<テクニカル分析判断>
●短・中期:地合い悪化による下値模索が続いた一方で、底打ちの兆候の鮮明化も進展

■3/10週は「寄付147.99:146.55~149.19:終値148.59前週比+0.57円の円安)」の推移
◇先週は+0.57円の小幅な円安となり、2週ぶりの陽線を形成。これで直近6週は「大陰線⇒小陽線」のジグザグ形状を3回繰り返しており、順番では今週は陰線となる。一方、先週は後述の通り「底打ち」の兆候が一段と増幅/鮮明化しているため、今週の推移は要注目となろう
◆なお、以下の要因から「テクニカルな地合いの悪化(下落サイクルの進展)」が継続していることも示唆されており「底打ち」は明言できない
・終値が引き続き21&52週移動平均線を下回った
・前週比での「上値の切り下がり」は7週連続で潰えたが、現在は4週連続の「下値の切下がり」にバトンタッチしており、下落サイクルの継続を示唆
・後掲の日足では21日MAを下抜けて以降、一度も終値で超えられない状態が続いており、21日MAは依然として強力な上値抵抗線として機能している
<<=>>
◇一方、サポート/反発要因は以下の通り着実に増加/鮮明化
・RSIが低位から反発の兆しを見せた上、一昨年12月&昨年7/8月と同様に「ストキャスティクスはいつ反発に転じてもおかしくない水準」からようやく反発に転じようとする兆しが窺える
・また、直近の2週は「21週MA▲4.32%」の重要ポイント付近で反発に転じており、上記RSI/ストキャスティクスの水準&形状を含め、一昨年12月の「底打ち」との類似性が高い。今週の推移は要注目
・過去3年の推移をみると「直近高値からボトムアウトまでの中期下落サイクル」の形成期間は、2022年秋が14週、昨年7-8月が12週を要した。うち、前者は1週で8.5円/後者は同7.3円の超大陰線を含むが、今次サイクルでは最大でも同3.33円とややインパクトに欠ける(後掲➋週足チャート参照)
=>>>10週を経過した今次下落サイクルが過去2回同様12週超となる可能性はそう高くないと見ている
〇なお、週間変動幅は2.64円と前週(4.36円)比で大幅に縮小し、サイクル反転前の前兆(モメンタムの減退)を示唆したとも考えられる

■他方、最も変化が生じやすい短期時間軸では、①「(下落が加速中の)21日MAを強力な上値抵抗とした下落圧力の高まり(下落サイクルの進展)」が依然継続中
=>>>急低下を続ける21日MAだけでなく、200日MA・52日MAも完全に下向きに転換
=>>>こうした状況から「テクニカルな地合いは引き続き悪化が進展中」と考えられる
□ただし、以下の諸点から「底打ち」の兆候も着実に増加(上図ご参照)
➊先週は週前半に売り先行も「(A)⇒(B)上昇サイクルの61.8%戻しを僅かに下回る水準」&「21日MA▲2.16%の重要ポイント」で反発に転じた
➋昨年8月初にかけての明らかな「下落の過熱」状態には及ばないが、RSIは「3/7に続き3/10にも一時的に30割れを示現し、売られ過ぎの状況」に達していた
➌更に、「ストキャスティクスはいつ反発に転じてもおかしくない水準」から明確に反発に転じた上、上記の通り「RSIも一時30割れからの反発軌道にある」模様。こうしたRSI/ストキャスティクスの水準&形状を含め、昨年9月の「底打ち(A)」との類似性は高い。今週の推移は要注目
➍また、3/7の足型は実体に比べて下ヒゲが圧倒的に長く下落圧力の疲弊を示唆。足型は“首吊り線”に似ているが『首吊り線は一般的に上昇サイクルの最終盤に出現しピークの接近を警告』。一方、今回の下落サイクルで出現したものは“ハンマー”と呼ばれ『底(ボトム)の接近』を示唆するとされている(下降トレンドの終盤に形成されることが多いため:図中(A)のボトムアウト形成時には3回も出現)
=>>>以上の諸点より、今週は21日MAが149.00に接近(低下)してくることもあり、既述①「強力な上値抵抗となっている21日MA」の突破に向けた“今次3度目のトライ”の可能性が高まっている
以上より<今週のテクニカル分析の結論>は以下の通り
