GFIT為替アナリスト 安田佐和子 がお届けするWeekly動画解説! 1週間のドル円相場の振り返りを踏まえて解説します。
Executive Summary
- ドル円は12月19~23日週、急落。日銀がクリスマス前、イールド・カーブ・コントロール下での長期金利の許容変動幅を±0.25%→±0.5%へ拡大。海外勢を中心に緩和策巻き戻し観測が強まり、一時131円割れと約4カ月半ぶりの安値をつけた。
- 日銀の黒田総裁を始め政府関係者から「金融引き締めではない」、「緩和策の修正ではない」との発言が相次ぐと、買い戻し。米7~9月期実質GDP成長率・確報値が市場予想を超えて上方修正された動きもあって、ドル円は133円前半まで戻した。
- ただし、米11月個人消費支出(PCE)やPCE価格指数、米12月ミシガン大学消費者信頼感指数・確報値の1年先インフレ期待など、景気と物価そろって鈍化を確認。12月の米連邦公開市場委員会(FOMC)参加者の2023年のFF金利予想中央値は5.0~5.25%だったが、金融市場では、引き続き2023年に4.75~5.0%が見込まれ、且つ同年11月と12月の利下げまで織り込む状況。ドル円の戻りを重くさせた。
- 12月26日から1月6日週は、急変動リスクに注意。特に年明け2営業日目は、2022年、2019年、2016年と年末最終営業日比で1円以上も大きく動いた。また、年明け2営業日に急変動した年は、その年も同様のトレンドを描く傾向が強い。2022年は年初に円安に振れたようにドル円は30%超もドル高・円安に振れ、逆に2019年と2016年は年初の通り円高の展開を迎えた。
今週の為替相場の振り返り=日銀のサプライズ決定受け、一時131円割れ
【12/5-12/9のドル円レンジ:137.48~130.56円】
・ドル円は12月20日に一時137円半ばから、一時130.56円と約7円も急落、約4カ月半ぶりのドル安・円高水準をつけた。
・ドル円の急落は、12月20日の日銀による政策決定が背景(レポート:「日銀がクリスマス前に長期金利変動幅の拡大を決定、ドル円は急落」をご参照)。黒田総裁は「金融引き締めではない」と釘を刺したが、ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)紙が「日銀は市場に屈した」と報じるように、インフレ加速と円安などの影響を受け、緩和政策が持続的ではないと伝えた。ゴールドマン・サックスは、日銀の決定を受け長期金利の上昇を抑制するイールド・カーブ・コントロール(YCC)だけでなく、マイナス金利の解除が近いとの見通しを示すほど。
・政府・日銀関係者の発言を受けて早急な引き締め観測は巻き戻されつつあるが、黒田総裁の後任が誰になろうとも、段階的に緩和の修正に入るとの見方が浸透、ドル円の上値を重くさせた。
・米7~9月期(Q3)実質GDP成長率確報値が前期比年率3.2%増と、改定値の2.9%増から上方修正され、一時は133.10円台まで買い戻されるが、以降は上げ渋り。
・米11月個人消費支出(PCE)が鈍化するなど、GDPの約7割を占める個人消費の勢いが失われQ4以降の成長率が減速する見通しを強めたほか、物価指標も鈍化トレンドを確認したことも、ドル円の上値を抑えた(今週のトピックをご参照)
・トレーダーのFF金利予想を反映するFF先物市場では、ターミナル・レート(利上げの最終地点)が4.75~5.0%と見込まれ、FOMC参加者予想の中央値5.0~5.25%を下回ったままだ。また、2023年11月、同年12月の利下げを織り込むなど、FOMCがタカ派からハト派に転じるとの思惑が未だ強い状況だ。
〇FF先物市場、12月23日時点でのターミナル・レートは4.75~5.0%、23年に11月と12月の2回の利下げを織り込む。12月FOMC直後と見立ては変わらず。
〇ドル円の日足チャート(左軸、オレンジ線の右軸は米10年債利回り)、12月19~23日週はグレー枠で12月20日に円高へ急展開
主な要人発言
・FRB高官からタカ派的な発言が聞かれたが、反応は限定的。逆に政府・日銀からは今回の長期金利紅葉変動幅拡大について、緩和政策の見直しではないとの発言が相次いだ一方、為替市場は円高方向で動いた。
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