―Executive Summary― 目次1.前週の為替相場の振り返り=ドル円、米CPIなど市場予想を上回る米物価指標を受け149円回復【 […]
Executive Summary
- 2月6~2月10日週のドル円の変動幅は3円10銭と、前週の3円13銭とほぼ変わらず。週初に次期日銀総裁をめぐり、日経新聞が雨宮副総裁に打診したと報じられ、ドル円は上昇でスタート。132.90円をつけたが、翌日にパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長の発言がハト派寄りと判断されて下落。週末には植田和男元日銀審議員を起用する方針と報じられると、ドル円は一時129.80円まで下落したが、米10年債利回りの上昇につれ131円台へ切り返す乱高下となった。
- ドル円は今週も、買い優勢の流れが続く見通し。ただし、2月14日予定の米1月消費者物価指数(CPI)、2月15日予定の米1月小売売上高など、結果次第で上下に振らされる展開に注意。
- 一方で、植田元審議委員については2000年のゼロ金利解除に反対した実績からハト派とする報道が流れたが、マクロ経済専門家であり、必ずしも緩和支持派と決めつけられるものではない。同氏の政策姿勢は、2月24日に予定する衆参両院の議運委員会での所信聴取を待つ必要があり、22年10月のようにドル円が一方向で上昇するリスクは回避されそうだ。
- 植田氏は、中央銀行家であり経済学者として名高いスタンリー・フィッシャー氏のマサチューセッツ工科大学(MIT)での門下生で、同窓生にはベン・バーナンキ元FRB議長を始め、ラリー・サマーズ元財務長官、マリオ・ドラギ前欧州中央銀行(ECB)総裁など錚々たる面々が並ぶ。岸田首相は、日銀総裁人事をめぐり「国内外での情報発信力を重視する」と発言した。植田氏は中央銀行家を始めこうした面々とパイプを持つとされ、政策運営と共にその手腕が期待される。
今週の為替相場の振り返り=日銀総裁人事報道を受けた乱高下を経て、買い戻し
【2/6-2/10 のドル円レンジ:129.80~132.90円】
・ドル円は2月6日~2月10日週、3円10銭の値動きとなった。前々週の3円13銭と概ね同様の値幅となった。
・2月6日未明、日経新聞が日銀総裁後任人事について、政府・与党が雨宮正佳副総裁に就任を打診したと報じた。雨宮総裁が黒田総裁下での異次元緩和の設計図を描いたとされるだけに、緩和修正期待が後退、ドル円は一時132.90円と1月6日以来の高値をつけた。
・しかし、翌7日にはパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長がインタビューにて1月31~2月1日開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)後の記者会見と同様に「ディスインフレの初期段階にある」と発言。力強い米1月雇用統計でも2月FOMC後からスタンスは変わらずと判断され、131円半ばから一時130円半ばまで急落した。ただし、インフレ減速には時間が掛かる、好調な労働市場は利上げ継続の必要性を示すなどタカ派寄りな姿勢も打ち出したため、ドル円の買い戻しを誘い、結局は“いってこい”の展開となった。
・再びドル円が多く変動したのは2月10日で、岸田首相が日銀の元審議委員で経済学者の植田和男氏を起用する意向を固めたと報じ、ドル円は131円後半から一時129.80円と、約2円も急落した。雨宮副総裁を始めとした有力候補ではなくサプライズの人事であったため、ドル円はドル売り・円買いで反応したものの、植田氏が報道後に記者団に対し「現状では金融緩和の継続が必要」と発言したため、ドル円は下げ幅を縮小。NY時間には、米2月ミシガン大学消費者信頼感指数・速報値が市場予想を上回り2022年1月以来、13カ月ぶりの高水準だった上に、1年先インフレ期待が前月の3.9%→4.2%へ上振れしたため、米10年債利回りが一時3.751%と約5週間ぶりの水準へ上昇した動きにつれ、ドル円は131円前半へ戻した。
チャート:米2月ミシガン大学消費者信頼感指数は約1年ぶり高水準、1年先インフレ期待は前月から上昇
チャート:ドル円の年初からの日足チャート、前週の推移は白枠、日銀総裁人事をめぐる報道で下落も米10年債利回りの上昇につれ買い戻し
主な要人発言
・Fed高官からは、米1月雇用統計が力強い内容だったためタカ派的な発言が相次いだ。欧州中央銀行(ECB)当局者も利上げ継続を打ち出すなど、タカ派姿勢を継続。一方で、日本からは日銀総裁人事をめぐる発言が相次いだ。2月10日に次期日銀総裁として、元日銀審議委員であり東京大学で教授などを務めた植田和男氏起用する方向と報じられ、ドル円は急落。しかし、植田氏が記者団に対し「現状では金融緩和の継続が必要」と発言したため、買い戻された。
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