◆これまでも指摘してきた通り、全ての時間軸にわたって「テクニカルな地合いの悪化」は進展中で、依然として明確な収束の兆候は観測されない
◇一方、下落要因との比較では「インパクトが弱い」ものの、短期時間軸を中心に「底打ち(近し)」を示唆する要因が着実に増加している
=>>>依然として「ボトムアウト(底打ち)」を明示できる段階には到っていないが「“底打ち”が接近(orを通過)」との状況に到りつつある。今週の推移は要注目と言えよう
□下落圧力は引き続き強いため「下値模索の展開が継続」しやすいものの『ボトムアウトを明言できるタイミングは着実に接近中』だと判断している
=>>>なお、他の金融市場の変動率も高まっていることから、週間変動幅は高水準の継続が見込まれる□引き続き「過度に予断を持つことなく」変化の兆しを見落とさぬ姿勢を維持した上で、終値が以下の水準を「維持or突破」できるかどうかに注目している
① 151.02円=21週MA▲1.23%
② 150.06円=21週MA▲1.86%
③ 149.59円=21週MA▲2.16%☆
④ 149.13円=21週MA▲2.46%
⑤ 147.24円=21週MA▲3.69%
⑥ 146.28円=21週MA▲4.32%☆
⑦ 145.32円=21週MA▲4.95%
>>>上記③(上方)と⑥(下方)が「抜けると加速する」と思われる水準
~以下では『短期・中期・長期の方向性』についての分析ポイント及び各時間軸での想定レンジをご案内します。(今号の分析は2025/3/14のNY市場終値をベースに実施) ~
<以下の用語補足:「MA」=移動平均線、「RSI」=(上下への過熱を示す)相対力指数>
➊日足チャート:「21MA±4.32%のバンド、52MA & 200MA」、RSI等
短期(1週間~1か月)の方向性:地合いの悪化は継続も、底打ちの兆候は着実に増加

〇上図は直上掲載分を倍の期間に拡大。コメントについては既掲のものをご参照下さい
◎「ストキャスティクスはいつ反発に転じてもおかしくない水準」から明確に反発に転じた上、上記の通り「RSIも一時30割れからの反発軌道にある」模様。こうしたRSI/ストキャスティクスの水準&形状を含め、昨年9月の「底打ち(B)」との類似性は高い。今週の推移は要注目
=>>>その他、上掲の諸点より、今週は21日MAが149.00に接近(低下)してくることもあり、「強力な上値抵抗となっている21日MA」の突破に向けた“今次3度目のトライ”の可能性が高まっている。今週の推移(展開)は要注目
>>> 想定レンジ=今週:146.25~151.05、今後1ヶ月:144.60~153.90=
➋週足チャート:「21MA±4.32%/±7.41%/±9.87%のバンド & 52MA」、RSI等
中期(1か月~半年程度)の方向性:地合いの悪化は継続も反発の可能性が増幅中

〇上図は冒頭掲載分を期間3年に延長したもの (コメントは既掲のものもご参照)
・直近の2週は「21週MA▲4.32%」の重要ポイント付近で反発に転じており、上記RSI/ストキャスティクスの水準&形状を含め、一昨年12月の「底打ち」との類似性が高い(図中の細かい点線部分)
=>>>今週の推移(展開)は今後の方向性を考える上で極めて重要であり、要注目
>>>今後6か月間の想定レンジ = 144.60~156.45⇒144.45~156.15=
➌月足チャート:「20MA±18.0%のバンド」「60MA±30.0%のバンド」、RSIを付記
長期(半年超~1年程度)の方向性:中短期からの地合い悪化が波及し、3月は20MA未満に終始

■4カ月連続で上値を切り上げ『超長期上昇トレンドの継続』を確認したと思った1月から反転、短期時間軸からの地合い悪化が波及し、(超)長期上昇トレンドに懸念が台頭中
■注目された3月は月初から20ヶ月MA未満の水準に終始している上、先月まで底打ち/上昇サインが点灯していたストキャスティクスにもデッドクロスが出来
>>> 今後1年間の想定レンジ = 144.60.~161.70 ⇒144.45~161.40 =
<ファンダメンタルズ分析判断>
◆米国:景気指標悪化からリスク回避優勢も金利上昇から株式は続落
