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  • 中国、今年GDP成長目標を5%前後に
    金 星
    この記事の著者
    DZHフィナンシャルリサーチ 為替情報部 アナリスト

    中国出身。横浜国立大学大学院卒業後、国内商品先物会社に入社。
    外国為替証拠金取引会社へ出向し、カバーディール業務に携わりながら市況サービスも担当。2013年にDZHフィナンシャルリサーチに入社。

    為替の仕組み
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    今週の5日に中国では最も重要な政治日程の1つである全国人民代表大会(全人代)が開幕しました。全人代はよく日本の国会に相当すると解釈されていますが、中国は三権分立ではなく、全ての権力を立法府に集中させる議行合一(行政・司法が立法府に従属するシステム)を採用しており、全人代が「最高」の権力機関とされる所以であります。

    全人代の職能には、国家主席や国務院総理などの選出の他、憲法の改正、法律の制定、国家計画・国家予算の審査・承認等があります。

    全人代が開催される北京市は会期中に厳しい警備体制を敷いており、北京市公安局は2月下旬にドローンなど上空1000メートル以下を移動する機器の飛行を3月12日深夜まで禁止すると発表しました。



    中国は全人代で今年のGDP成長目標を昨年と変わらずの5%前後に設定しました。昨年の成長率は5%と辛うじて目標を達成しました。大半の予想通りではありますが、多くの国際金融機関が今年の中国GDP成長率を4%台と予想し、米中貿易戦争の再燃への懸念が高まるなか、強気な設定と言えます。また、より積極的な財政政策の実施について言及し、中国は今年の財政赤字の対GDP比目標を4%前後と約30年ぶりの高水準に設定しました。

    トランプ米政権との関税合戦がスタートしているなか、「5%前後」の成長目標を維持したことは、自信の表れであると同時に内需に対する政策支援が今年に強化されることを示唆しています。

    今年は中国政府が5年間の発展目標を記した「第14次5カ年計画」の最終年にあたります。習中国国家主席は1月末に26-30年の新たな5カ年計画をまとめる意向を示しました。全人代で打ち出す25年の経済運営方針は同計画の方向性を占う試金石にもなります。



    トランプ米政権は2月4日から中国に対し10%関税を課すとし、3月4日から関税を20%に引き上げました。これに対し中国も即座に報復関税を決定し、関税合戦がスタートしています。また、トランプ米大統領は日本と中国を名指し通貨安政策を取っていると批判しました。

    トランプ米大統領はディール目的の関税で中国から譲歩を引き出すことに自信を示していますが、中国はトランプ氏の脅かしには屈せず「我が道を行く」と思われます。同氏の政策批判にもかかわらず全人代では早速預金準備率や金利を適時引き下げると表明し、「人民元レートの基本的な安定」を維持すると強調しました。



    足もとではトランプ関税の中国経済への悪影響などの懸念で、人民元も上値の重い動きとなっていますが、今後対中関税を引き上げても市場が懸念するほど影響は大きくならない可能性があります。

    一部では、トランプ米政権が中国製品に関税を切り上げても中国が第三国を経由した迂回貿易などで対処するため、中国の輸出力を弱めることにはならないとの見解が示されています。オーストラリアのシンクタンク、ローウィー国際政策研究所は国際貿易に関する報告書で、トランプ政権1期目の関税政策やコロナ禍を経ても、中国の輸出力は拡大したと分析しています。また、国際通貨基金(IMF)のデータによると、対米より対中貿易が多い国・地域は2018年に139だったが、23年には145に増加し、対中貿易額が対米の2倍以上の国・地域も18年の92から23年に112へと増えました。


    本コラムは個人的見解であり、あくまで情報提供を目的としたものです。いかなる商品についても売買の勧誘・推奨を目的としたものではありません。また、コラム中のいかなる内容も将来の運用成果または投資収益を示唆あるいは保証するものではありません。最終的な投資決定はお客様ご自身の判断でなさるようにお願いします。

    ※本記事は2024年3月8日に「いまから投資」に掲載された記事を、許可を得て転載しています。


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