<テクニカル分析判断> ●短・中期:過熱感を伴わぬまま「下げ一巡感」が出来。喪失した短期的方向性を改めて模索へ 8/26週は「寄付14 […]
―Executive Summary―
- ドル円の変動幅は11月18日週に5.26円と、前週の2.61円から拡大した。週足では、大幅に3週ぶり反落。25日引け後にトランプ氏が中国の他、メキシコとカナダの3国に対し、薬物流入阻止を講じなければ追加関税を発動する意思を表明。不確実性の高まりから、ドル円は下落した。28日は米国が感謝祭の休場のなか、トランプ氏がカナダとメキシコの首脳と電話会談し、不法移民や薬物流入阻止で合意したと発言したため買い戻されたが、152円手前まで。29日には、11月東京都区部消費者物価指数(CPI)が加速した結果、12月追加利上げ観測が再燃しドル円はロンドン時間入りに約1カ月ぶりに150円割れ。米株と米債の市場がブラックフライデーの短縮取引のなか、NY時間には日経新聞が追加利上げ期待を高める植田日銀総裁のインタビューを報じ、一時149.47円まで下値を拡大。そのまま、150円台割れでNY時間を終えた。
- 植田日銀総裁は、11月30日の午前2時に日経新聞が配信したインタビュー記事で、①経済・物価など指標が想定通り(オントラック)、②一段の円安はリスクが高く、政策変更で対応せざるを得ない――との見解を表明。特に②については、151円割れとなったタイミングとなる11月28日に行ったインタビューであり、12月の追加利上げへ向けた地ならしと言えよう。背景には、①政府の参議院選、東京都議会選を控えたドル円一段安防止、②輸入物価高を通じた家計圧迫回避、③トランプ2.0への対応――の3つが考えられる。特に③については、既に中国、カナダ、メキシコなどに対し追加関税措置を表明済み。トランプ氏と言えば、かつて4月と7月にドル高・円安是正について言及していただけに、トランプ第2次政権発足前に行動すべきと判断してもおかしくない。
- トランプ氏は、「トランプ砲」すなわち自身が運営するSNS、トゥルース・ソーシャルを通じ、大統領就任前から政策を次々に選挙公約達成に向け動き始めている。BRICS諸国にも11月30日、ドル離れ推進なら、100%の追加関税を課すと表明した。この対応は、「ドルの基軸通貨としての優位性を堅持する」ための一環だろう。その他、米連邦政府債務残高が拡大するなか、海外勢の米国債保有比率が2006年以来の低水準とあって、中ロなど米国債を取り崩してきたBRICS諸国に対し、米国債購入を要請する余地もあるのではないか。
- 今週は12月2日に中国11月財新製造業PMI、ユーロ圏11月製造業PMI改定値、米11月製造業PMI改定値、3日は米10月雇用動態調査(JOLTS)、4日は中国11月財新サービス業PMI、米11月ADP全国雇用者数、米11月総合PMI改定値、米11月ISM非製造業景況指数、米地区連銀報告を控える。また、5日には米新規失業保険申請件数、12月6日には日本10月毎月勤労統計調査と全世帯家計調査の他、米11月雇用統計、米12月ミシガン大学消費者信頼感指数・速報値を予定する。要人発言としては、12月2日にウォラーFRB理事、4日にセントルイス連銀総裁、パウエルFRB議長、6日にシカゴ連銀総裁を予定する。
- ドル円は強気シグナルが消滅し、テクニカル的に弱含み。一目均衡表で転換線が基準線を割り込み、三役好転が崩れたほか、200日移動平均線を割り込み、さらに7月高値と9月安値の61.8%どころか半値戻し(150.77円)を下抜けてNY時間を終えた。テクニカル的に弱含んだと判断され、下値余地に留意しておきたい。なお、投機筋による円のネット・ポジション動向は、11月28日に米感謝祭の祝日を挟んだ事情から、公表は12月2日に後ろ倒しとなる。
- 米11月雇用統計は、ハリケーン後の反動増や航空機大手ボーイングのスト終了を受け非農業部門就労者数(NFP)が20万人増への回復が見込まれる。ただし、米失業保険の継続受給者数が2021年11月以来の水準へ増加するなか、失業率は前月の4.1%から4.2%へ上昇する見通しだ。以上を踏まえ、今週の上値は7月高値と9月安値の61.8%戻しがある153.40円、下値は90日移動平均線が近い148.30円と見込む。
1.為替相場の振り返り=ドル円、トランプ関税予告と植田日銀総裁インタビューで150円割れ
【11月25日~29日のドル円レンジ: 149.47~154.73円】
ドル円の変動幅は11月18日週に5.26円と、前週の2.61円から拡大した。週足では、大幅に3週ぶり反落。25日は、トランプ次期大統領が22日引け後に米財政赤字削減と関税は交渉材料と位置付けるスコット・ベッセント氏を財務長官に指名したため、米利回りが低下した動きにつれ、売りが優勢となった。25日引け後にトランプ氏が薬物流入を理由に原材料を提供していると目される中国に追加関税10%、不法移民と薬物流入と犯罪増加を理由にメキシコとカナダに追加関税25%を発動する意思を表明。26日にメキシコのシェインバウム大統領が報復関税を示唆するなかで、不確実性からドル売り・円買いが優勢となり、ドル円は売りの流れが続いた。11月の米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨で、リバースレポの引き下げを指摘したこともあり、売りを後押しした。27日には、ドル円は下げ幅を拡大し151円割れ。感謝祭前に米新規失業保険申請件数や米10月PCE価格指数が前月から加速したものの反応薄だった。
28日は米国が感謝祭の休場のなか、トランプ氏がカナダとメキシコの首脳と電話会談し、不法移民や薬物流入阻止で合意したと発言したため、買い戻されたが、152円手前までにとどまった。29日には、11月東京都区部消費者物価指数(CPI)が加速した結果、12月追加利上げ観測が再燃しドル円は東京時間から売り一辺倒となり、ロンドン時間入りに約1カ月ぶりに150円割れ。米株と米債の市場がブラックフライデーの短縮取引のなか、NY時間には日経新聞が追加利上げ期待を高める植田日銀総裁のインタビューを報じ、一時149.47円まで下値を拡大。そのまま、150円台割れでNY時間を終えた。
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