◆日本:日銀のタカ派姿勢に金利上昇が続くも、株式は僅かに続伸
◆USD円:米金利は長短共に上昇、USD円は小幅上昇もUSD指数は続落

◇米債利回り:10年国債利回りは上昇。週末発表の3月米ミシガン大学消費者信頼感指数(速報値)は57.9と、約2年半ぶりの低水準となった。しかし、トランプ大統領の関税措置が物価を押し上げ経済を圧迫するという懸念から、5年先の期待インフレ率は3.9%と、1993年以来の高水準となったため。
FRBは18-19日のFOMCで金利を据え置くと予想されている。投資家は、FRB政策担当者が経済見通しについてより懸念を強めているかどうかを探るため、最新の経済・金利予測に注目する見通し。
FF金利先物市場では、FRBが6月に利下げを再開する可能性が高いとみられている。
指標となる米10年債指標利回りは3/14に前日比0.042%上昇し4.320%。2年債は前日比0.069%上昇し4.023%。 この結果2年債と10年債の利回り格差は約0.008%縮小し、0.297%となった。
> 2年債利回り:3/7 4.000% ⇒ 3/14 4.023%(前週比 +0.023%上昇)
>10年債利回り:3/7 4.305% ⇒ 3/14 4.320%(前週比 +0.015%上昇)
=>10年-2年の利回り差は「+0.297%と前週(+0.305%)比で僅かに縮小」(下図)

前半のテクニカル分析では、「地合いの悪化進展による下値模索の展開が続く」一方で「底打ち接近(もしくは 既に通過)の兆候が着実に増加している」との結論としました。
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◆これまでも指摘してきた通り、全ての時間軸にわたって「テクニカルな地合いの悪化」は進展中で、依然として明確な収束の兆候は観測されない
◇一方、下落要因との比較では「インパクトが弱い」ものの、短期時間軸を中心に「底打ち(近し)」を示唆する要因が着実に増加している
=>>>依然として「ボトムアウト(底打ち)」を明示できる段階には到っていないが「“底打ち”が接近(orを通過)」との状況に到りつつある。今週の推移は要注目
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一方で、(このところ毎週お伝えしているように)ファンダメンタルズについては以下を中心に、USD円の下落に繋がる要因の評価が依然として高いようです。
➊米景気に対する悲観的見方の高まり:総じて事前予想と比較して軟調な米(重要)経済指標が圧倒的に多い状況が継続中
⇒この先行きに対し悲観的な見方を前提としたFRBの利下げ織り込みが加速し、米債利回りは先週も一時昨秋以来の低水準へ低下(「米景気後退」懸念の増幅)
<<=>>「米景気は依然堅調を維持。現状で利下げを急ぐ必要なし」(2週前、パウエルFRB議長)
➋『タカ派色を強める日銀』:時に市場の織り込みペースの加速を牽制しつつも全く後退せず
⇒「矢継ぎ早に“追加利上げ観測”を織り込む国内債券市場(10年国債利回りの急上昇)」
<<=>> ①1月に実施した追加利上げの影響を見極める必要性、②トランプ政権の関税引き上げ政策などを含めた不確実性の増大などを理由に、昨今の過熱気味の状況を牽制する発言も出始め、国債利回りの上昇ペースはやや鈍化
このように「➊米国の金利低下 & ➋日本の金利上昇」の相乗効果によって「USD円は下落サイクルを進展中」ですが、既述の通り、テクニカル要因を中心にその度合いがやや鈍化しつつある兆候も出来し始めています。
しかしながら、ファンダメンタルズのアプローチでは、特に「景気後退」懸念が増幅中の➊を覆すような要因を見出し難い状況と思われ、軟化中のUSD指数にとっては逆風が続くとの見方が大勢を占めています。
確かに、3/6にアトランタ連銀のGDPナウが米Q1実質GDP成長率をマイナス2.4%と予測したことなどを契機に、米景気後退懸念は着実に金融市場に浸透していると言えます。昨今では、トランプ氏とリセッション(景気後退)を合成した「トランプセッション=トランプ不況」とのフレーズを耳目にする機会もかなり増えてきています。
