目次投機筋の円売りポジション、じわり増加ドル円、再び157円台に米利下げ観測の後退イエレン発言で介入が困難に 投機筋の円売りポジション、じわ […]
Executive Summary
- 2023年は干支で「癸卯(みずのとう)」の年で、別の読み方は「きぼう」。低迷期を経て希望の芽吹きが迎える年との意味があり、その通りとなればドル円も悪い円安からの脱却が期待される。
- ドル円は2023年、120~145円のレンジを予想。基本シナリオとして、①米連邦準備制度理事会(FRB、Fed)の利上げ停止と景気後退リスクの高まり、②日銀の緩和政策修正と円安構造要因の改善、③中国のゼロ・コロナ政策からの脱却――を受け、120円程度の下値余地があると見込む。
- 中長期的なトレンドをみても、ドル円は上昇トレンドに終止符を打ったように見える。政府・日銀による介入もあって8年周期の上昇サイクルに幕を閉じ、今後は一旦下方向をトライするのではないか。
- ただし、米国の物価が高止まりし、政府・日銀のアコード修正が期待以下にとどまり、中国のゼロ・コロナ政策の緩和が段階的にとどまるならば、145円付近まで切り返す展開へ。
- 2023年に入り、米中対立激化が懸念されるが、“政冷経熱”となりうる。米国は“高い塀で狭い庭を囲む(Small Yard High Fence)”との言葉がある通り、安全保障や半導体を含む先端技術などの範囲に限定されよう。両国はそれぞれ貿易相手国(輸出入総額)で1位であり、景気回復を狙う上で互いに協力関係が必要でもある。
>>>> 本記事は前編からの続きです。
米国以外の要因も、円買い戻しを誘発へ
1)後任人事を見据え、政府・日銀アコード見直しへ
政府・日銀アコードの見直しがにわかに取り沙汰されるようになった。政府・日銀アコードとは、2013年1月、当時の安倍首相と白川日銀総裁の間で締結されたもの。安倍政権は経済再生を①大胆な金融政策、②機動的な財政政策、③民間投資を喚起する成長戦略――とする“三本の矢”を発表。そのうち、①の大胆な金融政策をめぐり「2%の物価安定目標を導入し、これを早期に実現することを目指す」との内容を盛り込んだ日銀と共同声明を公表、それが政府・日銀アコードと呼ばれるようになった。
2013年4月には政府・日銀アコードに沿い、日銀総裁に就任した黒田氏の下、“量的。質的金融緩和(別名、異次元緩和)”が繰り出された。2016年1月には、マイナス金利付き量的・質的緩和(マイナス金利導入)を、2016年9月には長短金利操作付き量的・質的緩和(イールド・カーブ・コントロールの導入)――に踏み切った。
しかし、2022年に異次元緩和の副作用が日本経済を直撃、米国を始めインフレ抑制に向け各国中銀が積極的な利上げを断行するなか、日銀は緩和政策を貫いた。その結果、日米金利差が拡大し、ドル円の急上昇を招いてしまう。さらに、銀行収益の圧迫に加え、市場機能の低下をもたらした。
異次元緩和を導入した2013年から10年を迎え、黒田総裁も2023年4月に任期切れを迎える。このタイミングで、漸く政府・日銀アコードの見直しへ向けた協議が始まった。12月17日付けの日経新聞によれば「2%物価目標の達成時期や範囲をより柔軟にしたり、表現の一部を修正」するなどの案が議論されているという。12月19日付けのロイターによれば「今後本格化させる人選と共に、アコードの見直しの是非も含め、政府・日銀間で調整する」見通しだ。
松野官房長官が12月19日の記者会見で釘を刺したように、見直しの方針が固まったわけではない。ただ、日銀は12月19~20日開催の金融政策決定会合で、イールドカーブ・コントロール(長短金利操作、YCC)の下での10年債利回りの許容変動幅を従来の±0.25%→0.5%へ修正。今回の決定を受け、市場関係者の間では「正常化の一歩であり、マイナス金利解除に向けた一歩になるのでは」との期待が高まった。
日銀の次期総裁をめぐっては、2023年の通常国会会期中の2月に同意人事案として提示される公算が大きい。黒田氏が財務省出身だったため、次期総裁はたすき掛け順として日銀出身となりそうだ。有力候補として、金融政策を企画畑出身で異次元緩和の制度設計を主導してきた雨宮副総裁、バブル崩壊からリーマン・ショックまで危機対応の手腕で知られる中曾前総裁が注目される。これまで雨宮氏なら黒田路線の継承、中曾氏なら脱黒田路線と目されてきたが、日銀が今回の金融政策決定会合で政府・日銀アコードの見直しの一貫として長期金利の上限幅引き上げたなら、どちらが就任しても異次元緩和脱却に向け舵を切るだろう。
2)構造的な円安要因、一部改善へ(エネルギーと医薬品の輸入減、中国輸入拡大)
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