切った結果、WTI原油価格は80ドル付近がフロアになったと捉えられます。足元のガソリン価格の上昇もあって、今後急数カ月は鈍化ペースが限定的となる見通しだ。
チャート:ガソリン価格、足元で上昇に反転
3)消費者センチメント、インフレ期待は大幅に上方修正
米4月ミシガン大学消費者信頼感指数・速報値は63.5と、市場予想と前月の62.0を上回った。さらに、1年先インフレ期待が4.6%と、前月の3.6%から1%ポイントも大幅上昇した。
チャート:米4月ミシガン大消費者信頼感・速報値は上昇、インフレ見通しも上方修正
ミシガン大学のジョアン・シュー消費者調査ディレクターは「低所得者層のマインドが上昇を、高所得者層での低下が打ち消した」と説明。消費者は「自動車など耐久財でのインフレ鈍化を確認しつつも、短期的にはインフレの高止まりを予想している」との考えを寄せた。ただ全体的に、3月の金融不安を受けながら「経済環境の変化を認識していなかった」といい、足元の銀行破綻は現時点で限定的と捉えられよう。
――以上を踏まえ、引き続き5月FOMCで一旦利上げ打ち止めが想定されます。さらにIMFの国際金融安定性報告書で中小銀行が多く抱える商業不動産の融資の資産の質悪化が企業の収益性と銀行の融資意欲の両方に大きな影響を与える」と懸念を表明。4月15日には、イエレン財務長官がCNNとのインタビューで、米銀による一段の貸出基準の厳格化がFRBの利上げの代わりになるとし、Fedが追加利上げを行う必要性が低下するとの考えを表明したと報じられました。
この発言からは、バイデン政権側が米大統領選を予定する2024年を前に、インフレ抑制による過度な利上げを通じた米景気後退を回避したい意向が伺えます。OPECプラスによる追加減産を受けても、米エネルギー情報局(EIA)が短期予測で示した米国内での増産がこの追加減産を補うとの見通しも、FRBのインフレ最優先からの方向転換をサポートします。
振り返れば、バイデン政権の経済政策チーム、国家経済会議(NEC)の委員長にハト派のFOMC参加者として知られたブレイナードFRB前副議長が就任。FRBは中央銀行として独立性を有するとはいえ、バイデン政権がFRBに対し、金融政策姿勢をインフレ最優先から信用収縮・景気へ配慮する方向にシフトするよう要請するシナリオがみえてきました。こうした方向転換が実現すれば、ドルの上値を重くさせることでしょう。
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