ただ、1Qについては「トランプ関税発効前の駆け込み需要で輸入が急増した」影響が大きく「一時的にマイナス成長に陥っただけ」だと個人的には考えています。今後、税制改正法の延長や歳出削減などを含む包括案の成立の目途が立てば、現在の悲観は大きく後退するのではないでしょうか。このため「2四半期連続のマイナス成長」で認定される「リセッション(景気後退)」にまで発展する可能性はそう高くないと見ているのですが、果たして。。。
また、偶々ですが、時々ご紹介している「TRADOM為替アンバサダー/安田佐和子さんの今週のweekly report」でも同様のトピックを取り上げておられましたので、その部分を抜粋して以下ご案内します。
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―「トランプセッション」に備えよ、ただしマイナス成長は一時的か
「トランプセッション(Trumpcession)」とは、トランプ不況を表す言葉だ。トランプ第2次政権が発足し始めた頃から取り沙汰されてきたが、アトランタ連銀のGDPナウがマイナス成長を予測し始めた約2週間前から頻繁に登場。3月10日にナスダックが前日比4%安も急落するなど、米株相場が大崩れすると、日経新聞もこの言葉を紹介し日本人の間でも浸透し始めている。
そのアトランタGDPナウだが、3月3日時点で米Q1実質GDP成長率につき2.8%減と予測し話題となった。米2月ISM製造業景況指数が50.3と製造業の拡大・縮小の分岐点50を上回りつつ、雇用や新規受注が再び50を割り込み、個人消費と設備投資が大幅に下方修正されたためだ。3月6日時点では、2.4%減と見込む。
チャート:アトランタ連銀のGDPナウ、米Q1実質GDP成長率予測の推移

ただし、アトランタ連銀のGDPナウで成長を押し下げているのは純輸出だ。トランプ関税を警戒した駆け込み需要が背景にあり、1月に輸入が前月比10%増の4,012億ドルとなった結果、貿易赤字が同34%増の1,314億ドルと輸入と合わせ過去最大に膨らみ、3月6日時点での予測で純輸出の寄与度がマイナス3.84ptと成長を押し下げた。
その他、住宅が0.16ptと小幅ながらマイナスとなったが、米成長の約7割を占める個人消費の寄与度は0.3ptと、一時の2.0pt以上の寄与度から縮小しつつプラスを堅持している。設備投資と在庫投資を合わせた企業部門も0.98ptと、3月3日時点の0.63ptを上回った。以上を勘案すれば、米Q1のマイナス成長は、一時的と捉えられよう。
ウォール街のエコノミストの間で、リセッション懸念はまちまちの状況だ。JPモルガン・チェースは、景気後退の確率を24年11月末の17%→3月10日に40%に引き上げた。一方で、ゴールドマン・サックスは1年後の景気後退確率を1月の20%→25%へ引き上げた程度。ゴールドマンは2025年の米成長率見通しを下方修正したが、従来の2.4%増→1.7%増と、潜在成長の2%を下回る程度へのペースダウン予想にとどめている。
肝心のトランプ政権はというと、前週のレポートで指摘したようにベッセント財務長官がバイデン政権下での3%成長が政府支出依存だったため、「デトックス期間」に入るとして、減速を見込む。ただし、ベッセント氏は13日にCNBCとのインタビューで「デトックス期間は景気後退入りを意味せず」と釘を刺し、あくまで経済の調整に過ぎないとの見立てだ。ハセット国家経済会議(NEC)委員長も3月10日、「前政権から引き継いだ状況や関税導入のタイミング」で米Q1は成長減速を予想も、景気後退入りの可能性に否定的である。 もっとも、ベッセント財務長官は3月13日、足元のドル安について、「ドルが(米大統領選でのトランプ氏の勝利後)大幅に上昇した後で、他の通貨が好調になるのは自然」との見解を寄せた。2月6日には、トランプ政権下で強いドル政策を堅持すると述べつつ、「他の国が自国の通貨を弱くすることや、貿易を操作することを望まない」とも発言していただけに、基調としてのドル安が続く気配が漂う。
―トランプ政権、景気後退の回避は「一つの大きく美しい予算案」の可決頼み?
トランプ政権が景気後退入りを予想しない理由は、共和党が単独での成立を目指す包括案が念頭にあるためだろう。包括案は税制改正法(所得税や法人税などの減税含む)の延長の他、債務上限の引き上げなどを含む。3月14日に米上院が可決し、同日にトランプ大統領が署名した新たなつなぎ予算案は、2025年度末(9月末)までの連邦政府の資金を賄うもので、基本的には2024会計年度の歳出水準を維持する内容となった。一方、国防以外の支出は前年度から約130億ドル削減され、国防費は約60億ドル増額され、国境取締りに追加予算を割り当て、ワシントンD.C.の予算を10億ドル削減させるもの。包括案とは関係がなく、債務上限引き上げも盛り込まれていない。
上下院の共和党は、トランプ減税に向けた25年度予算の成立に向け、並行して動いており、それぞれが歳入、歳出及び借入金といった予算の枠組みとなる予算決議を成立させた。
上院は2月21日、国境措置の強化として今後10年間で1,750億ドル、国防費の増額として同1,500億ドルを割り当てた予算決議を可決した。ただし、トランプ氏が望む2017年の税制改正法の延長を含めた減税措置は今年下半期に協議すべきとの立場で、盛り込んでいない。
下院は2月25日、税制改正法の延長を含めた減税措置を含めトランプ政権が重視する内容を概ね全て含む2025会計年度(25年9月終了)の予算決議を217対215で可決した。トランプ氏がいう「一つの大きく美しい予算案」の枠組みとなる予算決議には、①10年間で1.5兆-2兆ドルの歳出削減(米下院エネルギー・商業議員会に8,800億ドルの歳出削減を要請、低所得者向け公的医療保険のメディケイドが削減の対象となる公算)、②10年間で4兆-4.5兆ドルの減税、③4兆ドルの債務上限引き上げ、④3,000億ドルの国境対策・国防費の増額――などを盛り込む。ただし、2025年度予算とあって、税制改正法の延長やチップ課税、残業代、社会保障への課税廃止を盛り込んだ減税額でなく、2026年度に割り当てる見通しだ。
今後は、共和党上下院が予算決議案を一本化→一本化した予算決議に基づいた財政調整法案を上下院の本会議で審議・可決→両院協議会で「両院一致財政調整法案」を作成→上下院の本会議で可決→大統領の署名で成立、といった流れとなる。財政調整法はフィリバスター(議事妨害)の対象外となるため、共和党単独で成立が可能で、成立への障害は比較的低いように見える。
もっとも、下院の議席数は共和党が218に対し民主党は213(空席4)で民主党下院議員の全員が反対と仮定すれば、共和党の造反は2人まで、上院も共和党が53議席に対し民主党が47議席で、造反は3人までと、共和党としても安心できない状況。また、上院は包括案に慎重で、2017年税制改正法の期限切れが年末であるため、年後半に審議すべきとの立場だ。ジョンソン下院議長は「一つの大きくて美しい予算案」を早ければトランプ氏の大統領就任100日にあたる4月30日、遅くとも5月26日のメモリアルデーまでの成立させる方針を示すが、これから正念場を迎えることとなる。
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以上、このトピックに対する安田さんの見解も我々とはそう差異はないと考えられます。
さて、今週はご質問がなかったので、先週お答えできなかった「矢継ぎ早に繰り出されるトランプ関税の株式相場への影響は?」に遅ればせながらお答えしたいと思います。
まず、先週のグローバル株式市場における日米市場のパフォーマンスは以下の通りでした。
〇東京市場(小幅続伸):TOPIX = 前週末比+0.3%、日経平均株価 = 前週末比+0.4%
■米国市場(大幅続落):SP500 = 前週末比▲2.3%、NASDAQ総合 = 前週末比▲2.4%
この通り、先週も非常に跛行色の強い結果となっています。しかし、これは昨年12月や今年の2月中旬にかけて「➊米国株が急騰した一方で日本株のパフォーマンスが全く伸びなかった時」と「真逆の現象」だといえるでしょう。実際、➊に関するご質問に対し「こうした極端な(行き過ぎた)事象には早晩反動的な動きが見られる」との見解を示してきました(昨年12/2、12/9付のweekly report等)が、実際に(経験上)「行き過ぎた相場には必ず“調整(反動)”が見られる」ものだといえます。
今回の事象も、そうした“調整(反動)”の一環だと考えています。ただ、今回の米国株の下落は一般的(限定的)な“自律調整”の範疇を超えてしまう可能性があると懸念しています。
S&P500指数は、3/13の終値が2/19の直近高値から▲10.1%の下落となり、一般的には「調整局面入り」したとされる水準に落ち込みました。ただ、翌3/14には「一日としては昨年の米大統領選の翌日に当たる11/6以来の上昇率」を記録し、2/19高値からの下落率を8.3%に縮小させました。複数回連続をもって「その事象の確認」としている我々にとっては、まだ「調整局面入り」とは言えません。
我々と同様に考えて「米国は景気後退までには至らない」との見方が米国株市場で支配的である限りは、逆にこの10%調整水準が下値目処となり、押し目買いが入る可能性もあります。
しかし、景気後退の織り込みが本格化しこの10%水準を明確に下回った場合は、直近高値から▲20%超の本格的な下落に向け、調整的動きの継続的加速が予想されます。
繰り返しで恐縮ですが、「米国の景気後退入りが差し迫っている」ことを示す事象・兆候やデータは今のところ見当たらないと我々は考えています。仮に、米国が景気後退に向かうとすれば、トランプ政権の関税策が深刻な景気の下押し要因となる場合ではないでしょうか。
「関税の引き上げは景気にとって悪材料」であることを承知の上で、トランプ政権が無謀とも思える関税策を矢継ぎ早に出してくる理由は、来年に控える中間選挙の前までには『米国景気を再浮上させる(Make American economy pick up again)』必要がある為と考えられます。
関税策を発動し当事国との交渉をスタートさせ、首尾よく取引(ディール)成立なら関税を元に戻すというケースも今後出てくるでしょう。そして、既述の通り、トランプ大統領は「年後半は減税策に焦点を移して景気浮揚を図ろう」と企図しているように思えます。
振り返れば、第一次トランプ政権では、1年目の2017年は大型減税策が優先され、株式市場はそれを好感してほぼ一本調子で上昇しました。しかし、2017年末に大型減税法が成立した後、2018年から中国との関税引き上げ合戦となり、各金融市場が乱高下を繰り返すようになりました。
現第二次トランプ政権では(第一次とは)順番が逆となって、先に「関税引き上げ」その後「減税」となりそうです。トランプ政権(大統領)の思惑通りに事が進むとは限りませんが、政権の『ゲームプラン』を今の内から考察しておくことは重要だと思われます。
このような状況にあっては(3/3付のweekly reportの当欄で指摘したように)<成長のドライバーが希薄で自律的上昇が困難な「日本株のキャッチアップラリー(本格上昇)」は、米景気のソフトランディングを前提としたFRBの利下げ期待が再び高まり『グローバル景気に敏感な日本株』が見直される時を我慢強く待つことになりそうです。>
既述の通り、米国景気の先行きに対する不安も高まっている昨今、主要な経済指標への注目度も高まらざるを得ない状況です。今週は、3/17に米2月小売売上高や米3月NY連銀製造業景気指数、翌3/18は米2月住宅着工件数や米2月輸入物価指数、米2月鉱工業生産、3/19は日本1月機械受注と2月貿易統計、日本1月鉱工業生産が予定されています。そして、3/20は米2024年4Q経常収支、米新規失業保険申請件数、米3月フィラデルフィア連銀製造業景気指数、米2月中古住宅販売件数、米2月景気先行指数と続き、3/21は日本2月全国CPIが控えています。
ただし、今週は3/18-19に日銀金融政策決定会合と米FOMCが予定されており、今後の日米両国の金融政策の行方を探る非常に重要なイベントが同時開催となります。連日、全く息の抜けない1週間となりそうです。
引き続き「過度に予断を持つことなく」変化の兆しを見落とさぬ姿勢を継続して金融資本市場を注視してゆく所存です。
お知らせ:今週もご紹介しましたが、米国を中心とする「世界のインフレ・景気・金融政策」の現状分析、並びに短期を中心としたUSD円相場見通しについては、トレーダム(※)為替アンバサダーでもある安田佐和子氏のレポート(Weekly Report等)に詳細かつ非常に解りやすく解説されています。TRADOM会員の方々はサイト内で是非ご参照下さい。
<(※):ジーフィット株式会社は2024/10/1より「トレーダム株式会社/TRADOM Inc.」に社名を変更しました>
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